白音は仙術を使わず気を扱うようです 作:煌めく伯爵
自身に流れるサイヤの血について自覚し、サイヤ人について色々聞いた日から約1ヶ月程度、リアス・グレモリー達は学校が夏休みに入り里帰りをするらしいが、リアス・グレモリー達がやっている部活、オカルト研究部の顧問となったアザゼルに誘われて白音達も冥界に行く事になった。最初こそ断ったが、冥界にいる奴らと戦って修行するのも良いんじゃないか?とアザゼルに言われ、それに納得してしまったこともあり、行くことになってしまった。リアス・グレモリー達と一緒に行くとまず間違いなく何かしら起きるだろうから、アザゼルと共にリアス・グレモリー達とは別ルートで行くことになった。流石に野宿する訳にはいかないらしく、向こうのホテルで宿泊することになっている。
「で、なんで私たちはここにいるんですか」
白音は心底不思議そうにそう呟く。そう、白音達は何故か、悪魔達のパーティに巻き込まれていた。サーゼクスによって連れてこられてしまったのだ。偶々偶然サーゼクスと出会ってしまい逃げられずこのざまである。人混み(悪魔混み?)に呑まれてレイナーレ達とはぐれてしまったが、気を探るに上手くここから出れた様だ。リアス・グレモリー達と出会う前に抜け出したいものだ。
「さて、私もさっさと抜け出してしましょう」
そう言って、抜け出そうとしたその時、白音の前に黒猫が現れ、まるでついてこいとでも言う様にゆっくりと窓から外に出て森へと向かう黒猫。白音は多少怪しみながらもある確信を持ってそれを追った。
*
森へと入り、黒猫を見失ってしまった白音。しかし、気を感じ取った白音は近くの木の枝を見上げる。そこには和服の女性がいた。
「久し振りね。白音」
「姉……さま……」
和服女子の正体は白音の姉である黒歌であった。死んだと思っていたが実は生きていた事は喜ばしいことだが今更現れた姉に警戒の目を向ける。その目に黒歌はおどけた反応を示す。
「そんな目で姉である私を見るなんて、お姉ちゃんこわーい。なんてね」
「巫山戯ないでください。何故、今頃姿を現したんですか」
「ん?それは貴女を連れて行くためよ」
「連れて行く?」
「そ。今回は私の単独行動だけど、貴女は私と同じ力と私すら知らない別の“気”を使うことが出来る。ヴァーリもその力に興味を持ってるみたいだしね。だから、連れて行く。大丈夫、仙術なら私が優しく教えてあげるし、ヴァーリだって貴女が仲間になるなら反対はしてこないはずよ」
ヴァーリという名には聞き覚えがある。禍の団に入った白龍皇だったはずだ。その名前を言い、尚且つ仲間になるという事はつまり彼女は禍の団にいるという事だろう。
「姉さま。まさか禍の団に!?」
「そうよ。私はヴァーリに拾われて禍の団に入っているにゃん」
信じられなかった。と言うより、信じたくなかった。普通、自分の姉が下手すれば世界を滅ぼす要因になっているなど夢にも思わないだろう。だからこそ、白音は今この現状を否定したかった。がしかし、現実は非情である。黒歌は白音にどうするか迫る。一緒に行けば、また姉と暮らせる。そう考えるとついて言ってもいい様な気がするが、白音は首を横に振った。
「嫌なのね」
「私は、いくらもう一度姉さまと一緒に過ごせるとしても、そっちには行きません」
「そう、なら……」
最後まで聞く事なく、白音は後方へと飛んだ。瞬間、先程までいた場所に小規模のクレーターができ、その中心に黒歌はいた。どうやら魔力を拳に纏わせた様だ。ついでに、自分と黒歌以外の気を感じ取れなくなってることから結界を張り外界から遮断された可能性もある。
「なら、無理矢理連れて行くにゃん。覚悟してね。白音」
「いつまでも弱い私だと思わないことです。界王拳10倍!」
黒歌は幻術も覚えたのか、一瞬のうちに何人にも増える。しかし、気を発しているのは一人だけなのですぐさま見破り殴りかかる。拳は受け止められたが、身体をねじり蹴りを放つ。しかし、それも避けられ地面に叩きつけられる。そして、そのまま足で頭を押さえつけられ、立てなくなってしまう。
「クッ!やはり強い」
「当たり前にゃん。いくら強くなったからって、姉である私に勝てるわけないにゃん。ほら、一緒に行こ?美味しいもの食べて、時には美味しいお酒に酔って、戦いたいときに戦ってこんなに良い生活はないと思うけど」
「そう言う訳には……いきません。私にも……仲間が……いますから……」
「そう、なら仕方ないわ。もう容赦はしないにゃん」
そう言って、足を離すと同時にありったけの魔力弾を白音に打ち込む。舞い上がった土に埋もれる様な形になった白音を見て、黒歌はふうと息を吐く。
「さ、あとは連れて行くだけね」
「私……を……あまり……甘く……見ないほう……が……いい……ですよ」
ボロボロになりながらゆっくりと立ち上がる白音。白音にはどうしても気になることがあった。だからこそそれを聞かなければならなかった。
「姉……さま。質問……いいですか」
「ん?なにかにゃん?」
「姉さま……は……私を……『妹』として見てるのか。『道具』……として見てるのか。どっち……ですか」
先程の黒歌の言い方では、自分が気もしくは仙術を使えるから連れて行くと言っていた。なら、もし自分がその両方とも使えなかったらどうしていたのか。そう疑問に思った。眼を真っ直ぐに黒歌に向けて答えを待つ。
「そう……ね。どっちかと言うなら、今は『道具』として見てるほうが強いかにゃん。いつかは絶対『妹』として迎えに行くつもりだったけど、このタイミングで迎えに来たのは貴女の力に目をつけたから。だから、『今』は貴女を『道具』として見てる」
その答えを聞いて、白音の中に何かが湧き上がるのを感じた。あの日から一度も会わずに、自分が心配してるのを知ってか知らずか禍の団に入り、今更会ったかと思えば『今』だけとは言え、『妹』としてよりも戦力強化のための『道具』として見ている。そんな勝手な姉に、そして姉をそんなにさせてしまったであろう自身の弱さに腹が立ってくる。もっと自分が強ければ姉は道を間違えることもなかったと怒りが沸き起こる。そして、プチンと白音の中でなにかが切れた。