「カードキャプターさくら」ショートストーリー集   作:三流FLASH職人

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前話と同じく、お泊りスレに投稿した物です。
時期はさくらカード編の最中、小狼がかなりさくらにお熱なのに対し
さくらは全く気付いてない時のお話です。


お泊りその2、かわいい春巻き

 冬、寒空の中、さくらはスーパーに食材の買い出しに来ていた。レジを通して袋に食材を詰め込む。

 

 父子家庭の木之本家では当番制でさくらも家事を受け持っている、とはいえ

遊びたい盛りのさくらにとって家事はやはり大きな負担である。掃除や洗濯はそれなりに

やっていればいいが、料理だけはさくら自身の努力と工夫でレパートリーを増やす必要がある。

加えて、調理には必ず後片付けがついて回る。帰ってからの作業を想像してげんなりとするさくら。

 

「でも、まぁ今日はいつもよりマシ・・・よね。」

と、そこまで考えて、自分の後にレジの支払いを済ませる少年に気づく。

「あれ?小狼君もお買い物?」

 

 さくらに声を掛けられて、隣に並んでカゴから袋に詰めつつ言う小狼。

「ああ、ウェイが里帰りしててな、夕飯の買い出しに。」

「ウチもだよ~、お兄ちゃんは高校の研修でお父さんは海外発掘。」

「そうか、大変だな。」

 

 大変ではない、いや大変だがお兄ちゃんとお父さんがいないのは正直助かっている。

さくらと違って二人は「大人の舌」である。彼らを満足させる料理となればハードルは確実に

一段階あがるからだ。特に兄の桃矢はさくらと好き嫌いが結構逆で、好みの調整が大変なのである。

 

 スーパーから出る。と、びゅっと冷たい寒風が二人を薙いで行く。

思わず身を縮める二人。そんな中、さくらはふと、今まで悩んでいた事柄を解決するアイデアを思いつく。

小狼に声をかけるさくら。

「ねぇ小狼君、今日は一緒に夕飯食べない?そしたら食材も節約できるし。」

「どこで?」

「小狼君のお家で!」

 

 さくらは我ながらナイスアイデアだ、と思う。小狼の料理の腕は家庭科の授業で実証済みだ。

彼の料理を手伝うことで自分のレパートリーを増やし、かつ手間や食材、片付けの手間も半減する。

その上いつも世話になっている小狼と一緒に夕飯を食べられたらきっと楽しいに違いない。

まさに一石三鳥の効果がさくらにとってはあった。

 

ただ、大事なことが二つほど抜け落ちているのだが。

 

「・・・え”///」

思わず頬を紅くする小狼。さくらと一緒に・・・ふたりきりで、料理!?

 

 抜け落ちてる点そのいち。小狼がさくらに惚れていること。特に最近はさくらへの想いが

会うたびに強くなっている小狼にとって、二人きりで料理とか食事とか、かなりドキドキなイベントだ。

「一緒にお料理作ってみたかったんだ、小狼君お料理上手だし。」

そんなことはつゆ知らず、笑顔で小狼に迫るさくら。こうなっては小狼に抗う手段はない。

「・・・好きに、しろよ」

 

 

「さくらぁ~誰か忘れてへんかぁ~」

 

抜け落ちている点そのに、家で待ってるケルベロス。

彼は今日ずっと寝ていて会っていないし、寒空の中、兄や父を納得させる料理のレパに囚われていて

すっかり思考から外れている。

 

「ほえ~、すごいコンロだねぇ」

小狼のアパート、電気と暖房を点けたキッチンで、さくらが興味深そうにつぶやく。

「中華は火力が命だからな。で、何を作れるようになりたいんだ?」

「揚げ物とかまだちょっと苦手だから・・・そのへん。」

来る途中にさくらは小狼に事情を話していた。なんとか料理のレパートリーを増やしたいこと。

そんなさくらの苦労を察して、小狼も協力する気になっていた。

「じゃあ春巻きにするか」

 

