「カードキャプターさくら」ショートストーリー集 作:三流FLASH職人
原作では最初に敗れた後、「星の杖」を手にしてからはあまりにも
ワンサイドゲームだったので、作者なりにアレンジしてみました。
アニメ版に沿っているため、いまださくらは「李君」呼びの段階です。
「あんな悲しい未来には、絶対にさせないっ!」
星の杖をユエに向け、構えるさくら。目には強い決意と、悪夢から覚めさせてくれた
大好きな人への訴え。
「ふん、何度やっても無駄なことだ、お前はクロウ・リードの代わりには決してなれない。」
さくらに向き直り、冷淡に言い放つユエ。その奥底にあるのは、新しい主(あるじ)への拒絶の意思。
クロウカード最後の審判、その「やり直し」の対決を眼前に、
後継者候補木之本さくらと、審判者ユエが再び対峙する。
東京タワーの根元、3人は眼上を見上げ、残された最後のチャンスの行方を見守る。
「くそっ!何かないのか、俺たちに出来ることは・・・」
式服に身を包んだ少年、李小狼が頭上の二人を見上げ、嘆く。
「何もあらへん、審判の時は手助けはおろか、アドバイスさえもできんのや!
それをやったら即、さくらには資格無しの裁定が下ってまう・・・」
翼をもつ獣の姿を持った選定者ケルベロスが、見上げながら呟く。
「いいえ、ありますわ。私たちにも出来ることが。」
後ろにいた黒髪の少女、大道寺知世のその一言が二人を振り向かせる。
「「え?」」
「ケロちゃん、応援するのはよろしいんですのよね。」
にっこりと笑ってそう問いただす知世。
「そ、そらまぁ、応援くらいやったらなぁ・・・」
「なら、私たちにできることをいたしましょう、3人で声を合わせて、こう・・・」
・・・・・・・・
「え”」
「よっしゃ、それやるか!ん、どないした小僧?」
「い、いや・・・」
「決まりですわね♪」
さくらの前に1枚のカードがふわりと舞い、それを手に取る。先ほどユエに逆支配された
ウッド(木)のカード。やり直しの審判の前に、元々手持ちのカードは再び元に戻される。
このカードを使ったことが、先ほどの最悪の結末を招いてしまった、否応なしに緊張がさくらを包む。
私に出来るのだろうか、この最後の審判を乗り切って、あの「この世の災い」を回避することが。
「「「フレーっ、フレーっ、さ・く・らっ!」」」
「・・・え!?」
「「「頑張れ、頑張れ、さーくーらーっ!!」」」
下から響く声、その響きに思わず下を見やるさくら、そしてユエ。
「「「フレーっ、フレーっ、さ・く・らっ!」」」
「「「頑張れ、頑張れ、さーくーらーっ!!」」」
3人がさくらにエールを送っている。知世は自慢の美声を響かせ、ケルベロスは彼らしい大声で
そして小狼は顔を赤らめ、半分ヤケクソ気味に声を張り上げて。
そのはるか後方では、観月先生がその光景を見ながら微笑んでいる。
「ふん、無意味なことを。」
冷淡に呟くユエにさくらが杖を向け、返す。
「そんなこと、ないっ!」
ん?という表情のユエに続けて返す。
「すっごく、元気でたっ!!」
笑顔で力強くそう告げるさくら。そう、私には応援してくれる仲間が、大切な人たちがいる。
先ほどまでの重圧はどこへやら、高揚感とやり遂げる意欲、そして少しの新鮮さを心地よく感じていた。
「(そういや、李君に『さくら』って呼ばれたの初めてかも)」
新鮮さの正体を悟り、思わず笑みがこぼれるさくら。
が、次の瞬間、その考えを打ち消す記憶が脳裏にフラッシュバックする。
-さくら、封印や・・・-
「(・・・あれ?以前にも李君に、そう呼ばれたことが・・・あれは確か・・・)」
記憶を紐解いていくさくら。あれは確か、あるカードを封印する際の出来事。
「・・・あ!」
その情景をはっきりと思い出す、そしてその時感じた疑問を今の状況に当てはめる。
-なんでそんなカード作ったの-
「(そう!もし今あのカードをうまく使えたら・・・だけど。)」
そのカードを使うには、いくつかの条件をクリアする必要がある。その為に必要なことは・・・
