竜王を撃破したジゼル達一同、いよいよバーンのいるパレスへと向かうとそこにはダイ達アバンの使徒とラーハルト、そしてそれに対峙する大魔王とミストバーン、キルバーンが揃っていた。
「貴様らの企みもそこまでだ大魔王バーン」
「ハドラー……!」
苦虫を噛み潰したような表情をしバーンが唸る。
「元魔王、竜の騎士、そして雷竜の孫が貴様の首を獲りに来たんだ。光栄に思え」
「くくく……あーっはっはっはっ!」
「何がおかしい?」
「ハドラー様、あれは老人特有の更年期障害ってやつですよ」
「バーン様が更年期障害など患う訳がないだろう!」
ミストバーンがキレ、攻撃するもバーンが手で制する。
「いやいや失礼。確かにこのままでは流石の余でも死にかけるだろう。だがそれは飽く迄も余がこのままであったならの話しだ」
「まさか変身でもするというのか?」
「似たようなものだ。ミスト! 余の身体を返還することを命ずる!」
「了承しました」
ミストバーンが身体を返却すると、バーンの老体が徐々に若返り、そして遂には青年のような身体へと変貌する。
「さて待たせたな」
「待ってあげたわ大魔王。これで心置きな──!?」
ジゼルの身体が黒い霧に覆われ、染まっていくと額に暗黒闘気の目が生え、バーンに跪いた。
「バーン様、これより私はこの身体でバーン様を御支え致します」
端から見ればジゼルがバーンに忠誠を誓ったようにしかみえずジゼルを間近で見てきたハドラー、バランがそれを見て動揺に走る。
「な、なんの真似だ! ジゼル」
「見てわからないか? 今の私はミストジゼル。バーン様を御支えする忠臣だ」
「ミストジゼル……まさか、ミストバーンか!?」
その言葉でジゼルの言動の正体に気がついたヒュンケルがそう尋ねるとミストジゼルがくつくつと笑う。
「いかにも。そもそもミストバーンは
「しかし何故バランやハドラーの身体を狙わない!?」
「暗黒闘気の有無だ」
「それが一体何の関係が?」
「私がバランを狙わない理由はバランが暗黒闘気がないのに対してジゼルには存在する。私が操作しても竜魔人となれない。そしてハドラーを狙わないのは超魔生物となった身体を操作するのは難しいと判断したからだ。故に2人のうち誰かを乗っ取ったとしてもこのジゼル以上に操れるとは思えず断念させて貰った」
ミストジゼルがそう言い放つと構え、ヒュンケルに向かって正拳突きを放った。
「ぐあっ!?」
ヒュンケルの身体がくの字に折れ曲がり、続けてミストジゼルが爆裂拳を放ち追撃するとヒュンケルの身体から骨が鳴り響き、悶絶の表情を浮かべる。
「ぁぁぁ……っ!!」
「素晴らしい……ジゼル、貴様がここまで鍛え上げたことは称賛に値する。貴様の身体でバーン様の偉業の支えとなることを光栄に思うがよい!」
「させるか!」
ラーハルトが庇い、魔槍でミストジゼルの攻撃を受け流してヒュンケルに被弾を避けさせた。
「ほう、まだ実力者がいるか」
「ミストジゼル、俺はその女がどうなろうが構わん。それ故に手加減せずに殺れる」
「待てラーハルト! ジゼルはバーンを倒す為のキーパーソンだ! ジゼルを殺したらバーンも殺せなくなる!」
バーンに睨みを効かせながら、バランがそう告げるとラーハルトが舌打ちこそせずともその表情は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「バラン様、ならばこちらは出来る限り足止めします! ですからその間にバーンを倒して下さい!」
「わかった、その方が良さそうだな」
バランが鞘から剣を抜き、構えるとバーンが笑みを浮かべた。
「雑兵とまではいかずともあの程度の戦士にミストが敗れるとは思えぬのだが、まあいい。貴様達を倒せばいいだけなのだからな」
バーンが特殊な構えに移るとバランが呟く。
「バーン、その手には乗らん」
「ほう、この技の正体がわかるというのか?」
「私が相手した魔族の中にそれと似た構えを扱う者がいた。その構えはありとあらゆる攻撃を弾き返すカウンターの構え。故に貴様がやろうとしているのは一撃必殺のカウンターだ。私がその誘いに乗った途端一瞬でやられるのは明白だ」
「良く見破ったものだな。だがミストジゼルに体力という概念はない。時間を稼ぐほど不利になるのは貴様らの方だ」
「攻略法がないとは言っていないぞ、バーン!」
バランがそう言い放ち、バーンに向けてギガデインを放つとバーンの身体が反応してギガデインをバランに向けて弾き飛ばす。
