それでは12話、どうぞ。
跳side〜
「ん…んぅ…っ」
どうも、草下 跳です。目が覚めたら何故か洞窟の中にいました。人が3、4人は余裕で入れそうな洞窟です。
(僕は確かさっきまでソルジャー2体と戦闘になって、一方的に叩きのめされて、鹿のロボットに助けられて…そうだ、あの鹿は何処にーー)
ガシャ…ガシャ…
「⁈」
洞窟の外から聞こえる足音に身構える。まさかもうソルジャーに追いつかれたのか、それとも兵士か、そう考え警戒態勢に入っていた僕の目の前に現れたのは、
『クルルッ』
「…なんだ、
僕を助けてくれた鹿でした。しかも(ダジャレではありませんよ)、彼(?)の角にはいくつか果実がついた蔓が乗っています。僕が空腹だったことを察してくれているのでしょうか。
「気遣ってくれているのですか?それはありがたいのですが、食事なら既に…」
『クルルルッ』
僕の返事を遮って、まるで「食え」と言わんばかりに彼は角を押しつけてきました。人が3、4人入れるとはいえ狭い洞窟に鹿1頭と人1人、さらに鹿の方が頭を押しつけてくればその圧迫感は言葉にもできません。
「うわわっ。わ、分かりました!食べますから角を押しつけないで下さい!」
『クルッ』
僕の言葉に満足したのか、彼は角を押しつけるのをやめました。僕は果実を角の間から拾って、汚れがないことを確認してから頬張ります。
「…美味しい」
以前向こうの生産プラントで見た木苺の実とよく似た果実の甘酸っぱい味が口の中に広がるなか、僕は感嘆とともにそう呟きました。向こうでは果実を口にする機会などそうありませんでしたからね。
「…わざわざこれを採ってきてくれて、ありがとうございます」
『クルクルッ♪』
僕が頭を撫でると、彼は気持ちよさそうに喉を鳴らします。いや、いつまでも『彼』呼びでは少し可哀想ですね。名前を決めてあげましょう。
「ん〜、どんな名前がいいでしょうかね…」
『クルッ?』
そういえば、彼は電撃を使って攻撃してましたよね…電撃の鹿、雷の鹿…そうだ。
「"ライカ"」
『クゥ?』
「君の名前ですよ。"雷"を操る"鹿"だから"
『クルッ、クルゥッ♪』
「ハハハッ、お気に召してくれましたか」
名前をつけて貰ったことが相当嬉しかったのか、ライカは僕に顔を擦り付けてきました。ちょっと冷たくて、くすぐったいです。
「…狭い、やっぱり狭い。ライカ、外出ませんか?ちょっと狭いです」
『クッ?クルル』
僕の話を聞いたライカはすぐに顔を離し、洞窟から出ていきました。続いて僕も荷物(ライカが運んできてくれたのでしょう)を持って洞窟を出ます。僕が洞窟から歩いてきたのを見たライカが、少し心配そうにこちらを見ていることに気付きました。
「ライカ?…ああ、大丈夫ですよ。少し休んだおかげで、体力満タンです」
『クルクッ♪』
安心したように短く鳴くライカをひと撫でし、僕はすぐに辺りを見渡しました。近くに敵が潜んでいる可能性を考えての行動でしたが、案の定木々の向こう側に活動を再開した2体のソルジャー、アルマジロとヘッジホッグを発見しました。周囲には様子を見にきたと思わしきパワードスーツ6体も確認できます。
「あれは、僕らを探してますね。どうします、ライカ?アイツら僕らに気付いてないようですし、このまま無視してここを離れますか?」
『グル…』
「『嫌だ』、ですか?そういうと思いました。何せ君、あの錬の仲間なのでしょう?そんな君が
そして一呼吸おいて、僕はライカと目線を合わせます。
「力を貸してください、ライカ」
『クルッ!』
「ありがとうございます、ライカ」
ライカが返事と共に戦闘態勢に入るのに合わせ、懐からインジェクトリガーとグラスホッパーボトルを取り出します。
『Grasshopper!』
「融合」
『Injectioooon!』
頭上から降ってきたメタリカ(今まで何処にいたんでしょう?)を纏い、インゼクターに変身、ライカの背に飛び乗ります。
「ライカ、いきますよッ!」
『クルルッ!』
僕の言葉と共にライカが地を蹴り、ソルジャーへと一直線に走り出しました。
錬side〜
どうも、跳の連絡で緊急発進したものの見事に方向間違えて大幅ロスやらかした輝晶 錬です。現在、俺は
「チッ…足止めなんざいらねーんだよ」
目の前に広がるのは下級ソルジャーの群れ。10体20体なら何の問題もなく通り抜けられるのだが、今見えているのはその軽く10倍はある。しかも、全員敵意マックスだ。
