ガタノゾーア in FGO   作:深淵を泳ぐもの

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暗黒星人

カリギュラを退けたカルデア一行はネロ達に歓迎されていた。なんでも、突如として現れた連合ローマ帝国にネロ率いる現ローマ帝国は負け越してたらしい。領地は取られ、戦線も下がり続けた結果、ついに首都間際まで攻め込まれてしまったのが、先の戦いであったのだとか。立香達も見たように、あのままだと敗北濃厚で都市に攻め込まれるのも時間の問題だったので、立香達の助太刀はとても助かったとの事。

 

立香達を向かい入れ行われたちょっとした歓迎会。それは、1人の兵士がやってきた事で終わりを告げた。

 

「恐れながら皇帝陛下に申し上げます!東門にて敵の侵入を許してしまったとの事です!」

 

「なに!?何人だ!」

 

「1人との事です!居場所も既に掴んでいるとの事!」

 

「ほう。ならば、こちらから攻めるとするか。それで、何処にいる?」

 

「はい!それは……」

 

報告をしながら、ネロに近づいていた兵士はそこまで言って何故か口を閉じた。

 

「どうした?報告を続けてくれ」

 

「いや、もう言うことはない。これで俺の任務は終了だからな」

 

「は?」

 

「死ね。皇帝」

 

そう言って兵士は誰が反応するよりも早く持ち前の剣をネロの胸に突き刺した。そのままネロを蹴り飛ばし、兵士は怪しく笑みを浮かべ、高笑いをし始めた。

 

「フフフ、ハハハハハハ!邪神というのも大したことないな!」

 

「ガタノゾーア!ネロさんをお願い!」

 

「任せろ」

 

「そんな!なんでネロさんを!?」

 

「何故だと?なら、これでわかるか?」

 

兵士はそう言うと、ゆっくりとその姿が変わっていった。その姿に、メフィラスとガタノゾーアは見覚えがあった。正確にはガタノゾーアは本人がルルイエで寝ている時に意志を持った触手が外の様子を見ている時の記憶にある程度だが。

 

「ババルウ、お前か」

 

「ああ、お前メフィラスか。面白い姿だな。何故、人間の姿をしている?」

 

「それは今はいいだろう。それより、何故お前がそちら側に協力している?」

 

「俺の目的は『奴』の故郷である地球を破壊することだ。ならまずは人類を消滅させるのも一興だろう?しかし、俺としては貴様がそちらにいることが驚きだな。未だに、地球の心とやらにご熱心か?まあ、どうでも良いがな。後はこれで終わりだ」

 

ババルウ星人は両手を胸に添え、再びその姿を変えた。それは、誰もが知っている光の巨人(ウルトラマン)のように見えた。

 

『あれは、ウルトラマン!?』

 

「違いますよロマニ君。あれは……」

 

ロマニの台詞を否定し、メフィラスはあの姿がウルトラマンではないと言う。その根拠は本来のウルトラマンにはない筈のものが胸と両肩にある事だ。スターマークとウルトラブレスター。この両方を持ち、尚且つウルトラマンにそっくりな存在はメフィラスは1人しか知らない。

 

「宇宙警備隊隊長、ゾフィー」

 

「ご名答。褒美に死をくれてやる」

 

ババルウ星人は胸に添えた両腕の内、片腕だけを真っ直ぐ前に突き出した。瞬間、最強の光線が放たれる。

 

「M87────────!!」

 

迫り来るM87光線を止めるべく、マシュとエミヤが前へ出る。次いで少しでも時間を稼ぐ為、クー・フーリンが宝具の応用でエミヤ達よりも前に木の壁を作り出す。一瞬耐えたように見えた壁もすぐさま蒸発し、全く衰える事なくM87光線は立香達に襲いかかる。

 

「宝具、展開。私が守ります!」

 

「私も加勢するとしよう。I am the bone of my sword(身体は剣で出来ている)……熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

そして、光の国最強の一撃と2人の展開した盾はぶつかり合った。瞬間、エミヤの持つ盾の花弁が1つ砕け散る。

 

「グッ!」

 

「なんて威力!」

 

