NO side〜
「それじゃ、始めようか?」
「あぁ錬、その前に少しいいですか?」
戦闘開始と武器を構えようとする錬を、跳は手で制止する。何事かと首を傾げる錬を尻目に彼はライカに問いかける。
「ライカ、ちょっとくすぐったいですよ?」
ガシャン!
『クル⁈』
『Connection Electric』
「おっと、やっぱりはまった。少し気になってたんですよね、ライカの首裏の窪み」
ライカの首に空いた5cm×3cmほどの窪みに、跳はインジェクトリガーを嵌め込んだ。想定外の行動だったのか、ライカは上半身を大きく持ち上げる。
「すみませんライカ、いきなりこんなことをして」
『クルル』
「次からはちゃんと了承は取りますから、許してください」
『クル?』
「ホントですよ。ホントですってば。本当なんです、信じてください!」
「おい、フザケてんのかテメーら。俺たちはこんな茶番見せられるために来たんじゃねーんだよ!!」
跳の謝罪から始まった1人と1匹の漫才に苛立ちがマックスになった隊長格の男が、錬達の足元に射撃する。
「おい、なんで俺まで撃つんだよ。まあ、こっちが先に喧嘩ふっかけといて、何もしないのも無礼ってモンだよな」
「ええ、漫才してたの僕が言うのもなんですが同感です…気を取り直して、いきますよライカ!」
『クルルッ!』
『Boost Injection!』
ボソリと呟いた跳は、ライカの首に刺さっているインジェクトリガーに手をかけ、引き金を引く。するとアーマーの表面に稲妻が走り、各部に黄色のラインが走った蒼白の鎧へと変化した。
「インゼクター・ボルテックホッパー、アクティブ」
ボルテックホッパー。本来ならば存在し得ないはずの形態であるが、おそらく
「え、マジ?そんなことできたの?あ、さては…」
「何してるんですか。そっちもさっさと準備してください」
『ル〜』
「わ、わかった!じゃあ今回は…コイツにしよう」
『0・0・5』
『Code edge stand by, ready?』
「イクスパンデット・アームド・オン」
錬の真上に浮いていた刺々しい機械が粒子状に分解され、錬のスーツの上で装甲に再構築される。その姿は、全身に刃を生やした人型の肉食小型恐竜のようなものだった。
『Dragon warrior expanded』
「ウ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」
「ちょっ…どうしたんですかいきなり」
「ああ悪りい、ちょっと叫びたくなってな」
「あ、そうですか…なんか声おかしくなってません?」
「気のせいだ。とっとと行くぞコ"ラ"ァ"!」
「いや絶対気のせいじゃないですよね⁈ぬぁ〜、もういいや!」
普段よりも好戦的になり、声もおかしくなった錬のテンションに困惑しながらも、戦闘態勢に入る跳。
「チッ、どこまでもフザケやがって。アルマジロ、ヘッジホッグ、仕事だ!」
『『敵勢対象確認。戦闘形態へ移行、戦闘行動を開始』』
各自の武装を展開し、こちらも戦闘態勢を整えるソルジャー2体と兵士達。全員が睨み合う中、近くに生えていた木の枝から1羽の鳥が飛び立ち、それを合図に両陣が激突する。
「ウ"ォ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ア"!」
誰よりも勢いよく飛び出しヘッジホッグに向かっていく錬の前に、兵士6人が立ち塞がる。
「先に俺たちの相手をしてもらおうか?ヘッジホッグ!まずはアルマジロとともにインゼクターを潰せ!」