「(思い出して、さっきみたいに私が今まで経験したこと、カード集めで知ったこと
その中に、必ず答えはあるはず!)」
目を閉じ、記憶を邂逅するさくら。長かったカード集めの中で知ったこと、体験したこと、
今日私が経験したこと、その中から今、必要なカードを選んでいく。
「(あのカード、それからアレとアレ・・・でもダメ、まだ足りない。)」
ほぼ青写真は出来た、ただ一つ、最初の条件をクリアするカードが見つからない。
「(思い出して!カードさんを集めてきたこと、ケロちゃんと知世ちゃんと李君と一緒に、そして・・・)」
さくらは思い出す。今ここにはいないけど、一緒にカードを追いかけてきた快活な少女の存在。
「苺鈴ちゃん!そうだ、あのカードさんなら!」
左手で手持ちのカードを扇状に広げ、右手で一枚、また一枚とカードを抜き取っていく。
腰のホルスターに左手のカードを収納し、抜き取った5枚のうち4枚をそのホルスターの
最上部に収納する、使うカードは決まった。
「準備はいいようだな、では始めるぞ」
ユエがさくらを睨み、重心を前にかけ一歩踏み出す。
さくらは右手のカードを放り、星の杖で打ちすえて発動させる。
「汝の優れた技と力を我に宿せ、ファイト(闘)ーっ!!」
カードから水色の武道着を纏った少女の姿が現れ、さくらの体に憑依するように重なり、同化する。
「あれは、ファイトのカード!しかし・・・」
「よっしゃさくら、かまへん、ぼてくりまわしたれーっ!わいが許す!」
「・・・さくらちゃん?」
その選択に下の3人がそれぞれ違った感想を有する。あのユエに格闘戦で勝ち目があるのかと訝しがる小狼、
ノリノリで同じ守護者のユエをどつき回せと本気で考えるケロ、
そしてさくらの思い人、雪兎の真の姿であるユエを殴れるのかと不安な表情を見せる知世。
「ふん、ファイトか。それで私に対抗できる気か!?」
右手を振り前方にかざすユエ。無数のつぶてが生まれ、弾けるように飛び出す。
「はっ!とっ!ていっ!!」
その飛礫を左右に躱し、宙返りで飛び越え、杖で弾き、腕で叩き落とすさくら。
「小癪な、ならばこれはどうだ!」
ユエは青白い炎を弓矢に具現化し、さくらに向けて放つ。幾多の矢がさくらに押し寄せる。
「はあぁぁぁぁっ!!」
押し寄せる矢の雨を次々にパンチやキックで叩き落とす。と、そのさくらの真横に踏み込んでくるユエ。
ユエのアッパーカットを上体をそらして躱し、連続で放たれた回し蹴りの足の上に乗って後方に飛び、距離を取る。
さらに連続攻撃を仕掛けるユエ、しかしさくらはその天性の運動神経と、ファイトのカードによって得た
格闘能力で次々にユエの攻撃をいなしていく。
「すごいですわさくらちゃん!」
「何やっとんねん、逃げんな、ぶちかませーっ!!」
「確かに。なんとか躱せてはいるけど、攻撃しないとユエは倒せない、あいつ一体・・・」
そんな3人の思いとは裏腹に、さくらは戦いながら思う。
「(私の考えた作戦は、まずユエさんの攻撃をある程度しのげないと使えない。
でも、ジャンプ(跳)さんでも、フライ(飛)さんでも、ユエさんの攻撃からは逃げられなかった。
だけど、あの苺鈴ちゃんと互角に戦った、このファイトさんなら!ファイトさん、苺鈴ちゃん、力を貸して!)」
ひとしきりの攻撃を凌ぎ、距離を取る。ユエも追撃の手を止め対峙する。
「少しはマシになったな。しかし、攻撃しなければ私は倒せんぞ。」
その言葉に答えるかのように、さくらはホルスターから次のカードを取り出す。
眼前に放り、星の杖でそのカードを打ち据え、発動させる。
「木々よ、彼の者を捕らえよ!ウッド(木)ーっ!!」
「・・・え?」
「ええっ!?」
「なんやってえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
さくらが打ち据えたカードから、無数の枝が伸びユエに向かう、思わず絶叫するケルベロス。
「アホかーーーーっ!さっき操られたばっかしやないかーーーいっ!!!」
木々がユエに触れた途端、その木々は動きを止める。