嘗ての黒き騎士王の一撃をも超える火力。もし、エミヤかマシュのどちらかがいなかった防げてはいなかったかもしれない。そうでなくとも、ゆっくりと盾は壊れ始めている。そんな攻防の裏で、立香にネロの事を頼まれたガタノゾーアは彼女の傷の治癒を行おうとしていた。

 

「無事……ではなさそうだな。皇帝様」

 

「ハハ……無様なところを見せてしまったな」

 

「仕方あるまい。奴の変装は()やミゼーアですら見破れぬ完璧なものだ。あれを見破れるのは光の巨人の王(ウルトラマンキング)位だ。さて、死なせるわけにはいかんのでな、傷口を見せてみろ」

 

そう言って、ガタノゾーアは服をはだけさせ傷口に触れる。当然ネロが呻き声をあげる。

 

「何を?」

 

「治癒だ。目を閉じて、本来のお前の姿を思い浮かべろ。早急にな。さもなくば死ぬぞ?」

 

「ふ、何をするのかわからぬが、良い。そなたを信じよう」

 

ガタノゾーアに言われた通り、目を閉じて何時もの自分を思い浮かべるネロ。それだけでガタノゾーアの魔術は効果を発揮する。

 

「今、妾とお前は傷口を通じて1つになっている。故に、傷ついた(トコロ)も直ぐに何時もの形像(カタチ)を取り戻す。ほら、目を開け」

 

言われた通りネロが目を開くと傷はすっかり無くなっていた。しかし、衣服についた血が先のことが嘘ではないと証明している。立ち上がり、少し動いてみるが不調は全くなかった。

 

「これは……凄いな。余の周りにも大勢の者がいたが、これ程の事が出来る奴はいなかったぞ」

 

「ヒトと妾を一緒にするな。さて、こちらはもういいぞ立香」

 

「わかった!」

 

ここまで、ジャンヌやミゼーア達でババルウ星人を攻撃しなかったのは理由があった。それは、下手に動いてネロにとどめを刺されると立香達のオーダーは終わりを告げてしまうから。だから、ネロが復活するまでエミヤとマシュに防いでもらう必要があったのだ。

 

「マシュ交代!ジャンヌ、ミゼーア!お願い!!クー・フーリンは援護を」

 

「エミヤ下がりなさい!メフィラス頼んだわよ!」

 

「漸くね。さあ、燃やしてあげるわ!」

 

「僕の目を欺いた事は褒めてあげるよ。お返しに、無残に殺してやる」

 

「木々よ、奴の動きを封じろ!」

 

「2人は正面からか。なら私は背後を取ろう」

 

炎を使い圧倒的な加速で迫るジャンヌ・オルタとほんの少しだけ魔術を解いて本来の力を引き出しそれに並走するミゼーア、瞬間移動でババルウ星人の後ろに回り込むメフィラス。三方を塞ぎ、その上クー・フーリンが召喚した樹木がその身体を拘束する。拘束した上での3人の攻撃は確実に当たるものであったが、当たる直前ババルウ星人はその場から消えた。

 

「え?」

 

それは誰の発した言葉だったか。何が起きたかわからない面々を置いて、メフィラスだけがババルウ星人のいた場所に落ちていた髪の毛を掴んだ。

 

「成る程、分身ですか」

 

「分……身?」

 

「そう、分身です。彼は髪の毛から分身を作り出せるんですよ。力量は本体と微塵も変わらない事は知っていましたが、まさか能力まで……」

 

『ババルウ星人。嘗て『赤き獅子(ウルトラマンレオ)』やウルトラ兄弟たちと戦ったって言うウルトラの国と地球を滅ぼそうとした宇宙人だったかな?メフィラス』

 

「ご名答。私と彼は昔から馬が合わなくてね。まあ、地球を破壊したい彼と侵略したい私とでは当然と言った所だが、そろそろ決着をつける事になりそうですね」

 

「その話がマジだとしたら厄介な奴が敵になったもんだ。まあ、今回の一件はそんな奴にはもってこいだもんな。しかも、そう言う事をしてくる奴ってのは総じてアサシンクラスだからな。気配遮断を持ってねえと良いんだがな」

 

アサシンのクラススキル『気配遮断』はアサシンクラスであっても持ってないサーヴァントもいる。変身能力に分身を生み出す力、その上で気配遮断など持っていたら厄介この上ない。そう考えてのクー・フーリンのこの台詞であった。

