どうも、suryu-と申します。
久しぶりに小説が何も書けないという事態に直面したので、息抜きも兼ねて直近で一番ハマったものを、文にしてみようと考えた結果ガルパンになりました。
ヒロインは愛里寿です。彼女の可愛さをしっかり表現できたらな。とは思うのですが、難しさも理解してます。
そんな私の作品ですが、閲覧なさってくださったら幸いです。
__砲弾の着弾する音がする。人の息遣いが聞こえる。世界が回る。
幼いと自分で理解している僕が感じたのは、その一言。自分で言うのもなんだけど、一桁の年齢である僕がそんな感想を出すのは、普通ならおかしいと言われるだろう。でも、感じたのはその通りのままなのだから。
僕は今、母さんに連れられて、一人の少女が行う戦車道を見に来ている。少女、かぁ……僕が使うにはまだ早い。そんな気がする。やっぱり、嫌な子供だな。僕は。
「見なさい。あれが”島田流”を小さな体で受け継ぐ子の戦車よ」
「分かった」
その動きはとても俊敏で器用に、かつ華麗に敵を落としていく。戦法を相手に合わせて変えながら、全てをこなしていく姿はとても美しく感じる。僕はその”島田流”を受け継ぐ子が、どんな存在かとても気になっていた。少女。とは僕が言ったものの、どれくらいの年齢かは聞いていない。大体、歳上だと思うけど。
「それにしても、敵陣は完全に崩れてるわね。どうしてそうなったか、分かる?」
「うん、分かるよ」
僕は、そのまま指を順番に指していく。その先にあるのは、暴れる三両の戦車があった。暴れる。というのは比喩だ。でも、それが正しいと僕は思っている。臨機応変な対処をする戦車が三両も居たら、こうなるだろう。
「お相手さんは、完全に退路を無くしている。おまけに、パニックを起こしてるよね。一両一両のレベルが高くて、なおかつひいていても攻めてくる。普通なら深追いせずに退陣するところを、圧倒的な攻めで退陣という言葉を無に返している。相手を背水の陣に無理やり追い込んでるように見えて、自分達が背水の陣を敷いている。けど、後詰はきっかり残してる」
「正解よ。さすが私の息子ね。……そこまで理解してるなんて」
戦場で戦車が舞う。この光景を見ている僕は、とても感銘を受けている。戦車道がこんなに綺麗だなんて。だから、隊長を務めているその女の子の戦車ばかりを、僕は見つめていた。
「ふふ、お熱ね。今までそんなに興味を示さなかったのに」
「……だってあの戦車達。生命を吹き込まれてるんだもん」
「生命を?」
「うん、生命を」
だから、僕は挙動の一つ一つを眺める。ここまで夢中になれるのは、初めてかもしれないから。試合はその間にも目まぐるしく動いて、ついに決着がついた。”島田流”の女の子の勝利だ。
「母さん。あの戦車の女の子の所に行っていい?」
「あら、気になるのね。貴方から戦車道に関わるのは、本当に今日が初めてね」
「うん、そうだね。だからこそ、かも」
こういうお願いをするのは初めてだ。前々から母さんは、僕に戦車道の道を進んでほしそうにしていたのは、僕がよく知ってる。でも、女ばかりの園に僕が入っていいのか。とか、子供らしくない理由ばかりを自分の中で並べて、今までそこまで興味を持てなかった。でも、今日は違う。
「ほら、出てくるわよ。あの子が」
「……あの子が」
戦車から出てきてのは、体格も小さくて僕と同じくらいの身長の女の子。服装はその年頃らしく、フリルのついた制服を着ている。なんというか、可愛い。という感情を初めて感じた気がする。そして同時に__
「えっと、すいません。少しいいですか?」
「……誰? お母さんのお知り合いさん?」
母さんが見守る中、僕はこの女の子に声をかけた。少し緊張するけど、大丈夫。今の僕なら何とかできる。そんな意味の分からない自信があった。
「初めまして。僕は神田裕翔。えっと、母さんのお友達? が島田流の師範なんだ」
「お母さんの……そっか。私は島田愛里寿。今日は、見に来てくれたの?」
「うん、そうなんだ。僕の母さんに連れられて。……それで、一目見て……えっと、そう。ファンになったんだ。君の」
「私の?」
普段女の子とは、そんなに話すわけじゃないからかなり緊張する。けど、感触は上々。好感を持って貰えたら重畳。……相変わらず自分の子供らしさの無さに嫌気を覚えるけど、今はそれはそれ。これはこれ。
「そっか、私のファンか……一個聞きたいんだけど、その、西住流は見た事ある?」
「うん、あるよ」
