FGO SS集   作:ko6ske

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「全て終わったマスター(男性)が、普通の生活に戻る」を題材に書かせていただいた作品です


かけがえのない世界

 タタンタタンと、音が聞こえる。

 ガタンガタンと、地面が揺れる。

 

 ふと視線を上げれば、狭い箱の中に、沢山の人が居た。

 席に座り、手に持った薄い板を、無表情で眺める人達。

 立ったまま、片手で持った薄い板を、無表情で眺める人達。

 薄い板を横にして、指先で画面を触る人達。

 イヤホンを刺し、音漏れを気にせずに音楽を聞く人達。

 友達同士だろうか、学校や友達、流行について楽しそうに喋る子達。

 上司と部下だろうか、仕事や取引先、愚痴をこぼす上司と、軽い笑顔を浮かべながら受け止める部下。

 

 タタンタタン。ガタンガタン。

 

 平和な世界。誰も次の敵や過去の戦い。失われた未来の話をしない。

 平和な世界。誰も死なず、誰も殺さず、明日という未来が約束された世界。

 平和な世界。ハチャメチャな世界に飛ばされることも無く、メチャクチャなオーダーをされることもない世界。

 

 タタンタタン。タタンタタン。

 

「どうしたんだい。そんな顔をして」

「……夢を見てたんだ」

「夢?どんな夢だい?」

「普通の、魔術なんて絵空事の話で、人理焼却も、人理修復も、何かのゲームのお話で、笑ったり泣いたりしながらも、至って平凡な学生として、至って平凡な社会人として過ごす夢。平和な世界で、平凡に過ごす夢」

「それを、その夢を、君はどう思ったんだい?」

「とてもつまらない。つまらないけど……かけがいのない世界だなって。そう思ったんだ」

「……そっか。それは良かった」

「良かった?」

「うん。だって」

 

 

「君が守ったこの世界は。私達と守ったこの世界は。かけがいのない世界だからさ。マスター君」

 

 

 ガタンガタン。タタンタタン。

 目を開けると、変わらない世界が広がっていた。

 席に座り、手に持った薄い板を、無表情で眺める人達。

 立ったまま、片手で持った薄い板を、無表情で眺める人達。

 薄い板を横にして、指先で画面を触る人達。

 イヤホンを刺し、音漏れを気にせずに音楽を聞く人達。

 友達同士だろうか、学校や友達、流行について楽しそうに喋る子達。

 上司と部下だろうか、仕事や取引先、愚痴をこぼす上司と、軽い笑顔を浮かべながら受け止める部下。

 

 タタンタタン……タタンタタン……

 沢山の人達を詰めた箱は、次の駅に止まるために、徐々に速度を落としていく。

 次の駅で降りるために準備をしながら、ふと、右手の甲に目線が行く。

 少しだけ傷痕が残る、肌色の手の甲に。

 それに少しだけ寂しさを覚えながらも、すぐに視線を前に向ける。

 

いってきます(いってらっしゃい)

 

 小さく呟いた声に、誰かが答えてくれた気がした。

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