 

「東門の守備隊が心配だ。そなた達のちからをかしてくれるか?」

 

その言葉にもちろんと返し、立香たちは東門へと向かった。

 

 

東門についた立香たちの目に入ってきたのは、数多のババルウ星人と戦闘を繰り広げる守備隊の姿であった。ただ、誰がどう見ても劣勢と言えるだろう。

 

「ちょっと多すぎじゃない?」

 

「髪の毛の数だけ増えるって事の恐ろしさがわかりますね」

 

「でも、これなら思う存分暴れられるチャンスって事よね。マスターちゃん、もう峰打ちなんて言わないわよね?」

 

「うん。思いっきりやっちゃって!ただし、守備隊の人達には注意してね」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

そう言って飛び出したジャンヌ・オルタとほぼ同時にミゼーアとガタノゾーアも飛び出した。輝かしいまでの笑みを浮かべてる2人はババルウ星人の残滅に向かう。ガタノゾーアはその後ろでシャドウミストをばら撒き始めた。

 

「アハハハ!やっぱり峰打ちなんて柄じゃないわ!炎よ、我が意に従え!!」

 

「僕たちはそう言う存在だからね。まあ、運が悪かったと諦めるんだね」

 

「妾まで巻き込むな」

 

言葉どうりに炎を操って、瞬く間に半数のババルウを焼き消すジャンヌ・オルタ。魔術で耐性の無い味方には幻覚を見せつつ魔術を少し解除し、その異形の腕で薙ぎ払うミゼーア。2人の活躍とガタノゾーアの出すシャドウミストをポカンと眺める守備隊の面々。ネロは先の戦闘で多少慣れたのか興味深そうに見ている。

 

「ちょっと敵が可哀想になってきたかな?」

 

「先輩もですか?私も少しだけ……」

 

「まあ、可哀想だとは思うけど同情はしないわ」

 

「ハハハ!伝承の俺より暴れてんじゃねえか?」

 

「流石は……と言ったところか」

 

「侵略を終えたとしてもまだ壁はありそうですね」

 

その残滅タイムを見ながら感想を漏らすカルデアの面々。本来なら加勢に行くべきなのだろうが、下手に動くと巻き込まれそうなのでここは任せたと言った感じである。そして、それは最後の一体が髪の毛に戻るまで続いた。

 

「流石に本物はいないか。敵も馬鹿じゃないらしい」

 

「本物も混じっていれば楽だったんだけどなぁ」

 

「良い暴れっぷりだったぜ。次は俺も混ぜろよってお?おお!」

 

クー・フーリンの視線の先には再びのババルウ軍団。どうやらまた分身を作った様だ。先の蹂躙を見るだけだったので、すっかり火のついたクー・フーリンが今度は先陣を切って飛び出す。キャスターといえど、ケルト民族の彼にとって先の行為はお預け以外の何物でもないのだ。杖を槍のように構えて、その上でエミヤが投影した槍を持ち所謂二槍流の様に戦闘を始める。

 

「あはは……やっぱりケルトの人って血の気が多いんだね」

 

「クー・フーリンさんはその中でも特別多い方だと思いますけど」

 

「マシュ、よく考えなさい。あんな伝承持ちが血の気多くないわけないでしょう?」

 

獰猛な笑みを浮かべながら、数十体のババルウ星人とランサークラスでもないのに互角にやり合うクー・フーリン。と言っても、彼だけではその数百はいるであろうババルウ星人全員を相手取るのは難しい。が、未だ暴れたりなかったらしいジャンヌ・オルタとミゼーアは既に戦い始めている。ガタノゾーアも今回は触手を使って戦うようだ。

 

「なら、私は遠距離に徹する事にするか。マシュ、君はマスター達を守ってくれ」

 

「了解です。エミヤ先輩」

 

「ふ、良い子だ。さあ、こちらも仕掛けるとするか。偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

いつぞやの黒いアーチャーも使っていた一射が地をえぐり、着弾と同時に爆発する。流石にそれでは倒しきれないが、それを連射すれば話は別である。投影魔術を駆使し、何度も打ち込む事でババルウ星人を倒していく。しかし、倒しても倒しても分身が補充され、永遠に続くかと思われたこの戦いも、夜を迎え漸く終わりを告げた。


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