この話を書き始めてから、だいぶ前より愛里寿を好きになったのですが、しかしまあなかなかイチャイチャが書けないところ。本当はもっとイチャイチャ書きたいのにシリアスしちゃうんです。誰かいい方法知らないでしょうか……
そんな感じですが、今回も閲覧なさってくださると幸いです!
「それじゃあ話をしようか、島田流家元」
「……ええ、そうしましょう」
私、島田愛里寿は現在政略結婚の縁談を、裕翔と共に乗り越えようとしていた。お母さんは相手らしき人と話をするみたいだけど、とても乗り気ではなさそう。裕翔はまだ、沈黙を貫いているみたいだけど。実際、私も乗り気な訳がない。
「それで、縁談の話は戦車道連盟が持ちかけたと言うのに、なぜ了承しない。家元」
「お言葉ですが、戦車道連盟の重役である貴方の意思はともかく、愛里寿の意見を聞いていませんので」
「だから今日連れてきたのだろう? なぜか羽虫も居るがな」
羽虫って、多分裕翔の事なんだと思う。それに対して怒りは湧くけど何か言うのは怖い。いくら普段戦車道で、大人相手に指示を出していたとしてもだ。何をされるか分からないのは、とても読めなくて嫌だ。
「愛里寿には愛里寿の意思がある。そう思わないのですか?」
「ふん、政略結婚などよくある事であろう。家元の娘ならば尚更だ。それを理解してない。などと言わせるのか?」
「嫌がる相手と結婚するなんて、そんな真似はできませんわ」
「何? ワシとの結婚が嫌だと?」
お母さんの言葉を受けると、この大人の人が私に視線を向ける。怖い。そしてジリジリと近づいて、なにかしようとしているのは分かる。
「言え、娘。ワシとの結婚が嫌か?」
「わ、私は……」
「言うのだ」
怖い。怖い……! 何をされるか分からない。お母さんが止めようとするけど、男女の力の差がある事を分かっているのか、上手く動けないでいる。どうしよう、どうしよう!
「止まってくださいな」
「……何?」
その時だった。いつの間にか扇子を持った裕翔が、あの人相手に扇子を突きつけて、鋭い眼光で睨んでいた。裕翔は、私の前に立って庇うようにしている。大人の人も、睨み返している。
「愛里寿が怖がっているじゃないですか。そんな状態で聞くのは、脅迫みたいなものですね。大人のする事ではないと思われますが」
「……羽虫が言いよるわ。で、なんだ? 貴様はワシの納得する答えを出せるのか?」
「ええ、出せますとも」
お母さんも私も動けない。この大人の人が何をするか分からないからだ。そんな中裕翔は、扇子をポケットの中にしまうとやれやれと首を振る。
「どうやら貴方にはこの情報が行き届いてないんですね。愛里寿は既に婚約者が居るんですよ」
「……なんだと?」
「!」
お母さんは、裕翔が何を言うか分かっているみたい。私は裕翔が何をするのかは全く分からないし、どうすればいいかも分からない。婚約者は居るって、私そんな話し聞いた事……
「羽虫。言ってみろ。貴様の言う婚約者とは何者か」
「それは勿論……私ですよ」
「っ!?」
瞬間、私は驚きに飲み込まれた。私はお母さんから、縁談を持ち込まれたとしか聞いてないし、裕翔はそれを知らないと言っていた。じゃあまさか、これは。
「ほう、羽虫。貴様が島田家の娘の……」
「ええ、そうです。私。神田裕翔が島田愛里寿の婚約者なのです」
「……神田? ……ふむ」
裕翔の名前を聞いた途端に、大人の人が何も言わなくなった。何かを考えているかのような、そんな仕草を見せる。もしかして。
「……良かろう。ならば羽虫。貴様、ワシの納得する力を見せてみろ。貴様は何が得意だ?」
「それは勿論、戦車道ですよ」
その戦車道という言葉を聞いた途端、大人の人は初めて挑戦的な笑みを見せる。裕翔を見て面白いものを見たと言うような、期待するかのような。……期待?
