ガタノゾーア in FGO 作:深淵を泳ぐもの
「フフフ、フハハハハハ!」
アルテラに斬られたレフは何故か笑い出した。まだ復活する手段でもあるのかと警戒を強めるカルデア一行を他所にレフの笑い声は不気味に辺りに響き渡る。それを目障りに思ったのかアルテラがもう一度得物を振りかぶった時、レフの身体から何かが二つ飛び出した。一つは光の粒子のような何か、もう一つは飛行する何か。どちらとも永年地球を見続けてきたガタノゾーアですら知らないもので、流石に少し警戒をする。
「ああ……これを持たされた時は何のことかと思ったが、成程こういうことだったのか」
その言葉を最後にレフは完全に事切れたようだった。飛行する物体はアルテラへ、光の粒子はガタノゾーア達へと飛んできた。四つに分かれ、マシュ、ガタノゾーア、ジャンヌ・オルタ、ミゼーアへと飛来するもジャンヌ・オルタはその炎を使い完全に焼却した。残りの三人も盾、触手、爪を使って振り払おうとするも逆に光の粒子が付着してしまう。特にマシュは盾を経由し全身に回り、とっさにメフィラスが瞬間移動をさせようと手を向けるが、それよりも早く三人に付着した光の粒子はその付着部から離れどこかへと飛んで行ってしまった。何が目的だったのかは分からないが、それよりも気になるのはアルテラだろう。
「え……なにあれ」
向かってきた光の粒子を先に対処すべく目を離していたアルテラを再び見たとき、立香はそんな声を漏らした。姿が変わっていたのだ。剣は腕と一体化し、剣を一体化していない方の腕は灰色の籠手のようなものが付き、胸部には目のようなものが浮かび上がっていた。所々にアルテラの面影を残してはいるものの異形の化け物のような姿へと変貌していた。
「文明……破壊……星……破滅……人理焼却。人よ、『私』と同化せよ。破滅を回避するために、『私』こそが『未来』だ」
「?何を言って」
「
「まずい!!──
意味不明な言葉を紡ぎながら、異形と化したアルテラはノーモーションで宝具を発動した。一体化した剣──神の鞭が回転を始め七色の光をまき散らしながら突っ込んでくる。花弁が開きそれを受け止めるも一瞬のうちにして七つの内の六つがはじけ飛び、七つ目にもひびが入り砕けそうになるがガタノゾーアが魔術を施しなんとか耐えている状況になる。
「──あ、マシュ!宝具お願い!!」
「はい!宝具、展開します!」
一瞬の出来事で理解するのに数秒かかってしまったが、それでもすぐさまマシュに宝具を使うよう指示出来るのは成長した証だろうか。マシュが加勢し、何時ぞやと同じようにマシュとエミヤによるカルデア一行が誇る最強の盾が完成する。今回は、ガタノゾーアによる魔術の補強も入っているのであの時よりも強力であると言える。
「大人しく『私』と同化しろ人類」
「意味の分からないこと……メフィラス!」
未だに意味不明なことを話すアルテラに何とか一撃加えようと説明もなくオルガマリーはメフィラスにガンドを放った。即座にその意図を察知したメフィラスは自身に飛んできたガンドをアルテラの真横に瞬間移動させる。咄嗟に反応するも避けること敵わず、アルテラは横へと吹っ飛んで行った。
「ガタノゾーア!ミゼーア!追撃お願い!」
「言われなくとも」
「わかってるよ」
ガタノゾーアが紫色の光線を放ち、ミゼーアが接近しその爪で引き裂かんと接近する。しかし、アルテラが手を前に突き出すと爪と光線は何かに阻まれてアルテラに届くことはなかった。亜空間バリア、それがミゼーアの爪を阻んだものの正体。振るわれた神の鞭をその爪で受け止めたミゼーアは、しかし威力を防ぎきれずに吹っ飛ばされる。
「ミゼーア!?」
「相当強化されてるねコレは」
心配そうな立香を他所に吹っ飛ばされたミゼーアは宙を蹴り地へと着地し、そう感想を述べた。アルテラに何かが纏わり付いているのは分かったが予想以上と言ったところか。未だ健在のミゼーア対して追撃をすべくアルテラが動き始めるが、すぐさまその身体が燃え上がった。
「燃えろ!」
「──」
「あら、こっちに来るのね。良いわ、相手してあげる。キャスターのクーフーリン、援護なさいな」
「言われなくてもやってやるよ。ガタノゾーアも手伝えよ」
「仕方ないか」
杖を突きたてて地面から樹木を召喚しアルテラを拘束、その上でガタノゾーアの触手が絡めとる。普通のサーヴァントならこれで動くことは出来なくなるだろうが、このアルテラはその全てを引きちぎりジャンヌ・オルタに迫る。ジャンヌ・オルタの持つ黒い旗と神の鞭がぶつかり合い、押し切られたジャンヌ・オルタは後方に吹っ飛び壁に激突した。
