ガタノゾーア in FGO   作:深淵を泳ぐもの

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破壊の大王

「──さて、どこまで進みましたか?」

 

「ひっ!?……ってメフィラスじゃない。突然目の前に現れるのは流石に心臓に悪いからやめて頂戴」

 

「おや、失礼。次からは気を付けますよ。それで?」

 

「これから最終決戦よ。相手の最後の『皇帝』も分かったし、まあそれで一回ネロが戦意を失いかけたけどね」

 

「タイミング的には丁度良かったようですね。では、作戦を聞かせてもらえますか?」

 

「簡単よ。私たち(カルデア組)とネロが城へ突入して、ブーディカたちには万が一にもローマ軍が全滅しないようにここに残ってもらうことになってるわ。みんなはもう先に行ってるから、私たちも早く行くわよ」

 

そのオルガマリーの言葉に応えるように、メフィラスは瞬間移動を駆使しオルガマリーと共に一気に先に行った立香たちへと追いついた。事前に察知する程度造作もない約三名を除き、当然現れた二人に驚愕する立香やマシュたち。彼女らも今まさに最奥の間に足を踏み入れようとしているところであった。合流のタイミングはパーフェクトと言えるだろう。

 

すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)!」

 

「いきなり!?」

 

「無駄だ」

 

容赦などしないと言わんばかりに、扉を開けた瞬間放たれるロムルスの宝具。迫りくる樹木の奔流、されどそれはガタノゾーアが吐き出したシャドウミストによって誰に届くこともなく瞬く間に死んでいく。今まではガタノゾーアが意識して弱めていた為に、対象は死ぬまではいかず衰弱程度で済んでいたが本来は触れただけで常人は死ぬ、というより生命あるものは大抵即死である。

 

「命を宿すものを使った不意打ちは()には通じんぞ」

 

「ローマに仇なすものよ。(ローマ)と言えどお前だけはローマと認めることは出来ん」

 

明らかな殺意を持ってガタノゾーアを睨むロムルス。それに対しガタノゾーアは余裕そうにロムルスを見返した。先手を取ったのはロムルス、その敏捷を活かしガタノゾーアに迫る。しかし、ガタノゾーアの敏捷はそれよりも上だ。振られた槍を受け止め、動きを止めるため触手を伸ばす。ロムルスは瞬時に槍を手放し後方へと跳躍、触手を回避した。ガタノゾーアはその手に残った槍を遠くへと放り投げ、一歩後ろへ下がった。

 

「決着をつけてこい」

 

「うむ!まっかせよ!」

 

それと共に入れ替わるようにネロが飛び出す。人間とサーヴァントでは実力に差がありすぎるが、ガタノゾーアとロムルスの攻防の最中、ネロは二人のクーフーリンとマシュからのルーン魔術とミゼーアから魔術による強化を受け、今一時のみサーヴァントと一人でも戦える力を得ていた。かつてない程の絶好調の中、ロムルスとネロがぶつかり合う。

 

「来るか、ネロ」

 

「うむ!余は、ローマ帝国第五皇帝として神祖……いや、ロムルス!そなたを倒す!!」

 

「良いだろう。来い、愛し子よ。槍はないが、されどローマはここにある」

 

ネロの剣をその手で受け止め、そのまま振り回し、上へと放り上げる。それを追うように跳躍し、拳による一撃を加えようとするも強化されているネロは空中で姿勢を整え、その場で回転し拳を回避し逆に蹴り落とす。ロムルスはそれを受けながらも華麗に地へと降り、独特の構えを持って同じく着地したネロを迎え撃つ。振るわれた剣を今度は受け流し、腹部へと蹴りを放つ。本来ならば、普通の人間がそれを喰らっただけで意識が吹っ飛ぶほどの威力を誇るが、生憎と強化を得たネロはこの程度で意識が飛んだりはしない。痛みを感じないわけではないので呻き声こそ上げるも歯を食いしばってロムルスの胸部を切り裂いた。

 

「ヌォ!?」

 

「流石神祖だ。だが、これなら」

 

胸部を斬られたことで、僅かに後退するロムルス。そこを押し切るように怒涛の剣戟を加えていくネロ。なんとかそれを捌いているが、捌ききれない分が確実にロムルスの身体に傷を負わせていく。一撃、二撃とロムルスに届く刃の数は少しずつ増えていき、遂にその首元まで迫った。

 

「──押し切る!童女謳う花の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)

