白音は仙術を使わず気を扱うようです 作:煌めく伯爵
教会関係者と会ってから数日、白音達はここ数日でわかったことがある。簡潔に言うとこの街が消滅する可能性があると言うこと。完全に気配を消した状態で各自がいろんな場所で情報収集を行い、得た情報を集めた結果そういう結論に至った。
「コカビエルですか。堕天使幹部なんですよね?レイナーレさん、ミッテルトさん」
「ええ。コカビエル様は紛れもなく堕天使幹部よ。過去に起こった三勢力の戦争で生き残った…ね」
「そうですか。イリナさんを助ける事になった際に会いましたが、あの気の感じ、とても強いんでしょうね」
今日の昼頃、1つの気が減って行くのを察知した白音は気の感じで誰かはわかってはいたが、仕方なく助ける事にした。その際に彼女を囲っていたいくつかの気配の一番大きく一番邪悪な気配がそのコカビエルだった。コカビエルは彼女の持っていたものが必要だったらしく、それを回収したタイミングで白音が現れると彼女を無視して何処かに行ってしまった。
「どうしましょうか?どう見ても、これじゃあコカビエルに勝てませんよね」
「そうですね。駒王学園の方に大きな気は集結してるようですが、勝てませんね」
「この気は多分、駒王学園の悪魔達っすね。結界班と迎撃班で別れたんすかね?全員でかかっても勝てないのに」
「まあ、しょうがないんじゃない?ここの領主さまなんだから、守らなくてはいけないのよ」
気のお陰でここからでも駒王学園でなにが起きておるかはっきりとわかる。1つ気が消えたことから誰か死んだ事とか、悪魔達の気とコカビエルの気の差を見るに勝てないだろうとか。本当に色々とわかる。
「ねえ。貴女達は一体なんの話をしているの?」
目が覚めたイリナがそう聞く。それもそうだろう。側からみれば、彼女達の言ってることは意味不明だ。しかし、白音達が答えることはない。イリナがしつこく質問する中、駒王学園で起こっている戦闘は止まった。気が消えてないことから、悪魔達は死んでいない。しかし、だからと言ってコカビエルが死んだわけでもない。気を察知出来ると言っても話までは聞こえないので、戦況が止まった以外はわからない。
*
コカビエルは落胆していた。それもそうだ。魔王と言われたサーゼクス・ルシファーの妹とその眷属がここまで弱いとは思わなかったのだ。騎士の駒の男は神器を禁手させ、聖と魔が混ざり合った聖魔剣なるものを生み出した。これにはそれなりに驚いたが、そのせいで神が死んでいる事がわかり、聖剣使いは消沈、コカビエルに挑んできたリアス・グレモリーとその眷属もとても弱い。これで落胆せずどうしろというのか。
「貴様らは弱すぎる。特にそこの赤龍帝。貴様には心底がっかりさせられた。禁手をしてすら俺と渡り合えないとはな」
「くっ!」
「ああ、だが乳を触って禁手に至るのは面白かったぞ。あれは傑作だ」
フハハハと笑いながらリアス達を見下ろす。戦闘狂の彼は戦争を再び起こさせるためにここにきた。なら目的は1つ。魔王の妹を殺せば戦争は再開されるだろう。そのための餌がここには2人もいる。もういい加減飽きて来たので、そろそろ目的達成の為にコカビエルは巨大な光の矢を作り上げた。
「呆気なかったな!」
絶望しているリアスとその眷属にその矢を放つ直前、彼は動きを止めた。そして、張られている結界の一部を見る。するとそこにヒビが入り、そして砕け、穴が空き、その穴から何人かが入って来た。そのうちの2人はコカビエルもよく知っている人物だ。そう、入ってきたのはレイナーレやミッテルト達である。白音とアーシアに持ち上げられていたイリナはゼノヴィア達の方に駆け寄る。
「「お久しぶりです。コカビエル様」」
レイナーレとミッテルトは自分の上官のコカビエルにそう言う。死んだと思っていた奴らが生きている事に驚いたが、すぐさま質問を投げかける。
「なぜ今頃現れた?」
「それは貴方を倒す為です」
コカビエルの質問に答えたのは白音だった。コカビエルはこの街を完膚なきまでに破壊するだろう。悪魔達がどうなろうと知ったこっちゃないが、この街が無くなるのはいただけない。故に白音達はコカビエルを倒しに来たのだ。それを聞いたコカビエルはニヤリと笑うと光の矢を消した。
