愛里寿と僕と戦車道。   作:suryu-

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 皆様どうも、suryu-です。書き溜めが消費されてきてかなり焦ってます。スランプだから早く書けないし……まあでも、できるだけ最初はなるべく早く投稿したかったり。

 そろそろお話も動き始める形になるので、早く原作時期に行きたいなぁとも思わなくもなかったり。まあ、やりたいことが沢山だから詰め込んじゃうんですけどね!

 そんな感じですが、今回も閲覧なさって下さると幸いです。


実家での出来事。です!

「……それで、ちよきち。なんで電話をしてきたの?」

 

『しぽりんには、色々話しておこうと思ったのよ』

 

 今日は久しぶりに、ちよきちが私に電話をかけてきた。前々から自分も聞きたいことはあったし、丁度いいタイミングであるのは確かだ。だからこの電話はそういう意味でも利用しようと、沢山ある書類からは目線を逸らした。

 

『多分噂で聞いてるでしょ? うちの娘に政略結婚を持ちかけてきた、あの上役達の話』

 

「知ってるわ。私達にも肩を持てなんて言われたけど、丁重にお断りしました。幾ら私が西住流で、あなたの娘である愛里寿が島田流でも、私は間違った事に肩を貸すのは嫌いなの。あなたの娘はまだ小さいし、そんな話をいい大人が持ちかけて。なんてね」

 

『ほんとよね、愛里寿にも私にもいい迷惑よ』

 

 実際良い大人が小さい女の子に寄って集ってなんて、何を考えているのか意味がわからない。噂で聞いているあの子も、黙っていない気がする。あくまでも気がするだけど。

 

「それで、ちよきち。貴方が手を尽くしている娘さんの専属砲手は、どんな子なの?」

 

『どんな子って?』

 

 とりあえず、その男の子について質問をする事に決めた。私の中ではその子について、様々な疑問が渦巻いているのだから。

 

「決まっているわ。なぜ彼が”島田流”と違った動きを指示する時があるのを、黙認してるの?」

 

『まあ、そこは気になるでしょうね。間違いないわ』

 

「ええ、だからなぜ?」

 

 私の質問を聞いてちよきちは、少しの間答えない。私がまるで答えを知ってるかのような、間の開き方だ。知らないならマウントを取りにでもくるだろうし。ただ、なんとなく気になる。確かに私もあれは、どこかで見覚えがある。むしろ近かったような。そして、ちよきちの吐息が漏れる音が聞こえた気がした。

 

『……しぽりんなら少しだけ、教えてもいいかもしれないわね。あの子の名前は神田裕翔。”神田”を受け継ぐものだもの』

 

「そう、神田を……え?」

 

『そう、あの子は”軍神”神田由利の息子よ』

 

 その言葉を聞いた私は、心の奥底からしまってあった記憶を思い出す。自分が共に戦った、戦友の名前を思い出せたのだ。

 

「まさか、あの男の子は”神田流”を継いでるの!?」

 

『ええ、そうよ。それでいて愛里寿の隣に居る。基本的に砲手をしてるけど、あの子は弟子として全ての技術を詰め込まれている。つまりは……分かるわね?』

 

「どのポジションであろうと、こなす事ができる……そんな、まだ十二歳の男の子が!?」

 

『ええ、そうね。元々才能があったのでしょう。それにゆりっぺ曰く、自分の技術をしっかりと伝えた。熱心に覚えようと、努力を繰り返したとも言ってたわ』

 

「なるほどね……」

 

 それならば合点はいく。ゆりっぺの息子なら、あれほど戦車道が上手くなる訳だ。そしてゆりっぺは常々私達に、”男の戦車道”の価値を話していた。だからこそ読めた。彼女達はなにかしようとしている。

 

『そこで、しぽりん。貴方にも言っておきたい事があるの』

 

「……何かしら」

 

 ちよきちは珍しく、真面目でかつ真剣な声色だ。きっと重大な内容が含まれている。だからこそ、彼女が言う事にしっかり耳を傾け、その真意を確かめることにした。

 

『私は、近いうちにゆりっぺと共に戦車道連盟に、革命を起こすつもりよ。しぽりんにも参加して欲しいの』

 

 その言葉を聞いた途端、私の中であの時の事を思い出した。そして同時に、笑みを浮かべただろう。何故なら。

 

 ”面白そうじゃない。それ__”

 

 

 

■■■

 

 

 

 夏休み。僕と愛里寿は島田流の本拠地である場所に、二人で帰郷していた。僕としては幼い頃全国を転々としていたから、腰を落ちつけた此処は故郷みたいなものだ。

 

