「カードキャプターさくら」ショートストーリー集 作:三流FLASH職人
今回もちょっとえっちな話なので、苦手な人は注意です。
「ただいまー」
夜、木之本家。父の声を玄関に聞き、さくらが返す。
「あ、お父さんおかえりー、って・・・なんで李君がいるの?」
確かに、父、藤隆の隣には小狼がバツの悪そうな顔で佇んでいる。
「そこのスーパーでばったり会ったんですよ、以前学校の説明会で考古学に
興味持たれたみたいなんで、話がてら夕食に誘ったんです。」
「そうなんだー、いらっしゃい。」
「あ、ああ・・・」
藤隆が以前学校に招かれて公演をした社会職業抗議。その際藤隆の話に誰よりも
食いついたのが小狼だった。
機嫌を良くした藤隆は彼を自宅に誘ったが、その時はどうもさくらと仲が良くないのを
見て取って無理には誘わなかった。
しかし最近はさくら自身が、家で彼の話をすることが多くなった。
親密感は上がったとはいえ、やはり男子を連れてくるのはさくらにも抵抗があるだろう、
そんなことを思っていると、ふと彼とスーパーで出会ったので、これ幸いと誘ったのだ。
「桃矢君は今修学旅行ですからね。ゆっくりしていってください。」
「は、はいっ!」
夕食後、藤隆と小狼は地下の書庫に明かりと机イスを持ち込んで、早速考古学談義に
いそしんでいる。
「それでね、この仮面は古代インカの遺跡から出土した貴重なものなんですよ。」
「ふんふん」
石で出来た強面の仮面を挟んで、真剣な表情で語る二人。
「でもこの仮面、最近ヨーロッパやエジプトでも破片が発見されれるんです。」
「え、どうして・・・」
南米インカから出土したアイテムがヨーロッパでも?という表情の小狼。
「誰かが盗掘をして持ち去ったのでは、と言われていますが、不思議なことに持ち主は
みんな原因不明で亡くなっているんです。」
「じゃあそれは、インカの呪い・・・!?」
エジプトのピラミッド発掘で多くの人が原因不明の死を遂げたことは有名だ。
それと同じ現象が起きたのか、と興味津々な小狼。
「この矢はですねぇ、似たようなデザインのものが世界各地で見つかっているんです、香港でもね。」
「そうなんですか!?」
鉄製と思われる矢じりを机に置いて、嬉しそうに語る藤隆。
「DNA検査によると、複数の人間の血液が付着していたそうなんですが、不思議なことに
この矢が戦争や刑罰に使われた記録が無いんですよ。」
「え・・・それじゃ、この矢で刺された人って?」
「よく分かってはいませんが、その時は死ななかった可能性が高いです。でも多くはその後
争いに巻き込まれて死んでいるのが確認されています。」
藤隆の言葉に、呪いの存在を信じさせるものを感じ、興味津々でその矢を眺める小狼。
「もしかすると、その矢には人の未来を変える何かがあるのかも知れません。」
書庫への扉は開けっ放しになっているので、二人の会話はキッチンまで、まる聞こえである。
「いやぁ、お父はん上機嫌やなぁ」
洗い物をするさくらの際でケロが言う。
「お兄ちゃんがああいう話に興味持たないからねー、うれしいんだよきっと。」
正確には興味を持たないのではなく、霊的な能力のある兄、桃矢にとって、それらのアイテムは
まったく意味のないデタラメアイテムか、逆に絶対かかわるべきではない危険物の2択なのだ。
どちらにせよ、答えを言ってしまうと、父、藤隆の楽しみを奪ってしまうことになる。
なので桃矢は考古学の話には、なるべく首を突っ込まないようにしているのだ。
