翔馬side
冒険の準備を終え、アンデットが徘徊する夜を待つために食事を済ませて休憩しているカズマに、俺は訪ねたい質問をすることにした。
「カズマ、聞きたいことがある。俺達の任務はアンデットを倒すだけなのか?」
「いや、アンデットというか、ゾンビメーカーっていうモンスターの討伐だ。」
「ゾンビメーカー?」
「簡単に言うとゾンビを操る中ボスモンスターみたいなもんだよ。回りにゾンビを2~3体従えてるみたいだから、それの討伐もあるな。」
「なるほど、大方理解した。」
もう少しで夜が来る。それに備えて剣の手入れをするため、鞘から剣を取り出して布で拭いておくとしよう。
「…………。」フキフキ
「…ショウマ。一つ聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「ああ、構わない。剣の手入れをしながらで良ければだが。」
「構いませんよ。私が聞きたいのは、どうしてショウマはレベルが最初から少し上がっているのか、なんですが。」
レベルが初期状態ではない、か。それは、俺にもわからないからどう言ったものか。
「俺には理由はわからない、としか言いようがないな。強いて言うなら、冒険者になる前もモンスターと戦っていたからかもな。」
めぐみんは少し悩むような仕草を見せたあと、納得したような素振りを見せた。
「なるほど、理解できました。ショウマが最初から剣豪なんて職業を選べたのも何となくわかります。」
「ああ、それなんだが。剣豪という職業は珍しいものなのか?」
「はい。この世界で剣豪になれるものは、人生を全て剣に注いで生きてきた人ぐらいでないとなれない職業なんです。その為、知名度自体も低く、知っている冒険者はあまり居ないでしょう。」
「そうだったのか。通りで皆不思議そうにこちらを見ていた訳だ。」
「はい。ショウマの歳で剣豪になったという者は他にいないと思いますよ。」
そこまでいないとは思わなかったが、元の世界を基準にしても剣を使う事自体まず無いな。
「それにしても、めぐみんは物知りだな。」
「いえ、単に故郷の学校でその手の事は文献で読みましたから。」
「めぐみんの故郷か…。どんな場所なんだ?」
「我が故郷、紅魔族の里は魔法使いのエキスパート揃いの里なのです。上級魔法は当然の事、他にも色々な分野に特化している人たちの集まりですからね。里の皆は揃って優秀だと言っても過言ではありません。まあ、一番爆裂魔法を愛しているのはこの私だけですが。」
「…そうか、中々面白そうな場所だな。」
「ええ。ショウマも一度来てみるといいですよ。」
「そうだな、是非一度行ってみたいものだ。」
「うぎゃあああああああ!!!」
そんな他愛ない話をめぐみんとしていると、アクアが急に地面を転がりだした。
「どうした、何があった?」
「ああ、この馬鹿が喧嘩吹っ掛けてきたから初級魔法のコンボで仕返ししてやっただけだよ。」
「そ、そうか。何を使ったかは聞かないでおこう…。」
「ぅぅぅぅぅぅ………!こんのクソニート!この清く、気高く、美しい女神であるアクア様になんて事すんのよ!」
「ほぉぉぉ?清く、気高く、美しい女神であるアクア様は馬小屋の中でイビキかいて気持ち良さそうな顔しながら寝たり、酒場でおっさん冒険者たちとゲラゲラ笑いながら酒を飲んではリバースしてるってか。俺の中の美しい女性像とはえらく違うな!?お前みたいなのが女神だって言うんなら、その女神パワーを使ってとっとと借金を返してこいやこのボケナスがぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!かじゅまがまた私の事駄女神って言ったぁぁぁぁぁぁ!」
…醜い争いを見た気がするが、俺は何も見なかった事にしよう。
「ショウマ、あれはいつもの事なので気にしなくていいですよ。」
「そ、そうか…。」
この状態が日常という事に驚きを隠せないが、異世界と言うのだからこれが当たり前だと思うことにしよう。うん。
「…!何かの気配を感じた。周囲に何かいないか見る方法はないか?」
「それは俺に任せてくれ。盗賊スキルの中に敵感知っていうのがあってさ。そいつを使えばどこに何がいるか大体わかるんだ。」
「なるほど、便利なスキルだな。」
そういえばカズマは全ての職業を覚えられるとめぐみんが言っていたな。
「ねえねえカズマ。私、なんか大物アンデットが出る予感がするんですけど。」
「おま、フラグとしか思えないセリフ言うなよ!」
「それでカズマ、結局周囲に敵は居たのか?」
「ああ、なんか霧がかってよく見えないんだよ。でもこっちの方に一体向かって来てる。」
ふむ…。まずこちらに来ている一体を倒すのが良いだろうな。
「カズマ。どうせなら向かって来ているゾンビはショウマに任せてみては?」
「そうだな。私としてはゾンビにむちゃくちゃにされてみたいが、ここは我慢してショウマの実力を見た方が良いだろうな。」