「はにゃ~ん、すっごく美味しいよこの春巻き。」

揚げ春巻きを頬張りつつ、さくらは幸せそうに微笑む。小狼はなんかひっかかるワードにツッコミを入れる。

「うまい時もはにゃ~んって言うのか・・・」

「うん、なんか幸せなときに出ちゃうんだ。」

「(観月先生と春巻きが同じ扱いなのか・・・)」

 

 食後、案の定片付けもッサラッと終わらせたさくらと小狼。彼は本当にこういう手際がいい。

「あ、ついでに宿題も一緒にやらない?」

「そういや算数の宿題けっこう出たな。」

本音を付かれたさくらが冷や汗を流して言う。

「はう~、わかんないトコ多いから教えてほしい・・・」

「・・・代わりに国語教えろよ」

「うんっ!」

 

 木之本家、未だ帰らぬさくらに向けて嘆くケロ。

「さくらぁ~、いつ買い物から帰ってくるんやぁ~」

携帯をかけてはみたが、次の瞬間同じ部屋で着信音が鳴り響く。

携帯は携帯してこそ携帯やろがい!と上手いこと言ってもさくらが帰ってくるわけではない。

 

 

「あーーーーーっ!!」

「ど、どうした!?」

「大変!ケロちゃんのこと忘れてた・・・ごめん、もう帰るね。」

失念そのにを思い出すさくら。これはもう今夜は修羅場&平謝りを覚悟しなければならない。

「送っていく」

さくらの動揺を察したのか、そう申し出る小狼。あの食いしん坊を待たせた以上、一緒に行って

弁解してやれるならそうしたほうがいいだろう。

 

 が、ドアを開けた瞬間、その思惑に思わぬ障害が立ち塞がる。

「ひょえぇ~~、すっごい雪降ってる!」

「吹雪いてるな、これは危険だぞ。」

「でもでも、帰らないとお腹すかせたケロちゃんが滅茶苦茶怒るし・・・」

「とりあえず電話しろよ。」

「携帯電話、家で充電中なんだよぉ~」

 

「・・・仕方ないな、俺のを貸すから電話しろ。」

「ありがとう~」

小狼の携帯を取ってダイアルする。とはいえ知世からもらった同じ携帯だから違和感は無いが。

「もしもしケロちゃん?」

「私だ」

電話に出たのは、何故かいつもの関西弁ではなく、もうひとりの守護者の声だった。

「あ、あれ?ユエ・・・さん?」

「ああ、妙な魔力を感じてな、来てみたらケロベロスの奴が・・・」

 

「うまいうまい!雪に砂糖かけたら立派なかき氷やでぇ~

 おお!いちごシロップもいけるなぁ、うへへ、食材がなんぼでも降ってくるでぇ~」

「・・・と、いうわけだ」

とうとう空腹に耐えられず、そこかしこの雪に何かぶっかけて食べまくっているらしい。

 

 

「空腹で暴走してる~ごめんね、ケロちゃん・・・」

「こっちは何とかするから、主(あるじ)は今いるところに泊めてもらえ。」

「・・・ほえ?」

 

 

「どうだった?」

携帯を返し、上目遣いで申し訳なさそうに小狼に言うさくら。

「あ、あのね小狼君・・・今日、泊めてもらっても、いい?」

「え”!?」

「ユエさんがね、『自然な雪だから魔法は使うな』って、で今いるところに泊まれ、って」

「・・・あ、ああ///」

とは言ったものの小狼は動揺を隠せない。調理や食事だけじゃなくて・・・泊まる?

