『キスをしないと出られない部屋! 製作者:ダ・ヴィンチちゃん』
部屋に居るのは3人。1人はカルデアのマスターであるぐだ男。そして残りの2人は、
「あらあら、困りましたね?マスター?」
1人は金髪の長髪を揺らし、その豊満な胸で、ぐだ男の腕を柔らかく包み込む、大人の雰囲気が漂う、女性のサーヴァント。
「うん。とっても困ったね。マスター?」
もう1人は小さな身体をぐだ男の腕に絡め、自分の物だとマーキングする子犬のように擦り寄せる、子供みたいな銀髪のサーヴァント。
「わたしと」
「僕の」
「どっちにキスしてくれるのかしら?」
「どっちにキスしてくれるの?」
2人。アン・ボニーとメアリー・リードは、少しイジワルそうに笑いながら、真っ赤な顔をしたぐだ男を見上げて尋ねる。
選べない。どちらか1人だけは選べない。
それが、マスターであるぐだ男の答えだった。
「……マスターらしいと言えばマスターらしいですわね」
「優しいんだね。マスター」
母親のような優しい笑顔を見せながら、ぐだ男の腕を絡めていた胸と身体を離す2人。両腕に感じていた2人の柔らかさとぬくもりが離れ、ホッと安心したと同時、もったいない事をしたと、少し惜しい気持ちになるぐだ男。
「ですが、キスをしないと出られないですわね」
「だったら、やることは1つだね」
ぐだ男から離れた2人は、いつもの定位置。互いに隣り合わせになったと思うと、背の高いアンは少し腰を屈め、背の低いメアリーは軽く背伸びをした。
「んっ……」
「う……んっ……」
必然的に重なり合う唇。キス。女性同士の、キス。
『マスターと』『ぐだ男と』と書かれていないためか、部屋の解錠の条件は一応達成されたらしく、カチャリと軽い音が扉から聞こえた。
しかし2人の唇は離れる所か、更に深く、舌同士を絡み合うディープキスにまで発展していた。
「ん……っちゅ……」
「はぁ……ん……」
いつの間にか、腰を軽く屈めていたアンは膝を着き、爪先を伸ばしていたメアリーの足は地面に着いている。唇は離れても、互いの舌は絶対に離れない。息の合った2人のコンビネーションキス。誰かが入る余地など、毛の先ほどの余裕も無い。
ごくり。
と、ぐだ男が喉を鳴らすと、2人の口元で繰り広げられる淫らなダンスが止まり、離れないと思っていた舌はあっさりと離れてしまう。2人の口元を繋いでいた一筋の橋は、蛍光灯の光を浴びて銀色に輝き、あっさりと消える。
「マスターもしたい……ですか?」
「ここでは恥ずかしいから……その……部屋で待ってるね?」
キスの余韻なのか、それとも……
頬は朱色に染まり、少し乱れた吐息をつきながら、2人は部屋から出ていってしまう。
ぐだ男は腰に手を当てながら、男の大事な物が落ち着くまで、一歩も動けなかった。
後日談
「『あれからマスターは来たのか』。ですか?」
「結果だけ言うなら、来なかったよ」
「どうやらあの部屋はキスをした人しか出られない仕組みだったらしくて、独りになったマスターは1日経ってやっと出られたらしいですわ」
「まぁ、それくらい予想してたけどね」
「……え?『もし部屋に来たらどうしていたか』ですか?」
「それは」
「『内緒』ですわ」
「『内緒』だよ」