愛里寿と僕と戦車道。   作:suryu-

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 皆様どうも。書き溜めをどんどん放出しててらこのままでいいのかと思ってるsuryu-です。

 一応続きも少しずつ書いてるので、書き溜めがあるうちはハイペースに更新するつもりです。それにしても、お気に入りが着実に増えてきましたね。皆様のおかげです。ありがとうございます。とりあえず、話が動き始めたり?

 そんな感じですが、今回も閲覧なさって下さると幸いです!


弟子が出来ました。です!

 戦車道。それは女性の武芸として有名な、戦車を扱う競技。最近その競技では、とある男の子が有名だ。女性の武芸なのになんで男の子なのかと言うと、戦車道二大流派の島田流の継承者である、島田愛里寿の専属砲手だからだ。

 私はこの大学に戦車道をやりに来て、初の試合をその目で見た。愛里寿さんと専属砲手の裕翔君は、二人で同時に指揮を執る。普通なら無理だと思うけど、息のあった二人は普通にこなしていく。裕翔君は、戦車の整備や運転などもできると聞く。だから、どんな感じに動かすのか見てみたい。そう思って、影から見学に来ていた。

 

「で、愛里寿。このセンチュリオンはどうしたの?」

 

「先輩達に勝ったから、支給されたの」

 

「なるほど。それで僕に動かして欲しい。と?」

 

「うん、テストだよ。裕翔が一番だからねっ」

 

 ちょうど今から、あのA41センチュリオンを動かすみたいだ。自慢じゃないが、私は戦車道のドライバーとしては腕が良い方と思っている。だからこそ、裕翔君の腕前をしっかり見てみたかった。裕翔君が乗り込んで戦車のエンジンをかけたことが分かると、その運転の技術をしっかり見るために注目する。

 

「裕翔。いつも通りお願いっ」

 

「了解」

 

 そんな会話が聞こえたかと思うと、戦車が急発進する。そしてパイロンをスラロームしながら抜けるのだが、その間隔は狭い。針の穴を通すかのような動きと、スピードをなるべく落とさず走るあたり、ドライバーとしてもトップの技術を持っている。その動きに、私は完全に見惚れていた。

 

「……凄い」

 

 愛里寿さんは、裕翔君に細かな指示を出している。そして、裕翔君もそれをこなしていく。愛里寿さんも裕翔君も年下なのに、こんなことができるなんて。そう思えば私はいつの間にか近づいていた。

 

「……あなた、誰? 今は、危ない」

 

「すいません。……でも、少し神田裕翔君に話があって」

 

「裕翔に?」

 

「ん、僕の事呼んだ?」

 

 愛里寿さんと話していると、裕翔君が戦車から顔を出す。そして、私は決めた事を伝えるために、頭を下げた。

 

「神田裕翔君。私を弟子にしてください!」

 

「……ゑ?」

 

 

 

■■■

 

 

 

 弟子にしてください。なんて言われるのは人生初だ。しかも相手が歳上の女性だから、どう答えればいいか分からない。けど、僕の戦車道の腕前を見て、頼み飲んできてると思うと、少しばかり嬉しいな。なんて思ってしまったり。

 

「えっと、とりあえずあなたの名前は?」

 

「花田結衣です! 戦車道では操縦手。ドライバーをしています!」

 

「ドライバー……」

 

「はい。裕翔君……いや、裕翔さんには運転技術を教えて欲しいんです!」

 

「まあ、悪くは無いけど……」

 

 とりあえずどうしよう。結衣さんは本気だなぁと言うことはわかってる。だから、弟子? にするのは悪くない。なら、ここはまずは腕を確かめてみるのも一つだ。

 

「それじゃあ、そうだな。結衣さんがどんな運転をするか、一度見せてくれるかな?」

 

「はい、勿論です!」

 

「それじゃあこのセンチュリオン、使ってよ」

 

「は、はい!」

 

 愛里寿はそんな僕と結衣さんのやり取りを見て、何かを考えている。何を考えているのかは分からないけど、今のところ不機嫌になってないからいいだろう。戦車に乗り込む。結衣さんの肩口程の黒髪が揺れて、少しばかり綺麗だなーとか思った僕は悪くない。愛里寿が一瞬むっとした顔で僕を見た気がするが、そこは気にしないでおこう。

 

「それじゃあパイロンを避けつつ動かしてみて」

 

「はい!」

 

