白音は仙術を使わず気を扱うようです 作:煌めく伯爵
「──で、どうするの?アーシア」
「ま、うちらはどっちにしてもアーシアの意見を尊重するっすよ」
あの後、何とか一度ディオドラには帰ってもらって、白音たちは近くのファミレスで話し合いをしていた。この話し合いの目的は言わずもがななのだが、まず第一にアーシア自身がどう思っているかが問題であろう。彼女にその気があるのならば心から祝福して送り出すつもりではあるが、もしそうでない場合は白音たちは『家族』としてなんとしても止めるであろう。まあ、それはあくまでアーシアがちゃんと納得して決めた場合に限るのだが。
「どうするか……ですか」
ディオドラを帰す際にこれだけはと渡された指輪を眺めながらアーシアは考える。実のところ、アーシアは『好き』と言う感情を理解できていない。それ故に、自分がディオドラの事を『好き』なのかどうかがわからない。それに、ディオドラともし結婚したら、白音たちとはどうなるのだろうか。まず間違いなく今までのように毎日会えるわけではなくなるだろうし、ミッテルトとレイナーレに関しては堕天使である。最悪、今後一生会えなくなる可能性がないとも言い切れない。当然だ、協定が結ばれたといっても全員が全員それを守るわけもない。例えば、ストッパーがいない状態でレイナーレ辺りがちょっと真面目に挑発すれば、リアス・グレモリーは攻撃をしてくるだろう。ディオドラがリアス・グレモリー並みに短気だとは思わないが、それでも結婚すれば悪魔の一員である。遅かれ早かれリアス・グレモリーと関わることになるだろう。そうなれば必然的に会える回数は減る。それは良くない。
「本当に、どうしましょう」
世の結婚を考える女性たちも、こんな迷いや葛藤をしているのだろうか。それでも、それを振り切って結婚したり、踏みとどまったりするのだろう。しかし、それは相手をそれなりに知っていなければ成立しない。自分が結婚し、幸せになれるかどうかを判断するにあたって、相手の性格や如何にして生活しているのかなどを知り、それを加味しても幸せになれると思ったから結婚する。アーシアの中の結婚像はこんな感じだが、相手の事を何も知らない今回の状況ではそれは何の意味もなさない。うわさに聞いたお見合いですら、相手の事を多少は知れるらしいのに、今回は情報0しかし相手はこっちの事を知っている。下手すれば政略結婚よりも酷い状況と言えるだろう。
「うぅぅ……」
「別に今決めることじゃないんじゃないですか?」
「え?」
思考の波に呑まれてるアーシアを見かねて、白音が声をかける。アーシアは何としてもこの場で決めようとしているが、白音的にはすぐに決める必要はないと考える。決められないものを無理に決める必要はない。本当にアーシアの事を思っているなら、即決できなくとも待ってくれるだろう。そもそも、その日のうちに結婚を決断する方が珍しい。それに加えてアーシアは元聖女、箱入り娘のように扱われていた可能性もあるだろう。現に割と世間知らずであるわけだし。レイナーレたちも、もしも決まってるなら程度にしか聞いていない。
「で、でも」
「良いのよ、アーシア。婿入りは別だけど、基本的に結婚すれば女性側の環境は必ず多少変化するわ。まあ、勿論例外もあるけどね。でも、結婚ってのはそれだけ女性にとって大事なことなの。別に考えるのをやめろって言ってる訳じゃないのよ?ただ、後悔しないようにしっかりと悩んで結果を出しなさい。堕天使の私に言われてたら世話ないわよ」
「てっきり、まだ決められないみたいなことを言われると思ってたんすけどね。まさかここまで考えるとは、真面目なのはアーシアの良い所っすけど、短所が長所になるように長所も見方によっては短所っすね。ま、うちが余計な事言ったからかもしれないっすけど」
「そもそも、話し合いをすること自体が間違ってたのかもしれませんね。それより、お腹がすきましたね」
そう言って、店員を呼び注文を始める白音、飲み干したドリンクを再び補給しにドリンクバーへと向かうミッテルト、温かいものが飲みたいとスープバーへと向かうレイナーレ。こうして話し合いはなし崩し的に終了した。
文才が欲しい。遅くなってすいません