と、聞き耳を立てるさくらの意識を、うるさめのベルが遮断する。
RRRRRR・・・
「あ、電話だ、出てあげなきゃ」
「今日は泊まっていきなさい、まだまだ面白い話や出土品もありますから。」
「え、いいん・・・ですか?」
正確には藤隆が帰したくないのだ。この年頃の少年が自分の話にこうも食いついてくれるとは。
幸い明日は日曜日、彼のご家族に了承を取らないといけないが、このさい彼のご家族とも
仲良くなっておこう、さくらの為にもなるしね。
そんなことを企む藤隆の想いを、さくらの声が遮断する。
『お父さーん、大学から電話ーっ』
「え、はい、はい・・・分かりました、すぐ行きます。」
突然の大学からの呼び出しだった。とはいえ用事は藤隆がまとめたファイルを
生徒の一人が見ていたところ、落っことしてバラけてしまっただけらしい。
順番にファイルしておかないと研究の順序に支障が出るとのことで、やむなく藤隆に連絡が来たのだ。
自分が行けば、ものの20分で解決するだろう。学校まで往復1時間としても、さした労力でもない。
「どうしたの?」
「なんかトラブルらしくて来てほしいそうです、すぐ戻りますよ。」
車のキーを取り、玄関に向かう。と、振り向いて一言。
「あ、彼は今日泊まりですから。」
「ほえっ!?」
さくらの悲鳴にかまわず続ける藤隆。
「李君でしたね、電話使っていいですから、お家に許可とってください。帰ったら私からも
電話入れますから。」
「・・・///」
赤面する小狼に、涼しい顔で続ける。
「お風呂沸いてますから入ってもらいなさい。じゃあ、待っててくださいね~」
ドアを閉め、上機嫌で出かける藤隆。
あとに残ったのは立場上、とても気まずいさくらと小狼。
「・・・」
「・・・」
小狼がはぁ、とため息をつき、状況を動かす。
「やっぱり、帰る。」
「え、でもでも、お父さん楽しみにしてたのに・・・」
父に気遣ってフォローを入れるさくらに、小狼が正論で返す。
「夜、女子の家に二人きりでいたなんて知られてみろ、そういうのは、良くないだろ。」
確かに、いろいろ良くない噂が立ちそうだ。でも帰るとお父さんさぞがっかりするだろうし・・・
「じゃ、じゃあ、知世ちゃんも呼ぼうか、それならいいでしょ?」
「この時間に来られるのか?」
現在、午後7時半。今から小学生を家に呼ぶのは少々非常識ではある。
普通は。
「こんばんわ、さくらちゃん、ケロちゃん。」
手にさくらのコスチュームが入った紙袋を下げて、満面の笑顔で挨拶する知世。
「よう知世、無理ゆーてすまんなぁ」
ケロの言う「無理」は「カード集めが絡まないのに」という意味だが、知世にとって
それは障害には全くなっていなかった。着せ替えはカード関係なしに出来るし、小狼に
感想を聞くことも出来るのだから。
「入って入って、李君は今お風呂だから。」
トントン、というノックに続き、さくらの部屋のドアを開けて小狼が入ってくる。
「お先、風呂空いたぞ。」
「あ、李君こんばんわ。」
本当に大道寺がいることに驚く小狼。というか彼女は木之本の為ならどれだけ行動できるのだろうか。
と、知世が怪訝そうな顔で小狼に告げる。
「・・・あら?いけませんわ李君、後ろ髪に石鹸の泡が残ってますわよ。」
「なんや、しまらんなぁ小僧。」
「え?俺、頭は洗ってないけど。」
後頭部に手を当てて訝しがる小狼。あれ?確かに泡が・・・
小狼の手が泡に触れたその時だった。突然小狼のシャツのあらゆる隙間から、細かな泡が
一斉に噴き出してくる!
