追記
話の内容をかなり修正しました。
特典は一つになりました。
…暗く、広いのか狭いのかさえ分からない空間に俺は居た。長いこと眠っていたようにも思えるし、ほんの少しだけだったのかもしれない。なんにせよ、俺は訳の分からない空間にいて、自分が何をしていたのかさえも思い出せない。
「…ここは一体何だ?」
よくよく見ると俺は椅子に座っているらしく、俺の前にも椅子が一台置いてあった。
「何が何だかサッパリ分からんな…。とりあえずこの部屋を探索してみるか…?」
「いえ、その必要はありません。」
「!?」
いつの間に…!気が付けば俺の前に合った椅子に、少女が座っていた。見た目はせいぜい15~16歳ぐらいの少女だが、この漂う異物感…。いや、異物という感じではない。だが人間でないことに変わりはなさそうだ。
「…君は何者だ?」
「私は幸運の女神エリスと申します。私たちの仕事は、若くして死んでしまった人に三つの選択肢を与えることです。」
「女神?いまいち納得できないが、幾つか質問させてもらいたいことがある。」
「なんなりと。」
「俺は死んだと言ったが、どういった経緯で死んだのか教えてくれないか?」
「…分かりました。確かに貴方にはそれを知る権利があります。」
聞いた話によると、俺は一人の少女を助けるために神話生物の大群と戦っていたそうだ。かなりの数を減らしたが、結局のところ奴らを殺しきることは出来ず、殺されたらしい。
「……俺が守っていたあの少女はどうなった?」
「無事です。ちゃんと保護されていました。」
「…そうか。」
俺はあの少女を守るために死んだ。もうその事に変わりはない。だが未練を言うならば、彼女にもう一度会いたかったな‥‥。
「貴方は小さな命を守るためにその生涯を終えました。そんな貴方に、三つの選択肢があります。」
「さっきも言っていたな。その選択肢は?」
「一つ目はもう一度人生をやり直すこと。二つ目は天国に行くこと。そして三つ目は異世界へ行くことです。」
「異世界?」
「はい、その通りです。」
「…どういう事かよく分からん。説明してもらえるか?」
「分かりました。ご説明いたしますね。」
彼女が言う異世界というのは、いわゆるファンタジーというものだ。魔王が存在する世界で死んでしまった人間がもう一度やり直しなどしたくないということで転生を断っている人間も多いそうだ。そんな訳でこちらの世界で死んだ若い人間を送り出すことで、人口の減少を防いでるそうだ。そして、魔王を倒せば自分の願いを叶えるという事と、魔王を倒すために転生特典というものを持って行けるらしい。エリスはその説明を終えた後、転生特典が書いてある紙を俺に渡した。その中から、一つ持って行っていいらしい。
「この中から一つだけ選ぶんだな?」
「はい。強力な武器でも、何か特殊な能力でも、何でも大丈夫です。」
「じゃあ質問だ。この紙に書いてある指輪はどういった能力があるんだ?」
「その指輪ですか?それは『復活の指輪(リバイバルリング)』と言って、装備しているだけで自分が死ななくなると言うアイテムです。」
「……そんな物があるのなら、転生者全員に持たせておけばいいんじゃないか?」
「そう仰るのは当然です。ですが、この指輪には致命的な欠陥があります。」
「致命的な欠陥?」
「それは、能力が発動する度に持ち主の精神力を削ると言う効果があります。」
「持ち主の精神力を削る…か。」
「はい。正直に言って、お勧めできるような物ではありません。一度死んでしまった方を、もう一度殺してしまうようなアイテムですから。」
成る程な。このアイテムだけ説明が書かれていなかったから気にはなったが…。
「一つ聞かせてくれ。この指輪を他人に着けても能力が発動することはあるか?」
「あるにはありますが、他の方に着ける場合になると、その指輪の能力は少し変わってしまいます。」
「それは、どんな風に変わるんだ?」
「指輪に込められた力を分散する形になるので、死んでも復活というわけではなく、致命傷を負っても回復が早くなるという状態になります。」