「なるほど、貴様が噂の”軍神”の息子か。このワシ。花田源三の目に叶うか見せてみろ。貴様が島田家の娘に似合うか、テストする」
「テスト、ですか。ふふ、望むところですよ」
そしてそのまま裕翔は、あの人の言う通りテストを受ける事にした。裕翔は、本当に私の事をどう思ってるんだろう。こんな事まで引き受けて。私は。私は__
「明後日だ。明後日、ワシの用意したチームと貴様のチームで戦え。ただし、島田の娘には頼るな。いいな?」
「ええ、分かりました」
それだけ残すと、付き人の女性が頭を下げて、二人で出ていく。裕翔の顔は、珍しく熱いものになっていた。
■■■
「……裕翔君。ごめんなさいね、こんな役目を背負わせてしまって」
「良いんですよ、千代さん。これは僕がやりたかった事ですから」
あの後、千代さんと僕は二人きりになった。千代さんは僕の目の前で頭を下げる。本当に僕のやりたかった事だから、頭をさげられる程の事じゃないと思うんだけどね。まあ、とりあえずこれで何とかできそうだ。僕はいくらか引っかかる事もあるけど、愛里寿の婚姻は僕が勝てば暫くは来ないはずだ。まあ、愛里寿を縛るみたいで良い策略ではないんだけどね。
「それで裕翔君は、本当にこれで良かったの?」
「ええ、僕の望んた事ですから。愛里寿が縛られてしまうのは、良いとは思えません。ですが、あの爺に愛里寿をやる訳にはいかないので。ま、気になる事は幾つかははありますが」
「縛られるって……」
「僕が婚約者と発表されたら、愛里寿がその事実に縛られてしまうでしょう。僕みたいなのより良い人は、他に沢山居るし」
「……そうね」
千代さんは何か言いたそうだが、言えないような顔をしていた。まあ、千代さんからしたら僕達子供には、重いものを背負わせたくないという意図があるだろう。相変わらず優しいのは、とても分かるんだけれどもね。
「まあ、僕が愛里寿を守る手段として選んだだけですから。さーて、アズミさんとメグミさんとルミさん。そして結衣さんや、他のメンバーたちにも声をかけるか。愛里寿には頼れなくとも、心強い味方が居るからね」
そのままメンバー達に、僕はメールを送信する。副官の中で僕を除きリーダー格の、メグミさんは直ぐにOKが来た。アズミさんとルミさんもOKを出した。結衣さんも近くに居るし、すぐに行くと答えてくれた。僕の乗る戦車は恐らくA41センチュリオン。メグミさん達は多分いつものM26パーシングだ。
「さて、久しぶりに他の人相手の戦車道。今回は僕が隊長、か。なら楽しむしかないよね」
「裕翔君。一応聞くけど隊長なんてできるの?」
「できますよ、千代さん。……僕は母さんの技術を、きっちり受け継いでるので」
さて、どんな勝負になるかは分からないけど、やるとしますか。”砲手をやりながら隊長”だなんて、なかなかにやりがいあるよね。事の発端はよくないけれど、またとない機会を楽しまないわけには行かないでしょ!
【発信者:メグミ】
OK裕翔。私たちも手伝うわ。
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【発信者:アズミ】
隊長のために戦う。熱いわね!
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【発信者:ルミ】
裕翔君。了解。隊長の為に、
頑張るね。
______________
【発信者:結衣】
師匠の頼みならドンと来い!
私も頑張りますよ!
______________
こんなメールを貰ったんだ。ひと暴れしなきゃならないよね。そんな訳だから、僕も久しぶりにテンション上げていこうかな。ってね!
「花田源三の偏屈さは随一で、同じ上役でも扱いが難しいって聞くのに……ふふ、裕翔君ならやってくれそうって思えるのよね」
「ん、どうしたんですか? 千代さん」
「いえ、なんでもないわ」
気になることを言ってた気もするけど、まあいいや。とりあえず明後日の試合は、とても楽しみだ。どんな風になるかなってね!