 

 それでも今後の段取りを考え、動けるのが小狼の子供離れしている所である。

必要なのは寝場所と入浴の準備・・・それとパジャマだ。

 

「風呂沸かしたから入ってこい、俺は寝間着と寝るところ用意しておくから」

「え、先に入っちゃっていいの?」

「女は風呂長いだろ、俺はすぐ出るから、先に入ると湯冷めするんだ」

「わかった、ありがとう、じゃあお先に」

 

「今、さくらが・・・ウチの風呂に・・・」

てきぱきと準備したのが裏目に出た。さくらの入浴中、小狼はヒマになってしまったのだ。

むしろ今こそいろいろ用事を用意しておくべきだったのに・・・

 

「ふぅ、いいお湯だったよ・・・あれ?小狼君なんで汗だくで剣なんか振ってるの?」

「べ、別に・・・ゼェゼェ」

彼流の煩悩退散方で、なんとか道を踏み外さずには済んだようだ。

 

 

ーーーーーーー

 

「もしもし、さくらちゃん?」

大道寺知世はさくらにかけた電話から、彼女以外の声がしたことに驚く。

「・・・撮影娘か、私だ。」

「この声・・・ユエさんでいらっしゃいますか?さくらちゃんの携帯なのに・・・」

「主(あるじ)は今日、李の家で泊まりだ。」

 

ーーーーーーー

 

「いけませんお嬢様、外は吹雪です、外出は危険ですっ!」

「話してくださいボディガードさん、さくらちゃんと李君のうれしはずかしお泊り日

これを撮影せずに何を撮影するというんですのーーーーっ!!」

 

ーーーーーーー

 

 再び小狼のアパート。

「じゃあ俺も風呂入ってくる」

ーバツン!-

何かが切れるような音と共に、アパート全体が突然闇に包まれる。

「あ、あれ、停電?」

「ブレーカーが落ちたのかも、ちょっと見てくる」

 

「落ちてなかった、近くの電線が雪で切れたのかもしれない。」

「はう~、ど、どうしよう、真っ暗だよ~」

「明かりは何とかなるけど。」

ローソクの代わりに、魔力で護符に火をともす小狼。

「あ、お札の明かり。エレベーターの時以来だね。」

「問題は暖房だな、俺はいいけどお前は風呂入ったから、早く布団に入れ。」

停電により部屋の暖房も止まり、室温もどんどん下がるだろう。湯冷めしたら風邪をひく可能性は

かなり高い。

「う、うん、そうする。」

 

「え?これ小狼君のベッドじゃ・・・」

「いいよ、俺は居間のソファーで寝るから。」

毛布を持って去ろうとする小狼を呼び止めるさくら。

「ってダメだよ~、この時期に毛布一枚で寝るとか・・・ウェイさんのベッドとかは?」

「部屋に鍵かかってて入れないんだ、いいから湯冷めする前に寝ろ」

「う、うん・・・」

「じゃあ、おやすみ。」

うん、とは言ったが、正直これではバツが悪い。自分から押しかけて彼のベッドまで独占するなんて。

とはいえ小狼君が、自分を毛布一枚で寝かせるようなことをする人でないことは、さくらもよく知ってる。

それなら・・・

 

「あ、あの、小狼君。」

「何だ?」

「よかったら、一緒に寝ない?」

「え”・・・」

 

 その提案は本来なら小狼に受け入れられるものではない。

しかしさくらは純粋に自分が寒くないようにと提案してるわけだし、もし自分が頑なに断れば

さくらに対する気持ちを察せられる可能性もある。

「ね、そうしよ。今夜寒くなるよ、絶対。」

無邪気な笑顔にダメを押される小狼。仕方なくベッドの端に遠慮がちに入る小狼。

 

 ベッドの両端で背中向きで丸まってる二人。とはいえ気温がどんどん下がっている以上

しっかりと布団をかぶらないとそこから体温が逃げてしまう。

「(うう、スキマが空いてて寒いよ~、はしっこ巻き込んじゃお)」

「(う、布団が引っ張られてる、寒い・・・掛布団、足から巻くか)」

「(はう~小狼君も巻き込んでる、寒いからもっと巻こう)」

「(うあ、さくらの奴、布団引っ張ってる、寝相悪いのかアイツ・・・)」

幅に制限のある掛布団を両側から巻き込めば、必然両者は中央にひっぱられることになる。

そして・・・

 