 

極限まで強化されたネロが一撃を放ったその一瞬、辺り一帯は黄金の劇場と化しそれを見たロムルスは満足そうに笑みを浮かべながらその場に膝をついた。

 

「……眩い、愛だ。ネロ。永遠なりし真紅と黄金の帝国。そのすべて、お前と、後に続く者たちへと託す。忘れるな。ローマは永遠だ。故に、例え、何者に侵されようとも、世界は永遠でなくてはならない。心せよ……」

 

そう言って消滅したロムルスを見送るネロ。その顔は少し悲しそうに見える。その背に声をかける者はおらず、しかし不愉快な声はあたりに響く。

 

「いやはや、まさかロムルスを倒すとは。気にする価値もない無能どもだと思っていたが、道端に転がる犬の糞のように目障りだな、君たちは」

 

聖杯を手に現れたレフは評価を改めるようにそう言い放った。オルガマリーが消し飛ばしたはずの下半身もしっかり再生され、見下すように立っている。

 

「レフ、大人しく聖杯を渡すなら見逃してあげてもいいわ。それとも、また下半身を吹っ飛ばされてみる?」

 

「随分と生意気なことを言うじゃないか。え?オルガ。我が王より賜った聖杯の力に貴様らが勝てるとでも?」

 

あの時と同じように指先を向けながらそう言うも、レフは忌々しそうに顔を歪めながらすぐさまその表情を変え嗤う。聖杯の力、この言葉を聞けば並大抵の魔術師ならば恐れを覚えるだろう。しかし、オルガマリーは違う。ツァトゥグァと会い、『向こう』の魔術を知った彼女には聖杯程度で恐れを抱いたりはしない。

 

「チッ……気に入らないな。ならば見せてやろう!我が王の寵愛をなぁ!!」

 

微塵も恐れを抱かないのが気に入らなかったのか、レフは持っていた聖杯を見せつけるようにその身体に取り込んだ。それにより変貌していくレフを見ながら、果たしてこの変貌中に何度殺せるか脳内でシミュレーションするミゼーアとその余りの醜さに若干気分が悪くなる立香。

 

『フハハハハハ!どうだ?これこそが我が王の寵愛だ』

 

殺害数が少なく見積もっても千を超えた辺りで、漸くレフは完全変貌を終えたようだった。わざわざでかくなって攻撃が当たる面積を増やす愚行を見て、ジャンヌ・オルタはこいつはバカなんじゃないかと思う。まあ、実際はとても強くなっているのだが、生憎とクトゥグアと一体化した彼女には全く脅威にならないので仕方ないのだが。

 

『それでは改めて──』

 

「もう良いよ」

 

『──は?』

 

何時までもこちらを見下すような態度が気に入らなかったのか。それとも、ただ単純に飽きただけか。それは分からないが、レフは名を改めて名乗ることも、その力を見せることも許されずミゼーアによって倒された。

 

「そんなばかな……」

 

受け入れがたい現実を目の前に、人の姿に戻ったレフはそう呟いた。何故、ただの一撃で自分はやられたのか。それよりもまず、自分はいつやられたのか。気づいたら倒れていたと言う他にない現状はレフをどんどん混乱させていくが、万が一にも自分がやられた際の保険を思い出し、レフは再び嗤い始める。

 

「……古代ローマそのものを生贄として、私は、最強の大英雄の召喚に成功している。見ろ!これこそが、貴様たちの世界の終焉!さあ人類(せかい)の底を抜いてやろう!七つの定義、その一つを完全に破壊してやろう。──我らが王の、尊き御言葉のままに!来たれ!破壊の大英雄アルテラよ!!!!!」

 

「────」

 

召喚されてその少女にガタノゾーアは見覚えがあった。ルルイエで寝ているときに外を見ていた触手が記憶している。まあ、記憶の中の少女はもっと大きかったが。

 

「──黙れ」

 

「え?」

 

何故小さいのか少し考えている間にあちらには動きがあったようだ。何やら喧しく騒いでいたレフが気に入らなかったのか召喚されたアルテラはレフをその剣で切り裂いてた。

 

「聖杯を吸収してる!?」

 

驚愕の声をあげる立香。決着まではもう少しかかりそうである。

 

 




一万字とか書ける人を尊敬する今日この頃。てか、ジャンヌって人に向かって初めて砲撃したり、集団戦闘を始めた人って聞いたけどマジ?

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