「カードキャプターさくら」ショートストーリー集 作:三流FLASH職人
これも一応、お泊りスレに投稿した物の加筆版です。
が、今回のメインは「お泊り」ではありません。
-祭りの後-
「そっち終わったらあっちの飾りつけ撤去だぞ~」
「はう~、ちょっと休もうよお兄ちゃん・・・」
友枝小始め、なでしこ祭に参加した全員が祭りの後片付けに追われていた。
準備と違い一日で片づける必要があるため、早朝から急ピッチで行われている。
ただ、現場の惨状が酷いせいで、大人数でもなかなか進捗しない。
「そうはいかないだろ、祭りは片付けまでが祭りだぞ」
「でもでも、なんか私たち働きすぎじゃない?」
「そうだなぁ、なでしこ祭をこんなめちゃくちゃにした『張本人』でもとっ捕まえりゃ、
そいつに全部やらせるんだがな、なぁさ・く・ら♪」
「(うう・・・ホープさんの騒動でこうなっちゃったから逆らえない)」
そう、クロウ・カード「ナッシング」の騒動のせいで、現場はかなり悲惨な状況なのだ。
一応ナッシングが「消した」部分はキレイに元通りになってはいるが、そのあおりをくって
倒れたり割れたりしたものはさすがに治っていない。
不満を感じながらもさくらがせっせと働くのは、そんな後ろめたさもあってのことだ。
が、桃矢がさくらをコキ使うのには、実は別の理由があったりする。
「あーもう、明日は香港に帰るってのに、いつまで使われてるのよ木之本さん」
苺鈴があきれてさくら達を眺めている。本来ならカードの騒動も終わり、残りの日本滞在期間は
さくらと小狼の短い蜜月の時間であるべきハズなのに。
「せっかく告白して両想いになれましたのにねぇ、李君も力仕事に駆り出されてますし・・・」
ちりとりでガラスの破片を集めながら、知世がそばでそう呟く。
と、小狼が荷物の運搬を終え、さくらたちに近づいてくる。が、桃矢はすかさず次の指示を二人に与え
二人はまた反対方向に移動する羽目になる。
小狼にしても、このなでしこ祭の惨状に関わった以上、きちんと後始末をして帰りたいという気持ちが
本来ウマの合わない桃矢の指示にも従わせる。
というか桃矢の態度は、事情を知っているものからすれば、完全に「姑いびり」にしか見えない。
「あのお兄さんなんとかならないの?あからさまに二人の間に割って入ってるんだけど。」
不満たらたらの苺鈴に、雪兎が解説を入れる。
「桃矢は重度のシスコンだからね」
「シスコン、なにそれお菓子?」
「姉妹性愛者のことですわ、さくらちゃんは超絶可愛いですから」
「うげ!」
知世の解説にドン引きする苺鈴。
「しかし確かにこのままお別れじゃ可哀そうだね、なんとか二人の時間を作ってあげないと」
「それならよい案がありますわ、将を射るならまず馬からといいますし・・・」
知世は目を輝かせて二人に提案する。ちょうど母に頼まれていた、都合のいい交渉の懸案を持っていたのだ。
翌朝、桃矢は昨日の疲れもあって少し寝坊した。が、気分は実に晴れ晴れだ。
「ああ、いい朝だなぁ。なでしこ祭も片付いたし、あのガキは今日香港に帰るし」
「ご機嫌ですね桃矢君、さくらさんはもう出かけましたよ」
父、藤隆が笑顔で返す。
「香港から来てたガk・・・友達の見送りでしょう。」
ま、そのくらいは許してやるか、俺も鬼じゃねーし、と納得する。
桃矢にすれば、さすがに今回のさくらの起こした騒動は少々度が過ぎると思ったらしい。
友枝町の多くの人を巻き込んだ今回の騒動を起こしておきながら、残り期間ロクに反省もせず
あのガキとイチャイチャされては面白くないし、兄としてもどうかと思うのだ。
まぁそれも、昨日さくらが頑張ったんだからもういいだろう。
「見送りじゃなくて一緒に行くんですよ。」
「・・・え”!?」
笑顔で返す藤隆の言葉に固まる桃矢。一緒に行く・・・って、えええええ!?
「彼の家って香港の名士なんだそうで、園美君が企業間のお付き合いをしたがってましたから」
李家は香港では財閥の家系でもある。大道寺グループや雨宮コーポとも提携すればお互い事業拡大のチャンスは
確かにあるだろう。しかし、何故さくらまで?