「成る程な。じゃあ、この『復活の指輪(リバイバルリング)』とやらを持って行かせてもらおう。」
「…いいんですか?」
「かまわない。俺は元々死んだ身だ。失うものなどもう無いさ。」
「…分かりました。それでは、貴方が魔王を倒し、いつか報われる日が来ることを願います。行ってらっしゃいませ。若き勇者よ。」
俺が魔王を倒せるかは分からん。だが、この少女への恩に報いるためにも頑張るとするか…。
その後、俺の体は光に包まれた。
目を開けると、そこには見た事のない景色が広がっていた。
「(ここが異世界か。とりあえず、俺の持ち物を確認するか…。)」
俺が持っていたのは転生特典の村正、紙切れと金が入っていた袋だった。リバイバルリングは指に嵌められている。
「なんだ?この紙は…。」ペラッ
神条 翔馬様へ
その袋の中には、冒険者として登録するときに必要なお金が入っています。異世界に着いたらまず誰かに冒険者ギルドがどこにあるかお尋ねください。そこで貴方の能力と職業が判明されます。それでは、冒険者として頑張ってください。エリス
やれやれ、とんだお人よしだな。エリスは…。
「っと、考え事をしていてもしょうがない。誰かにギルドの場所を聞かないとな。」
出来れば冒険者に聞くのがよさそうだが、この付近にいるだろうか…。
「そこの背が高い兄ちゃんよ。どうした、道にでも迷ったか?」
「ああ、冒険者ギルドに行きたいんだが場所が分からなくてな。教えて貰えると助かる。」
「お!兄ちゃん冒険者になりたかったのか。いいぜ、教えてやるよ。冒険者ギルドはこの先の道をまっすぐ行くと見えてくるはずだ。冒険者登録をしてくれる筈だから行って来い!命知らずの若もん!」
そう言って大男は俺の背中を思い切り叩いて、豪快に笑いながら帰って行った。
「(礼を言い忘れたな…。まあ、この町で生活するならまた会うこともあるだろうし、今は冒険者ギルドに行こう。)」
男に教えて貰った道を歩いていたら建物が見えてきた。あれが冒険者ギルドか…。
ガチャッ
中には入るととても騒がしい状況だった。荒くれ冒険者は酒を飲み、店員は忙しなく働いていた。受け付けは…、恐らくここだろうという場所があったので、そこに行くことにしよう。
「いらっしゃいませ!冒険者登録ですか?」
「ああ、ここで冒険者登録が出来ると聞いてやって来た。」
「分かりました。それではまず登録料に千エリスほどいただきます!」
何処かで聞いたことのある単位の名前だったが、今は気にせず払うことにした。
「えっと、これで足りるか?」
「はい、大丈夫です。それではこの水晶玉に手を置いて頂けますか?」
「ああ。」ピッ
水晶玉に触れた瞬間、俺の体に電流が走るような感覚が走った。
「……何者ですか。」
「?」
「何者なんですか!?貴方は!ほぼすべてのパラメーターが基本能力値を大幅に超えています!それに、初期レベルが5ってどういうことですか!?」
どうやら俺は凄い能力の持ち主だそうだ。俺も確認してみるか…。
神条 翔馬
LV5
筋力 970
生命力 1020
魔力 720
敏捷性 960
知性 840
器用度 800
…なんだこの意味不明なパラメーターは。
「る、ルナさん落ち着いて。」
「ハアッ…ハアッ…。すいません、取り乱してしまいました。それでは神条翔馬さん。職業を選んでください。」
「職業?」
「ええ、パラメーターを見てその人に合った職業が選べます。神条さんのパラメーターで判断すると、上級職にもなれそうですね。冒険者カードになれる職業が書いてあるので、その中から選んでください。」
成程、そういう仕組みか。どれどれ…。
剣豪
ソードマスター
クルセイダー
パラディン
この中だったら、剣豪が俺に一番合ってそうだな。
「決めた。この剣豪という職業にしよう。」
「分かりました。剣豪は筋力と素早さを長所とした職業です。それで登録するという事でよろしいですね?」
「ああ。」
「分かりました。それでは、新たな冒険者を向かい入れることにします!」
オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!
