魔法少女ウルトラなのは 作:エメリウムフラッシュ
「やっぱりウルトラマンはかっこいいの」
朝っぱらから自室でDVDを見ながらそう呟く少女の名は、高町なのは。特撮作品、その中でもウルトラマンシリーズ大好きな小学生である。
「なのは〜もうそろそろ学校に行く時間じゃないの?」
「え?」
自室が二階にある為、下から聞こえてきた母の声にハッとして近くにあった時計を見ると、確かにもうそろそろ家を出なければ行けない時刻だった。いい所だったのになぁと少し惜しく思いながらも、DVDを止めて、TVを消して家を出た。
*
学校からの帰り道、友人である月村すずかとアリサ・バニングスと共に途中までとは言え一緒に帰ろうと校門を超えた辺りで、なのはの頭に直接響くような声が聞こえた。
(助けて──)
その声が聞こた瞬間、なのはは駆け出した。聞こえなかったらしいアリサとすずかもなのはのこの行動に驚きながらも後を追う。たどり着いた場所にいたのは、傷だらけのフェレットの様な生き物。なのはがフェレットの様な生き物を抱き上げた丁度その時、追ってきたすずかとアリサが合流した。
「なにその子?フェレット?」
「大変!その子、怪我してるみたい!近くの動物病院に連れて行きましょう!」
「そうね、それが良いわ。なのは、そのまま抱きかかえておいてくれる?」
2人の言う通り、直ぐに動物病院に連れていく。着いた動物病院の医師によると、命に別状はないとのこと。それを聞いた3人はそのフェレットを動物病院に預け、暗くなり始めたのもあり少し早足で帰宅した。
その日の夜、夕食も終わり、お風呂も入り終え、髪も乾かし終わり、歯磨き等々も全て終わり、後は寝るだけとなった時にそれは起こった。寝る前にウルトラマンシリーズのDVDを見るのが日課な彼女だが、今日は気分を変えて漫画『ウルトラマン STORY0』を読み始めようとした時、再び頭に声が響く。先ほどのことを考えると、あのフェレットに何かあったのかもしれない。そう考えたなのはは家を飛び出し、動物病院へと向かった。
「なに……あれ…?」
そこで見たのは、靄のような化け物とそれから逃げるフェレット。負傷しているにも関わらず、化け物の攻撃を避けるフェレットは、なのはに気付くと突然飛び付いてくる。咄嗟に受け止め、突進してきた化け物を避けそのまま逃走を図る。
「なにあれーーーー!!」
叫びながら、とりあえず動物病院から出来るだけ離れる。対処法がわからない以上逃げるに限る。そう思い走ったにも関わらず、化け物は上空から突如目の前に降ってきた。咄嗟に電柱の陰に隠れたが見つかるのも時間の問題だろう。どうしようかと頭を悩ませていると、抱えているフェレットが話しかけてきた。
「あ、あの!」
「ふぇ?」
「あの、本当は色々説明をしたいんですけど、そうは言ってられない状態になってしまったので、お願いです!!僕に力を貸して下さい!」
「え?え?」
「混乱しているのはわかりますが、これを持って僕の言葉を続けて言ってください。この場を切り抜けるにはそれしかありません!」
手渡された赤い宝石を手に取り、訳がわからないながらもフェレットの言う言葉に続く。
「我、使命を受けし者なり」
「わ、我、使命を受けし者なり」
一瞬宝石が光った気がした。
「契約の元、その力を解き放て」
「えと……契約の元、その力を解き放て」
宝石が光を放ち、ドクンと呼応する。
「風は空に、星は天に、そして不屈の魂はこの胸に」
「風は空に、星は天に、そして不屈の魂はこの胸に」
もはや不安はなく、光が温かくなのはを包む。そして、声が重なる。
「「この手に魔法を、レイジングハート、セットアップ/セーットアーップ」」
『stand by ready,set up』
瞬間、ピンクの光が天を衝いた。それを見て、フェレットがなにやら驚いた表情を見せるが、それ以上に意味不明なのがなのは本人である。混乱しきったなのはに再びフェレットが話しかける。
