ガタノゾーア in FGO   作:深淵を泳ぐもの

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第二特異点:永続狂気帝国
狂える者


オルガマリーがエミヤを召喚してから数日がたったある日、新たな特異点が見つかったと言われた2人はサーヴァント全員を連れては行けないので、誰を待機させるかを話し合っていた。フランスでサーヴァントを召喚した時点でギリギリだった為、2人ほど待機させなければいけないのだが、ガタノゾーア曰く、ジャンヌ・オルタは向こうについてから呼び出せるとの事なので、それを信じて、ジャンヌ・オルタは確実としてもう1人誰を待機させるかの話し合いである。

 

話し合いの結果、今回はセイバー・リリィを待機させる事にした。本人的にも異論はないとの事で、カルデアにセイバー・リリィとガタノゾーアが後で召喚出来るらしいジャンヌ・オルタを残し立香達は第2の特異点、ローマへとレイシフトを行なった。

 

 

ロマ二曰く、ローマの首都にレイシフト先を設定したらしいが、立香達がいたのは丘陵地であった。なにかの妨害でもあったのだろうか。まあ、場所は違えど時代は同じらしいから、歩いていけば首都にはいずれつくだろう。

 

「この時代にも、『アレ』はあるんですね」

 

空を見上げて、そう言うマシュの目線の先にはフランスにもあった光の輪。今のところ謎しかないらしいが、調査は続けていくらしい。わからない事は仕方ないので、早速立香はガタノゾーアにどうやってジャンヌ・オルタを召喚する気なんだと聞いてみた。

 

「ああ、オルタの中にいる存在を呼び出す応用の様なものだ。離れていろ、下手すれば燃えるぞ?」

 

そう言って、触手で地面を削り、魔法陣を書き始めるガタノゾーア。完全に書き上げた後、立香達は知らないが何時ぞやと同じように呪文を唱える。みるみる内に、魔法陣が赤い光を放ち始め、

 

「来い。ジャンヌ・オルタ(クトゥグア)

 

ガタノゾーアがそう告げると、魔法陣を中心に火柱が立ち上がった。その中から、火柱を腕で払って搔き消しながら、ジャンヌ・オルタが現れた。

 

「成る程、これが召喚されるって感覚なのね。なかなか面白い体験だったわ」

 

炎の精を引き連れながら現れたジャンヌ・オルタはそう言う。カルデアの面子は、数日前に炎の精は見ているので耐性があるが、ローマの住人は確実に耐性はないであろうから、見えないようにしといてと立香に言われ渋々従うジャンヌ・オルタ。オルガマリーはオルガマリーで、今の召喚の仕方には文句しかなかった。あんなのを見られたら、どう考えても敵対されて誤解を解くのに要らぬ時間を食ってしまうかもしれない。下手すれば戦闘ものだ。

 

「今後、やらないでちょうだいね?」

 

「ふむ、善処しよう」

 

「そこは了承して欲しかったんだけど、拒否されるよりはマシね」

 

この辺りで、新入りのエミヤはガタノゾーアが何者なのか大凡見当がついたが、立香には言わないでおいた。というのも、ダ・ヴィンチからわかってもマシュと立香には言わないでねと釘を刺されていたからである。となると、とミゼーアの方をちらりと見るエミヤ。その視線に気づいたミゼーアは、ニッコリと微笑んで見せる。危なく魅了されかかけるが、頭を振って回避。

 

「な、なあマスター。気づいているかね?近くで戦闘の音がする」

 

これ以上何かされないためにも、エミヤは自身のマスター、オルガマリーに話しかけた。先程から確かに戦闘音が聞こえている。それも音からしてそれなりに規模が大きい。この時代のローマにそんなことが起こったという話はない為、これが歴史の異常だろう。先の火柱が上がった時は一瞬止んだが、また再開したようだ。

 

「エミヤ、ここから見える?」

 

「生憎、丘の向こうのようでね。私の目は良いが、透視ができるわけじゃない。諦めてくれ」

 

「そう。なら、音源の方に急がないとね。行くわよ、立香」

 

「あ、はい!」

 

