白音は仙術を使わず気を扱うようです   作:煌めく伯爵

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始まり

冥界のどこぞの森で肩で息をしながら木に寄りかかる少女、白音。彼女は猫又という妖怪であり姉がいるのだが、こんな事になっているのはその姉が元凶だった。彼女は今、逃走中なのだ。姉が罪を犯し、姉妹だからという理由で、自分も同じ事をしでかすかもしれないと危険視され、殺されそうになったので逃げ出したのだ。だがしかし、このままではいつか奴らに捕まって抹殺されてしまうだろう。昔、出血多量で死にかけた際に血を分けてくれたターブルと言う男性の為にもそう易々と死ぬわけにはいかない。

 

「……」

 

白音は考える。この状況をどう切り抜けるか、と。彼女は猫又であり仙術と言うものを使えるのだが、姉はその力に呑まれて罪を犯してしまったので、それ以外の方法を考えなければいけない。とここで白音はある疑問が浮かぶ。仙術と言うのは言ってしまえば気を操る様なものなのだが、果たして気は仙術を使わなければ使えないのか?と。乱れた息を整え、精神統一を始める。仙術が発動しない様に細心の注意を払いながら、精神統一を続けていると自身の体の中に何か不思議な力を感じた。それが何か確認しようとした時、奴らは現れた。

 

「見つけたぜ」

 

自分を追っている存在、悪魔。彼らは深刻な悪魔不足に悩まされていて、それぞれが主となり眷属を増やしているのである。白音の姉が犯した罪とはその主を殺そうとしたのである。姉はその主の眷属だったのだが、前述の通り仙術の力に呑まれ殺しに走ったらしい。らしいと言うのは実際に見たわけではないからだ。

 

「さあ、観念してもらおうか」

 

ジリジリと距離を詰める悪魔たち。白音に抵抗する術はない。使えるはずの仙術は姉が呑まれた事もあり恐怖を抱いて使えず、かと言いってそれ以外の何かがあるわけでもない。いや、1つだけあるのだが、それは彼女自身どう言うものか分かっていないが、ダメ元で先程感じた不思議な力を自分の周囲に放出する。放たれたそれはドーム状のバリアの様に白音の周りを覆い、迫って来ていた悪魔がそれに触れると、彼方へと吹っ飛ばされていった。

 

「え?」

 

まさか、こんな力だと思っていなかった白音は一瞬唖然とするが、すぐさま気を取り直し、その場から離れていった。

 

 

辛くも逃走に成功した白音は、人間界にいた。特に誰かがいるだとかは無いが、最低限まで力を落とせし、人混みに紛れてしまえば見つける事は困難だろうと考えたのだ。まあ、奴らが無差別殺人等をして来たら意味ないのだが。

 

「それにしても、あの力は一体…?」

 

人混みに紛れつつ、あの不思議な力の事を考える。仙術を通して操る気を知らないため、比較はできないが、姉から聞いたものとは違うので、別物であることがわかる。がしかし、名称がないと言うのも変なので、これを気と名付ける事にした。仙術を使わないので別に問題ないだろう。もし万が一恐怖を克服して仙術を使う日が来たら、その時に別の名にすればいいのだ。

 

「しかし、これからどうしましょうか?」

 

逃げ切ったとは言え住まう場所は無く、頼れる人もいない。となると残るは山籠りだ。猪やらなんやらを狩れば生き長らえる事は可能だし、気について色々と試すこともできるだろう。肌や髪が傷んだりするだろうが、死ぬよりはマシだ。そう自分に言い聞かせて、白音は山へと向うのだった。

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