「愚か、という言葉しか出ないな。こんな者が資格者だと!?」
険しい表情で木々を逆操作する、木々はたちまちさくらに向けて反転、次々にさくらに襲い掛かる。
「えいっ!とう!はっ!!」
それでもさくらは駆け、飛び、木々の追撃から逃れる。枝を蹴ってジャンプし、巻き付こうとする蔓から
素早く腕や足を抜き、囲おうとする枝を突破する。とはいえ状況がさっきよりずっと不利になったのは明白だ。
「ここは・・・」
思わず叫びそうになり、慌てて口を押える小狼。さくらに対するアドバイスは最後の審判では御法度だ。
「(ここはソード(剣)だ!陰陽五行では「木」は「金」、つまり金属に弱い、ソードであの木を打ち払えば・・・)」
小狼の心の叫びに同調するかのように、次のカードを取り出すさくら。眼前に放り投げ発動させる。
「雨よ、地に降り注げ!レイン(雨)ーっ!」
カードから雨雲が沸き立ち、たちまち空を覆う、間を置かず降り注ぐ大粒の雨。
その雨がさくらを、ユエを、そして木々を打ち濡らす。
「レインだって!なんてことを!!」
悲鳴に似た声を上げる小狼、あまりにも間違った選択を取った、少なくとも小狼にはそう思えた。
事実、雨水を吸ったウッドは膨張し、その幹が、枝が、蔓が、爆発的に成長し、また数を増やす。
あっという間に東京タワーの展望台上はユエの操る木々の巨大な檻に覆われる。
「アイツ、やっちまった!なんでレインなんか!!」
「いいえ、それは違いますわ、李君」
「え?」
嘆く小狼に訂正を入れる知世。ケルベロスがそれに続く。
「ああ、さくらは知っとったハズや、レインがウッドを強化することを、その身をもってな。」
「だからきっと何か、考えがあるのですわ。」
不安と期待が入り混じった表情でそう答える二人。
「け、けど、見ろ。もうアイツに逃げ場はないぞ!」
巨大な樹の檻に囲まれているさくらとユエ。その樹を操ってるのはさくらではなくユエの方だ、
どう贔屓目に見ても状況は絶望的に見えた。
「終わりだ!」
ユエの合図とともに四方八方から無数の枝が伸び、中央のさくらに襲い掛かる。
さくらはホルスターから次のカードを取り、発動させるべく放り投げる。
が、その直前に枝から伸びた一本の蔓が、ついにさくらの左足に巻き付く。
構わずカードを打ち据えるさくら。
「杖を振るう我の腕を守れ、ファイアリー(炎)っ!!」
「まずい、捕まった!」
「さくらちゃん!」
「まだや!焼き尽くしたれや、いけ!ファイアリーっ!」
「今更ファイアリーとはな、だが、無駄だ!」
冷徹に言い放つユエ。
「レインのカードの発動中に、ファイアリーが本来の力を振るえると思うか!」
その指摘通り、ファイアリーの炎の精は、体を打ち付ける雨にその威力を殺されていく。
それでも主の命令通り、さくらの両手に取り付き、木々から手と杖を守っている。
「ありがとうファイアリーさん、これが・・・最後のカード!」
ホルスターから5枚目のカードを抜き取り、投げる。炎を纏った腕を振り、杖を振り上げる。
「今更何をしようと、もう手遅れだ。カードは主を失い、この世の災いが発動する。」
冷酷な目で木の上に立ち、蔦の絡んだ右手をさくらに向けて言い放つユエ。
事実さくらはすでに胸まで木々に巻き付かれ、首にすら蔦がかかっている。
だがさくらは懸命に声を上げ、その杖をカードに向けて振り下ろし、打ち据える。
「カードよ、木に宿り、汝の力を示せ、クロウ・カードーっ!!!」
カードが発動したその瞬間、愕然とするさくら。ファイアリーは消滅し、腕に、首に、蔦が巻き付き動きを止められる。
首から下を全て木に巻き付かれ、完全に身動きできなくなるさくら。
その手から星の杖が落ち、東京タワー展望台の屋根に乾いた音を立て、落ちる。
「・・・!」
下の三人は声も出せず、最悪の結末を呆然と見つめている。その後方で同じ表情の観月が嘆き、呟く。
「エリオル・・・これが、貴方の望んだ結果なの?」
最後の審判が終わる、そして『この世の災い』が今、始まる・・・のか?
