あ、跳メインです。それではどうぞ!
跳side〜
「ん…朝ですか…」
おはようございます、草下 跳です。ここは山の麓にある小さな洞窟、数日前に見つけた僕の寝床です。広さは人が2、3人でギリギリと言ったところでしょうか。まあ、1人で生活するには困らないスペースなので問題はないですね。
グ~キュルルルルル…
「さて、食事はどうしましょう」
そう、今現在目下の問題は食事です。実はここ数日間、ロクに食事ができてません。携帯食料を向こうの世界に忘れてきてしまったからです。
「この付近で食べられる植物を探して、あと川があれば魚も釣ってみますか…サバイバルキットが入ってたのは本当に不幸中の幸いでしたね。はぁ〜、なんで携帯食料忘れてきたんだろ…」
ホント、慌ててたとはいえ携帯食料を忘れたのは僕のミスです。
「ここでうだうだ考えていても仕方ないし、まずは川を探しに行きますか!」
気分を変えるために頬を叩き、僕は荷物を持って洞窟を出ました。目指すは大きめの川、道中に食べられる果実の類でも有れば万々歳ですね。
〜数分後〜
「なぁんでですかぁ…?」
森の中を歩いて数分、残念ながら道中で果実は見つけられませんでした。が、ある意味で川よりも大収穫なものを発見しました…面倒事も一緒についてきますが。
「侵攻部隊の野営…食料の備蓄はありそうですが、どうあがいても戦闘になりますよね…」
これから起こるであろう事態を予想し、ゲンナリとなる僕。だってそうでしょう?食料を探しに行ったら戦闘になりましたって、何処のRPGゲームだって言いたくなりますよ。
「彼に連絡を入れておきますか」
ポケットから携帯電話(事前に用意されてたらしく錬に渡されました)を取り出し、錬(貰った携帯にフルネームと連絡先が記録されてました)に「侵攻部隊発見」とメッセージを送りました。
「さて反応…返信早っ。何々、『すぐ行く』…場所教えてないんですがわかるんですかね」
〜一方、錬は〜
「しまったー⁈跳から出現情報もらったのに場所聞き忘れたー⁈」
『何やってんの兄ちゃん…』
『ギュア』
「つーかレーダーに反応が全っ然ないんですがぁ⁈故障かよ、とりあえず開発者に電話するしかねーな…」
〜〜
「多分すぐには来れませんよね…1人で頑張りますか」
どうやら見張りは少ないようですし、ここはステルスでいきましょう。
NO side〜
平行世界の日本軍、その異界侵攻部隊。彼らは過去数回にわたって幻想郷に侵略を仕掛けていたが、正体不明の竜戦士と裏切り者の昆虫戦士によって悉く壊滅させられた。
この結果を受け部隊の上層部は方針を変更、敵対存在2名に見つからないように潜伏し、ゆっくりと制圧する作戦に出た。この野営はそのための前線基地だ。
「ういしょっと、これで物資は全部かな」
倉庫と思しき小さな建物で、弾薬の入った箱を床に置きながら男が呟く。男は物資の運搬やその他の雑務を行う、いわゆる下っ端の非戦闘員である。そんな彼に背後から忍び寄る影。
「嫁さん養うためにも、頑張らなきゃなぁ…ぐッ⁈」
「申し訳ありませんが、少しだけ眠っててください」
男の頸動脈を締め上げて意識を奪い、倉庫から食料を漁る1人の青年。誰あろう、草下 跳である。
「どうやら、ここには食料があまり置かれてないようですね」
そもそも弾薬と食料を同じ場所に置いたりはしないだろ、とツッコまれそうだが、単に管理者がズボラなだけだろう。
「ここ以外に倉庫は無さそうだったんですがね…仕方ない、別の建物に…」
ドガァンッッッ!!