■■■
そして、試合当日になった今日。今僕は副隊長組と結衣さんの五人で、試合開始前のブリーフィングタイムで協議していた。具体的には僕の指示が出た時、どのような動きをするか。とか、相手に対する本命の作戦とか。
「で、相手に西住流らしき人がいるのは本当なの? アズミさん」
「ええ、そうね。裕翔君。まあ幸い技術はそこまで高くないみたいだけど。ね、メグミ」
「多分それなりの部隊を用意して、様子を見たいってところかしら。ルミの意見は?」
「まぁ、やっぱり相手の司令塔は潰したい。かな。それだけで有利になるし」
「なるほど……」
ルミさんの意見は、確かにと思うところがある。どれ程の実力か分からない時は、司令塔から潰しておくとあとが楽だろう。ただ、問題はどうやって潰すか。そこについてを考えていると、結衣さんが手を挙げた。
「闇討ちなんていかがでしょう!」
「闇討ち……それだ!」
実は今回のフィールドは、森に面していて死角がとても多いと言うことから、闇討ちが正解択だと思われる。勿論相手が西住流だし上手くできるかはわからないが、考えた結果はゴーサイン。相手の技術が高くないという事ならば、闇討ちの確率は上がる。
「よし、作戦ができた。部隊コードはいつも通りスカルリーダー。スカル1。スカル2。スカル3でいこう」
「了解、裕翔っ。任せなさい!」
「分かったわ、裕翔君!」
「裕翔君。了解だよ」
「頑張って運転しますね!」
「では。各自戦車に乗り込め!」
”了解っ”
そのまま僕達は戦車に乗っていく。いつも通りインカムを装着して、結衣さんの方を見る。準備OKのグッドサインをだしてくれた。僕のポジションは砲手兼”司令塔”だ。
「それじゃあ全車両。Panzer vor! 第一段階! 僕がおって指示を出す! まずは三両で敵を誘き寄せて! スカルリーダーは、先程の作戦通りに動く!」
《I copy! ”隊長”、勝つわよ!》
《I copy。派手に行こうじゃない、”隊長”!》
《I copyっ。”隊長”、楽しく行くよ!》
メグミさん。アズミさん。ルミさんの順でいつものように答えてくれた。そのまま僕達の試合は動き出す。僕の読み通りなら、今向かわせた三両が必ず敵と、鉢合わせすることになる。そして数分後。その読みは当たった。
《スカル1 隊長の言う通り、しっかり敵とあったわ!》
《スカル2。このまま応戦に入りつつ引きつけるわ!》
《スカル3同じく。スカルリーダー。闇討ちよろしくっ》
「I copy! それじゃあロックと行こうじゃないか!」
「師匠、まもなく敵の後ろにつきます。砲撃準備を!」
そのまま僕は三人と違うルートを進んで、そのまま結衣さんの運転で敵陣後ろに現れる。そして見つけた敵の司令塔を見ると、僕は相手が見えない位置からゆっくりと砲身を向ける。そして狙いを定めてから、砲撃を行う事にした。
「狙い目は装甲の薄い部分……狙って外さず勝負しろ……」
その言葉を呟いて息を吐く。狙撃する時に自分を落ち着かせる、ルーティンになっているからだ。そしてしっかり狙った後は、撃つだけだ。
「……ここだ!」
そして砲弾が相手司令塔に当たる。ここからは僕らの独壇場だ。部隊の動きの指示は、作戦コードとして教えておいた。ここからは圧倒する。口調を変えろ。荒々しくなれ。統率を取れ。そして__
「スカルリーダーより各車両へ! これよりスカルリーダーの車長兼砲手の僕……いや。俺の呼称はボスだ! 派手に行くぞお前達! 全車両。PLANET DANCE!」
”勝て!”
《I copy! OKよボス!》
《I copy。気分はマクロスFね!》
《I copyっ。殲滅だねっ》
「結衣、俺には影響ないから、派手に暴れろよ! ドラテク見せてやれ!」
「了解です師匠! 飛ばしていきますよ!」
■■■
「まさか、ここまで圧倒されるとはな。……レベルもそれなりのものを揃えたが。あの羽虫……いや、神田の坊主はやりよるわ」
ワシ。花田源三は別に馬鹿ではない。島田家の娘と政略結婚は、確かに自分には美味しい話だ。だが、嫌がる娘と結婚した所で長くは続かないし、なにより周りからの反応が良いとは思えない。そして、あの縁談の場所についてきたあの少年は、何も出来ない羽虫と当初は思っていた。だが、あの少年は自分を犠牲にしてまで、島田家の娘を救おうとしている。名前を聞いて気づいたが、戦車道の強さも”噂通り”だ。島田流とは違うものを持ってるからこそ、”西住流”の末端も完全に読み違えた。
「あの坊主。放っておくには惜しいな。男の戦車道、か。……ワシも昔は夢見たものだ。おかげで自衛隊にも行って戦車に乗ったくらいだしな」
だからこそ、あの少年は島田家の娘の隣に居る事こそが、幸せなのだろう。さて、どのような褒美をやろうか、考えておく事にしようか。こうしている間に試合は終わる。あの坊主のチームが、”一両も落とされず”試合に勝つのだからな。
「ふ、戦車道もかなり変わりそうだな」
この風がどう動いてくるかは、ワシにはまだ分からん。だが、面白そうだとは思えるな。なぜなら__
■【後書きのコーナー】■
愛里寿「そういえば裕翔って戦車道を、どれくらいの頃から見ていたの?」
裕翔「んー、はっきりとは覚えてないかな。愛里寿と出会う少し前な気もするけど」
愛里寿「なるほど。西住流とかしっかり知ってたもんね」
裕翔「最初はかなり興味は無かったんだけど、母さんが連れ歩いてね。で、愛里寿と会ってそこからかな」
愛里寿「……ふふ」
裕翔「とりあえず時間だね。それじゃあ次回も閲覧なさって下さると幸いです!」
愛里寿「感想も、お待ちしてます」