「こんな・・・」
首から下をウッドで簀巻きにされているさくらが、険しい表情でつぶやき、そしてユエに叫ぶ。
「こんなやり方、まるでクロウの・・・クロウを気取ったつもりかーーーっ!!」
「へ?」
ケルベロスが、何言っとんのやさくら、という表情で見上げる。知世と小狼も同じ表情で。
ユエが木の上を、さくらに向かって歩みを進める、穏やかな表情で。そしてさくらに語る。
「ううん、これは『私』が、今まで経験してきたこと、カード集めで知ったこと、そして・・・」
そこまで語ったユエが、足元の木の枝に足を引っ掛け、ぐらぁっ、とバランスを崩す。
「ほ、ほぇぇぇぇっ!!」
両手をばたつかせ、必死にバランスを取ろうとするユエ。しかし努力むなしく、顔面からべちゃっと
前方に倒れる。
「あいたたた・・・ご、ごめんなさい。この長い脚に慣れなくて。」
顔面を抑えながら起き上がるユエ。
「ほええって、ユエ・・・お前、キャラ変えたんか?」
「い、一体何が、何を言ってるんだアイツ。」
もはや目が点になっている2人。その後ろで知世が視線を上から前の二人に移す。
ケロと小狼を何度か交互に見やり、そして頭の上に電球がぱぁっ、と灯る。
ぽん!と手を打ち、笑顔になる知世。
「分かりましたわ!」
「「え!?」」
思わず知世に振り向くケロと小狼。
「さくらちゃんはあの時、お二人に縁の深いカードを使われたんですわ♪」
「わいらに・・・?」
「縁の深い、カード・・・?」
顔を見合わせ、邂逅するケロと小狼。元々この二人は仲のいい間柄ではない。
小僧、ぬいぐるみ、とお互いを敵視し、衝突したことも度々である。
最悪なのはお互いの体と心が入れ替わり、両者が散々な目にあったことも・・・
「「あーーーーーーーーーっ!!」」
お互いを指差し、同時に叫ぶ二人、そして同時に展望台を見上げる。
「「チェンジのカード!!」」
ひとり、観月だけが頭の上に?マークを浮かべている。
「つ、つまり今、ユエが木之本さんで、木之本さんが・・・ユエ?」
「そうか、だからウッドにレインを使ったんだ。わざとウッドを強化して自分を捕まらせて
木を通して自分とユエを繋げるために・・・」
「チェンジさんはカメレオンみたいなデザインですしねぇ、木に力を通すのも得意なのでしょう。」
「だーーーっはっはっはっはっ!」
ケルベロスの爆笑が響き渡る、ときには顔を伏せて手で地面をだんだんと叩き、
また寝っ転がって腹を抱えてごろごろしながら高らかに笑う。
「た、確かに、クロウの奴に最後の審判やらせたら、こんな人をおちょくったようなコト
しかねんわ、わはははははは・・・」
「笑いすぎだケルベロス!」
さくら(中身はユエ)が眼下を睨み、同じ守護者に毒を吐く、もっともさくらの可愛らしい声だから
威圧感は皆無だが。
ふぅふぅと呼吸を整えながら、笑い終えたケルベロスが上を見上げ、言う。
「お前言うとったなぁ、『さくらじゃクロウの代わりにはならん』て。
せやけどさくらは辿り着いたで、やり方は違っても、クロウがやりそうな結末に。」
何よりユエ自身がそう言ったのだ、クロウを気取ったつもりか、と。
「く・・・」
歯ぎしりをして嘆き、それからふぅっ、と息を吐き、力を抜くさくら(中身ユエ)。
すると彼女を覆っていたウッドがするっと解け、力を失い、やがてカードに戻る。
「・・・え?」
驚愕するユエ(中身さくら)にすたすたと歩み寄り、その体に抱き着くさくら(中身ユエ)
「チェンジ!」
さくら(中身ユエ)がそう言うと、二人の友進に光が溢れ、やがて収まる、離れる二人。
「ほ、ほぇぇ、戻った!?でもでも、チェンジって一日待たないと戻らないんじゃ・・・?」
自分の両手を、そしてきょろきょろと状況を見回し、元に戻ったことへの安心と疑問を混ぜ込んで言う。
「チェンジは私の配下のカードだからな。ただ、使うと同時に発動するから、お前に使われた時は
支配する暇もなく入れ替わられたが。」
その二人の間に、2枚のカードが舞い飛んで、空中で制止する。ウッドとチェンジのカード。
それをぱしっ!と手に取り、さくらを見るユエ。
未だ最後の審判の終了は宣言されていない、さくらの心に緊張が走る。
が、ユエは手を下ろし、さくらをまっすぐに見て言う。
「ひとつ答えろ、どうしてこんな手の込んだやり方をした。」
「・・・え?」
「本来、この最後の審判はそう難しい物ではない。ケルベロス配下の攻撃カードである
ファイアリーやアーシー(地)を使えば、簡単にカタがついただろう、何故そうしなかった。」
友枝町を覆いつくした豪雪を一撃で溶かしつくしたファイアリーや、
この地一帯を完全支配したアーシーの威力はさくらもよく知っている。
そして、そうしなかった理由もユエには予想がついていた。自分の仮の姿である月城雪兎、
彼女が好意を寄せるその人の身を気遣ってのことであろう、と。
「だって、『ユエさん』を、傷付けたくなかったから。」
「何!?」
予想外の言葉に驚愕するユエ。雪兎ではなく、私を・・・?
