「冒険者として登録…ですか?」
「ああ。鈴蘭が俺達と行動するとなれば、冒険者として活動したほうが良いと思ってな。」
「そうだな。冒険者カードがあれば他の町のギルドでクエストを受けることも可能だし、私も問題はないぞ。」
「俺もいいぜ。頭のおかしい爆裂狂とかじゃない、普通の常識人が増えるんなら大歓迎だ!」
「おい。その頭のおかしい爆裂狂というのが誰なのか、はっきりと言ってもらおうじゃありませんか。」
「なんだ、自覚してなかったのか?頭のおかしい爆裂狂。」
「なにおぅ!?よくもまあそんなことが言えましたね!アクセルの街で女性泣かせの鬼畜男って呼ばれてるくせに!」
「おいまて、ここにはスズランも居るんだぞ。誤解させちまったらどうすんだよ!」
「誤解も何も、公衆の面前で私のパンツを奪ったじゃないですか!この事実がある以上、あなたの鬼畜っぷりは誤解でも何でもないことが証明されましたね!」
「おぉい待てよ!確かに取ったけど、あれは不可抗力ってもんだろうが!!」
「不可抗力で下着を取られる人の気持ちを考えてくださいよ!」
こいつらの喧嘩がいつまで続くのかちょっと見てみたい気もあるが、周りの迷惑になるしそろそろ止めるか。
「すまん、そこらで一旦止めてくれると助かるんだが。」
俺の仲裁に二人はハッとした表情で静かになった。周りの冒険者の視線が痛かったこともあるのだと思うが。
「それで、話を戻すが鈴蘭の冒険者登録をしたい。」
「私は構いませんよ。もし鈴蘭がウィザード系の職業になったら、我が爆裂魔法を伝授いたしましょう!」
めぐみんは目を赤く輝かせながら意気揚々に言うが、鈴蘭は気圧されているようで、俺の後ろに隠れている。
「そんなんだから頭のおかしい爆裂狂って言われるんだぞ。」ボソッ
「カズマ、今なにか言いましたか?」
「いや、何にも。」
カズマの呟きを聞き取っためぐみんは強烈な睨みを利かせるが、カズマは口笛を吹きながら無視している。
「ともかく、冒険者になるには手数料が必要になってくる。カズマ、申し訳ないが貸してくれると助かるんだが…。」
「ああ、千エリスだっけ。いつか返してくれるならいいぜ。」
「ありがとう。よし、行くぞ鈴蘭。」
「はい、翔馬さん!」
――――――――
「……………。」
「アクア?一体どうしたんですか?」
「…なんかね、スズランから妙な感じがしたの。」
「妙な感じ……ですか?」
「ええ。何て言うかこう、禍々しいオーラみたいなの。」
「気のせいじゃないか?俺は特に何も感じなかったけど。」
「カズマみたいなヒキニートには分かんないでしょうけど、私クラスの女神になると分かっちゃうものなのよ。」
「ああ?宴会芸しか取り柄のない女神様でもわかるっつうんなら、俺にも当然分かる筈だろうが。」
「罰でも当てるわよこのクソニート。…気のせいならいいんだけど。」
――――――――
「すまない、この娘の冒険者登録をさせてもらえないか?」
「冒険者登録ですね?手数料として千エリスいただくことになりますが。」
「これで足りるか?」
「ありがとうございます。それでは、先にこの紙に身長、体重、年齢、身体的特徴などを書いてもらえますか?」
「わかりました。」
そう言って受付の女性は鈴蘭に紙とペンを手渡し、鈴蘭はスラスラとそこに記入していく。
……?