『命令を確認』
ヘッジホッグが背中のミサイル発射の準備を整え始め、それを阻止せんと突っ切ろうとする錬を兵士達が6人がかりで抑え込む。
「邪魔ァ…すんなァァァァァア!」
「「グアァァッ!」」
錬の反撃に吹き飛ばされるも、兵士達はすぐに復帰し妨害に戻る。さらには、いつのまにか呼んでいた下級ソルジャーも加わり、錬の動きが鈍りだした。
「ヌァァァァァア!」
ーーーーーーーー
同刻、跳もまたアルマジロに苦戦していた。
「コイツ、前よりも速い!」
アルマジロの回転速度が、最初に戦ったときよりも速くなっていたのだ。出し惜しみしていたのか、前回の戦闘でリミッターが外れたのか、攻撃のスピードが増している。跳達は直撃を避けるだけで精一杯になっていた。
「うわっ⁈」
アルマジロが自分に直撃しそうになり、咄嗟に回避した跳。しかし、その回避先にアルマジロが先回り、突撃してきた。
「しまっ…⁈」
避けきれない、そう瞬時に悟った跳の前に四足の影が立ち塞がる。
『グ…ル…』
「ッ…ライカ⁈」
ライカは、回転速度を上げ押し退けようとするアルマジロをその大きな角で受け止め、四つ足で耐え続ける。
「ライカ、何やってるんですか⁈早く逃げて!」
『グ…グゥゥ…!』
まるで「嫌だ」と言うかのように首を小さく横に振るライカ。
(このままでは、ライカがやられる…もし僕がここから離れても
自問の時間は僅か、それでもライカのダメージは増していく。そのとき、跳の頭に閃きが走った。
(そうだ、これなら!)
天啓にも等しき閃きを受けた跳の行動は素早かった。跳の全身を覆っていたアーマーが流体のように変化し、ライカの角と脚に取り付く。角に取り付いたものはまるでブルドーザーのブレードのような形状に変化し、脚に取り付いたものは地面の奥深くに突き刺さる杭となった。
「ライカ!合わせてください!」
『クルルッ‼︎』
たった一言の短い指令。それでも、ライカはその意味を汲み取った。
「ありがとう…跳ね上げろッ!」
その声に従い、ライカの角に取り付いている金属が変形、ピストンを最大まで突き出すことでブレードを持ち上げた。さらに、合わせるようにライカが首を大きく振り上げたことが合わさり、
『⁈』
アルマジロは空中に投げ出された。
「今だ!」
跳はすぐさま流体金属をアーマーに戻し、空中のアルマジロに電撃を帯びた鋭いキックを2発、タイミングを少しずらしてさらに2発放った。
「これで、どうだッ!」
トドメに、一度着地してからの跳躍による勢いを乗せたオーバーヘッドキックをアルマジロに浴びせた。蹴り飛ばされたアルマジロの行き先にあるのは、アルマジロ自身よりも大きな岩。
『障害物サーチ…前方、全高およそ4mの岩を発見。衝突時の損傷計算…損傷は甚大であると予測、進路の変更を…不能。噴出口に異常発生』
ぶつかるまいと進路を変更しようとしたアルマジロは、そこで背部の噴出口が破壊されていることに気付く。
「残念でした。とっくにそこは壊しましたよ」
軌道変更を封じられたアルマジロは、勢いよく岩に激突、その球面の一部は大きく凹んでいた。
『装甲に損傷、うち背部の被害甚大。球形態での戦闘続行は不可能と判断、形態を変更する』
地面に転がるアルマジロの体が割れ、畳まれていた手足が広げられる。球体から人型に戻ったアルマジロは腕の短機関銃を展開し、跳に敵意を向けた。
ーーーーーーーー
さらに、無数のソルジャーに群がられ身動きが取れなくなっている錬にも逆転の好機が訪れる。
ブワァァッ!
ドゴンッ! バゴォッ!