「あいつと・・・香港に!?」
「ちょうどいい機会だから帰国に合わせて園美さん同行したんですよ、で、知世さんがさくらさんも一緒に、って。」
最悪だ!俺が寝てる間にそんな展開になっていたなんて・・・
「ひ、飛行機!飛行機の時間は!!」
「桃矢君のパスポートはもう切れてますよ、それに明日から大事なバイトじゃありませんでしたっけ?」
「ぐ・・・」
全てを見透かした上で笑顔を作る藤隆。いいかげん妹離れも必要ですしね、と思いながら。
「・・・ちょっと隣の廃屋の壁殴ってくる」
・・・まだ無理のようである。呆れつつ桃矢を気遣う藤隆。
「手をケガしないようにね」
-3日後、空港-
エスカレーターを降りてくるさくら達。その先に桃矢と藤隆が待ち構えている。
「あ、お父さんにお兄ちゃん、空港まで迎えに来てくれたんだ。」
はにかむさくらに、柔らかい笑顔で答える藤隆。
「おかえりなさいさくらさん。園美君、どうもありがとうございました」
藤隆の言葉に、珍しく上機嫌で答える園美。
「いーえー、こちらも実り多い旅でしたのよ、ねぇ知世?」
「はふぅ~~~♪」
話を振られた知世は極端にユルんだ顔で、今回の旅行の「収穫」を脳内で反芻している模様。
「あ、あはは・・・知世ちゃん戻ってきて~」
「で、どうでした?二度目の香港は。」
「すっごく楽しかったよ!おととし行けなかった所も行ったし。」
藤隆の問いに子供っぽく答えるさくら。が、若干演技をはらんでいるのが彼女の家族のみ察知できる。
「で、他には?」
詰め寄る桃矢に、若干の冷や汗を隠しながら答えるさくら。
「め、苺鈴ちゃんの友達とも仲良くなったんだよ~またお手紙くれるって」
「ほ・か・に・は?」
桃矢の追及の意図を悟ったか、話を色々そらそうとリュックを下ろして前に抱える。
「お料理もおいしかったよ~、あ、これお土産、おいしーんだよ」
「・・・で、あのガ・キ・と・は?」
桃矢の追及は止まらない。さくらは目を泳がせながら逃げを決め込む。
「あ、あはは・・・さ、さて早く帰ろ、宿題やんなきゃいけないし、当番もたまってるし」
「お、おい、さくら・・・」
「まぁ、あの二人はねぇ。」
ちょっと照れた、微笑ましい顔で園美がさくらを見つめる。
「何かあったんですか、園美さん!」
園美は答えずにうふふ、と笑うと知世の方を見て、ねぇ。と一言。
「はぁぁぁぁ・・・まさかさくらちゃんと李君のあんなシーンやこんなシーンやそんなシーンまで撮影できるなんて・・・」
未だトリップ状態の知世。園美はやれやれ、という表情で娘の醜態を指摘する。
「知世、鼻血出てるわよ、あとヨダレも。」
「どうしたんですか桃矢君、青い顔して。」
さすがにこの反応で桃矢も察したようだ、どうやら香港でそうとう進展したらしい、二人の仲が。
何かを殴りたい桃矢は、一言。
「・・・ちょっと解体業者に面接受けに行ってくる」
-さらに二日後-
「こんちわー」
「ん、どうしたんだユキ」
「藤隆さんに呼ばれてね」
木之本家に雪兎が来るのは別に珍しくないが、藤隆に呼ばれてというのはわりと珍しい。
ダイニングでは藤孝がお茶とお茶菓子を用意して待っていた。
「いらっしゃい、ちょっと3人で見たいテレビがありましてね。」
これまた珍しい、と桃矢は思う。3人の共通の話題はいくつかあるが、一緒にテレビっていうのは
今までになかったパターンだ。何事かと思いながらソファーに座る桃矢、雪兎もそれに続き
藤隆がTVのリモコンを入れる。
-こちら香港にできたばかりの結婚式場、なんと世界どの宗派の式でも対応可能という
まさに国際都市香港ならではのイベントボール-
-先日のプレイベントで、新郎新婦に扮装したのはなんと!かわいい小学生のカップル。
このサプライズに見物人はもちろん、通りがかった人たちも次々見物に-
「ぶーーーーーっ!」
豪快に紅茶を吹き出す桃矢。そらそうだ、自分の妹が新婦の格好でデカデカと画面に映っているのだから。
「さくらちゃんと李君だ!うっわー似合ってるね♪」
雪兎は嬉しそうに画面を見る。彼は知世から詳細を聞いていたが、実際に見るとさすがに頬も緩む。
自分が応援していた小さなカップルが新郎新婦に扮しているのだから。
ちなみにマスコミの最前列には、これまた見知った黒髪の少女が恍惚の表情で二人にビデオカメラを
向けている。なるほど、これはさぞいい絵が撮れたことだろう。
石化した桃矢の眼前で、番組は更に進む。
-お色直しをして登場するたびに大勢のカメラのフラッシュに包まれていました。
中にはちょっと過激な南国風の民族衣装とかもありまして・・・顔を真っ赤にしてる新郎新婦の可愛さに
思わず見物人も笑みがこぼれっぱなしでした-
民族衣装というか、もうほとんど葉っぱで出来た水着レベルに、雪兎と藤隆もうわっ、という表情。
桃矢に至っては石化した体が足元からガラガラ崩れていく(イメージ的に)
「あが、が、ががが・・・」
-最後にオーソドックスなキリスト式の衣装で、クライマックスは誓いのキス-
ぶつっ!!
唐突に消えるテレビ。桃矢が無言でリモコンを掲げている。
「切らないでくださいよ、せっかくいいところなんですから」
「ん、桃矢、どこいくの?」
破壊衝動に駆られた桃矢は、どっかの巨大ロボットみたいに目を赤く光らせながら、ゆらり、と立ち上がる。
「・・・ちょっと日本ブレ〇ク工業に就職してくる」
「あそこもうないですよ。」
「藤隆の言葉は、桃矢には聞こえなかったようだ。ちゃんちゃん♪」
モノローグっぽく雪兎がシメる。お後がよろしいようで。
ここで書いた「香港での苺鈴の友達」が、後の「魔法の終わる日」での
ステラと林杏のベースになっています。
まぁこれ書いた時はそこまでキャラ固まっていませんでしたが。