これは嘘じゃない。僕は母さんに連れられて、各地の戦車道の試合を見ることになっている。西住流の娘。かなり歳上の西住まほさんの試合を見たけど、あれはあれで凄かった。でも、僕は物足りなさを感じたのは確か。だから。
「たしかに、戦車道では西住流は有名だね。でも、僕は君の戦車道の方が好きだよ。……あ、ごめん。いきなりこんなこと言われたら、嫌かな?」
「! ……うん、大丈夫。ありがとう。裕翔君。そっか、私の……ねぇ、裕翔君は何歳?」
「僕? 六歳だよ」
「そうなんだ……私も六歳だよ。同じだね」
「うん、そうだね」
いつの間にか、母さんの隣には母さんの友達? の島田千代さんが来てるけど、気にしない。気にしたら恥ずかしくなって負けるだけだ。
「ねぇ、裕翔君。これからも私の戦車道、見に来てくれる?」
「うん、きっと。でも__」
「でも?」
こればかりは、夢物語のような話かもしれない。けど、僕だって努力すればきっと。頑張ればできるかもしれない。だから。
「僕はいつか、君の__愛里寿の隣で、戦車道をやってみたいな」
「っ……うんっ、できたらいいな!」
■■■
「……ふふ、まさか息子の成長がこんな所で見られるなんて、思わなかったわ」
「由利。これ、狙ってたの?」
「まさか、そんなことは無いわ。でも……そうね、愛里寿ちゃんに惚れ込んだのは、確かみたいね」
早速打ち解けて、仲良く遊ぶ愛里寿と裕翔の背中を見ながら話す母親二人は、なんとなく嬉しそうな。それでいて楽しむような顔をしている。まるでこの二人が、こうなる事を望んでいたような。特に、裕翔の母親である由利は、まさにこれを求めていたと言っても過言ではない。愛里寿の母……島田千代もそうだろう。
「……男の子が戦車道、か。由利、昔から言ってたわね」
「ええ、私も旦那と戦車道がしたかったもの。それはちよきちも、しぽりんも言ってたでしょ?」
「ちょっと、人が居るんだからその呼び名は……まあいいか。ゆりっぺ。それだけじゃないんでしょ?」
「分かっちゃう?」なんて笑う由利を見て、千代は本当に変わらないわね。と長年付き合っている友人の顔を見て、苦笑いした。けど、それが不味い意味という訳では無い。
「ゆりっぺ。やっぱり今の戦車道は」
「うん、ちよきち。お上が固すぎるし、それに闇も深くなってきている。だから私達が変えていかなきゃいけないのは、確かね」
「しぽりんも言ってたわね、だから革命を起こさなければならないって」
「そうね。だから、これがその一歩になるかもしれない。……そもそも、誰が決めたのかな、戦車道は女の武道って」
「さあ。それは昔の人だからわからないわ。大方思想でも絡んでるんでしょうけど 」
小難しい話は、子供に聞かせず自分達で処理する。そこは大人の務めだろう。千代も由利も、楽しそうに話をする裕翔と愛里寿に幾らかの安心感を覚える。たとえ由利は自分の子供が大人びていようと、子供としての幸せはしっかり、教えるつもりでもあるからだ。千代も千代で、愛里寿の嬉しそうな顔が見られるなら、母親としてはそれ以上の満足はない。
「それにしても、愛里寿ちゃんの隣で戦車道……なんて、裕翔。愛里寿ちゃんの戦車の乗り手になるのかしら」
「ゆりっぺの子供だから、有り得なくないかしら。絶対能力は持ってるはずだから」
「ふふ、それは嬉しいわね。今日なんか試合の流れをあの歳で解説してくれたわ」
「そうなの? これは将来有望ね……愛里寿にとっても」
「あら。親が先に裕翔にマーキング?」
「ふふ、有力株でしょ。”神田”の息子は」
「そうねぇ、自慢の息子だから、簡単には渡したくないわ」
千代の言葉に含みがあるのは、二人の子供にほとんどが夢中になってるために、由利以外の誰もが分からない。”神田”という苗字は彼女達にとって、とても大きなものだ。まあ戦車道の人間なら、彼女達周辺のわかる人はわかるだろう。
「……まあでも、近い未来愛里寿も満更ではなくなるかもね」
「あら、どうして? 島田流の娘なら、引く手数多でしょ」
「だからこそ、よ。ふふ、まぁいずれ分かるわ」
「そうね。それじゃあこれから私は、裕翔の訓練を積んであげなきゃね」
「ふふ、楽しみね。ほんとに愛里寿の隣に来たがるんなら……一緒に革命を起こしてもらわなきゃ」
母親二人は、そんな未来に思いを馳せる。この二人なら、何かやってくれそうな。そんな気配を由利と千代は、幼き裕翔と愛里寿に感じているのであった。
■■■
”いいかしら? 裕翔。貴方は愛里寿ちゃんの隣で戦いたいのよね?”
