没理由 原作未読、アニメのみ視聴、ロキのエセ関西弁が何かウザくなる、ベルの可愛さが難しい。ロキの可愛さを前面に押し出したかったが私の技量では難しかった。
夕暮れ。街往く雑踏の多くは帰路を占める時間帯。
今日も今日とて冒険者稼業に勤しんだ者たちが様々な表情を浮かべて白い塔から出て来ている。
各々の表情から見てとれる喜怒哀楽は『今を生きる』子供たちの魂の輝きであり、美しさでもある。
それは自らが捨て去った可能性。
――もし、ウチがファミリア作っとったらあんな子らと一緒におれたんかなぁ。
しかし、そんな『もしも』の話ですら一瞬にして瓦解する。
――ははっ、無理やな。ウチみたいな性格破綻者に付いてくる子ぉなんておらへんわ。
心の中での自問自答に対し自虐的に頬を歪める。
『バベル』前の広場。噴水の淵に腰を掛けその大通りで様々な冒険者たちを眺めていた。
思い返せば何十年前にもなろうか。
いつ何時も面白味の欠片すら無い天界に嫌気がさして、悪友のとある神と同時期に下界へと下りてきた。
自身が下界の物珍しさにあちらこちらへ物見遊山している間に、悪友はあれよあれよと子供たちに囲まれて面白可笑しく生活しているではないか。
『キミも
久しく会った悪友は自身の子供たちがどれだけ可愛いかを長々と惚気ながら諭した。
「アホゥ。ウチがアンタと同じ事出来るワケないやろ…」
そして、続けて出た言葉は幸せそうに笑い、子供たちへの想いを語る悪友への羨望からの言葉。悔し紛れの悪態だった。
「ど、どうせアンタの無駄にデカい乳目当てのガキ共が大半やろ?無駄な贅肉が多いってだけでチヤホヤされて良かったなぁ、ドチビ。」
――違う。こんなん本心やない。
「…ロキ、流石のボクでもその言葉は聞き流せないよ。ボクの事なら何とでも言うがいいさ…でもね、大事な子供たちを悪く言うなら例えキミでも許さない!」
悪友が本気で怒っている。地上で禁じられている神威を僅かに迸らせて敵意を剥き出しにしている。
「な、なんや!そないマジになることないやろ?……あ、あれか?図星やったからか?いつもこれ見よがしにデカ乳揺らしてるもんなぁ。それならガキ共が寄って来るから勧誘も楽に出来るっちゅうもんやしなぁ?」
――違う。ウチはそんな事言いたいんやない。……ただただ羨ましゅうて嫉妬しとるだけや。
悪友の突き刺す様な威圧。これまで幾度となく交わしてきた小突き小突かれの喧嘩とはまるで訳が違う。
――これは、ホンマモンの…敵意や。
自分はあの後どうやってその場を離れたのか良く分かっていない。ただ一つ覚えているのは悪友の、ヘスティアの涙を浮かべた悲しそうな表情だけだった。
――またや…またやってしもぅた。ちゃうねん、ほんまにそないな顔させるつもりはなかったんや。
自身の天邪鬼な性質が、より一層に自身の愚かさと惨めさを知らしめる。
夜の帳が落ち始めた大通りの賑わいが嫌という程に聴覚を刺激する。
まるで自身を嘲笑う様に聞こえる雑踏が雑談が先程までとは全く違う世界を作り上げる。
――もう…天界に帰ってしまおうか……
道行く者は誰一人として自身の事など見てもいない。だけれど、その目が自身を見つめては弓形にしなる気がする。
――あぁ、下界にウチは…必要ないんやな……
何処の誰かもわからない雑踏を奏でる通行人は目線の先でぐにゃりと揺らぐ。自身の瞳が水分の膜を張っているとも、過剰分泌された水分が頬をつたえども色褪せた世界はどこまでも嘲笑う。
――もう嫌や…
消えてしまいたい。そんな思いを抱いて目蓋を落とし顔を膝へと埋めた。消えてしまえる訳も無い無意味で無自覚な行動だった。
どれくらいそうしていたのか。時間の感覚なんてとっくに無くなって、自身が起きているのか眠っているのかも不明な状態で頭上から声を落とされた。
「大丈夫ですか?なんで……泣いてるんですか?」
「……」
今は、今だけは誰にも話しかけられたくたい。誰にもこんな姿を見られたくない。
愚鈍で卑屈で非力で偏屈な自分に相当な嫌気が差している今、誰にも気付かれず闇に紛れて泡沫と消えてしまいたいと思っている今はその声に反応する訳にはいかない状況だった。
「……僕も少しだけ泣きたくなって今ココに居るんです。勝手に隣に座っちゃいますね」
何処の誰かも知らない人間が隣へと静かに腰掛けた気配に僅かに身構えてしまうが如何せん自身の状況を鑑みるに動く訳にはいかず、少し迷った挙句顔を埋めた膝辺りに力がこもった。
「僕、冒険者になりたくて……というか、英雄になりたくてこのオラリオに来たんですけど、何処のファミリアからも門前払いをくらっちゃって路頭に迷ってるんです。
幼い頃、おじいちゃんが話してくれた英雄譚が好きで僕も英雄になるんだぁ!って意気込んて田舎から出て来たのに……世の中上手くいかないものですね。