「鈴蘭、君はこの世界の字を書けるのか?」
「はい、私を転生させてくださった女神様が、この世界の知識や常識などを教えてくれたんです。」
「…そうか。親切な女神様だったんだな。」
「はい。私みたいな存在にも、あの人は親切にしてくれました。」
生前では彼女にまともに教えてあげられることはなかった。文字や知識もだが、世界のことは彼女は何一つ知らなかった。彼女が生まれた世界とは違うが、この世界はきっと、彼女を受け入れてくれるだろう…。
「これで良し…っと。書き終わりました。」
「確認しますね。……はい、スズランさん、ですね。それでは、次にこの水晶玉に触れてもらえますか?それで、スズランさんのステータスや適性職業などが分かります。」
「この玉に触ればいいんですよね。」
そう言って鈴蘭が水晶玉に触れると、水晶玉が淡い光を放ち始めた。
「これは…!凄いですよ、スズランさん!体力などが平均的で、筋力や敏捷性がやや低めですが、魔力の値が桁違いレベルですよ!?というか、ええ!?アルケミストって、なんでこれが…」
受付の女性が驚いているので、俺と鈴蘭も確認することにした。
鈴蘭
LV1
筋力 150
生命力 400
魔力 24000
敏捷性 160
知性 1200
器用度 500
幸運 600
…なんだこれは。魔力の値が桁違いとは言っていたが、レベル1にして5桁というのはおかしいというレベルではないと思うのだが。
ここまで考えて、ふと思い出す。そうだ、彼女は………。
「…翔馬さん、私なら大丈夫です。もう囚われてはいませんから…。」
鈴蘭が俺の手を握り、そう呟いた。
「…そうか。なら、俺が何か言うことも無いな。」
そうだ、彼女の魂はもう解放されている。己の人生を一度終えた時点で、『混沌の邪神』からの影響は消えているはずだ。
「…コホン。申し訳ありません、取り乱してしまいました。えーと、スズランさんがなれる職業について説明させていただいても大丈夫でしょうか?」
「あ、すみません。よろしくお願いします。」
「かしこまりました。スズランさんは魔力と知性が高いので、大抵の魔法職になることができますよ。」
「どんな職業があるんですか?」
「そうですね、スズランさんがなれる職業だとアークプリースト、アークウィザード、ソーサレス、そして先ほど言った、アルケミストの四つがあります。」
「アークウィザードとアークプリーストは聞いた事があるが、後半は聞いた事がないな。」
「ソーサレスというのは、別名妖術使いとも言われています。相手を弱体化させたり、味方を強化したりする職業です。滅多になろうとする方はいないのですが、ソーサレスだけが覚える魔法などもあります。そして、アルケミストですが、もともとはこの世界に存在しなかった職業の一つなんです。」
「…元々存在しなかった?一体どういう意味だ?」
「アルケミスト、別名を錬金術師。詳しい事は知らないのですが、何でも金属を作ることが出来るとか。」
「…なんだか心もとない情報だな。」
「申し訳ありません…、アルケミストをはじめとする四つの特殊職は、過去の勇者パーティの方々の専用職とされています。なろうとする方々もたくさんいらしたのですが…条件が不明で、どういった理由でなれるのか、そもそもどんなことが出来るのかも余り知られていません。」
ふむ…。過去の勇者の仲間の一人がアルケミストだった。とすれば、専用職というのが転生者による特典の可能性もありえるか…?
「…アルケミストはどんな能力が持っていたのか知っていることはありませんか?」
「そうですね。過去の記録によると、物質の強度を高めたり、剣に属性を付与したりした。などの話はありますが、どういった原理で使われているのかは不明です。」
「……決めました。このアルケミストというのにします。」
「よろしいのですか?恥ずかしながら我々にもわからないことが多すぎて、あまりお勧めは出来ませんが…。」
「はい。せっかくのチャンスですから、実際になってみて、どんなことが出来るか試してみようかと思って。」
「…分かりました。では、スズランさんをアルケミストとして登録いたします。
「四つの特殊職と言ったが、他の三つはどんなものがあるんだ?」
「他の三つは、魔法と剣術を使いこなす『勇者』。回復魔法と攻撃魔法のエキスパート『大賢者』。そして、己の身体能力と技を磨き上げることに特化した『剣豪』の三つとなります。剣豪は、翔馬さんがなられている職業ですね。」
「勇者、大賢者、剣豪、そして錬金術師か…。」
それぞれの職業がすべて存在しなかったとするならば、どう考えても勇者パーティのメンバーは全員この世界に転生した者ということになる。だが…
「腑に落ちんな…。なぜ今まで適合者が出なかった職業が立て続けに二人も現れたんだ?何かきっかけが存在するのか…?」
「それについてはこちらが聞きたいのですが…。コホン。まあとにかく、スズランさんはアルケミストになられる、という事でよろしいですか?」
「はい、大丈夫です。」
「わかりました。冒険者スズランさんを、我ら冒険者ギルドが歓迎いたします!」
受付の女性が高らかに宣言すると、周りの冒険者が大声をあげて歓迎してくれた。これから鈴蘭とともに冒険者として生活するとなれば、彼女の身にも危険が伴うだろう。だがそれでも、彼女がそれを望んだというのであれば、俺が鈴蘭を守り抜いてみせる。今度こそ必ず…。
久しぶりの投稿にしては文字数すっくねえな。やる気あるんでしょうかねこの作者は。これからも亀のようなスピードで適当に投稿していくことになるかと思われますが、気が向いたときにでも見て言ってください。