「なんて力してんのあいつ。って危な!」
「──」
「させねえよ!エミヤ!」
「ああ」
普通のサーヴァントとは比べ物にならない速度で神の鞭を突き刺さんと迫るアルテラを避け距離を取る。地面に亀裂を入れながら跳躍し、弾丸のように降ってくるアルテラにランサーのクー・フーリンが側面から蹴りを放ち行動を妨害する。それと同時に、エミヤが矢を数本放ちその全てを
「──」
「チィ!全く効いてないなこれは」
「なら」
「これは」
「どうかしらね?」
爆煙を払いながら、今度はエミヤに斬りかかるアルテラ。先の攻撃を見て、受けるのは不利と考えたエミヤは避けることに専念しながら愚痴を漏らす。しかし、瞬時に接近したミゼーアが爪で打ち上げ、ガタノゾーアが全方位から再生させた触手で滅多打ちにし、ジャンヌ・オルタが旗を突き刺し業火で自分ごと極限火力で焼き尽くす。余りの火力で爆発が起こり、アルテラとジャンヌ・オルタは互いに吹っ飛んだ。
「恐るべき耐久力ですね」
「──文明を破壊する」
「まだ元気ですか」
普通のサーヴァントならもう既に消滅してるであろうにと呆れるメフィラス。マスターたちやネロに被害が出ないようにサポートに徹しているメフィラスは手を出さないが、まともにダメージを与えられてるのは規格外三人位だろう。エミヤたちも動きの阻害位は出来るだろうが、与えてるダメージはほぼゼロと言って良さそうだ。
「あーもう!何なのよあいつ!!ガタノゾーア貴方なんか弱点とか知らないの?」
「あの少女の事なら知ってるが、融合してるアレは見たこともない。地球産じゃないだろうな」
「そんなの見ればわかるわよ!さっきの割と本気だったんだけどね」
「こっちで僕の敵になれるのは例外を除いていないと思ってたんだけど、ちょっと認識を改める必要がありそうだね」
「私は、破壊の……『私』は完全無欠の生命体。人、有機物、無機物、惑星、あらゆるものを融合し完成したのがこの『私』」
「僕が受け止めよう」
ぶつぶつと呟きながら斬りかかってきたアルテラの神の鞭をミゼーアが爪で受け止める。先ほどとは違い確実に止められるだけの力を込めて完全に受け弾き飛ばす。しかし、弾き飛ばすと同時にアルテラが手を前に出し亜空間バリアを張ったことでガタノゾーアたちは追撃は出来ずに終わった。
「後ろががら空きだぜ!」
「アンサズ!」
「理解できない。なぜ『私』を否定する?」
「何時までも意味不明なこと言ってんじゃないわよ!」
亜空間バリアは一方にしか展開できず、後ろから不意を突いたクー・フーリンたちの攻撃が入り、それに対処するために後方に亜空間バリアを展開した瞬間、ジャンヌ・オルタが炎を纏った拳で殴り、一瞬怯ませ炎を纏った回し蹴りで壁へと蹴り飛ばす。
「クー・フーリン!宝具を使いなさい!」
「おうさ!」
「ガタノゾーア!アルテラを拘束して!」
「先のようにはいかんぞ?」
立ち上がったアルテラをどこを防がれても拘束できるように全方位から触手で襲い拘束する。手を向けてその方向に亜空間バリアを張るのなら、拘束し手を上に向けてしまえば前方は防げないだろう。魔術による強化もかけてあるので先ほどのように引き千切られることもない。
「行くぜ。……ぶち抜け!
朱い槍に魔力が迸り、ランサーのクー・フーリンは必殺の一撃を放つ。因果逆転の呪いの槍がアルテラと一体化した何かの核を貫いた。
「やった!」
「いや、ありゃやれてねえな」
「まさか、回復してるの?」
「面倒だね。でも、これで……!へぇ、僕と一体化しようって?そんなのごめんだね。ジャンヌ・オルタ、燃やせ」
「言われなくたってやるわよ!」
しかし、それはそんなことでは死にはしない。分裂と再融合を繰り返し、元の形へと戻りながらアルテラの霊核を再び侵食し始める。だが、確かに空いた穴からミゼーアが無理やり手を突っ込み霊核ごとそれを引っこ抜き、ならばとミゼーアとの一体化を図るそれをジャンヌ・オルタが完全に焼却した。霊核を抉り取られたアルテラも肉体の維持が出来ずに緩やかに消滅を開始している。後は聖杯を回収すれば、この特異点は終了である。
というわけで、ダイナで視聴者にトラウマを植え付けたスフィアと謎の光の粒子が出ましたね。アルテラ好きの人には悪かったと思ってる。因みにガタノゾーアがスフィアのこと知らなかったのはダイナ本編が2017年からの出来事だからです。FGOは2015年勃発だからね。そもそもガタノゾーアが2010年に死んでますから、どっちにしろ知らないんですけど。