ガタノゾーア in FGO   作:深淵を泳ぐもの

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vs.アーチャー

それから、クー・フーリンの言う原因がいる場所へ向かう途中、マシュがクー・フーリンとの特訓を得て、宝具を本物では無いものの発動できる様になったことと、ルーン魔術を使って敵をおびき寄せることによって戦闘経験を相当数積むことになったこと以外は特に何もなかった。そして、もう少しで目的地だと言うタイミングでそいつは現れた。

 

「おっと、これ以上行かせるわけにはいかないな」

 

「チッ!アーチャーテメー、まだセイバーのイエスマンやってんのか?」

 

「え?あれがアーチャー?」

 

クー・フーリンの言葉にそう反応したオルガマリー。しかし、それもしょうがないだろう。なぜなら、今現れたアーチャーはその手に双剣を持っているのだから。これでアーチャーとは一体どう言うことだろうか。

 

「私は別にイエスマンをやってるつもりはないのだがね。だが、敗者は勝者に従うのは当然だろう?だから、これ以上先に行くと言うのなら、貴様らを始末させてもらう」

 

「ハッ!なら決着つけるとしようか!今回俺はキャスターだが、だからと言って遅れを取るつもりはねえ。嬢ちゃん達、行くぞ!彼奴は多彩な武器を投影してくるから気をつけろ!」

 

そう言って、アーチャーに突貫するクー・フーリン。それを見て、キャスターって後方支援するものじゃ無いの?と思う立香。それはオルガマリーも同様の様で、自分の常識を改めなくちゃねなんて言っている。

 

「クソ!盾のサーヴァントと言うのは思いの外厄介だな!!」

 

そう叫ぶアーチャー。実際、先程から彼の攻撃はことごとくをマシュによって防がれている。クー・フーリンとの特訓が生きている様だ。その上、キャスターであるクー・フーリンとの戦闘は今回が初であり、クー・フーリンの行動全てが新ネタなのだ。クー・フーリンがランサーであったなら、もう少しまともにやりあえたかもしれないが、キャスターの彼は持ち前の杖を槍の様に使い、その攻撃の隙をルーン魔術で補っているため、徐々にアーチャーは押され始める。

 

「なら、これはどうだ!」

 

後ろに大きく飛び退き、持っていた双剣を消し、矢の様に伸びた剣と弓を投影するアーチャー。形が変わったとはいえ、その剣にクー・フーリンは見覚えがあった。

 

「テメー!それは叔父貴の!」

 

「悪いが、前にも言ったかもしれんが私には誇りなどと言うものはないのでね。自分好みに改造させてもらった。……I am the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)……偽・螺旋剣(カラドボルグ・II)!」

 

その詠唱と共に放たれた剣は、周囲の空間を削り取りながら、クー・フーリンではなくマシュへと飛んで行く。厄介な盾のサーヴァント。まずそちらから始末しようとアーチャーは考えたのだ。自身に飛んでくると防御態勢に入っていたクー・フーリンではマシュは救えない。かと言って、マシュ自身もあれを防ぎきれるかは怪しい。が、ここにはもう1人いるのだ。先程から静観を決め込んでいたガタノゾーア(邪神)が。

 

「何!?」

 

アーチャーの驚きの声が周囲に響く。それもそうだろう。アーチャーが放った偽・螺旋剣は突然マシュの前に躍り出たガタノゾーアの手によって打ち砕かれた。今まで、数々の敵を葬ってきた偽・螺旋剣。かのヘラクレスですら防御態勢に入ったそれを、ガタノゾーアは掴んで潰したのだ。僅か一瞬だが、アーチャーは目の前の光景に理解が及ばず、思考に空白が訪れる。その隙をクー・フーリンが見逃すはずがなかった。杖で地面につき、自身の宝具の一部である腕を召喚し捕える

 

「しまっ!」

 

気付いた時にはもう遅い。捕えられたアーチャーはそのまま地面に叩きつけられ、マシュの方へと放られる。マシュは、放られたアーチャー目掛けて盾をフルスイングし、それが直撃したアーチャーは近くの壁まで吹っ飛ばされた。

 

「あ、ありがとうございます。ガタノゾーアさん」

 

「ん?ああ、良い良い。仲間がやられそうだったから助けただけだ。それより、まだ彼奴は倒れておらんぞ」

 

「ああ、ガタノゾーアの言う通りだ。彼奴はあんなんじゃやられねえよ」

 

全員が警戒態勢に入る中、壁に叩きつけられた影響で起こった煙の中から再び矢の様に長い剣がガタノゾーア目掛けて打ち出された。先程と同じ様に受け止めようとした瞬間、剣は大爆発を起こす。それによって起こった爆風で、煙は晴れ、多少ふらついているアーチャーが言った。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。これならダメージは免れまい」

 

「ああ、そうだな。ダメージは……な」

 

爆発が収まり、ほぼ無傷のガタノゾーアが土埃を払いながらそう言う。これにはアーチャーは絶句するしかなかった。壊れた幻想と言うのは、魔力の篭った宝具を壊し、それによって起こる魔力の爆発である。故に、魔力が詰まっている程、威力は上がる。先程の剣を投影する際、アーチャーはほぼ全ての魔力を込めた為、今までで一番の威力となったはずなのに、食らった対象はケロッとしている。これで絶句せずどうしろと言うのか。そんな彼にガタノゾーアが告げる。

 

「悪いな。()はその程度で倒される気は毛頭無いのでな。まあ、相手が悪かったと諦めるんだな」

 

魔力をほぼ使い切り、これ以上魔術を行使することができないアーチャーは動くサンドバックと大差なかった。しかし、ここにいる全員が必要以上にボコる様なことをしないので、アーチャーはクー・フーリンの一撃で消滅した。

 

「おいおい、ガタノゾーア。お前、一体どんな耐久してんだよ。あれは俺だって下手すりゃ消滅モンだぜ?」

 

「さてな。まあ、宝具の効果とだけ言っておこうか」

 

最も、『奴』程の『光』は例外だがな。と誰にも聞こえない様な小さな声で呟くガタノゾーア。そんな事はつゆ知らず、初のサーヴァント同士のまともな戦闘を見た立香とオルガマリーは気を引き締め直していた。これから戦うのは今戦ったアーチャーよりも強敵なのだ。だから、多少恐怖で足が震えているのは正常な証であろう。

 

「じゃあ、そろそろ行くか?」

 

一通り準備を終えた辺りで、立香たちにそう聞く、クー・フーリン。この先に待つセイバーの真名は先程聞いた。聖剣エクスカリバーの使い手アーサー王。そんなビックネームが所謂ラスボスなのだ。不安がないわけでは無いが、やらねばならない事だからと自分を奮い立たせ、立香は強く頷く。そして、一行はアーサー王の待つ洞窟の最奥へと進んで行った。


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