 そのまま結衣さんが、センチュリオンを動かし始める。そして僕は目を見開く事になる。僕よりスピードはかなり遅いものの、正確な動きでパイロンの間をすり抜けていく。おそらく先程の動きを見ていたのだ。それでも再現は難しいから、こうして真似できる才能があるのなら、育ったらとても強い存在になる。そう理解すると、少し考えてみる。僕は確かに母さんから”母さんが持ち得る技術”を学んでいて、母さんもいつかは弟子を取りなさいと言っていた。僕自身のポジションは、”砲手だけじゃない”のはそういうことだ。でも、僕が愛里寿の専属砲手をしているのは、愛里寿と__

 

「ど、どうですか? 裕翔さん!」

 

「うん、良かったよ。多分僕の動きを見てたんだろうけど、まさかそこまでモノにできるなんてね」

 

 彼女の声で、僕は現実に戻される。この思考をするとたまにこうして見えなくなるのは、良くないんだけど。それはともかく、弟子にとるかどうか。というのは決めた。

 

「……よし、それじゃあ僕もできる限り、僕の知る”母さん”の技術を結衣さんに教えることにするよ」

 

「え、それじゃあ!」

 

「うん、弟子って言うのを認めようかな」

 

「やったぁっ!」

 

 まさか僕に弟子ができるなんて思わなかったけど、これは大きな一歩になる気がする。男の戦車道をしっかりと認めた人が、僕の目の前にいるという事になるから。因みに愛里寿は若干不機嫌だ。僕、悪いことした覚えないのに。

 

「裕翔。とりあえず、私も見て」

 

「……あのー、愛里寿?」

 

「わ、愛里寿さんは裕翔さんにくっついて……もしや」

 

 何故か知らないけど、愛里寿は僕の腕にくっついている。いやまぁ、柔らかいし役得ではあるんだけど、どうすればいいかよく分からないのは、いつもの事だ。前々から僕に抱きつくことは、それなりにあったから。だからいつの間にか、意識しすぎる事はなくなった……はず。

 

「とりあえず、裕翔さん。これからよろしくお願いします!」

 

「え、あ、うん。よろしく」

 

 結衣さんはそれだけ言うと走っていく。とりあえず愛里寿と二人だけになったから、頭を撫でる。少し笑顔に戻った。

 

「……ねえ、裕翔」

 

「どうしたの? 愛里寿」

 

 なんとなく、愛里寿の意図を読む事が出来ない。何かを考えているような、そんな表情なのは分かる。でも、何を言いたいのかは見当がつかない。

 

「裕翔。前から気になってたけど……私の事、どう思ってる?」

 

「どう思ってる、か」

 

 僕としてはかなり難しい質問が、愛里寿から飛んでくる。この質問の意図は、僕には経験がないから分からない。愛里寿と出会ってから約六年。今まで一緒に居る事は多くても、なかなか聞かれない言葉ではあったから、なんと答えればいいかわならない。勿論秘めてるものはあるが、それはともかく。だから、正直に行こう。

 

「んー、今まで一緒に居た時間が長いから、そんなに考えてなかったよ。どうなんだろうね?」

 

「……そう」

 

 そして答え方を間違えたのか、愛里寿は寂しそうな顔をしている。僕は何を言えば良かったのかは分かっていないし、愛里寿が何を求めているのかもわからない。

 

「それじゃあ……裕翔は、私の事、好き?」

 

「ん? そりゃあね。じゃなきゃ専属砲手なんてやらないし」

 

「……そっか」

 

 好きかどうかなんて決まっている。それはどういう意味であれ、即答できる。そもそも僕は、昔から。だからこそ、どうしてか切なそうな顔をする愛里寿を見て、僕が何を間違えたのか気づけなかった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「ゆりっぺ、少しいい?」

 

『なによ、ちよきち。厄介事でも起きたの?』

 

 現在島田流家元である私。島田千代は、とある事案に対しての対応におわれていて、昔からの友である神田由利……ゆりっぺに電話をかけていた。彼女が私に息子を預けるくらいには仲がいいとも思ってるし、ライバルだとも思っている。もう一人の”西住しほ”も含めてだ。

 

「いやまぁ、困ったことが起きたのよ。それをどうしようかって」

 

『ちよきちが困るなんてかなりの事よね。やっぱり愛里寿ちゃん絡み?』

 

「……相変わらずの推察ね。その通りよ」

 

 昔からゆりっぺには、私達の考えがとても読まれている。戦車道の試合の中で、それを何度も痛感していた私からしたら、これくらいはもう驚かない。

 

『まさか上役達がなにかやってきたの? 愛里寿ちゃんに無理矢理政略結婚しろとでも?』

 

「……その通りよ」

 

『……あのジジババどもめ』

 