『『『⁈』』』
「ヌゥッ…?一体何が…っ、あれは!」
急に拘束が軽くなったことに錬は驚き、辺りを見回す。すると、くぱぁ…と中空に突如開いた不気味な紫色の空間から魚の鱗のように見える藍色の光弾…弾幕が放たれ、自身にまとわりつくソルジャーを吹き飛ばしていくのが見えた。
「おい、大丈夫か?」
「藍か!助かっ…たァ!」
錬は紫の空間、スキマから身を乗り出し声をかけてきた金の髪と九つの狐の尾を持つ女性、八雲 藍に礼を言いつつ、全身の刃を伸ばしソルジャーを串刺しにしながらヘッジホッグへの突撃を再開する。
「雑魚は頼んだ!」
「任せておけ、あとこれが終わったら一杯奢れよ?最近休みがなくて疲れているんだ…」
「わかった。さァて、どォこ見てんだァ?お前の相手は俺だっつったろォがァ!」
叫びながら飛び上がり、錬は体を丸めて回転する。すると、錬の背骨部分の刃と腕・脚にの刃が変化、サメの歯とナイフを合わせたような形状となり回転の勢いに合わせてヘッジホッグの背中を抉る。
『⁈』
発射態勢に入っており背後への対応が遅れてしまったヘッジホッグは、背後に迫る刃に抵抗できず、ミサイルもろとも装甲を破壊された。さらに、破壊を免れたミサイルに破壊された際の爆風で加速した別のミサイルの破片が刺さり、さらなる爆発を引き起こす。
『…背部装甲の被害甚大。本体へのダメージを計算…大破、活動不能は確実。背部装甲の切り離しを実行』
本体が受けるダメージを抑えるために装甲を切り離し、離脱を試みるヘッジホッグ。しかし僅かに遅く、背面の内部装甲を損傷する。
「これで飛び道具は消えたなぁ?そんじゃあこっからはァ、殴り合いだァァァ!」
叫ぶやいなや錬は全身のバネをフル活用してヘッジホッグへと跳躍し、殴る、蹴る、腕の刃で切り裂く、マスクの顎に生成された牙で噛み付くといった野性味溢れる攻撃を矢継ぎ早に繰り出し続ける。そのあまりの攻撃頻度にヘッジホッグも手が出せなくなっていた。
『右肩部ケーブルに重大な損傷。敵性個体の攻撃への反撃…不可能。反応が…間に合わない…』
ヘッジホッグの各部からは千切れたケーブルが飛び出し、片腕は半ばから切り落とされている。誰が見ても戦闘不能どころか放っておいてもそのまま壊れそうな様相をしているというのに、錬はDフォンを操作して大技を繰り出そうとしていた。
『Full charge‼︎』
「これでェ、トドメェ!」
『Critical attack!Hunting Fang!』
電子音声と共に両肩の刃が巨大化、それを両手で掴んでボロボロのヘッジホッグに投げつけた。投げられた刃は一度ヘッジホッグの横を通り抜け背後へと飛んでいき、それを確認した錬は一直線に走り出す。
「飛んで、跳ねて、ぶった斬る!」
掛け声と共に側転、宙返りを披露しながら右足首に刃を生成、直後の宙返りから踵落としの要領でヘッジホッグを脳天から真っ二つにした。
「ついでだ、貰っとけ!」
その言葉の数刻後、錬のバク転と同時に先程背後に飛んでいった刃がブーメランの用にカーブしながら飛来、×字にヘッジホッグを切り裂いた。
『ギ…ジ…損傷…非常に…甚大……戦闘、不能…』
そう呟き、ヘッジホッグは爆散した。
ーーーーーーーーー
錬に続き、跳もアルマジロとの戦闘を終了しようとしていた。
「フッ!ハァッ!オラオラオラオラオラァ!」
電気を纏った脚から繰り出される亜音速の蹴撃は、グラスホッパーのままでは貫けなかった装甲を容易く破壊していく。腕の短機関銃も片方は原型を留めていないほどに潰され、残ったもう片方でアルマジロは跳を撃ち抜こうとする。が、それを読んでいたのか既に真横に跳躍していた跳の脚で役目を果たす前に潰された。
「終わりです」
『Over injection!』
インジェクトリガーを脚にあて引き金を引き、両脚に稲妻と風を纏わせる跳。そこから一気にアルマジロまで距離を詰め渾身の蹴り上げを食らわせ吹き飛ばす。