「それにしても愛里寿。実家に戻ってくるのは久しぶりだね」

 

「……うん、そうだね。大学に行ってからは、なかなか戻ってなかった」

 

 今日の愛里寿の顔は、何故か優れない。何かあったのかとは思うものの、なかなか聞き出せずにいた。何かあるのかそれとも。そんな事を考えているうちに、いつの間にか島田家に着いていた。愛里寿が鍵を開けて、二人で扉の中に入ると靴を脱ぎ、相変わらず大きい家だなーと思う廊下を歩く。

 

「とりあえず千代さんは、まだ仕事かな?」

 

「……分からない。お母さんは多分、今日は家に居るかもしれないけど」

 

「そうなの? んー、愛里寿が言うならそうかもね」

 

 とりあえず僕は、久しぶりの休息に心を休ませようと思った。愛里寿と一緒になにかやろうかな?とも思う為に、ゲームなどのハードが動くか確かめようかなと思えば、自分の部屋に向かおうとした時だ。

 

「……だめ、裕翔。行かないで」

 

「愛里寿?」

 

 急に愛里寿が僕の腕を掴む。そして、強く抱きついてきている。今日は本当にどうしたんだろうと、首を傾げてみたけど答えは出ない。一体何が愛里寿をここまでさせるのか、僕には全く分からない。でも、多分千代さんは知ってるんだろうなぁ。

 

「あら、裕翔君。愛里寿。もう帰っていたのね」

 

「あ、お母さん……」

 

「千代さん、ただいま戻りました」

 

 そんな事を考えているからなのか、千代さんは僕の前に現れた。そして何時もより、険しい表情にも見える。きっと何かがあった事はすぐに分かった。愛里寿は、僕の腕を抱きしめる力を強くする。これは、僕も腹を括るべきだろう。

 

「とりあえずこの後は、愛里寿も大事な話があるんだけど、裕翔君は大丈夫?」

 

「……裕翔」

 

 愛里寿は僕の腕を離さない。ここまで弱々しい愛里寿は久しぶりだ。だからこそ決めた。多分この後にある”話”とやらに、ついて行くことを。

 

「千代さん。僕も行きます。それでいいですか?」

 

「……裕翔君」

 

 多分、愛里寿に関わることだからこそ、自分で解決したいという意思がある千代さんの気持ちは、とてもよく分かる。だからこそ僕は、一人で抱え込むなという意思を込めたつもりだ。千代さんは、それについて何を言おうか迷っている筈だから、僕の腕を離さない愛里寿を見ながら、もう一つ押してみる事にした。

 

「一応これでも、僕は愛里寿専属の砲手です。男で戦車道をやっているのは、戦車道関連の人からしたら、疎ましいかもしれません。が、逆に言えばそれ関連なら、実力を見せればいい。”戦車道をやる人間なら戦車道で語れ。”ですよね? まあ、愛里寿の付き人だから、こう言えるんですけど」

 

「……裕翔君」

 

 千代さんは、呆気にとられたという表情をしつつも、真剣な瞳で僕を見る。”戦車道をやる人間なら戦車道で語れ。”これは、僕の母さんが、よく使っている言葉だ。簡単に言えば、戦車道をやっている人間がいざこざを起こす時、自分には戦車道という武芸があるのだから、それで決めなさい。との事だ。でも、母さんの場合は大抵かなう人が居ないし、強権みたいなものだと思っているのは、内緒にしている。まあ、それを使う僕も僕だが。

 

「……それなら、あとでその話が始まる時に、一緒に来てもいいわ。愛里寿も安心するでしょうし。と言っても、もうすぐだけど」

 

「分かりました」

 

「裕翔……」

 

 とりあえず、不安そうな顔をしている愛里寿を撫でれば、ここ一番の大立ち回りをどう動くか、脳内でシュミレートする。考えられる要素は何か。何が愛里寿を苦しめるのか。僕にできることは。それら全ての可能性がある事を、僕は理解している。そのうえで、今度の敵についても考える。そうだ、僕は母さんのような推察力を受け継いでるんだ。だからこそ、僕は愛里寿の為にもそれを全力で使う。何をすれば、愛里寿と千代さんを助けられるか考えるんだ。

 

「それじゃあ用意だけしましょうか。裕翔君。正装は今ある?」

 

「一応フォーマルスーツなら。それが必要なんですね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「では、一旦自分の部屋で着替えてきます」

 

 とりあえず念の為に持ってきていた正装が、こんな時に役に立つなんて思わなかった。けど、あるならあるだけで重畳だ。愛里寿を助けるためなら、それに着替えるくらいは容易だろう。とりあえず僕は、部屋に向かうことにした。が。

