白音は仙術を使わず気を扱うようです   作:煌めく伯爵

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気の修行と堕天使

あれから、10日たった。アーシアもこの生活に慣れてきたようだが、この10日間でいくつかの問題も発覚した。その中でも1番の問題はアーシア自身が戦う力を持ってないという事である。なんとなく初日から危惧していた事だが、数日前、彼女が1人で木の実を取りに行った際に、熊に襲われたのをきっかけに、本格的にどうしようか考え始めた。その時は、白音が助けた為事なきを得たのだが、少なくとも自分だけでも守れる力が無ければいつかは死んでしまうだろう。白音だって、毎度絶対に助けられるわけではないのだから。

 

「というわけで、アーシアさん。貴女には気を覚えてもらいます」

「私にできるでしょうか?」

「大丈夫です。覚えるのは簡単ですから。私の言う通りにすればすぐですよ」

 

考えた末、気を教えるという結論にたどり着いた。気は生物であるならば、全てのものが持っているので、覚える事さえ出来れば問題なく使う事ができる。その上 、覚えるのだって別段難しいわけでも無い。唯一難しいのはコントロールする事ぐらいだろう。気については初日に教えてあるので、問題ないだろう。

 

「まず、リラックス出来る姿勢になってください。あとはこうやって両手を向かい合わせて、自分の中に流れる気を引き出すんです。力んじゃダメですよ。落ち着いて集中するんです」

「わかりました。やってみます」

 

アーシアは呑み込みが早いようで2回で成功させた。因みに1回目は気ではなく、魔力を引き出してしまったが、むしろ魔力も使えるようになったのは好都合だろう。

 

「出来ました!これで私も白音さんみたいに空を飛べたり出来るんですか?」

「まだ、出来ませんね。コントロールしないといけません。飛ぶくらいなら体の力を抜いて、気を集中させて、って飛べてるじゃないですか」

「えっと、こんな感じかなぁって思いながらやったら出来ちゃいました」

 

どうやら、気をコントロールすることに関しては、白音よりアーシアの方が上手いようだ。この様子なら修行さえしっかりすれば界王拳もモノに出来るだろう。

 

「攻撃に感じては、どういう事をしたいかを思い浮かべながら、気を出せばいいんですよ」

「でも、私、あまり怪我はさせたくありません」

「そうは言っても生きていく為なんですから。我慢してください」

「そ、そうですよね。生きて行くためには、命を奪わなければいけないと主も言ってましたし」

 

と言っても、早々思いつくものではないので、一応、手本として気を平たく円状にして切れ味を増幅させる技、気円斬やシンプルなのも見せた方がいいだろうと、ただの気功波を放ったりもした。

 

「こんな感じですね。大事なのはイメージですよ」

「なるほど。イメージですか。こんな感じですか?」

 

そう言って、アーシアは人差し指から、気功波を放つ。放たれた気功波は付近の木一本をへし折り、消滅した。

 

「そうそう、そんな感じです。で、あとは名前ですね。これは、つけるかどうかはお好みですが」

「名前…ですか。どどん波とかどうでしょう?」

「何故そうなったのかわかりませんが、良いんじゃないですか?」

 

そんな事をしていると、何者かがこちらに近づいてくるのがわかる。気の感じからして堕天使で、数は2つだ。たった今、アーシアが放ったどどん波によって折れた木が倒れた時の音を聞かれてしまったんだろう。アーシアはまだ気の察知が出来ないため、気づいてないので、一応、伝えておく。少したち、その堕天使たちは現れた。

 

「ようやく見つけたわよ。アーシア」

「誰ですか?」

「私はレイナーレ。こっちはミッテルトよ」

「ミッテルトっす。よろしく」

 

現れた堕天使たち、レイナーレとミッテルトは案外礼儀正しいようだ。まあ、不意打ちの機会を狙っているのかもしれないが。故に白音もアーシアも警戒は緩めない。そんな彼女らを見て、レイナーレが口を開く。

 

「そっちのあんたが連れてさえ行かなければ、こうやって10日間もアーシアを探す羽目にならなかったのよ」

「ああ、教会にいた堕天使ですか。ですが何故、アーシアさんの名前を知っているんですか?」

「そりゃ知ってるわよ。その子が私達の計画の要だもの」

「計画ですか」

「そうっす。アーシアの神器を抜き取って、レイナーレ様がそれを手に入れる計画だったんすけど」

 

何故かミッテルトの言い方は歯切れが悪かった。隠しもせず言い出すあたり、失敗でもしたのだろうか?そんな事を考える白音をよそに、ミッテルトは続きを話し始める。

 

「でも、この10日間でうちらの仲間が2人、ここら一帯の領主のリアス・グレモリーに見つかっちゃったんすよ。で、殺られちゃったんっすよね。協力してくれた数多くのはぐれ悪魔祓いも逃げ出して、今やレイナーレ様とうちの2人だけ」

「それで、諦めたんですか?」

「いえ、諦めてなかったわよ。ついさっきまでね」

 

あたかも今諦めたような言い方をするレイナーレ。なんとなく理由を察した白音と理解してなさそうなアーシア。それを見たレイナーレは再び、アーシアに理解させる為に口を開く。

 

「理解できないって顔してるわね、アーシア。良いわ、教えてあげる。そいつからあんたを奪える気がしないから。力量差を見誤るほど、自惚れてないの」

「え?白音さんってそんなに強いんですか?」

「それなりに修行はしましたけど、どうでしょうね。ところで、レイナーレさんとミッテルトさんはこれからどうするんです?」

「そうっすね。今回の計画はうちらが勝手にやった事っすから本部に戻るわけにもいかないし、もといた教会に戻ったら見つかるだけだろうし、どうしたもんっすかね」

「白音さん」

 

アーシアが何かを訴える様な目を白音に向ける。何を言いたいのかは、アーシアの性格を考えれば分かる事だ。白音は別に問題ないと考えて、こくりと頷く。それを見たアーシアはすぐさまレイナーレ達の方を向き、こう切り出した。

 

「えっと。行き場がないのなら私達と一緒に生活しませんか?サバイバルですけど…」

「そっちが良いなら良いけど」

「大丈夫ですよ。貴女達が変な事しなければ、こっちは問題ないです。…となると、名乗ったほうがいいですね。私は、白音と言います」

「しないわよそんな事。したら私たちの身が危ないもの」

 

そんなこんなで、またサバイバル仲間が増えた。これはいい事だろう。しかし、なんとなくこれから面倒ごとが起きる様な気がする白音だった。

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