気がついたら何かを断ち切る神様になっていた

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断ち切る神様になりました。

突然の事態だ。いや、何がどうかなんて分からない。声を出せない。いや、そもそも声自体が出せない。声帯が無いように感じる。当然私は障害なんて持っていないし普通に喋れたサラリーマンだった。だが……何だこれは?動ける?けど…なんだこの浮遊感は。浮いている?…ん?なんだあれ。神社?…寺?なんだあれは。取り敢えず近づいてみよう

 

私はふわふわと近づく。そして人を見つけた。その人は何かを祈っていて…まるで何かを()()()()()()()()ように祈っている。…何故か分からない。そもそも何なのかも分からない…だが見える、分かる。人と人を結び…悪運幸運…何もかもを繋ぐ線…縁。

 

「助けて……もう、彼とは別れたい…″もう嫌だ″。」

 

俺は手に持っていた美しい赤色の大きな裁ち鋏で黒い縁を切り離す。

 

ジャキンッ!!

 

気がついた時私はハサミで不運と繋がる縁を切っていた。…何をしていた?私は?ふわふわとした思考がしっかりした冷静な私の思考に戻る。祈りを捧げていた人は…どうやら若い大人…それも女だった。成人まであと少しの子供が祈っていた。…酷い。顔に痣があり恐らく肋骨はヒビが入っているのか息苦しそうにしている。…可哀想に。俺は浮上し神社の扉の向こうに行く。仏のような像がありそれに私は触れる。

 

…許してください。私は今、よく分からない状態にあります。…何故か分からない。でも一つだけ分かることがあります。…私は断り、何かを断ち切る力がある。私は人を救いたい。だから…お願いです。私にも…人を救う力をお与えください。

 

自分でも驚くほど冷静だった。いつもの私なら見知らぬ人なんて捨て置く自分だった。なのに今は人助けを望んでいる。意味がわからなかったが自分でも驚くほど助ける気持ちが強かった。

 

私は後ろを振り返りますお供えされた物を見る。これを彼女は対価にして助けて欲しいようだが…要らなかった。自分を覚えてたくれることにだけ…専念していた。

 

次の日も女の子は来た。彼女は涙目だが微笑んだ顔でお供え物を提供してきた。…祈りを捧げて。

 

「仏様…ありがとうございます…彼との縁が切れました…もう、痛い思いをしなくていいんですね…」

 

私は背後に回り背中を擦る。どうせ感じられないんだろうが…せめてこれぐらいはしたかった。

 

「…?仏様?」

 

すると彼女は顔を上げた。…なかなか可愛らしい顔をしている。不思議そうに背中を見ている。…届いたのか?

 

「…励まして…くれるんですか?…なんて、慈悲深いんだろうか……」

 

また涙目で祈っている。…自分の正体が未だに分かっていないが届くことができることに私は何故か嬉しかった。たとえ私が見えていなくても存在を知ってほしかった。

 

次の日は違う人が来た。お爺さんのようだった。私は1度神社の?のような場所から出てみようとしたが階段が結構あったり村?町?のような場所だったりで結局神社にいる。お爺さんはお供え物をして深く座り込み祈りを捧げ…

 

「仏様……お助けください…娘の病気が治りません…もう嫌だ…」

 

…こう言われると弱い。私はこのお爺さんが帰っていくとき後を追う。そして…

 

…この子がそうなのか。まるで死にそうだ。

 

弱々しい生命力でこの世にしがみついている子供。この子はまだ生きていてもいい。だから…

 

ジャキンッ!!

 

また黒の縁を切り離す。こうすれば大抵は不幸から遠ざけることができる。だがこの子はあと少しの間だけ苦しんでしまう。…可哀想だ。

 

私はお爺さんに並んで見守ることにした。

 

翌日あの子は体調が急激に良くなった。インフルエンザよりも苦しかっただろうに。急によくなったことから医者が驚愕していた。助かる見込みは無かったのに回復した。まるで奇跡だと。

 

一週間後違う客が来た。スーツの男だった。サラリーマンだろうか?彼は十円玉を賽銭箱に投げ入れて願う。

 

「会社にクビにされませんように…」

 

私は願いを聞いたが…不思議と何もしようと思わなかった。だが何もしないのは癪なので黒の縁の一本を切り離しておく。

 

ジャキンッ!!