「うわっ!あ、あははははっ!、く、くすぐったい、何だこれーっ!」
「ほえええっ!何々!?李君の服から泡がいっぱい・・・あふれ出していく?」
上半身を必死で抑え込んで悶える小狼と、それを見て固まる二人と一匹。
と、さくらは小狼から、おなじみの気配を感じ取る。
「これは、クロウカードの気配!?」
その言葉を聞いたケロがびくん!と固まり、顔をみるみる青ざめさせていく。
「こいつは、まさか・・・まさかっ!ついに、あの最悪の・・・あのカードが!」
2,3歩たじろぎ、言葉を続ける。よりによって厄介なヤツが・・・
「ケロちゃん知ってるの?」
「間違いない、こいつはあの・・・思い出すだけでもゾッとする、最凶の悪魔のカード!その名も・・・」
「その名も?」
「『バブル』やぁーっ!」
「はははははっ、ちょ、何とかしてくれーっ!」
ケロが勿体付ける間も、小狼のシャツからはどんどん泡が溢れ出している。転げ悶えながら
必死で抵抗しているが、服の中にいるのでは手の打ちようがない。
「全身から泡があふれてますわ、いったいどうすれば・・・」
「落ち着け小僧!まずは本体を出さな、服を脱ぐんや!」
「わ、わかった。これで・・・っ!」
必死になってシャツを脱ぐ小狼。それによりカードの精霊の姿が一瞬だけあらわになる・・・が。
「うわぁ!ちょ、ズボンの中に入ってったぁっ!」
姿を晒すのが嫌だったのか、それとももう上半身は洗い終えたのか、ともかく小狼のズボンに
潜り込む精霊。
「下も脱げ!外に出さんと封印もできんで!」
「(ほええ!ちょ、ちょっとそれは・・・)」
「で、できるかあっ!(女の子二人の前で・・・)」
赤面するさくらと、必死にズボンを抑えて抵抗する小狼。
「恥ずかしがっとる場合か!もおええ、わいが脱がす!」
封印の使命に燃えるケロが小狼に取り付き、ズボンに手を掛ける。
「ちょ、ちょっとケロちゃん!」
「おりゃあぁぁっ!」
さくらの抗議を無視して、一気に小狼のズボンを下ろすケロ。と、一匹の精霊が再び姿を現す。
・・・小狼のパンツと共に。
「まぁ♪」
「今やさくら!封印を・・・って、おらん?」
「さくらちゃんは今さっき、顔を抑えながら走っていきましたわ。」
階段をけたたましく降りていくさくらの足音が響く。
「(知世は平気なんか・・・)」
肝心のさくらがいないと封印は出来ない。ケロと知世はバブルを小狼に押し付け、外の
さくらと合流する。
「もうっ、何なのよあのカード!」
赤面して怒るさくらに、平然とした知世が続く。
「バブルっておっしゃってましたわよね、どんなカードなんですの?」
「最悪のカード、って言ってたよね、そんな怖いカードなの?」
そんなカードに襲われている小狼を一人残してきたことを思い出し、心配顔でさくらも問う。
「ああ、あいつはな・・・体をキレイに洗うカードや。」
盛大にずっこけるさくら。知世がきょとんとした表情で質問を続ける。
「・・・他には?」
「それだけや。」
「何よそれえぇぇぇっ!」
元気に怒りの表情で立ち上がり、ケロとクロウに抗議するさくら。
「アホ!体は自分で洗うから耐えられるんや、他人に、ましてやそれを使命にするカードに
徹底的に洗われてみぃ!わいも何度クロウに面白がって洗われたことやら・・・」
『あははははは・・・や、やめぇえぇぇぇ・・・』
遠方から小狼の悲鳴が聞こえる。さすがにこの状況では、彼にも成す術は無いようだ。
「ああなるわけですね。」
なるほど、という表情の知世の横で、さくらは顔を真っ赤にして心配する。
「///うわぁ・・・李君大丈夫かなぁ・・・」
「あいつもクロウの血筋やからなぁ、バブルの奴も昔を思い出して張り切っとるわ。」
やがて悲鳴は止まり、少しおいて小狼がげっそりした顔で家から出てくる。何故か式服を着込んで。
「ゼェゼェ・・・ひ、酷い目にあった・・・」
「大丈夫、李君?」
「式服を持ってきてらしたんですね。お肌もツヤツヤになられてますわ。」
実はこの式服、霊的なものを弾く性質がある。これを着ていればこんな目には合わなかったのだが
いかんせん風呂上りでは間が悪すぎた。
「で、カードは、どこいったんや?」
ケロの問いに、青い顔で答える小狼。
「と、友枝小学校の方面に、飛んで行った。」
友枝小に到着。ここでもバブルは猛威を振るっていた。
「ああっ、女神像もツヤツヤに・・・」
「時計塔も鉄棒もピカピカだよ~、ある意味、便利なカードだね。」
ノンキなことだが、夜だからよかったのだ。もし昼間なら犠牲者がいかほどになったか、想像するのが怖い。
「言うとる場合か!おったで、あの泡の柱がそうや!」
ケロが差す先、まるで竜巻のように泡が集まっている。さくらたちに気付いたか、こちらに気配を向ける。
「おい、気をつけろ、また来るぞ!」
「うん!」
さくらはカードホルスターに手を伸ばす。相手がバブルなら、使うカードは・・・ウインディで吹き飛ばす!
