ガタノゾーア in FGO   作:深淵を泳ぐもの

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野営地へ

ババルウ軍団との戦いの翌日、まずは霊脈確保の為にエトナ山へと向かう事にしたカルデア一行。ネロはやるべきことがある為同行できなかったが、特に障害もなく目的についたのだった。が、ついてからが問題だった。自然発生したであろう死霊系の怪物が群がっていたのだ。まあ、ガタノゾーアがシャドウミストですぐさま一掃したのだが。

 

『よし、接続を確認した。しかし、先のが自然発生だったとしたら大した霊脈だね』

 

『確かにそうだね。さて、私から伝えたい事があるんだけど良いかい?』

 

「あれ、どうしたの?ダ・ヴィンチちゃん」

 

『実は、君たちがそっちで奮闘している間にこっちも色々やっていてね。ジャンヌ・オルタがそっちにいるからあんまり変わらないけど、一応レイシフトの許容人数の上限を増やせたから知らせておこうと思ってね。緊急時にリリィをそっちに送ったとしてもあと1人くらいなら召喚しても問題ないよ。なんなら、リリィを送ることもできるけど、どうする?』

 

「そうね。緊急時に誰も呼び出せないのは危険だからリリィには引き続き待機してもらうわ。やってみたいこともあるしね」

 

『了解。じゃ、引き続き頑張ってね。所長、立香ちゃん』

 

そう言って、一方的にダ・ヴィンチは通信を切ってしまった。ロマニは何か言いたそうだったが、仕方ないだろう。また後で通信すれば良いのだ。それよりも、立香はオルガマリーの言った事が気になっていた。

 

「所長、やりたいことってなんですか?」

 

「サーヴァントを召喚する際に、触媒があるとそれに所縁のある英霊が召喚されやすくなるの。それで、サーヴァントそのものを触媒にすれば良いんじゃないかと思ったのよ。と言うわけで、クー・フーリン。貴方を触媒にしたいんだけど」

 

「俺ぇ!?」

 

「そうよ。うまく行けば貴方の師匠のスカサハその妹のオイフェ、それにフェルグスなんかが召喚できるかもしれないじゃない?」

 

「いや、今の俺はその誰とも会いたくねえんだが。しかもそれって下手するとメイヴの野郎が来ちまうかも知れねえって事だろうが。嫌だぞ俺は、彼奴には会いたくねえからな」

 

「そう。なら、出ないように祈る事ね。まともに戦力になれそうなサーヴァントを召喚するにあたって、貴方が一番適任なのよ。エミヤは真っ当な英霊じゃないらしいから不安だし、メフィラスは下手するとババルウ星人みたいなのが召喚されるかもしれないし、ジャンヌやミゼーアたちはアレだし」

 

「アレってずいぶんな言い方だね」

 

「事実でしょ。で、リリィはもしかしたら円卓の騎士が喚べるかもしれないけどカルデアにいる。ほら、貴方が最適じゃない?」

 

「まあ、そりゃそうだが……はぁ、わかったよ。くれぐれもメイヴは召喚すんなよな」

 

「出ないように願ってはみるわ。じゃあ、お願いね」

 

そう言って、オルガマリーは召喚を開始する。クー・フーリンの士気の為にも、メイヴには出るなと願いながら。結果、召喚されたのは何処かクー・フーリンに似た青年だった。ただ、手には朱い槍を持っている。カルデア一行が不思議に思う中、その青年は名を名乗る。

 

「アルスターのクー・フーリンだ。クラスはランサー。ま、よろしく頼むぜ」

 

「あ?なんだ。若い時の俺じゃねえか」

 

「って事はアンタは将来の俺ってわけか。しかし、その姿はなんだ?ランサーじゃねえのか?」

 

「まあ、色々あってな。今回のクラスはキャスターって訳だ」

 

「……イジメか?」

 

「ま、俺も最初はそう思ったけどよ。キャスターはキャスターで良い時もあるぜ。まあ槍は使いたいけどな」

 

どうやら青年もクー・フーリンであったようだが、キャスターのクー・フーリンの発言を信じるならキャスターよりランサーのクー・フーリンの方が若い時代の時のクー・フーリンの様だ。とりあえず、ランサーのクー・フーリンに事情を説明する。

 

「なるほどなぁ。まあ、なんであれ戦闘は任せな。敵は噛み殺してやるからよ。知的な俺に変わってな」

 

「言うじゃねえか。若くても俺って事か。しかし、呼び方はどうする?俺もこいつもクー・フーリンだとややこしくないか?」

 

キャスターのクー・フーリンの疑問はもっともだが、ちょっと話し合った結果、召喚したマスターが違うので各自自分が召喚した方をクー・フーリンと呼び、そうではない方をクラスで呼ぶと言うことになった。やりたい事は出来たので、ここにはもう用はないため、立香達は、早急に首都ローマへと戻り、そこでネロからガリアへの遠征を行おうとしている事を聞くのだった。

 

 

当然、ガリアへの道のりは長く、ガタノゾーアが触手で襲撃を仕掛けてくる兵士達を倒しているので、無駄な体力を使っていないとは言え、それなりの疲労が、オルガマリーと立香を襲う。マシュも含めてサーヴァントはそもそも人と体力の桁が違うし、ネロや兵士達は馬に乗っているので疲れは見えないが、オルガマリーと立香は徒歩である。と言うのも、2人共々落馬しかけたため、ちょっと恐怖心が出来てしまった故に馬に乗っていないのだ。