『Volt Storm Strike!』
「フンッ!」
宙を舞うアルマジロの着地点に瞬時に移動した跳は、落ちてくるのに合わせてアルマジロに回し蹴りをかまし、地面に叩き落とす。
『ガガ…ギ…』
ヘッジホッグとは違い、アルマジロは特に何も言い残すことなく爆散した。
錬side〜
あ、俺に視点回ってきた。どうも、さっきから声がおかしくなってる輝晶 錬です。ここでは声変わらないのかって?流石に心の声ぐらいは普通のままでいいだろ。
「これで残りはお前らだけだなァ、えェ?」
「クソッ、まさか上級が2体もやられるとは…だが、こっちにはまだ6人も戦力が残ってるんだぜ?そこの嬢ちゃんは下級にかかりきりみたいだしなぁ、2人で俺たちを相手するのはきついんじゃねーのかい?」
確かに奴の言う通りだ。おそらく俺たちよりも圧倒的に強いはずの藍がいてくれればかなり戦闘は楽になるだろうが、現在彼女は俺たちの方に来る雑魚の相手をし続けてくれている。てか、弾幕ってあんなに威力あったのか、下級の体ブチ抜いてんぞアレ。確かアイツら9mm弾くらいなら余裕で受け止められるほど頑丈だったはずだぞ(俺らポンポンぶっ壊してるけど)。しかも渦を巻くように弾幕ばら撒いてるから、数の多いソルジャーどもの被弾率が上がってる。陣形が仇になってるな…
「…死ね。酒の為に、私の休みの為に…!」
あ、これ確実に藍の鬱憤晴らし混ざってるな。
「…それはどうでしょうね」
なんか跳が自信あり気に返事した。何だ、この状況をひっくり返せる策とかがあるのか?
「錬、その装備を解いてください」
「は?お前何言ってんの?」
「お願いします」
「…わかった」
Dフォンを操作し、装甲を解除してアンダースーツだけになる。解除・分解された装甲は俺のすぐ側でヴェロキラプトルのようなロボットに再構築される。
『ギャオ!』
それを確認した跳は、腰のホルダーから若草色のカプセルを取り出しグリップに装填する。
『Mantis!』
「二重融合」
『Dual Injection!』
跳は引き金を引き、カマキリのような見たことのない姿に変身した。
「では、失礼します」
ガチャン!
『Connection Edge』
『ギャ?』
「拡張融合」
『Boost Injection!』
跳の連れていた鹿…ライカだったか?というか、多分アイツ俺の装備だ…と同じように首の後ろの窪みにグリップを突き立て、引き金を引いた。すると変身に伴い若草色に変わっていた鎧の色が白磁に変わり、全身に灰色のラインが現れた。
「ウ"…ア"ァ"ァ"ァ"……インゼクター・リッパーマンティス、アクティブ」
「怖っ!跳おまっ…声怖えよ!」
「今の…ダジャレですか?」
「違うわ!たまたまダジャレっぽくなっただけだわ!」
「そんなことより、変身しなくていいんですか?」
「そんなことよりってなんだ、そんなことよりって!…ああわかったわかった、すぐやるから指トントンすんな!」
跳に急かされ、俺は急いでコードを入力する。
『0・0・3』
「ええっと…ライカ?力貸してもらうぞ』
『クル』
「それは了承と受け取っていいんだな?分かりにくいなコイツ…いくぞ。イクスパンデット・アームド・オン!」
Dフォンをソケットに差し込むと、ライカがパーツ毎に分解され俺のスーツと合体、変形していく。やがて俺の全身は鹿を模した鎧兜で覆われた。
『Dragon warrior expanded』
「…よし、準備できたぞ」
「わかりました。では、今回はできる限り殺さずにいきましょう。向こうの情報を手に入れたいので」
「了解」
跳に返事をしながら、左の籠手から電磁ロッドを展開する。右肩のレールガンにも電気を供給し、いつでも使えるように準備をしておく。
「…ゴー!」
号令とともに走り、手近な場所にいた兵士にロッドによる突きを叩き込む…が、相手もそれを読んでいたようで
「お生憎様、避けたご褒美として電気ビリビリの刑だ」
ガギンッ!