「では、貴様が俺の相手をしてくれるわけだ。猫又の女」
「ええ、そう言う事です」
「あいつらの様に落胆させるなよ」
「もちろんです」
アーシアもレイナーレやミッテルトも手を出す気は無い。ここ最近組手をしているが故、今の自分たちでは白音の足手まといになると言う事が分かっているのだ。そして、戦闘は始まった。
「はぁ!」
コカビエルは牽制とばかりに光の矢を投げるが、白音はそれを砕き、お返しとばかりに気弾を放つ。放たれた気弾をコカビエルは受け止め握りつぶす。瞬間2人は消えた。実際は超高速で動いているだけなのだが、追えているのはレイナーレ達と、リアスの騎士の男だけだ。衝撃が周囲に響き渡り、突如として2人が現れた。
「やるな。あいつらよりはマシらしい」
「当たり前です」
「猫又の女、ウォーミングアップはここまでにしようか」
「私もです」
「では、行くぞ!」
そう言った瞬間、コカビエルは既に白音の眼前に迫っていた。しかし、白音がそれを追えないわけがなく、コカビエルが放った拳は空を切る。白音は反撃せずに後ろに下がる。逃がさんとばかりにコカビエルは拳を放つが白音はそれを避けがら空きの腹に蹴りを放つ。どう見ても当たる蹴りだったが、コカビエルは体を捻る事でそれを回避し、一旦両者は離れた。
「ほう。ほらではなかったんだな」
「当たり前ですよ。伊達に修行はしてません」
「成る程な。だが、俺の方が上だな」
再び接近して来たコカビエルだが、それはさっきの比では無い。ギリギリ反応し、顔めがけて放たれた蹴りを避けるが、避けた先には既に拳が待っていた。咄嗟に顔を引き、威力を最小限にするも吹っ飛ばされ、校舎に激突する。崩壊するほどではなかったが校舎には穴が空いていた。
「流石、戦争を生き抜いただけはあるみたいですね」
白音は吹っ飛ばされた事で壁から入った教室でそう呟く。そして、外を見て咄嗟に窓から外に出た。瞬間校舎に無数の光の矢が突き刺さった。あれを喰らえば無事では済まないだろう。白音はそれをした張本人を睨みつける。
「貴様の全力はその程度か?早く本気を出さねば後悔する事になるぞ?」
「そうですか。では、見せてあげます。界王拳を!」
赤い気が白音を包み込む。界王拳はここ最近の組手で7倍までできる様になったが、果たしてそれで勝てるだろうか。
「ふっ!」
「ぬっ!」
気合砲でコカビエルを吹っ飛ばし、それを追い追撃をかけ、再び吹っ飛ばす。もう一度追撃をかけようと接近するとコカビエルは体勢を立て直し、白音に蹴りを放つ。界王拳の状態でもそれを避けられず白音は顔を蹴り上げられる。界王拳に対応した動きをするコカビエルを驚愕の表情で見る。
「今のが全力か?少し驚いたが、その程度なら期待はずれだな」
「舐めないでください。7倍界王拳!!」
「ふっ、そうでなくては面白くない」
先程とは比べ物にならない速度でコカビエルに接近し、フェイントを織り交ぜながらコカビエルに拳の嵐を叩き込む。しかし、コカビエルはその全てに対応し、受け止める。最後の一撃を受け止めたコカビエルは、そのまま白音を地面へと投げる。空中で体勢を立て直し地面に着地し、コカビエルがいた場所を見るが、そこには既にコカビエルはいなかった。背後からの殺気を感じた瞬間、白音は蹴り飛ばされていた。
「ま、まさか、7倍でも追いつけないなんて」
空中で体勢を立て直し、こちらを見上げるコカビエルを見て、再び地に降りた。
「どうした。降参か?」
「いいえ、降参なんてしませんよ」
「だが、今の貴様では俺に勝てんぞ」
「そうですね。だからこそ、私は限界を超えるのです。私の体が持つまでですが」
ふぅと息を吐き、覚悟を決め、ゆっくりと気を高めていく。コカビエルは興味深そうに白音を見るものの邪魔をしようとはしない。
「はぁああああ!もってくださいね!私の体!界王拳20倍!!!」
赤い気が白音を包み込む。限界を超えに超えた力。この戦いに勝とうが負けようが白音の体はぶっ壊れるだろう。第2ラウンドの火蓋が切って落とされた