 そう、私の悩みは戦車道の一部の上役が、愛里寿に政略結婚を求めてきた事。何を考えているんだ。ふざけるなと言いたいが、「とりあえずは本人の意思があります」と答えておいたけど、あの上役達が認めるとは思えない。そしてそれは当たった。夏休みの時期に、相手を連れてくる。と一方的に押し通してきた。一体誰が何の目的で、今になってこんな事をしてきたのか。ゆりっぺと仲がいいから? 彼女の息子が私の娘の専属砲手だから? ……どちらもありえるから困る。あのジジババ共は、私達をなんだと思ってるのやら。恐らく、男子を戦車道に持ち込む事に対して。そして愛里寿が可愛いのもあって、純粋に嫌がらせしたいのだろう。

 

「……一応愛里寿にも伝えましょう。ゆりっぺは、対策たてられる?」

 

『分からないわ。現状高校戦車道を底上げしてるから、昔同様に名は売れてる。けど、あの一部の腐ったジジババどもが、工作をしないとは思えないわ。私に対する嫌がらせでもあるんだからね』

 

「そうよね……」

 

 ゆりっぺでも難しいなら、もう何も手はないのだろうか。裕翔君に頼るのは、大人としては良くないことだ。とりあえず愛里寿にも、夏休みにそういう事があるというのは伝えておこう。

 

「……ゆりっぺ。これは早い所動かないとならないわね」

 

『そうね、革命を起こせるように頑張らないと。そういう意味では聖グロの隊長を巻き込めたし、これはかなり大きくなるわ』

 

「聖グロの隊長……今代はかなりの切れ者と聞くけど、実際は?」

 

『チャーチルとマチルダとクルセイダーしかOBは認めてないのに、それでもかなりの戦果を出す名手よ。今までの中で一番とも言っていいわ。もし革命が起きたら、真っ先に戦車を提供したいくらいよ』

 

「ゆりっぺがそこまで気に入るなんて、驚いたわね。因みに他に優秀な子は居た?」

 

『たとえばプラウダ。あそこの隊長は性格が少し幼くても、カリスマもあり戦術もしっかりしてる。副隊長のサポートも良くて、黒森峰には絶対に劣らないわ。そしてアンツィオ。ノリと勢いがあるだけかと思えば、面白い戦術も利用するから、色々教えたわ。そしてサンダースなんかも良かったわね』

 

「次世代はきっちり育ってるのね……これは面白くなりそうね」

 

『ええ。そして皆男子の戦車道も好意的だった。だからこそ、私は彼女達にも協力してもらうつもりよ』

 

「それは名案ね。今の戦車道を担う子達が発言権を強めれば、今の戦車道を変えられるわね」

 

 ゆりっぺと私の想いは、裕翔君があの時愛里寿の隣に居ることを決めた時から、ずっと変わることなく続いている。二人の戦車道を途切れさせたくなんかないし、こんな形で関係を終わらせたくない。だから、難しい事はあの子達には背負わせず、私達であの上役共をどうにかする。それが私達大人の仕事だから、絶対になんとかしてみせる。裕翔君は子供ながらに私達にも気を使うけど、そうさせないようにしていくのが私達の務めなんだ。

 

「ゆりっぺ。しぽりんにも言っておくべきかしら?」

 

『私としてはしておくべきと思ってるわね。”西住流”も協力してるとなれば、上役達にもダメージは大きいわ』

 

「そうよね。西住流だから。島田流だから。というのは抜きにしても、しぽりんは協力して欲しいわね」

 

 しぽりんも。私達戦車道に関わる存在が、三人揃って共に戦った日のことを思い出す。あの時は島田流も西住流も、”神田流”も関係なく、三人で相手を倒すために戦った。高校戦車道対大学戦車道の試合だったか。

 

「あの日みたいに戦えれば、きっと。よね?」

 

『ええ、そうね。きっとそうよ。だって私達は__』




■【後書きのコーナー】■



愛里寿「……なんか、恋愛なのに雲行き怪しいのはなんで?」

suryu-「そりゃああれですよ、簡単にくっついたら面白くないですから、うん」

愛里寿「……」

裕翔「しかも僕の考えとかも影響してるね。これ、シリアス成分多くない? 甘々じゃないの?」

suryu-「適度なシリアス……にできたらいいなぁ。それと愛里寿さん。センチュリオン使おうとするのはやめてください」

愛里寿「……イチャイチャさせてよ」

suryu-「こ、このあとのはなしではきっと……」

愛里寿「……次回も閲覧なさって下さると幸いです」

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