バヂヂヂヂヂヂッッッッッ!
「ガグッ、ギッ、ギャアアアアアア⁈」
ロッドから放たれた致死量ギリギリの高圧電流が装甲を貫く。が、装甲の耐電能力が高いのか気絶する程度には弱まっているようだった。
「ア"…ア"ァ"…」
「おっと、これ以上は死んじまうな」
2分くらい流したところでロッドの電流を停止し、ロッドを掴み立ったまま気絶している兵士をヤクザキックで蹴倒す。
「よし、つーぎーは…お前だ!」
またも手近な兵士の方へ振り向きながら、右の籠手を展開、四角く角ばった一対の爪のついたナックルを装備する。
「本当ならお前もビリビリの刑に処してやりたいところだが、コイツは加減が効かなくてな。だからただブッ飛ばすだけで済ませてやる、ありがたく思いな!」
叫びながら、体の捻りも乗せた大振りの右フックを外すことのないように左手で相手の首根っこを掴みながら側頭部に叩き込んだ。首の拘束を解こうともがきながら反撃しようとしているのが見えたが、もう遅い。
「ガッ……グ…?」
「はい、おやすみなさい」
糸が切れたように地面に倒れ伏す兵士を尻目に最後の1人に目を向ける。
「さて、これで俺の担当は残り1人…グワッ⁈」
突如背中に走った衝撃に倒れ込みそうになるのを、気合で耐える。背中越しに見えた衝撃の元は、俺の腕をロックする先程とは別個体のエルダーソルジャーだった。
「…俺たちは今までのバカ共とは違う、技術が劣るからって侮ったりはしない。これでアンタの動きは封じたようなモンだよな!」
そう言って、奴はバックパックからショートブレードを取り出し俺に何度も斬りつける。
「グッ、ガフッ、グォッ…侮らない、ねぇ。そこで転がってる奴らは、グッ、何もできずにリタイアしているが?これは油断した、ガッ、結果じゃないのか?」
「油断などしていたら何の抵抗もしていない。お前が一枚上手だっただけのこと、だ!」
「グゥッ、そりゃどうも」
「これで終わりにしてやる。俺たちの大義の為に死ね、
ショートブレードを仕舞い、新たにロングソードを取り出した兵士はそれを俺に振り下ろそうとする。
「大義とはご大層なことで。でも、まだ俺も死ぬわけにはいかないんだよ!」
俺は右脚の装甲をカタパルトに変形させ、そのレールに搭載されたコイルに高圧電流を流す。さらに足の装甲に内蔵されたコイルにもレールとは異なる極となるように電流を流す。さて問題、レールのコイルに+、-の順で電流を流します。足のコイルには通過するコイルと逆の電流が流れています。この後何が起こるでしょう?