「お前は黙ってろ、このドMクルセイダーが!それで、ショウマはそれで問題ないか?」
「俺は大丈夫だ。ゾンビごときに遅れはとらん。」
剣を鞘から抜いてゾンビと向き合う。そして一気に駆けだし、振り向き様にゾンビの首を一瞬で撥ね飛ばした。
翔馬side終了
カズマside
「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…!俺はショウマが剣を抜いてからものすごい速度で走り出して通りすぎたかと思えば、振り返って凄まじい速度でゾンビの頭と体を切り離したかのように見えた…。な、何を言っているかわからねえと思うが俺にも何が起こったか分からねえ…。超スピードとか、そんなものじゃ断じt「凄いじゃないのショウマ!上級職に相応しい素早さと攻撃力!剣豪も伊達じゃないわね!」…ねえ。俺のセリフの邪魔しないでくれる?」
台詞を馬鹿に中断されてしまったが、ショウマの実力はあの女神(笑)の言う通りだった。だけど、はじめて戦ったにしては妙に慣れているというか、ゾンビを殺すことに一切の躊躇いがないように見えた。
「…。」
「ショウマ?剣なんか見てどうしたんですか?」
「いや…。こんな戦い方を続けていると、この剣はあと数回分の攻撃しか持たんと思ってな。」
「そんなことが解るのですか!?」
「実際に手に取れば剣の強度はある程度分かるものだ。これは武器屋に置いてあった剣で一番相性の良いと思った剣だったんだが…。まだ見極めるまではいかんな。」
「お前、生前は何やってたんだ…?」
「別に大したことはしていないさ。俺の剣の技術は全て爺様に叩き込まれたものだ。」
「御祖父さんに教わったのですか?」
「ああ。剣術、格闘術、武器の手入れ、勉学、全て爺様に教わったよ。」
「ふむ。しかし、そういったことは普通母親が教えてくれるのではないのか?」
「俺の母親は、弟を生んだ時に出産に耐え切れず死んでしまってな。正直、顔も碌に覚えていないんだ。」
「す、すまない。デリカシーのない事を聞いてしまったな…。」
「気にするな。元々俺の一族はほとんど死んでしまっているんだ。今更悲しいと思う事はないさ。」
「では、ショウマの家族はもう誰も居ないのですか?」
「そうだな。家族は一人も居な―――いや、一人だけ、居た。」
「居た、というのは?」
「カズマには話したことがあるが、俺が助けた事がある少女が一人だけいた。強いて言う関係者なら、今残っているかもしれないのはその子一人だけだ。」
「かもしれないというのはどういう事だ?生きているか分からないのか?」
「ああ…。死の呪いを受けた子でな。俺と出会った時は、もう寿命は残り少なかったはずだ。」
「…あとどれくらい生きれたんですか?」
「…三日だ。俺と出会った時点でそうだったのは間違いない。そしてその翌日の夜、あの子を逃がすために化け物の大群と戦った。」
「…そうか。」
新規臭い話をしちまったな…。ま、マズイ。この空気をどうにかしないと…。
「…アアーーーーーーーー!!!??あいつは!」
この空気をブチ壊すように、アクアがどこかへ走り出して言った。まるで、因縁の宿敵を見つけた獅子のように…
「て、うぉい!!あんのバカ、毎度毎度面倒ごと起こしやがって!今度は何やらかすつもりだ!?
俺たちは急いでアクアの後を追いかけた。その先で見たものは―――
「ちょっとアンタ!リッチー風情がこんな墓地で何怪しいことしてんのよ!」
「キャーー!!な、何なんですか貴女は!?いきなり何するんですか!?」
―――チンピラ女神に絡まれている、ローブを着た女性の姿だった。
カズマside終了&Noside
「どうせ墓地に書いてあるこの怪しげな魔方陣を使って何か良からぬことでも企んでたんでしょ!周りのゾンビ諸共、アンタたちを女神の名の下に成敗してくれるわ!」
アクアが叫びながら辺り一帯に光を放ち始めた。すると次々と神の放つ光によって浄化されていき
「ええ!?ちょ、消えちゃう!成仏しちゃうううううう!!」
リッチーの女性も足元から少しずつ浄化され始めていた。
「アハハハハ!愚かなリッチーめ、このアクア様の浄化で塵も残さず消してあげるわ!」
「っておい!やめろ馬鹿女神!」
カズマが急いでアクアを止めにかかる。また厄介事を作り出しそうな気がし始めたカズマの容赦のないゲンコツがアクアの頭に振り下ろされる。鈍い音と共にアクアの頭に大きなたんこぶができた。
「っ痛ったいわねこのクソニート!神聖な女神の私に何て事すんのよ!」
「神聖な女神さまはそんなヤクザ顔負けの絡み方なんざしねえんだよ!お前はもうちょっと落ち着いて、上品に行動しろやこのアホ女神が!」
「なんですってえええ!?いい根性してるじゃない!ちょっと向こうの方で話つけようじゃない!」
「おういい度胸だ!てめえ覚悟してろよ!今まで散々かけられた迷惑の分の恨み、今ここで晴らさせてもらうぞコラァッ!!!」