「ユエさんも、ケロちゃんと同じ守護者さんなんですよね、だったら攻撃するより、
なかよしになりたいなぁ、って。」
「・・・なかよし、か。」
ユエは邂逅する、かつて自分が崇拝していた人物、クロウ・リードの残した言葉を。
-やがて新たな後継者が現れるでしょう、あなた達やカード達を慈しんでくれる者が-
ある意味、後継者の資格はそこにこそあるのではないか、魔力も大事だが、何よりカードにも
守護者にも命がある、それを同じ目線で、対等に接してくれるそんな心を持った存在こそ・・・
道具ではなく、『なかよし』になってくれる主、それが今、自分の目の前にいる。
「目を閉じろ!」
「ほ、ほぇ?」
「・・・早くしろ。」
「は、はいっ!」
言われるままに目を閉じるさくら。その前にひざまづき、宣言するユエ。
「選定者ユエ。我ここに『最後の審判』を終了し、『木之本さくら』を新たな主として、認む。」
さくらが目を開けた時、そこにユエの姿は無かった。ただ、目の間に星の杖が浮かんでいる。
そして周囲にはユエが小狼とさくらから奪ったカードが、さくらの招きを待っているかのように
彼女をリング状に取り囲んでいる。タイム、サンド、ストーム、ドリーム、そしてウッドにチェンジ・・・
右手で杖を取り、左手を出す。その手のひらに宙に浮かぶカードが次々に収まる。
そしてさくらは時を超え、かつての所有者、クロウ・リードと心の邂逅を果たす-
「やったよーっ!」
東京タワーから降り、笑顔で知世、小狼、ケロのもとに駆け寄るさくら。
合流するとさくらは小狼の両手を取り、彼をぐるぐると振り回す。が、その勢いはとどまることを知らず
やがて小狼の足が浮き、まるでジャイアントスイングのようにぶん回される。
「うわぁっ、おい、ちょっと!」
「ほ、ほえぇぇっ!?」
あまりのさくらの豪快さに驚愕する小狼、意外な小狼の軽さに驚くさくら。
「あー、まだファイトが発動しとるわ、アレは力もえらい上がるからなぁ。」
「なるほど。」
大変、とばかりに小狼を引き付けるさくら。もし手を離したら小狼がケガをしかねない。
ぐいっ、と自分の方に引き寄せ、小狼をキヤッチするさくら、ふぅ、よかった。
そしてふと、小狼の顔を見てさくらが言う。
「そういえば、さっきはありがとう。」
「え、何だ?」
「李君が『さくら』って応援してくれたから、チェンジのカードを使うのを思いついたんだよ。
初めて『さくら』って呼ばれたハズなのに、なんか聞き覚えがあるなぁ、って。
ケロちゃんが入った時にそう呼ばれてたからだったんだけど。」
一呼吸おいて続けるさくら。
「ねぇ、これからも私のこと『さくら』って呼んで欲しいな、私も『小狼君』って呼んでいい?」
至近距離での笑顔の提案に思わず赤面する小狼、目を背けて言う。
「す、好きにしろよ・・・。」
で、その目を背けたすぐ先に、ケロベロス、ビデオを構えた知世、観月先生が居並んでニヤニヤしている。
え?ほぇ?という顔でふたりは3人を見る、なんで見られてる?もう一度自分たちを見て、状況を確認する。
さくらはしっかりと、小狼をお姫様だっこしていた。
「う、うわあぁぁっ!は、早く降ろせっ!」
「ほえっ!は、はいっ!」
パニックで手を放すさくら、当然小狼の体は地面にどさっ、と落ちる。
「ほえぇぇぇっ、ご、ごめんなさいっ!!」
「いたたたた・・・いきなり放す奴があるかっ!」
「いい絵が撮れましたわ。」
二人の苦笑いの横で、知世が満面の笑みを浮かべている。
「そのビデオ、ダビングして小僧の実家に送ったれや。」
「まぁ、それは名案ですわ♪」
「や、やめろ!それ寄こせっ!」
こんなのをもし苺鈴が見たらまた事態がややこしくなる、慌てて知世を追いかけようとする小狼を、
背後からはがい締めにするケロ。
それを笑顔で見ているさくら、その横に観月先生が並ぶ。
「どう、クロウとは会えた?」
「はいっ!」
アニメ版の名話「エレベーター回」を潰すとんでもない話(失笑
まぁあくまで並行世界のお話と言うことで・・・