タタンタタンと、音が聞こえる。
ガタンガタンと、地面が揺れる。
ふと視線を上げれば、狭い箱の中に、沢山の人が居た。
席に座り、手に持った薄い板を、無表情で眺める人達。
立ったまま、片手で持った薄い板を、無表情で眺める人達。
薄い板を横にして、指先で画面を触る人達。
イヤホンを刺し、音漏れを気にせずに音楽を聞く人達。
友達同士だろうか、学校や友達、流行について楽しそうに喋る子達。
上司と部下だろうか、仕事や取引先、愚痴をこぼす上司と、軽い笑顔を浮かべながら受け止める部下。
タタンタタン。ガタンガタン。
平和な世界。誰も次の敵や過去の戦い。失われた未来の話をしない。
平和な世界。誰も死なず、誰も殺さず、明日という未来が約束された世界。
平和な世界。ハチャメチャな世界に飛ばされることも無く、メチャクチャなオーダーをされることもない世界。
タタンタタン。タタンタタン。
「どうしたんだい。そんな顔をして」
「……夢を見てたんだ」
「夢?どんな夢だい?」
「普通の、魔術なんて絵空事の話で、人理焼却も、人理修復も、何かのゲームのお話で、笑ったり泣いたりしながらも、至って平凡な学生として、至って平凡な社会人として過ごす夢。平和な世界で、平凡に過ごす夢」
「それを、その夢を、君はどう思ったんだい?」
「とてもつまらない。つまらないけど……かけがいのない世界だなって。そう思ったんだ」
「……そっか。それは良かった」
「良かった?」
「うん。だって」
「君が守ったこの世界は。私達と守ったこの世界は。かけがいのない世界だからさ。マスター君」
ガタンガタン。タタンタタン。
目を開けると、変わらない世界が広がっていた。
席に座り、手に持った薄い板を、無表情で眺める人達。
立ったまま、片手で持った薄い板を、無表情で眺める人達。
薄い板を横にして、指先で画面を触る人達。
イヤホンを刺し、音漏れを気にせずに音楽を聞く人達。
友達同士だろうか、学校や友達、流行について楽しそうに喋る子達。
上司と部下だろうか、仕事や取引先、愚痴をこぼす上司と、軽い笑顔を浮かべながら受け止める部下。
タタンタタン……タタンタタン……
沢山の人達を詰めた箱は、次の駅に止まるために、徐々に速度を落としていく。
次の駅で降りるために準備をしながら、ふと、右手の甲に目線が行く。
少しだけ傷痕が残る、肌色の手の甲に。
それに少しだけ寂しさを覚えながらも、すぐに視線を前に向ける。
「
小さく呟いた声に、誰かが答えてくれた気がした。