 

「私も行く」

 

「あのー、愛里寿?」

 

「大丈夫、昔なら見てた」

 

「いやあの、そうじゃなくてね?」

 

 そんな僕の着替えにも、愛里寿はついてきたいと言っている。今日の愛里寿はやっぱり変だから、どうすればいいかなとは思っている。受け入れてもいいが、年頃の男女が二人で密室で着替え。とか、物語の中の出来事だ。いやまぁ、たしかに昔はしてたけど。倫理的にも良くないだろう。だから、僕としてはそれは良しと言えない訳なのだが。ただ、今日の愛里寿は何かが変だ。この状態の愛里寿を放っておくのも、なにか危険な気がする。それならば。

 

「はぁ、分かった。着いてきていいよ」

 

「……やったっ」

 

「あらあら。ふふ」

 

「っ、行くよ!」

 

 愛里寿はなんとなく嬉しそうにしているし、千代さんの暖かい眼差しがなんとも恥ずかしい。とりあえずその恥ずかしさから逃げるためにも、僕は愛里寿の手を引いて自分の部屋に向かっていく。自分にもそういう部分が残っていたのは、喜ぶべきかそうでないかはわからない。

 そうして、部屋まで歩いていくと扉を開けて入る。いつもと変わらない、島田家での僕の部屋だ。いつもと変わらない様子で、少し安心する。

 

「んー、やっぱりいつもの僕の部屋だ」

 

「そうだね。裕翔と私が一緒に遊んだ部屋」

 

 母さんが島田家に僕を預けたのは、千代さんと二人で話したから。と僕は聞いている。なんでも、僕が愛里寿の隣にって言った時に、母さんは僕に戦車道の事を教えつつ、愛里寿とのコンビネーションを強化する目的で、僕を島田家に預ける事を決めたとか。父さんも父さんで、僕に整備の経験を積ませながら技術を教えるのは、島田家が適切だと思ったとか。だから、こうして部屋がある。

 

「それじゃあ着替えるから、愛里寿。少し別な方向いてて」

 

「分かった」

 

 着替える時間はそんなにかからない。フォーマルスーツに関しては、着るのになれてしまったからだ。島田家のパーティーに出席する時は、基本的フォーマルスーツだったから。

 

「……ねぇ、裕翔」

 

「ん?」

 

 いつものように早着替えしていると、愛里寿は声をかけてくる。どうしたのかな。と思ったりするが、まずは言葉を待つ。

 

「……大丈夫、かな? この後」

 

 いつになく声は震えている。愛里寿はいくら天才と呼ばれようと、少女であることには変わりがない。だからこそ、僕は。

 

「大丈夫だよ、愛里寿。僕も居るんだからさ」

 

「……ん、ふふ」

 

 着替え終わると同時に、いつものように愛里寿の頭を撫でる。信頼してくれているのも知っているし、僕も少しばかり頑張らないといけないな。今回何が起こるか。とか、誰かがいるならどんな人か。とかは知らないけど、僕は愛里寿の為に戦うだけだ。

 

「それじゃあ、行こうか愛里寿」

 

「うん、分かった」

 

 着替えたからには千代さんのところに戻る。愛里寿の手を引いて廊下を歩くと、応接室の前に千代さんが立っていた。

 

「それじゃあ裕翔君。覚悟は良い?」

 

「今更聞き直すことじゃないですよ。千代さん。僕は何時でも良いですよ」

 

「ふふ、頼もしいわね。……愛里寿は良い?」

 

「……裕翔と、一緒なら」

 

「分かったわ。それじゃあ行きましょう」

 

 千代さんが扉を開けると、その先にはそれなりに歳をとっている五十代近くの男と、付き人らしき女性が居た。

 

「ほう、ようやく来たか。島田の娘は。それと、羽虫も居るようだが、な」

 

 男は偉そうな態度を見せながら、僕達を見る。とくに、愛里寿をじっくりと観察するように見ているのを感じると、僕の中でスイッチが切り替わる音が響いて__




■【後書きのコーナー】■



愛里寿「……作者」

suryu-「は、はい。なんでせう?」

愛里寿「イチャイチャがなんでないの」

suryu-「そ、そう言われましても、愛里寿さん……作者さんはこれでも頑張ってるです事よ?」

愛里寿「でも、これ。恋愛もの。イチャイチャ足りない」

裕翔「あ、あはは……これは大変な事になりそうだね」

suryu-「だ、大丈夫ですから。ちゃんと今後ありますから、安心してください。ね?」

愛里寿「……」

裕翔「そ、それでは次回も閲覧なさって下さると幸いです!」

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