ガタノゾーア in FGO 作:深淵を泳ぐもの
拍手をしながら現れた男を知っている立香とマシュとオルガマリーは揃ってその男の名を叫んだ。
「「「レフ!!」」
しかし、その後の反応は三者三様だった。オルガマリーは喜びながらレフに駆け寄り、マシュはデミ・サーヴァントになった影響かレフから邪悪な雰囲気を感じ取り警戒態勢に入り、立香はレフと多少しか話していないのでその場に佇むだけだった。
「ああ!レフ、レフ!生きていたのね!」
「ああ、生きていたとも。最も、貴様は死んでいるがな」
「え?」
理解できないと言わんばかりの表情を見せるオルガマリーに、レフは全てを語った。オルガマリーがすでに死んでいること、未来が焼却されていること、そして、レフの正体。しかし、そうは言われても納得できないのが人間である。オルガマリーは納得ならないとレフに詰め寄る。それを鬱陶しく思ったのか、レフは指を鳴らし、空間に真っ赤になったカルデアスが映し出され、オルガマリーはそれに吸い込まれる様に浮かび始めた。
「え!?」
「オルガマリー、君には私から慈悲をやろう。さあ、カルデアスに触れるがいい。最も、どうなるかは君が一番知っているだろうがな」
高笑いをしながらそう告げるレフ。しかし、それが癇に障ったのか。オルガマリーは怒りの表情を浮かべ叫ぶ。
「ふざけないで!私は、誰にも認められないまま死ぬわけにはいかないのよ!レフ!覚えてなさいよ!絶対貴方をー」
それ以上続けることは叶わず、オルガマリーはカルデアスに取り込まれた。唯一なんとか出来る可能性のあるガタノゾーアはじっとオルガマリーとカルデアスを見つめていた。オルガマリーがカルデアスに取り込まれたのを見届けて、レフは再び口を開いた。
「最期まで泣き噦ると思っていたが、やはり人類は思い通りにいかんな。ああ、頭にくる」
「レフ!貴方、所長の事をなんだと!」
「騒がしいぞ。やはり、温情で生かすのではなかったな。……いや、ここで殺せばいいか」
「!!先輩!」
「邪魔だ」
レフの発言を聞き、立香を守るために前に出たマシュはレフの魔術を行使した腕の一振りで吹っ飛ばされる。しかし、それを見た立香は近づいてくるレフを臆する事なく睨みつけ、ガタノゾーアも立香を守るために、2人の間に入り込む。
「頭にくるな。その目、この状態でなんとか出来ると思っているのか?このサーヴァントも私にかかれば一捻りできるだろう」
「甘く見られたものだな。
その言葉に反応して、ガタノゾーアがレフを殺すために動き出そうとしたその時、何処からか飛来した魔力弾がレフの下半身を消し飛ばした。
「な……にぃ!!」
あまりの威力に消しとばされなかった上半身すらも吹っ飛ばされる。地面を無様に転がりながら、自身の下半身を消しとばした人物を見て、レフは叫んだ。
「何故だ。何故貴様が生きている!?貴様は先程、カルデアスに取り込まれ消滅したはずだ!!オルガマリー!」
レフの視線の先には、先程カルデアスに取り込まれた筈のオルガマリーが立っていた。信じられない量の魔力を纏って。オルガマリーはそのまま無言でガンドを放ち、先程の下半身の様に上半身を消し飛ばそうとするが、当たる前にレフが何処かへ転移したのでそれは叶わなかった。
「所……長?」
「そうよ。他に誰に見える?」
「で、ですが先程所長は」
マシュが言いにくそうにそう言う。それを聞いたオルガマリーは空を見上げ、言った。
「確かに、カルデアスに取り込まれた私は消滅しかけた。でも、私は助けられたの」
「誰に……ですか?」
「『ツァトゥグァ』そう名乗っていたわ。常に眠たそうな眼をしながらどこかヒキガエルに似た頭部を持ち、体色や体毛からはコウモリやナマケモノの姿を連想できたわ。『余は人間の生き方を見るのが好きだから人理を焼却されたら困る』『手助けをするのはエイボンに続いて2人目』『人理を修復したら褒美をやる』とか色々言いながら私に力をくれたの。この溢れんばかりの魔力もそうだし、これも」
そう言い、オルガマリーは手の甲を見せる。そこには令呪が光り輝いていた。
「『それくらい簡単だ』って言ってたわ。マスター適性がない私に、令呪を宿らせることが簡単だなんてふざけてるわよね。でも、多分彼らは私たちの理解できない『ナニカ』なんだと諦めたわ。彼が教えてくれた『向こう側』の魔術を知って、この世界には私たちが知らない生き物が多くいるって理解したもの」
それを聞きながら、ガタノゾーアは昔会った空腹時以外は割と温厚なツァトゥグァの事を思い出す。エイボン以外に手を貸すとは思わなかったが、これもこれでいいだろうと思う。と、そこにロマ二からの連絡が入る。
『当然通信が切れたけど、大丈夫かい!?って、所長!見れたのはレフによってカルデアスに取り込まれそうになっていた場面までだったけど、あの状態から生存したんですか!?』
「……まあ」
流石にツァトゥグアのことは言わないほうがいいと思ったのか、嘘をつくオルガマリー。まあ、言っても理解されないと思うが。しかし、ロマ二はオルガマリーの手の甲を見て、驚きの声を上げる。
『所長!どうして令呪が!?それに魔力も爆発的に増加してるし』
そこに気づかれては真実を言わざると得ないと思ったが、オルガマリーはあるものに助けられ令呪と魔力を貰ったと結局多少の嘘を織り交ぜて答える。その答えを聞いたロマ二が思い出した様に叫んだ。
『そ、そうだ!こんなことしている場合じゃない!そこはもう崩壊を始めているんだ!こっちもレイシフトの準備はしているが、そっちの崩壊の方が早いかもしれない!』
「何ですって!?もう一回死ぬなんて嫌よ!ロマ二、なんとかしなさい!」
『分かってます!もう少し……よし!OKだ!』
ロマ二がそう言うのとともにレイシフトが成功した。