さくらに迫る泡の竜巻、さくらはウインディのカードを放り投げ、杖を打ち下ろし・・・
-つるっ!-
封印の杖がさくらの両手からすっぽ抜ける。ふと見ると杖のグリップと、さくらの手袋に泡。
いつのまに!
考える間もなく、泡の柱がさくらに倒れ込み、そのまま包まれてしまう。
「ああっ!さくらちゃんが泡の塊に飲み込まれて・・・さくらちゃん!」
「まずいぞ!完全に捕まった、これじゃ俺の二の舞だ!」
剣を構える小狼だが、さくらがどこにいるか分からない以上、むやみに攻撃は出来ない。
だが、このままでは・・・
「ということは、こんどはさくらちゃんが全身を・・・洗われて・・・?」
「ああ!早く何とかしないと。」
が、次の知世の反応は予想外だった。
「くすぐったさに悶えるさくらちゃん、こ、これは・・・撮らねば!」
「・・・おい。」
呆れる小狼をよそに、目を星にして泡に迫る知世。さくらを傷つけるなら許容できないが
害が無い上にキレイにしてくれるカードなら、知世にしても止める理由はない。
まぁ多少暴走気味ではあるが。
が、その泡の山から、ずぼっ!と出てくる人影。さくらだ。
「ぷはっ!」
「さくらちゃん、大丈夫ですの?」
何故か残念そうなトーンをはらんで言うが、さくらは気付いてなさそうだ。
「うん。」
「全然平気みたいだな・・・」
小狼が感心する。女の子ってくすぐったさには強いのか?
「というか、私なんにもされなかったよ。」
え?という顔をする一同。となれば、バブルは一体・・・
「そういえば、ケロちゃんは?」
さくらの質問に呼応するように、泡の山から悲鳴がこだまする。
「うひゃひゃひゃひゃ・・・やめんかいこのアホーっ!」
「あ、ケロちゃんが標的になってる・・・」
「(あらあら守護者さん、しばらく会わないうちにずいぶん汚れてますね~)」
久々に本来の、そして懐かしい『お仕事』を担ってバブルは上機嫌そうだ。
さくら、小狼、知世の3人は居並んでその様子を見ている。さて、どうしようかコレ。
しばらくほっといたらキレイになって終わるんだし、無理に止めなくても・・・
「こ、こら~っ!傍観しとらんではよ何とかせんかーいっ!」
ケロの必死の抗議により、仕方なく封印に向かう一同。
「とりあえず、風華招来!」
小狼の術により、泡が吹き飛ばされてバブルの本体が、ケロと共にあらわになる。
「あの人魚さんが本体ですか、なかなかに美人ですわね。」
知世の感想に構わず、さくらに指示を出す小狼。
「今だ、早く封印するんだ!」
杖を拾ってきたさくらが、今度は落とさないようにしっかりと握り、バブルに杖を打ち下ろす。
「汝のあるべき姿の戻れ、クロウカードっ!」
杖が輝いたその瞬間、バブルはその姿を無数の泡に変え、さくらの周りを取り囲む。
瞬時に泡に包まれるさくら。が、そのまま泡は杖の回りに収縮され、やがて1枚のカードになる。
最後の抵抗をされたかと心配した小狼が、さくらに声をかける。
「大丈夫か?」
「うん。」
「良かった・・・」
笑顔で返すさくらに、小狼も安堵の笑顔を見せる。
「ワ、ワイの心配も、してや(ぐったり)」
ー1年4か月後ー
夏休み、知世が持ち込んだ「さくらPV」を鑑賞した後、未編集のビデオが再生される。
それはかつて告白されて、その返事を返せないまま別れた人とのカードの封印、共同作業。
『おい、気をつけろ、また来るぞ!』
『うん!』
「李君が香港にお帰りになってから、4か月ですわね。」
「///・・・うん(あんなコトもあったなぁ・・・)」
藤隆さーん、それあかんヤツやーーーーっ!!