 

翌日彼は出世した。

 

私は常に神社にいた。この神社は大分汚れていたが時々くる人や神社の管理者に綺麗にされている。私は願いを叶えていった。すると神社に来る人達は増えていき、そのぶん願い事も増えた。子供は幸せになりたい、好きな玩具が欲しいと。大人、学生は欲深く金が欲しい、仕事が欲しい、女が欲しい、彼の子供が欲しいと。老人は欲が無く幸福でいたいと。私はいつしか断り様と呼ばれていた。神社も、町も、その人達も…活気溢れていた。…しかしこの神社は変わっていった。願い事はどんどん悪くなっていく。あの人を殺して欲しい、彼を事故に合わせて欲しい、復讐したい等々…私は願いを叶えていった。殺し、合わせ、復讐させ、私の綺麗だったハサミはだんだんと刃こぼれしていき色は汚れていく。私の姿もまた汚れていく…姿は醜く歯がむき出しに…私の…理性もまた…薄れて行く…

 

今度はこいつか?今度はあいつか?

 

神社は汚れ古くなり町はダムに沈む。私は違う町で…叶うことのない絵馬の願いを叶えようとしていた。だが…

 

気がつけば戻れなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の理性が繋がれた。

 

 

 

 

 

 

 

誰だ?私に何をした?

 

「…は…に…あいに…」

 

誰だ?何に喋っているんだ?

 

「だから…そこをどいて!」

 

私は理性が少しの間繋がれた。だが吹っ切れた理性では少しの間しか見ることができなかった。

 

青色のリボンを付けた少女を

 

 

 

 

 

また見える。私は人の形をした地面の何かを切ろうとしていた。何をしているのだ私は?こんなことではなにもされないぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえる。あの子の声だ。なんだ?今度は誰を殺すンだ?教エろ。誰ダ?誰ヲ殺ス?殺スノカ?何ヲ?今度ハ何ヲシタラ私ハ感謝サレルンダ!!?

 

 

もういやだ!!

 

 

声が聞こえた。あの子だ。何が嫌なんだ?何をだ?何を切ればいい?

 

私はそこに行きソレを断ち切る

 

ジャギンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「…コトワリサマ…?」

 

断ち切られたのは…地蔵だった。地蔵は壊れ砕け通路が見えていた。クリアになった思考で私は少女を見下ろしていた。少女は私を見上げていた。

 

「…もうこえが……きこえなくなった…?」

 

辺りを見回してそう呟いている。少女は私と面と向かって…?

 

「ありがとう…ございます……」

 

…感謝された。聞くことすらないと思っていた言葉が少女から発せられた。…嬉しかった。

 

「まって!」

 

私は去っていく。もうここに用はない。…戻ろう。あの境内に。神社に…だって私は…

 

「…なんで……たすけにきてくれたの?…わたしがよんだから…?…わたしが…″もういやだ″って……」

 

私は助ける神様なんだから。

 

私は私の裁ち鋏を残しここを去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また声が聞こえる。

 

 

 

 

 

君が傷ついている。

 

 

 

 

 

 

助けなきゃ

 

 

 

 

 

 

私は腕ごと絡まる赤い糸とオバケを

 

 

 

 

 

切る。

 

 

ジャキンッ!!

 

 

少女は腕を失った。腕の断面から赤い血が流れている。……もう一人の少女がいる。少女は青いリボンを付けた少女を連れて外へ出て行く。

 

 

 

 

 

 

私はこの蜘蛛と対面した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の役目は終わった。私は神社にこもった。

 

 

 

神社は誰も来ない。だけど…

 

 

 

 

最期に私に役目をくれた子がいた。

 

 

 

 

私は本当に…

 

 

 

 

 

断ち切る神様になりました。

 

 

 

 


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