ーぴとっー

「(あ、小狼君の背中あったかい・・・)」

「うあっ!(引っ張り合ったんで背中が・・・///)」

「あ、ごめんね、なんか巻き取りすぎちゃって。」

振り向いて至近距離で小狼にてへへ、という顔をするさくらだが・・・

 

「あれ?これって・・・」

「な、なんだ?」

「・・・・・・・・春巻き?」

確かにベッド中央にさくら巻きと小狼巻きw

ふとんに巻かれた美少女と美少年が至近距離で向き合い、皿の上に並べられている自分たちを想像する。

 

「ぷっ!」

「くっ、ふふふふふ、あははははは・・・」

「くっくっくっ、あっはっはっはははっ!」

夕食に食べた春巻きを思い出して二人で大笑いする。

 

「ね、寒いから腕枕してもらっても、いい?」

ひとしきり至近距離で笑ったせいで、小狼はさくらにくっつかれることへの抵抗が少なくなっている。

「す、すきにしろよ・・・」

そう言って右手を伸ばし、頭を浮かせたさくらの首下に腕を敷く。

「ありがとー。」

とすっ、と頭を乗せるさくら。ふとんを肩までかぶり、思惑通りの結果にほくほくする。

「やっぱあったかいね、小狼君。」

「そ、そりゃそうだろ、36度くらいあるんだし、体温って。」

「そっか、真夏並みだもんね、おやすみ。」

「ああ、おやすみ。」

 

 

ー大丈夫だ、お前の魔法なら、きっとー

 

その夜さくらの見た夢、小狼と寄り添って、いつもより長い杖を二人で握っていた。

それ以上は分からない。

 

「うーん、何いまの夢・・・予知夢かな?」

「くー」

ふと横を見る。まるで夢の続きのように、その少年が寄り添って眠っている。

「あ、そういや小狼君と寝てたんだ、寝顔かわいい♪」

「・・・ん、」

「あ、起きた?おはよう小狼君。」

 

「え・・・うわぁっ!!///」

「どうしたの?」

どうしたと言われてもそりゃ叫ぶ。なんでさくらが俺の隣で寝て・・・と、夕べの記憶を思い出す。

それでも目覚めにこのシチュエーションはかなりキツい、たまらず目をそらす小狼。

「い、いや・・・///なんでもな・・・うひゃわぁっ!!!」

その先には、さらに最悪な光景があった。

「驚きなおすなんて変な小狼君、え、後ろ、ベランダの外?」

 

「ほえぇぇぇぇぇっ!雪女だよ、雪女さんがいるよおっ!!」

「ばか、雪女じゃない!よく見ろ・・・雪女のほうがまだマシかも・・・」

「え、ビデオ構えてるってことは・・・知世ちゃん?」

どこから侵入したのか、ベランダから知世が雪を全身に張り付かせて、凍えながら微笑んでいる。

 

「うふふふふ、さくらちゃんと李君の腕枕ベッド、確かに収録・・・ばた。」

笑顔のままベランダに倒れ込む知世。そんなヘブン顔されても死なれたら困る。

 

「た、大変だよぉ、小狼君、魔法使っていいよね!」

「ああ、しかしボディガードは何やって・・・げ!」

「そこかしこにみんな倒れてるよ~、レリーズ!炎よ、凍てついた者たちを癒せ、ファイアリー!!」

 

無事蘇生した一行が、駆けつけた園美にこってり説教されたのは言うまでもない。

 

 

「ただいま~、あうー疲れたよぉ」

今日が日曜で良かった、という表情で自分の部屋に戻るさくら。

出迎えたのはユエと、意味深な一言。

「どうだ、一人前の女性になれたのか?」

「ほえ?どういう意味、ユエさん」

ユエは少し呆れたような、また安堵したような表情でひと息つく。

「(まぁ、まだ早いか)」

 

「あれ?ケロちゃんどうしたの?元の姿に戻って寝込んでて・・・」

青い顔でさくらのベッドを占拠している、獣の姿のケルベロス。

腹を抑えてしんどそうに一言つぶやく。

 

「もう・・・カキ氷は・・・当分ええわ・・・」

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