ファミリアならどこでも良い訳じゃなくて探索系のファミリアを一件一件回ってみたものの全滅でした。入団テストさえ受けさせてもらえず門前払いです。見た目が弱そうだからですかねぇ……ダンジョンに潜る為には生産系のファミリアに入るくらいの希望しか残ってない訳で……でも、こんな状況でもやっぱり夢は諦められなくて……その夢も諦めざるをえない様な状況で僕は何のためにココに来たのかなって。気持ちが落ち込んで、少し泣きたくなって、そしたら蹲って震えてるあなたを見つけて……って、突然ごめんなさい。これは、そう!独り言です!」
――なんや、エラい変な子やなぁ
女の隣りへ勝手に座り、ペラペラと勝手に喋り、また勝手に謝り言い訳をする。ナンパにしても可笑しな手口だ。
「でも、独り言ですけど、決意表明でもあるんです。見ず知らずの人だろうと誰かに聞いて貰いたくて。……あなたには迷惑だと思うんですけど、そのまま無視しててもらえると助かります。
僕、今は絶望的な状況かもしれないんですけど、夢はやっぱり諦めきれないんです。今日はダメでも明日また一件一件ファミリアを回ってみようと思ってます。明日がダメでもまた次の日に、それでダメでもまた次の日に。こんな事で挫けてたら夢は叶わない。とても英雄になれやしないと思うから。僕は絶対に諦めません。……これで僕の決意表明は終わりです。ありがとうございました。
あなたは僕なんかの慰めは求めてないと分かってます。だけど、夢を諦めきれない田舎者が足掻いてるって、一笑して下さい。それがあなたの立ち上がる力になれたら笑われた甲斐があるってもんです。それに、まだ寒くはないといってもそのままじゃ風邪ひいちゃうかもしれないので、出来れば何とかしたいってお節介なんですけどね。では、僕はもう行きますね。って、言っても行く宛てなんて無いんですけど。あはは」
眩しい。ただただそう思った。下界の子は色んな魂の輝きを放つと知っている。中にはドス黒い汚泥を煮詰めた色をした者や高い志の割に輝きの伴わない者もいる。
色も輝度も千差万別。誰一人として同じ魂を持つ者など居ないのだ。これまで見てきた、感じてきた者の中に目を引く者はそれなりに居たが興味を持ち、固執するほどでもなかった。
しかし、今隣りにいる者は直接見ずとも高潔で純粋な輝きを放っていると感じる事が出来る。
気付けば、今まで意固地に膝辺りへ埋めていた顔を上げその子を見詰めていた。
白い頭髪に赤い瞳の可愛らしい顔つきの少年だった。自身でも言っていた通り体付きは華奢で、とても冒険者には向かないだろうと思える。だが、少年の魂は無色透明な輝きを放ち辺り一帯を染め上げるかのように眩い光を放っている。
本能で光の元へ集う蛾の様に、意に介さず動いた右手が少年の衣服を掴み皺を作った所で惚けていた意識が戻り、咄嗟に声を上げる。
「ちょ、ちょい待ちぃな!なぁ、あんさん名前は?」
今まで無言で蹲っていたはずが急に絡んだ事で、当然少年は驚きしどろもどろになっている。だから、見詰めたまま少年が口を開くまで黙って待つ。
「あの、えっとですね、そのぉ、なま、な、名前ですね。ベル・クラネル……です」
「ベル・クラネル。……ベルたんやな。なぁ、ベルたん!ウチ、こう見えても神さまなんよ。せやけど、今日オラリオに来たばっかりでまだ家族がおらんねん。新設のファミリアでも良ければ、ウチの子にならへん?」
湧いて出る言葉を自身で咀嚼する暇もなく吐き出した。天界ではトリックスターなんて呼ばれた思慮深さも狡がしこさも無く。
この少年には打算や謀略で話をしたくないと本能的に思ってしまっていた。この子なら自身の弱く脆い姿を晒しても良いのではないかと感じてしまった。
当のベルはというと、壊れたゼンマイ人形の様にガクガクと両手を振って口からは奇声を出していた。
「かかカカカかカみ、かミ、かかかカみさマ、カかみ、かかカかかみサママママ……」
「そない緊張せんでえぇんやで。ウチはロキ。気軽にロキって呼んでくれてえぇよ。ベルたんと同じく今日ココに来たばっかりの新参者やしな。それにウチ、ちゃんと立ち上がる力、貰えたで。ベルたんの気持ちがウチの力になったんや。やから、ウチもベルたんの力になりたい思ぅてん。……それで、どない?ウチの子ぉになってくれたら嬉しいんやけど」
その日、一つのファミリアが誕生した。
後にオラリオを歓喜と狂気の渦へと巻き込む一大勢力となるその名はーー
『ロキファミリア』
衝動的に書いた理由 ヘスティアとロキの立場を入れ替えて、ロキを弱メンタルにしてベルたんとイチャイチャさせたかっただけ。細目&ぺたん娘&へそ出し&ホットパンツというどストライクなキャラクターをもっと愛でたかった。