 

『もう少しでつくから頑張ってね』

 

と言うロマニの言葉を信じ、歩き続けていると野営地が見え始めた。しかし、何を思ったのかミゼーアとガタノゾーアは何故かそこで止まってしまった。

 

「どうしたの?2人とも」

 

「多分だが、()達がここに入るとロクでもない事が起こりそうでな。それに──」

 

そこまで言って言葉を切り、馬上で頭を抑え体調が悪そうなネロを触手を使って自分の方へ引き寄せる。数秒後、ネロがいた場所を剣が通過していった。

 

「──敵は待ってはくれんだろ?」

 

その言葉をガタノゾーアが言うのと、クー・フーリン達が構えを取るのはほぼ同時であった。野営地から、1人の少女がこちらにやってくる。頭痛に苛まれながらも、視界に収めたその少女にネロは見覚えがあった。

 

「ブーディカ?」

 

「そうだよ、皇帝様?それ以外に誰に見える?」

 

そう言う少女は、記憶にある彼女そのものだった。何故と疑問が浮かぶも、頭痛がそれを口に出す事を許さない。ここ最近で一番の痛さであった。

 

「何故って言いたそうだね。良いよ、答えてあげる。あたしの目的はあんた達への復讐だよ。ネロ皇帝」

 

糸でもつけていたのか、先の剣がブーディカが手を動かすと手元に戻ってくる。ガタノゾーアのことは知っているのか、すぐに突っ込んでくる様な気配はない。

 

「でも、こんなにいるのは想定外だったなぁ。手分けして別れると思ってたんだけど、早くしなきゃ目覚めちゃうのに」

 

「目覚める?何のことだ?」

 

「教える訳ないでしょ。それより、あたしに早くネロを渡してほしいんだけど?」

 

「悪いがそうはいかねえな。どうしてもってんなら、俺ら全員倒すんだな」

 

「アハハ、それは困るね。ケルトの英雄に喧嘩は売れないかな。っとちょっと話し過ぎちゃったか」

 

「圧政!!!」

 

瞬間、野営地から筋肉(マッスル)が飛び出してきた。その太い腕から放たれる一撃を弾き返しながら、ブーディカは舌打ちをする。

 

「もうちょっと寝ててくれてもいいんじゃないかなぁ!」

 

「ははは。姿を偽りし圧政者よ。汝がつけしこの傷が我が力となる」

 

「さすがはスパルタクスだ。もっと念入りに眠らせておくんだったなぁ、ってスパルタクスが起きたってことは──」

 

「当然あたしもいるよ!」

 

「─だろうね!」

 

筋肉─スパルタクスに気を取られていたブーディカに斬りかかったのは、これまたブーディカであった。2人のブーディカ。何処かで同じ様なことがあった様な気がすると思う立香達。ただ、いつまでも見ているだけとはいかないのでそろそろ介入しようかと思った時、それを察したのか、もう一人のブーディカは剣を空高く掲げた。瞬間、戦車が現れ彼女はそれに乗り逃亡した。

 

「ははは。逃げるかそれもまた良し。すぐさま追いついて愛をくれてやろう」

 

「あーはいはい。その前に、ネロ公に色々話さなきゃいけないから、追いかけるのは無しだよ」

 

「そのネロはあまりの頭痛で気を失っているがな。それで?先の奴はお前の偽物か?」

 

ランサーのクー・フーリン以外はババルウ星人の事があるのですんなりと受け止めて、こっちのブーディカが本物であろうと当たりをつけていた。ネロが起きたら話すと言うブーディカの言葉を信じ、立香達は野営地で休憩する事にした。

 

 

「う、うぅん?」

 

「あ、ネロ公。起きたね」

 

「ハッ!ブーディカ、そなた何故裏切った!!

 

「いや、あたしは裏切ってないよ。説明するから、聞いてくれる?」

 

「うーん。まあ、嘘をつくとは思えんしな。良し、聞こう」

 

ブーディカの話を纏めると、突然自分とそっくりな例のブーディカが現れ、その事に驚いてしまった隙を突かれたらしい。まあ、大方ババルウ星人だろうが、一応変身できる怪獣や怪人はババルウ星人だけではないので決めつけるのは良くないだろう。しかし、ここにいる誰もが見破れない変身能力を持つババルウ星人の厄介さを再確認するには十分だった。ただ、今後もババルウ星人が現れることはあるだろうから、ブーディカ達にも情報を提供する。

 

「それは厄介だね。あのあたしも変身したババルウ星人だったわけか。さて、あたしとスパルタクス以外みんなやられちゃったし、もうここもダメだね。もうちょっとここで食い止めるつもりだったけど、攻めに行こうか」

 

「うむ。余もそれが良いと思うぞ。だが、今日は疲れもあろう。故にゆっくり英気を養ってくれ。明日、攻め込むとしよう」

 

その言葉に従い、立香とオルガマリーの人間組は明日に備え眠りにつく。ネロは先程まで寝ていたので、眠れないようだったがキャスターのクー・フーリンがルーンを使って無理やり眠りにつかせた。ランサーの方は待ちきれないといった感じで、槍の手入れをしている。皆、明日の戦いに備えて準備をしつつ、夜を過ごす。


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