「ヘッ、一丁上がりよ」
燃え盛る建物、さっきまで倉庫だったものの前にリモコンを握り全身に機械的な鎧を纏った男が立っている。その背後には複数の同じような見た目の人物。
「ネズミが1匹忍び込んだっつーことで弾薬の1つに爆弾仕込んで偽の倉庫に運ばせたが、見事に引っかかってくれたぜ」
男は手の中のリモコンを弄びながら笑う。目の前の建物の中には跳以外にも人…非戦闘員の男もいたというのに、彼はなんら気にも留めていない。後ろの人物達も皆同じように笑っている。彼らにとって、非戦闘員とはいくらでも補充の聞く消耗品でしかないのだ。
「…あー、このままじゃ死体確認できねぇな。オイ、早く火ぃ消せ」
「分かりましたよ、隊長」
リモコンを持った男…侵攻部隊第53小隊隊長は、背後にいる自身の部下に指示を出す。
「隊長、あのネズミって例の裏切り者ですよね?確かアイツの首にはかなりの賞金が掛かってたような」
「ああ、ざっと1億だったな」
「うひょー!隊長、俺らにも分けてくださいよ〜」
「わーってるよ、ったく」
既に跳が死んでいるかのように話す男達。あとは建物の火が消えるだけ…そう考えていた彼らの目に奇妙なものが入る。
「なんだありゃ…壁が、4枚?」
放射状に広がった高さ2m程の金属の壁。黒鉄色に輝くそれは、結晶のような形状をしていた。こんなものが一体どこから?そう考える男達の前で突然壁が液化、収縮し、その向こう側から黒鉄のバッタ人間…インゼクターに変身した跳が顔を出した。
跳side〜
「不意打ちで爆発とは、なかなか穏やかじゃないことをしてくれますね」
ヤレヤレ、変身があと少し遅かったらミンチになってましたよ。それにしても…
「補給要員まで巻き込むなんて、貴方達に人の心はあるんですか?」
「あ?知るかよんなこと。それにそいつみてぇなのが死んでもな、代わりならいくらでもいるんだよ!」
「…感心するくらいに予想通りの答えを出してくれましたね。まあ、どんな返答であろうと容赦なくぶっ潰しますが」
「ぶっ潰すだと…やれるモンならやってみろよ!」
よし、挑発にはノってくれましたね。相手は見たところ6人くらい、声質からして全員男、手に武器はなし…何処かに隠し持っていると見たほうがいいですね。サクッと…とまではいかなくても手早く終わらせましょう。
「あ、あ〜危ねぇ、ついお前のペースに乗せられるところだったわ。俺らを煽ってくれたお礼として、コイツをプレゼントしてやるよ」
目の前の男が手元のリモコンを操作します。すると、何かがこちらに向かってくる音。
「いったい何の音……ッ⁈」
音の正体を探し視線を彷徨わせていた僕の表情が驚愕で強張りました。僕の目に映ったのは、背後から猛スピードで迫る背丈ほどの金属球。確実にあれが音の正体と考えていいでしょう。
「うわぁッ⁈」
咄嗟に側転し、鉄球を避けます。その見かけ上の質量からは想像もできないほどの速度でした。もし回避が間に合わなければ僕は今頃、轢かれてネギトロやミンチ肉のような状態か板ガムのような様で地べたに転がっていたでしょう。回避に成功したことに安堵しつつ油断なく鉄球の挙動を確認。やはりというか、鉄球は滑らかにカーブしながら再度僕に向かって突進してきました。
「明らかに普通の鉄球ではありませんね…」
何にせよ、アレを止めない限りずっと僕を追ってくるであろうことは確実。僕は構えをとり、迫りくる鉄球と相対します。右脚を軽く後ろに引き、脚のブースターに空気を吸入、装甲を集中させます。その間にも鉄球と僕との距離は縮まり続け、残り1mを切った瞬間、
「イィヤァァァ!」
ブースターを作動させ、勢いをつけて右の蹴りを鉄球に食らわせました。回転する鉄球が右脛と右足の甲の装甲を削り取る感覚が僕の脚にも伝わってきます。ですが、蹴りを入れた以上止める訳にはいきません。そうしようものならたちまち僕の右脚はひしゃげ潰れることになるでしょうから。
「ぐ、おォォォォォ!」
ブースターの出力を全開にし、蹴りの威力を上昇させます。それまで蹴りと拮抗していた鉄球の勢いが、少しずつ落ち始めました。
(このまま、押し切るッ……!)
『Over injection!』
僕はインジェクトリガーを右脚に当て、引き金を引きました。同時に、右脚にエネルギーが集中していきます。
『High Wind Strike!』
「オォォォラァァッ!」
ハイウィンドストライクを発動し、鉄球を蹴り飛ばしました。鉄球は放物線を描いて男達の背後へ落下。僕は右脚に痺れを感じながらも僕は膝をつくことなく立ち続けます。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
ハイウィンドストライクの反動で息が上がっています。鉄球の表面にはけして小さくは無い凹みが見えました。鉄球は静止したままピクリとも動きません。チラリと目を向けると、まだ余裕のありそうな表情の男達。
「…随分と、余裕そうですね」
「ああ、まだ俺達の手は全然終わっちゃいないからな。そら、モタモタしてっと危ね〜ぞ〜」
その言葉と同時に、レーダーが高速で接近する3つの飛翔体を捉えます。まだ使える左足だけで飛び退いた直後、さっきまで僕がいたところに3本の何かが突き刺さり爆炎を上げました。飛んできた方角を見ると、そこにはまるで剣山のように背中から棘…ミサイルを生やした機械人形の姿が。
「…ソルジャー!」
「そう。歩く対地対空攻撃要塞、ヘッジホッグソルジャーくんだ。だがそっちばかりに気を取られてていいのかな?」
その言葉に、僕は先程蹴り飛ばした鉄球…否、装甲を解除して人の形を成していくソルジャーを見ました。
「そっちもソルジャーでしたか」
「こっちは自分で転がれる殺戮鉄球、アルマジロソルジャーくんだ。これで2対1、いや、俺達を含めれば8対1かな?」
クソッ、多勢に無勢にも程があるでしょう!ソルジャー2体でもキツいってのに、そこにパワードスーツが6人も加わるなんて…!こんな時に錬は何をしているんですか!