周りから物凄い怒号が聞こえてきた。取り合えずこの騒ぎは無視して、仕事でも探すか…。
「やれやれ…。この世界はなんというか賑やかな世界だな。」
そういえば、俺はこの世界のどこで寝泊まりすればいいのだろうか。そう思っていたら、ジャージを着た男と青い髪をした女。それに小さな少女と騎士のような鎧を着た女が言い争いをしていた。
「今日こそはダンジョンに行きましょう!もうお金がないのは嫌なの!」
「嫌ですよ!ダンジョンなんか行ったら私の存在価値皆無じゃないですか!」
「その通りだとも!今日こそは一撃が非常に重いモンスターの討伐を…!」
「だー!うるせえ!お前らが勝手な事ばっか言ってて結局今日何するか決まらねえじゃねえか!」
なんだこの珍妙な連中は…。見たところ全員冒険者のようだが、話でも聞いてみるか。
「あー、ちょっといいか?聞きたいことがあるんだが。」
「え?誰だアンタ。」
「俺は神条 翔馬という者だ。ここへは最近来たばかりでな。仕事の受け方なんかを教えて貰えると助かる。」
「俺は佐藤 カズマっていうんだ。アンタはまともそうだな。俺のパーティに入らないか?もう馬鹿ばっかりで困ってたんだよ!頼む!入ってくれ!」
「ちょっと何言ってんのよカズマ!こんなどこの馬の骨とも分からない奴を仲間に入れる気!?それに私たちのパーティは上級職しか受け付けないって言ってんでしょ!」
「馬鹿かお前!馬鹿かお前は!?こいつらの事を忘れたのかよ!?見た目と肩書は凄いだけのパッパラパァじゃねえか!しかもその筆頭のお前がそれを言うのか!?この騙女神!」
「うわぁーん!カズマが私の事また騙女神って言った―!」
もしかしてと思ったが、カズマは転生者なのか?名前や服装からしてそうだと思ったが…。
「うちの身内が迷惑をかけてすまないな。私はダクネス。クルセイダーを生業としているものだ。」
「ああ。よろしく、ダクネス。君の名前は?」
「ふっふっふ、我が名はめぐみん!アークウィザードを生業としている紅魔族随一の魔法使い!」
この少女はあれか。俗にいう中二病というやつか。
「俺は神条 翔馬だ。よろしく、めぐみん。」
「はい、よろしくお願いします。」
「めぐみんの自己紹介をスルーしただと…!?」
「ところで、ショウマは上級職なのですか?」
「ああ、俺は今日冒険者になったばかりだが、剣豪という職業だ。」
「剣豪か…。剣の技術を極限まで極めた者のみが名乗ることを許されるというものだったな。おまえがその職業ならば、心強い味方になりそうだ。うちのパーティに入ってくれないか?うちは近接戦闘が苦手でな…。」
「それはいいが、ダクネスはクルセイダーなんだろう?近接は得意じゃないのか。」
「ダクネスは防御力に人生のすべてを注いだ唯のドMなので戦えないんです。両手剣を使ってはいますが、全く当たりません。私は爆裂魔法という魔法の中でも最強クラスの魔法が使えますが、使う魔力が多すぎて一日一発しか使えないんです。」
それは…。とてもじゃないが、戦えるとは思えんな…。
「カズマやあの青い髪をした奴はどうなんだ?」
「あの人はアクアと言って、アークプリーストです。回復、支援魔法が得意な職業なんですが、攻撃手段が乏しいので、結局のところ戦闘ではあまり役に立ちません。カズマは最弱職の冒険者で、全てのスキルが使える代わりに本来の威力より大幅に弱くなるという職業です。だからカズマは弓や初級魔法で敵を倒すという戦闘スタイルです。」
一見すると最強のパーティになるはずだが、中身の問題で最弱のパーティになってしまっているという訳か…。
「中々戦闘がやりづらそうなパーティだな‥。俺でよければ入ろう。」
「ちょっと!私の話聞いてた!?上級職しか駄目なの!」
「だーもー!お前は黙ってろ!」
「私がアクアに説明しよう。」
「ああ、よろしく頼む。」
その間にカズマに聞いておきたいことがある。
「なあ、カズマ。」
「ん?どうした?」
「お前は転生者だろう?転生特典が何かと寝るところが教えて貰えると助かる。」
「…俺の特典は駄女神だ。」
「…は?」
「だから、俺の転生特典はあいつなんだよ。他のものより使えそうって思ったから連れてきたのに、何の役にも立たねえ。」
「そ、そうか。」
「やめて!その哀れんだような目!俺だって辛いんだよお!そういうお前の転生特典は何なんだ?」
「ああ、俺の特典はこの指輪だ。」
「…なんだこれ?」
「ああ、これの能力は後で話すとしよう。説明に時間がかかるアイテムでな。」
「へえ、まあいいや。お前が俺のパーティに入ってくれるんなら有り難い。今俺たちは馬小屋で生活してんだ。」
馬小屋…。まあいい、寝床が確保できるのならいい。
「分かったわ!ショウマ、貴方をうちのパーティに歓迎するわ。」
「ああ、よろしく頼む。アクア。」
こうして、俺の異世界生活は幕を開けた。
いかがでしたでしょうか?作者的には満足できる結果なので良かったです。それではまた次回!