向かった先で見えてきたのは、少数対多数の戦闘だった。両方とも意匠は違えど、『真紅と黄金』を掲げている。どちらに加勢するか、そんなのは言うまでもなかった。

 

「少数の方を助けよう。サーヴァントじゃないから、峰打ちを頼みたいんだけど……いける?」

 

「少し難しいが、やってみよう」

 

「峰打ちね。やった事ないけど、マスターの命令は出来るだけ守ってあげるよ」

 

「チッ、めんどくさいわね。敵なら燃やせば良いじゃない。燃やせば」

 

先ず、ガタノゾーア、ミゼーア、ジャンヌ・オルタがそんな風に言いながら、敵陣に突っ込んでいった。まあ、彼女らだけでも大丈夫だとは思うが、エミヤとクー・フーリン、メフィラス、マシュが後方支援に回ることにした。瞬く間に、多数側は劣勢となっていき、9割方倒し終えたあたりで、少数側にいた少女が声を発する。

 

「剣を収めよ!勝負ありだ。貴公たちの働き、眼を見張るものがあったぞ。首都からの援軍であるにせよ、そうでないにせよ、良い働きであった。褒めてつかわすぞ」

 

「えっと……貴方は?」

 

「む。余の事を知らぬとなると、どこか遠方からの使いか?まあ良い。余は、ネロ・クラウディウスである」

 

アーサー王に続き、ネロ・クラウディウスまで女性だったとは驚きではあるが、まあそう言うこともあるだろう。と言うより、もういっそのこと歴史の重要人物はみんな女だと思っておいたほうがいいかもしれない。そんな中、敵軍の大将だと思わしき男がゆっくりと姿を現す。ネロは、その男を見ると再び剣を構えた。

 

「叔父上……いや、カリギュラよ。今日こそ決着を……ん?」

 

そこで、ネロは疑問を覚えた。いつものカリギュラと様子が違うのだ。いつもならば、真っ先にネロに目を付け襲いかかってくるカリギュラが、今日に限っては全く別のところを見ていたのだ。その視線の先にいるのは、ミゼーアとガタノゾーアである。

 

「あ……ああ……」

 

怯えた様な声を出す。カリギュラに、立香達は首を傾げた。そんな中、全てを理解したミゼーアとガタノゾーアは残念そうに首を振った。

 

「あれは、気づいたな」

 

「無駄に理性なんて残すからだよ?」

 

カリギュラが怯えている理由。それは彼がサーヴァントであり、クラスが狂戦士(バーサーカー)であることが原因だった。と言っても、ただクラスがバーサーカーなだけならば問題はない。問題なのは、狂っているにも関わらず理性が多少残っている事だ。狂ったが故の本能と残してしまった理性が、カリギュラに目の前の2人の正体を理解させる。本来なら、そこで狂うことで精神は安定を図ろうとするが、そもそも狂っているのでそれも出来ず、結果彼は天敵に狙われた獲物の様に、ただ怯えるだけしか出来ない。

 

「あ……アア……アアアアア……」

 

筈だった。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️────!!!」

 

「ほう」

 

「へぇ」

 

感心したように、ミゼーアとガタノゾーアが声を上げる。そう、カリギュラは残った理性を捨て、無理矢理狂う事で怯えから抜け出したのだ。真の狂える者(バーサーカー)になったカリギュラは雄叫びを上げながら、立香達へと突っ込んでくる。本能のままに、最も脅威となるミゼーアとガタノゾーアに攻撃を仕掛けようとするも、マシュが間に割って入りその一撃を盾で受ける。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️──!」

 

「させません!」

 

「喰らいなぁ!アンサズ!!」

 

マシュが防いだ事により一瞬動きが止まったカリギュラにクー・フーリンがルーン魔術による火の玉を放つ。しかし、カリギュラは即座に後方に飛びそれを避けた。しかし、着地するよりも早くカリギュラに近づいたメフィラスが近距離でグリップビームを放ち、それが直撃したカリギュラは吹き飛んだ。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️──!!」

 

受け身を取りながら着地したカリギュラは流石にこのままだと部が悪いと判断したのか。追い討ちとばかりにエミヤが放った矢を避けながらその場から去って行った。


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