「ハァァ〜…殺るか」
『0・0・2』
『Code heat stand by, ready?』
「イクスパンデッド・アームド・オン」
『Dragon warrior expanded』
「時間が惜しいんだ、手間をかけさせるなよ?」
変身を完了し、ヒートブレードを構えた直後、下級ソルジャーの群れが俺に向かって殺到した。全員が警棒のような武器か短剣を持っている。
「フッ、ハッ、セイヤァッ!」
迫り来る無数の下級ソルジャーを、俺は斬って斬って斬りまくった。ヒートブレードに斬られたソルジャーがことごとく真っ二つになって地面に転がっていく。が、進撃が止まることはない。さらにソルジャーを斬り続けていくと、近接戦闘員の増援がなくなった。それでも攻撃は終わらない。今度は小銃を持ったソルジャーによる乱射祭りだ。まあ、装甲のお陰で俺のダメージはあまり高くないんだけどな。
「鬱陶しいなぁ…まとめて焼き払ってやる」
『Full charge‼︎』
Dフォンを操作し、必殺技の態勢に入る。
『Critical attack!Red Hot Burst!』
「燃え尽きろ!」
両腕の火炎放射器から広範囲に広がる炎を放出。炎はたちまち小銃持ちを飲み込み、焼き焦がしていく。
「汚ねえキャンプファイアーだ…⁈」
ソルジャーが燃えている中から、下級ソルジャーの胴体に装甲を加えたソルジャーが俺に向かって突撃してきた。ソルジャー…エルダーソルジャーと仮に名付けよう…はその下級がそのままベースになっているとは思えない力で俺に殴りかかってきた。
「ヌォワッ⁈こんの野郎…!」
エルダーソルジャーの拳を避け、ヒートブレードで斬りかかる。しかし、ボクサーを思わせる素早いステップで避けられてしまう。
「チッ…」
エルダーソルジャーの繰り出すヒット&アウェイの戦法に苦戦を強いられる。これが人間だったら、間合いから出る前に斬り伏せられる。しかし、今の相手は機械。反応速度も身体能力も人間よりも上だ。故にコイツを倒すには、コイツが
(あるじゃないか、この状況にピッタリ当てはまるモノが)
この方法だと確実に相手を捕縛できるが、少し発動までに時間がかかる。できる限り俺の周り、その上同じ場所から離れさせないようにしなければならないが、その辺りは立ち回りでなんとかしよう。
「さあ、来い!」
俺が構えるのを見て警戒するエルダーソルジャーだが、攻撃してこないと判断したのか突撃、ラッシュで攻め立ててきた。
「オォォォォォ!」
そのラッシュを時に腕で受け、時にかわしながらエルダーソルジャーが離れないように慎重に立ち回る。今気づいたのだが、どうやらコイツは反撃しなければ攻撃を続けるようにプログラムされているようだ。ならば、決定的な隙を晒すまでは受けに徹しよう。
「どうした?そんな風にチマチマと小技を出すしかできないのか?それじゃあそこら辺に転がってる
「!」
俺の挑発に反応したのか、さらに苛烈なラッシュを繰り出してきた。俺のガードをも弾くほどの威力だが、こんなものを出し続けてたらいずれエネルギーが枯渇する。事実、ソルジャーの動きが鈍りだした。
「そろそろ終わらせようか」
ソルジャーの繰り出した右ストレートを受け流し、その勢いのまま右腕だけで逆立ちし左の蹴りでソルジャーを地面に叩きつける。
「さらに、ドーンッ!」
続けて倒れたソルジャーの体を透明な塊が覆い尽くし、空中に固定する。ソルジャーを空中に留めている塊の正体は二酸化ケイ素、石英や水晶を構成する物質だ。俺の持つ能力は、ドラゴ・ウォリアーの鎧の能力、つまり
「これで避けられる心配は無いな。おっと、『卑怯だ』とか『自由を奪った状態で殴るなんて…』とかいうなよ。俺はお前らをブッ潰すためなら手段は選ばないからな」
もっとも、コイツに発声機能はないようだが。
『Full charge‼︎』
腰にDフォンを装填し、ソルジャーを捕らえる時点から背中に移っていたヒートブレードを腰に戻し柄に手をかける。
『Critical attack!Shakka Ittou!』
柄のトリガーを引きながら鞘からブレードを抜く。あまりの熱量に赤熱を通り越して白熱すらしているブレードを振るい首を斬り、続け様に両肩、両脚の付け根を斬り落とし、最後に胴体に逆袈裟斬り。
「…六閃」