「落ち着けカズマ!こんな場所で喧嘩なんかするんじゃない!」
「ショウマァ!お前は引っ込んでいろ!俺がカタを付ける!カタをつけなきゃァァ、気がすまないッッッッ!!」
「何を言っているのかわからんぞカズマ!とにかく一旦落ち着け!二人とも、アクアを押さえつけてくれ!」
「「りょ、了解!」」
めぐ民とダクネスがアクアを押さえに行き、翔馬がカズマを羽交い絞めにする中、リッチーの女性は一人おろおろとしていた。
~10分後~
翔馬side
「え、えーと…。大丈夫ですか?」
リッチーの女性が心配そうにこちらを見ている。突然目の前で喧嘩を始めたから無理もないが。今カズマとアクアはめぐみん達に押さえつけられている。その間に俺は自己紹介を済ませてしまう事にした。
「見苦しい姿を見せてしまい申し訳ない。俺は神条 翔馬。アンタの名は?」
「あ、えっと。私はウィズ。リッチーのウィズです。ノーライフキングとも言われています。えっと、よろしくお願いします。」
「ウィズか。こちらこそよろしく頼む。しかし、こんな場所で一体何を?」
「私は、この墓地に居る魂たちをあの世へ導いています。」
「それは殊勝な心がけだが、そういうことは大抵聖職者がやることじゃないのか?」
「それが…。」
ウィズと名乗った女性は言いづらそうに目をそらす。何か言いづらそうにしているみたいだが…。
「この町のプリーストの皆さんは、拝金主義者と言うか、お金がないと働かないといいますか…。」
「アクア…お前…。」
カズマの畜生を見るが如くの目に、アクアが反論し出した。いい加減学習しないものだろうか。
「ちょ、そんな目でこっち見ないでよ!私だけじゃないでしょ!?こんな墓地にいちいち除霊しに来るなんて皆やりたがらないわよ!」
どうやらこの町のプリーストは金がないと動かない連中ばかりと言うのは間違っていないようだ。王都でこんな自体が起きたら誰かが除霊しに行くだろうが、駆け出しの集まるこの町で、そんなことをする余裕のある冒険者は居ないと言うことだろうな。
「なあウィズ。除霊するのはいいけど、ゾンビを呼び出すのは勘弁してくれないか?」
「それが…。私が何かしているわけではなく、私の魔力に反応して目覚めてしまっているみたいで…。」
なるほど。つまり、超大物アンデットの膨大な魔力の余波で、そこらの死体に擬似的に魂が作り出されてしまっている、ということか。
「私としては、ここの墓地に眠っている魂たちが安らかに成仏してくれるようにしたいんです。」
その言葉を聞いて、全員の視線がアクアに集中する。
「な、何?皆どうしたの?」
少しの静寂のあと、カズマが口を開く。
「安心しろ、ウィズ。墓地の除霊はアクアがやってくれるってさ。
「ちょ!?」
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
「待っ…」
「これで墓地の問題は解決したようだな。」
「だから…。」
「よし!帰るぞ、お前ら!」
「だから話を聞きなさいよーーーーー!!!!!!!」
夜の静寂にアクアの嘆きが木霊した。
翔馬side終了&???side開始
「それでは鈴蘭さん。貴女が大事な人と出会い、共に魔王を倒すことを願っています。」
エリス様が作り出した光に包まれた次の瞬間、目を開くと知らない町並みが広がっていた。
「ふわぁ…!」
ここがエリス様の言っていた街かな…?っと、町に見とれてる場合じゃなかった。
「確か、エリス様は冒険者ギルドって場所に行きなさいって言ってたっけ。」
でもどうしよう…。場所が全く分かんない。誰かに聞こうかな…?
そんな時だった。私の耳にある会話が聞こえてきた。
「全く、なんで私があんな奴の代わりなんてしなくちゃいけないのよ!」
「そんなこと言っても、俺達みたいな低レベル冒険者じゃあんなラスボスみたいな奴に叶うはずないだろ。」
「そうですよアクア。リッチーという存在はとても恐ろしい存在です。戦ったりすれば、カズマと私は死んでいたでしょう。」
「リッチーに蹂躙される…。悪くはないが、わたしの求めているものとは違うか…。」
「うるせえ!お前はいちいち変な発言すんな!」
変わった冒険者さん達もいるんだなぁ…。異世界ってこんな感じだったんだね。翔馬さんが言ってたのと似てるかも。って、それよりも冒険者ギルドの場所を聞かなきゃ。
そう思ってさっき会話していた冒険者さん達の方に顔を向けた私は、あまりの出来事に固まってしまった。
だって、そこに居たのは、
「翔、馬…さん…?」
「…鈴蘭…か?」
私を守って死んでいったあの人が、今目の前に居たのだから。
如何でしたか?次回も早めに出せたらなーと思います。投稿速度についてのアンケートを取りたいので、ご協力くださると嬉しいです。期限は今月末までで。
追記 アンケートご協力ありがとうございました❕