「はぁぁぁぁっ! ギガブレイク!」
弾き返されたギガデインを剣に纏わせギガブレイクに昇華させ、それをバーンに炸裂させようとしていた。
「カラミティエンド! カイザーフェニックス!」
バーンの手刀によりバランの剣の軌道がズレ、更にバーンのメラゾーマがバランに直撃した。
「これが天地魔闘の構えよ。いかに竜の騎士といえどもカウンターの三連続には対応出来なかったようだな」
「と、父さん!」
「おっとさせないよ」
ダイがバランに駆け寄ろうとするもキルバーンに止められ、顰め面になる。
「キルバーン、お前如きが邪魔をするな!」
「うふふっ、僕のことを見くびっているようだね。確かに僕にはミストやバーン様のような強さはない。でもね搦手は得意なんだよ?」
キルバーンが用意した罠が作動し、ダイ達が閉じ込められるとキルバーンが高笑いし、嘲笑う。
「はーっはっはっ! これで君達もおしまいっ!?」
キルバーンが突如何者かによって吹き飛ばされ、魔力の壁に激突するとその何者かが馬乗りになり何か呟きながら左拳を上げる。
「キルバーン、コロス……! キルバーンコロス!」
「み、ミスト。一体何のマネだい!? 僕が何かしたというのかい!?」
「シネ、シネ、シネ!」
ミストジゼルがそう呟き、暗黒闘気を纏った左拳をキルバーンに食らわせるとキルバーンが凍りつき、次のターゲットはその使い魔に向けられ輝く息によって凍結した。
「一体どうなっている?」
「わからねえ。だがキルバーンも死に罠も解除されやすくなった以上好機だ! 皆、いくぞ!」
ポップの声に全員が頷き、罠をそれぞれのやり方で解除しようと動き始めた。
「はぁっ、はぁっ……! まさかキルの名前を聞いただけで暴走するとは思わなかったぞ、ジゼル! だがもう貴様に主導権は渡さん!」
ミストジゼルがキルバーンを殺した理由、それはジゼルの身体がキルバーンの言葉を聞いた途端にキルバーンに殺意が芽生えミストの暗黒闘気を上回り、暴走したからだ。しかしそのキルバーンを殺した以上ジゼルの暗黒闘気が収まり、ミストが制御出来る範囲内になる。
「どうやらその御婦人は私の味方のようですね」
その声を聞いた瞬間、ミストジゼルだけではないこの場にいた全員が目を見開き驚愕する。
「貴様は勇者アバン……!」
「いかにも。かつて魔王ハドラーから世界の窮地を救ったアバン・デ・ジュニュアール3世とは私のことです」
「ふん、貴様がいくら強くてもこの身体には適うまい。何せバーン様を除けば魔王軍最強の身体だ。貴様を倒したハドラーよりも遥かに格上の身体に──」
「あ、そういうのいいですから」
アバンが剣を構え、空裂斬を放つとミストジゼルから暗黒闘気の塊がそれを回避するためにジゼルの身体から抜け避ける。
「愚かな、アバン! その手の対策を私が何もしてこないとでも思ったか!」
ミストが再びミストジゼルになり、そう笑うとアバンが真顔になる。
「ええ。ですから一瞬出るだけで十分です。貴方の正体も倒し方も分かりましたから」
「何だと?」
「それではもう一丁!」
「こんなものは効か──何だ!?」
ミストジゼルからミストが抜け出すとミストの意思とは別に何かに引っ張られる。その何かとは金属製で出来た瓶だった。
「止めろ、止めるんだ!! 何故私がそんなところに引っ張ら──」
ミストが最後まで言い切る前にその瓶に封印され、更にアバンはその瓶に向けて全力の光の闘気を注ぎ、ミストの断末魔の叫び声を聞きながら倒れ込む。
「私の役割はまだありそうですね……シャナク」
最後にキルバーンが残した罠を解除し、アバンの身体は動かなくなる。
「これで私の役目も終わりですかね。後は任せましたよ皆さん」
「先生!」
「まさか貴様が生きているとはな。ポップがメガンテして生きていたから貴様も生き残るのは道理か。親衛騎団!」
「はっ!」
ハドラーの掛け声とともに親衛騎団が声を揃えて返事をする。
「ヒムとシグマ以外はジゼルとアバン、それとバランを安全な場所に避難させろ! 特にアバンとバランに関しては回復も必要だ!」
「ははっ!」
「そしてヒムとシグマは俺の背中を任せた。いくぞ、バーン討伐へ」
「ははっ!」
ハドラーの背中を目に焼き付けるようにダイ達はそれを見守ることしか出来なかった。
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