鞘にヒートブレードを戻し、トリガーから指を離す。それに遅れて背後のソルジャーの体が7つに分かれ爆散した。
「これで邪魔は無くなったな。来い、ライドドラグナー」
すぐ近くに止めてあったドラグナーを呼び、それに跨がる。
「跳、すぐに向かう!」
ドラグナーのアクセルを一気に入れ、俺は森の中へと飛び込んだ。
NO side〜
跳が目を覚ますおよそ30分前、森の中に立ち尽くすソルジャー達の元にパワードスーツの男達が様子見に来ていた。先ほどまでターゲットを追い詰めていた両機が突如所属不明の反応によって機能停止させられたためである。
「おい、ソルジャーの様子はどうだ?」
「緊急停止スイッチが入ってるな。それ以外にも、いくつか回路が焼けてるところがある。もしかしたら記憶装置にも影響が出てるかもな」
「回路が焼けてる?ハッ、雷でも落ちたとか言いたいのか?上を見ろよ、真っ青だぜ?」
「ああ、分かってるよ。でもそう考えなきゃあり得ねえんだよ。この森ん中に、コイツらの装甲を突破してどデカい電流をブチ込めるような設備があるとでも?」
問答を繰り返しながら、男達はソルジャーを修理していく。男達に電子工学の知識はあまりないが、スーツに内蔵された小型マニピュレーターが自動でソルジャーの損傷箇所を修復しているのだ。
「おし、だいたい修復は終わったな。記憶装置は基盤は無事だったが、データはトんでるかもしれん」
「マジかよ。じゃあ、再起動スイッチを入れて…」
胸のカバーを開き、その中の強化ガラスのカバーで覆われたレバーを右に回す。直後、ソルジャー達の体が小刻みに振動し停止、数秒後に両機の目に光が灯った。
『『…再起動を確認。命令データの確認、開始……データの甚大な破損を発見。復元は不可能と判断。データの削除を開始………完了』』
「うわ、ホントに全部ぶっトんでんのかよ。ハァ、また1から入れ直しか」
そう言うと、男は胸にあるデータ読み取り装置に手をかざし、命令をソルジャー達に伝えていく。
『『命令データ、確認。内容、第1観測世界侵略の為の拠点防衛及び侵略の妨害となる敵対存在の排除』』
「あーメンド。どこの誰だか知らないけど、仕事増やさないでくれよ」
ドカカッ、ドカカッ…
「ホントだよなぁ。あぁ、早く酒がのみてぇなぁぁ」
「だったら、コイツらをとっとと拠点に持ってくぞ。そろそろ施設は揃ってきてるだろうし、あとはコイツらさえ置いときゃ仕事は終わりだ」
ドカカッ、ドカカッ…
「うし、じゃすぐにでも………?」
「おい、どうした?」
「いや、なんかさっきから音が聞こえるんだが…」
「はあ?音?」
ドカカッ、ドカカッ…
「ホントだ、なんか聴こえるな。馬の蹄か?」
ソルジャーを連れて拠点に向かおうとした男達の耳に、謎の音が伝わる。音の正体を探す中、何人かがある事実に気がついた。
「この音…だんだん大きくなってねぇか?」
「というより、何か近づいてきてるような…」
ドカカッ、ドカカッ!
『クルァァァン!』
「グホッ⁈」
突然横から飛び出してきた銀灰色の何か…
「1人は潰しておきたかったのに…無駄に硬い奴ですね。どうも先程ぶり」
「テメェ、インゼクター…!くたばってなかったのかよ!」
「お生憎様、彼のお陰ですよ」
そう言いつつインゼクター、跳はライカを撫でる。
「!…なるほど、ソイツに助けられたってことか」
「大正解。さて、そこのソルジャー達には先程のお礼をさせてもらいましょうか」
「おっと、今度は俺たちも参加させてもらうぜ。さっきは丸々こいつらに任せちまったが、今度は正真正銘1対8…いや、そこの鹿も含めりゃ2対8かな?」
各々が武器を取る、もしくは武装を展開して跳とライカを取り囲もうとする。実際はこのままでも彼らにとっては無問題なのだが、ここに更なる援軍が現れる。
ブオォォォォォォォォンッ!
「轢き逃げアタック!」
『⁈』
真横の木々の間から、銀のバイクが
「今度はお邪魔虫の方かよ!」
「跳!大丈夫か⁈」
「ええ。1回やられましたけど、この通りピンピンしています」
男達をスルーしつつ、跳に安否を問う闖入者…錬。そして問題なしと答える跳。
「おい、いつまで無視し続けるつもりだ?」
「ん…どうやら、まずこっちを先に片付ける必要があるみたいだな」
「そうですよ。無駄口は終わり、ここからは殴り合いの時間です」
What's the next episode…?
はい、12話でした。
執筆スピードが伸びない…