”うん、そうしたい。僕が初めて……惚れ込んだ戦車道だから”
”なら教えましょう。私の技術の全てを”
■■■
「裕翔君。整備まだしてるのー?」
「ええ、まぁ。僕と”彼女”の大事な戦車ですから」
あれから数年。僕は母さんから戦車道のイロハを教わり、父さんからは整備の技術を沢山仕入れた。そして今日も訓練で使った戦車を、自分の手で整備していく。オーバーホールなんかもできるようになって、今では車の整備もたまにするくらいだ。将来免許をとったら、スポーツカーに乗りたいものだ。
「いいの? ”隊長”ほっといて。裕翔君と大学行けるの、楽しみにしてるんだよ。だから今日は早く練習終わらせたのに」
「分かってますよ。でも、こいつを整備しとかないと……大学初戦で勝つ。なんてことできないですから」
「まあ、そうだけどねぇ。非公式戦に何もそこまでしなくとも」
「何をせずとも嘗められる。そんな僕ですから、手だけは抜かないようにしておこうと」
「はぁ、ほんと真面目ねぇ」
僕達の部隊の隊員は、そんな僕の様子に苦笑いしたりはするけど、止めたりはしない。だから、好きなように僕は戦車の整備を黙々と進める。こいつは僕と”彼女”を結ぶ、大事な存在だから。そんなことを考えていると、影ができる。誰か来たのかな? と振り返ると”彼女”がそこに居た。
「やっぱり、整備してると思った」
「ああ、愛里寿。ごめんね。いや、大学戦車道の初陣のために、少し微調整をさ」
「そっか。でももう少し一緒に居ても良いよね。私、楽しみにしてるんだから」
「あはは……どうにも癖がついちゃってさ、こいつをいじるの」
「……もうっ」
そう、僕は愛里寿が隊長を務める部隊で、愛里寿と同じ戦車に乗っている。僕の役目は砲手。一応ありとあらゆる状況の砲撃をこなせると、自負しているのは悪いことなのだろうか。
愛里寿は僕の脇に歩いてくると、ぽすりと僕の隣に座る。初めて愛里寿に会った時は、僕と同じくらいの身長の筈だったが、今では僕の方が高くなっている。体つきに関しては、男らしくなった……つもりだ。相変わらず、考えていることは年齢に比例してないけど。
「裕翔。大学ってどんな感じなんだろうね」
「んー、僕らは飛び級して、中学と高校を知らないからなんとも言えないけど……そこら辺より開かれた場所。かな、多分。でも勉強はしっかりしないとだけど」
「だよね。サークルってどんなものがあるのかな? 私、楽しみ」
「僕もだよ。大学だからこそ、割と自由で尚且つ面白いサークルなんか、あるかもしれないからさ」
実際、そこら辺は楽しみにしてないわけじゃない。けど、まずは大学の初戦。そればかりを気にするのを分かっているのか、愛里寿は僕の肩をぽんぽんと叩いた。
「考えすぎ。大丈夫。……私と裕翔なら絶対勝てる」
「……そうだね。そうかもしれない。なら、やるしかないよね」
「うん、だから楽しみ。裕翔と一緒に楽しむ」
こんなことを言ってくれる女の子が僕の隣に居るんだから、これからが楽しみにならないわけがない。まあ、恋人とかそういうのじゃないんだけど。
「それじゃあ、明日の用意をしようか」
「整備、もういいの?」
「うん、微調整終わったから」
「分かった。それじゃあ、用意。しよ!」
「ふふ、了解」
とりあえず僕と愛里寿の大学生活と大学戦車道は、今。始まったばかりだ。