「落ち着いてイメージして下さい!君の魔法を制御する魔法の杖の姿を!君の身を守る強い衣装の姿を!」
「魔法の杖?衣装?」
魔法の杖と言うのは検討もつかないが、身を守る衣装と言うことなら彼女は思いつくものがある。漫画『ULTRAMAN』に出てくるウルトラマンスーツ。あれこそがなのはにとっての身を守る強い衣装である。しかし、平成も昭和も好きななのはとしては、出来れば両方の時代の最初に生まれたウルトラマンの力を持ったウルトラマンオーブのスペシウムゼペリオンの様な衣装の方が好ましい。ならばと、敢えてなのはは頭の中で、ウルトラマンスーツとスペシウムゼペリオンを思い浮かべてみる。
「出来るかな?」
『no problem』
なのはの疑問に宝石が答える。瞬間、溢れた魔力がなのはに纏わりつき
「あとは杖だけど……」
そうは言うものの、流石に化け物もそこまで待ってはくれない。化け物は身体に力を溜め、なのはに勢い良く突っ込んでくる。咄嗟の事でなのはは反応出来なかったが、目の前に張られた魔法陣がそれを防いだ。
『Are you alright?』
「え?なに?」
『……言語変換完了。無事ですか?』
「う、うん。大丈夫。突然英語で話されても対応できないから、言語はそのままにして貰っていい?」
『了解しました。ところでマスター、魔法についての知識か戦い方を知っていたりしますか?』
「ううん。初めてだよ。それより、私まだ杖がイメージ出来てないんだけど、大丈夫?」
『多少制限されている部分がありますが、マスター程の魔力があれば問題ありません。それに、待機状態よりは何倍もマシです。戦闘については私が教えるので、私の指示通りに。私も支援はします』
「よ、よろしくお願いします」
そんな事を話していると、化け物が再び飛び込んでくる。宝石が一瞬光ると足下に魔法陣が展開され、瞬間なのはは空へと浮かんだ。空へと飛び上がったなのはは感動を覚える。
「凄い。私は……空を……飛べる!」
感動しながら、空を飛び回るなのはを捉えようと化け物は靄の一部を触手の様に伸ばす。なのはは初の飛行であると言うのに、軽々と靄を避けて行く。宝石が言う通りに魔力弾を作り、上からの攻撃を試みる。しかし、化け物も軽やかにそれを避ける。
「速いね。あの化け物」
『まあ、そもそも生き物ではありませんからね。あれは核となっているジュエルシードを封印しない限り動き続けますよ』
「封印?」
『ええ、弱らせないとできませんが今回は私がマスターのイメージに合わせますので、思う様に戦ってください』
「本当に?」
『はい。出来る限りはやらせてもらいます』
それを聞いたなのはは地上へと降り立ち、化け物を見る。なのはが降りてきた事により、化け物は伸ばした靄を引っ込め三度突っ込んでくる。それを迎え撃つべくなのはは腰を低く構え、化け物がある程度近づいた辺りで宝石を首に掛け両手を前に突き出す。イメージ通り宝石が魔法陣を張り、化け物を弾き飛ばす。
「どうやったら弱らせられるの?」
『強力な一撃を与えれば良いんですよ』
「わかった。なら……」
吹き飛んだ化け物はあいも変わらず突進をするばかりである。しかし、なのはは宝石を信じ限界まで引き寄せ化け物が当たる瞬間、手を十字に組み至近距離でソレを放つ。夢にまで見たあの技である。
「スペシウム────!!」
色こそピンクであったが、組んだ腕から放たれたのはスペシウム光線であった。極光が化け物を包み、そこに残っていたのは菱形の宝石。これがジュエルシードであろう。宝石に言われた通りに封印を施す。その上で、宝石を近づけるとジュエルシードは吸い込まれた。
『ジュエルシードの封印を確認。……そういえば自己紹介をしていませんでしたね。私はレイジングハートと言います。マスターの名は?』
「私はなのは、高町なのは。よろしくね!レイジングハート」
自己紹介を済ませ、先の戦闘の影響で気絶していたフェレットを拾い上げ、そのままここにいるわけには行かないのでいそいそと家へと帰っていった。