ある鬼の終わり   作:氷陰

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アニメ見てたら藤襲山の手鬼が手を握ってもらってたのが羨ましかったので戦闘描写練習がてらの投稿です。




土鬼

 

 

 ───────とうとう鬼狩りが俺のところへやってきた。

 

 

 

 深い深い山の奥。盆地にある廃村に向かってくる奇妙な子供が1人。

 真っ黒な洋服の上に、緑と黒の市松模様の羽織。木箱を背負ってだんだん俺の縄張りへ近づいてくる。額に傷のある少年だ。

 

 俺よりずっと若いけれど、人間を形作る「経験」は少年の方がずっと多いような気がする。

 

 

「まあ人間の頃の記憶なんてあんまりねえから、この見解も間違ってるかもしれねーけど…」

 

 

 しかしあれは噂に聞く鬼殺隊だ。迎え撃たねばならない。村から敵を視認して直ぐに移動した。

 

 人間の頃は街中で何かの仕事をしていたと思うのだが記憶はおぼろげだ。鬼になる前の年齢なんか知らん。

 大事だったらしい人はいつのまにか足元に血塗れで落ちていて、とても心が空虚になっていたのは覚えている。でもおかしいことに、俺が鬼になったと自覚した時……心の中で何かを決意していた。

 

 そしてその決意は市松模様の羽織を見た時から、強い割合を占め始めた。俺はもしかすると人間の頃に「何か大事なこと」を知っていて、鬼になった今為すべきことをしようとしているかもしれない。鬼になってその内容はさっぱり忘れたが。

 

 とにかく俺に、鬼殺隊の少年から逃げるという選択肢はなかった。

 

 

 

 もう日は暮れている。鬼の時間、鬼のテリトリー。そこに迷わずまっすぐ向かってくるという事は、少年は勘が鋭いのか鼻がいいのかもしれない。しかし山道をごく普通の歩みで進んでくる。

 

 警戒はされているだろうが、先手を取られるよりはマシだ。所在を掴まれていない今、攻撃することにした。俺はそこまで頭が良くないから戦い方が脳筋に寄るのは仕方ない。

 

 そう言い訳を頭で並べながら、村にあった(くわ)を少年目がけてぶん投げた。

 ブオンッ! なんか結構大きい風切り音を出してしまった。

 

 

「ッ! 鬼の匂い!」

 

「こんな夜中に何の用だア? この先には廃村しかねえぞ」

 

 

 言わなくても相手は鬼殺隊だ。理由は鬼だとわかりきっている。思ってたよりスピードが出た鍬は軽く躱されて地面に突き刺さった。ちゃんと当てるつもりだったんだけどなあ。

 彼は驚いたが、俺をみるや否やすぐさま刀を抜いた。

 

 少年の目線が俺の目とかち合う。……ああ、なんだかよくわからないけれど、こいつの目は「優しい目」であり「哀しみの目」であり、「怒りの目」だ。なんだか泣きたくなってくるから焦点を眉間にずらした。

 

 

「……このあたりにいるという鬼を、倒しにきた! お前が()()だな!?」

 

「この先の村には俺しか住んでないから間違いない、だろうな」

 

「ひどいにおいだ。今まで何人……食べたんだ!」

 

「うーん、覚えてる限りだと20は喰ったはずだぜ。村のやつらのほとんどだ。……ああ、逃げたやつから俺の情報がバレたのか」

 

「………ッ!!!」

 

「そんな顔すんなよ。どうどう。()()()()()()()()()()()()? 無いなら殺すぞ」

 

 

 俺は鬼になりたての雑魚よりは流石に強いから余裕を持っている。だから話がしたいなら少しは聞いてやる。目の前の少年もなりたて、なんだろうなあ。俺に意識を全て集中させているようだ。視線が痛い。

 

 彼の目に俺はどんな風に映っているのだろう。()()ほつれていないけど色褪せた朱色の着物にざんばら頭。鬼の特徴以外に特異な点があるとするなら、輸入品のコートを着用していることか。多分そこそこ値が張ってる。あったかいんだよ、これ。

 

 ちぐはぐな姿かもしれん。いや俺が言ってるのはそういうことじゃない。いや、そもそも「鬼狩りから見た鬼」なんてただの討伐対象だから考えるまでもなかった。

 

 

「………鬼から人に戻る方法を知っているか」

 

「知らねえ。俺みたいな下っ端がわかるわけないだろうが」

 

「じゃあ鬼舞辻無惨について」

 

「言えない。死ぬ。他には?」

 

「………ない!」

 

「じゃあ、こ、ろ、すっ!!」

 

「っ、ぐうっ!??」

 

 

 地を蹴り一息で接敵。少年が反応するより早く足をつかんで投げる。すぐ木にぶつかった。……いや体勢整えて受け身取ってるな。木を踏み台にしてこっちに向かってくる。

 

 刀ごと爪で吹っ飛ばそうとして────相手が鬼殺隊というのを思い出す。

鬼舞辻無惨様(あのかた)」が言っていた。鬼殺隊の使う「日輪刀」は鬼の(くび)を斬り滅ぼすことができる、太陽と同じ鬼の弱点なのだと。

 

 少ししか使ったことないけど「血鬼術」、使ってみるか。というか咄嗟に出しちゃったけど。

 俺は土を操ることができるらしい。地面から土柱を生やして顔面にクリーンヒットさせた。

 

 

「土遁! なんちゃって」

 

「つち…!? 土を操るのか!」

 

「リカバリー早くない? 軽い脳震盪起こすくらいの威力あったと思うんだけど……鬼殺隊ってタフなんだな」

 

「リカ……たふ……? なんて言ったんだ!?」

 

「気にしなくていーいー! そうら、次行くぞっ!!」

 

 

 立て続けに土の棘を生やしていく。先端をめちゃくちゃ尖らせているので、まともに当てることができれば一発だ。まあ少年は鬼殺隊だから多少擦りはすれど直撃はあり得ない。

 

 ────弐ノ型・水車(みずぐるま)

 ────捌ノ型・滝壺(たきつぼ)

 

 最後の土棘は剣術の型で回避された。勢いづいた流れで俺の真上から切りかかってきたので土でバリアを作る。技を受けたことでバリアは崩れたが、俺自身に損失はない。できるだけ距離をとった。

 

 

「それがお前らの力か。鬼殺隊ってのはみんなそうなのか?」

 

「俺は他の隊士をよく知らない! けど、きっとそうだ!」

 

「お前もまだ知らないことだらけか。俺もだよ」

 

 

 鬼殺隊に遭遇したのは初めてだ。少年の使う変な呼吸が「水の呼吸」だとなぜか俺は知っていたが、初見だった。

 少年は人の身でありながら鬼と同等の力を持っている。先に少年を襲ったのは俺だが、戦いを仕掛けたことを少しだけ後悔した。

 

 

「少年……ああ、なんかこの言い方嫌だ。お前、名前なんていうんだ」

 

「竈門炭治郎だ!」

 

「炭治郎、ね。俺はあ…名前忘れたな。土方(ひじかた)とでも言っておこう」

 

 

 そう言う間に次の一手の準備をする。

 

 ────血鬼術・土遁、落とし穴。

 安直な名前だが、深さはショベルカーで掘るより深く、側面は凹凸のない壁だ。ついでに1番下は針も仕掛けておいた。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 炭治郎が上がってくるのを待った。

 

 






炭治郎目線で進める話を2話目に、オリ主目線の締めの話を3話目にして投稿する予定です。
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