〜ちょっと前からの錬くん〜
「もしもしクロノス=サン?跳から敵の前線基地を見つけたって連絡来たけど、こっちのレーダーには何にも反応なかったぞ。どういう事なのか説明してもらおうか?」
『あーそれね。実はそのレーダー、まだ試作段階でね。相手さんが一気に転移してくる時の大きな歪みは感知できるんだけど、細かく転移してくる時の歪みは小さすぎて感知できないのよ』
「はあ?それは先に知らせておくべきだったろ?何で教えてくれなかったんだよ?」
『忘れてた☆』
「お前今度会ったら本気でぶっ飛ばすからな」
『うひ〜やめちくり〜。レーダーは後でアップデートしておくからお兄さん許して』
「できれば今アップデートして欲しi(デデデン!デデデン!デデデン!デデデン!)おい、コレって…」
『転移、というよりはソルジャーの出現だね』
「えっと場所は…ここの正反対かよ⁈」
『近くに跳くんの反応もあるね。どうやら2体と交戦中のようだ』
「2体⁈尚更早く向かわねえと!」
『ライドドラグナーを使うべきだね。距離が離れすぎている』
「言われなくても分かってる!」
ブォン、ブォン!
(跳、持ち堪えてくれ!すぐに向かう!)
〜〜
多分、錬はすぐには来られなさそうですね。こうなったら、1人で持ち堪えるしかない!
NO side〜
森を駆け抜ける跳、それを追うヘッジホッグとアルマジロ。跳は時に木々の間をすり抜けるように走り、時に木を蹴って跳び回りながら森の奥へ異形を誘い込む。インゼクター・ホッパーアーマーは平地での格闘戦だけでなく森林や高層ビル群(幻想郷には存在しないが)などの地形を利用した立体的な戦闘を得意としている。もし相手が並のソルジャー1体ならそう苦戦なく倒せただろうが、今回の相手はそう簡単にはいかなかった。
『!』
跳が木を蹴って大きく跳び上がった隙を見逃さず、ヘッジホッグが背部装甲から複数の小型ミサイルを射出した。ミサイルは乱立する木々の隙間を縫うように飛び回り、いくつかは木にぶつかったりして不発に終わりながらも多くのミサイルが跳に殺到する。
「嘘でしょ⁈」
まさか木が生い茂る中をミサイルが通り抜けてくるとは思わなかった跳が叫んだ。さらに森の奥に向かってミサイルを撒こうとするが、枝から足を踏み外してしまう。
(動きが、鈍ってる⁈まさか、今までの…)
落ちながら思考する跳にミサイルが迫る。避け切るのは不可能と判断した跳はすぐに装甲を自身の前面に集めて盾を形成、ミサイルを受け止めた。
「ぐぅ……ッ!」
いくら小型のものとはいえミサイルはミサイル、即席の盾を凹ませながら跳を弾き飛ばす。落下する跳の元へ、球体化したアルマジロが迫る。
「く、あァァァッ!」
装甲を戻し全身のブースターをフル稼働させて、アルマジロの回転に合わせて身を捻る跳。直撃は避けたものの勢いよくアルマジロの後方へと吹っ飛ばされてしまった。
「ゔぁっ、あぁっ……」
木に激突し、変身が解除される跳。立ち上がって再度戦おうとするも、体に力が入らず崩れ落ちてしまう。空腹を誤魔化して無理やり動かしてた体に、限界が来てしまったのだ。動けない跳へ2体のソルジャーが襲いかかる。危機に対し、彼の思考はとても冷静だった。
(向こうはどちらも攻撃態勢が整っている。対して、こちらは体を動かすことさえままならない……ここまで、かな……)
目を閉じ、命が刈り取られるのを待つ跳。しかし、いくら待っても痛みは来ず、代わりにバチバチという音が耳に届くだけ。
(何が起きているんだ…?)
疑問に思った彼がうっすらと目を開くと、そこには電撃を受け硬直するソルジャーと角からの放電でソルジャーを攻撃する鹿のようなロボットがいた。
( あれは…一体…?)
唖然としていた跳だが、すぐにこの機を逃すまいともたれかかっていた木の裏まで這いずるように移動し、ポーチから奪った食料を取り出し食べる。幸い、殆どが消化に良い流動食だったため少し休めば体力は回復するだろう。
(休息中にあの鹿に攻撃されれば終わりですが、彼からは敵意を感じない。多分、大丈夫…)
腹を満たした跳は、睡魔の誘うがままに意識を手放した。
What's the next episode…?
はい、11話でした。ちなみに、タイトルの「H」は「hungry」の頭文字です(蛇足的説明)