「今だ!」
俺の脚は磁力の反発と引き合いによって加速され、レールから抜ける頃には大凡人間が出せる速度を超えた蹴りになっていた。そして振り下ろされたロングソードに激突し、それを弾き飛ばす。普通片足だけでこんな蹴りを繰り出したら思いっきり後ろに倒れ込むはずだが、今は俺の両脇をエルダーがガッチリ固めてるから体勢を維持できるんだよな。
「ぐっ…」
「相手が動けないからって勝利を確信したらダメだぜ?こういう風に手痛いカウンターを喰らうことがあるんだからさ。あといつまでくっついてんだお前ら」
Dフォンを操作し、籠手を八角形のボードのような形にする。
「鬱陶しいから…離れろ!」
ボードが勢いよく俺の腕から離れ、エルダーを巻き込みながら頭上に飛んでいく。見てみると、ボードから俺の腕に向かってスパークのようなものが伸びている。俺もよく分からないが、多分磁力なり何なりが働いているんだろう。
「これで終いだ」
『Full charge!』
右肩のレールガンが砲身を展開させながら手元に移動する。俺がグリップと安定して撃つための取っ手を掴むと、眼前のモニターが照準モードへと変わった。
「ターゲット補足」
モニター上に大きな緑の円が現れ、上空でボロ雑巾にされているエルダー2体の中間を捉えた。
『Lock on』
「シュート!」
『Critical attack!E.M.Rail Canon!』
レールガンからスパークを纏った杭状の金属弾頭が音を遥か彼方へと置き去りにして飛び出し、エルダー達の体を掠める。直撃とまでは行かなかったが、なにぶん速度が速度だ。ついさっき測ってみたところおよそ秒速6880m、音速のおよそ20倍、掠っただけでも致命傷なのは確実。実際とっくにボロ雑巾だったエルダーが今の一撃で完全に屑鉄の欠片と化したのがはっきり確認できた。そして、砲身から真っ赤になったレールが排出される。武装の特性上、レールの交換は必須だ。背中の発電機関からも、冷却のために絶えず蒸気が吹き出している。
「く、クソッ…」
(ここは…悔しいが、撤退するべき…)
「逃がすわけないじゃん」
逃げようとしていた最後の1人の後頭部に籠手のボードを2つとも位置エネルギーを存分に乗せながら叩きつける。とても鈍い音とともに兵士は倒れ込んだ…死んでないよな?
「よいしょっ…呼吸音がするし、死んではないな」
倒れている兵士の頭を掴んでヘルメット越しに呼吸を確認、微弱だが息の音が聞こえたのでどうやら生きてはいるようだ。
ザバァァァーーン‼︎
森の向こうから大きな衝撃音が響いた。十中八九跳だろう。アイツ、自分から殺すなとか言っておきながらどうあがいても必殺の一撃なモン繰り出してんじゃないよ。
「よーし。向こうも終わったみたいだし、こっちも尋問を始め…ん?」
「グ、ゴブ…グボバボ…」
突然俺の手の中で変な声を出しながら兵士が暴れだす。
「あ?オイ、暴れんな…」
暴れる兵士を抑えようと胴体を地面に押し付けると、スーツの隙間から赤黒い粘液のようなものが吹き出した。その光景と粘液から漂う悪臭から、俺はそれがなんなのかをすぐに理解した。
「おいまさか…クソッ、完全に溶けちまった。情報は意地でも喋らせませんってか?」
そう、吹き出した粘液はスーツの中にいたであろう人間の体。なんらかの方法で中の人間を生きたまま溶かしたのだ。他に倒れている奴らを見ると、残らずスーツの隙間という隙間から粘液状になった体組織を地面に垂れ流していた。
「あ〜あ、どう説明するよコイツら?」
ーーーーーーーーーーー
跳side〜
「…ゴー!」
号令と共に錬が敵陣の半分に突っ込んでいくのを確認し、僕も武装を展開する。
「展開、スケルトンサイス」
背中に増設された2対の折り畳み式切削マニピュレーター『スケルトンサイス』を展開、胸部のマニピュレーターも切断モードに切り替えてから展開する。これで準備完了ですね。
「さあ、ゲームの始まりです。頑張って死なないようにしてくださいね♪」
「ふざけんじゃねぇ!」
1人が僕に弾をばら撒いてきましたが、それをスケルトンサイスとマニピュレーターを遮蔽にすることで防御。そのまま続けてスケルトンサイスで攻撃します。
「バラします」
「何を…」
何かを言い終わる前に、スケルトンサイスが兵士の四肢を四方へと飛ばした。
「え…あ、ぎゃゔぎあぐあぎぁァァ⁈」
「まず1人目」
「お前…さっき殺すなって…」
「ええ、殺してはいませんよ?尋問するのに、手足なんていりませんから」
「くっ…このサイコ野郎が…」
「サイコって言い方はやめてください。僕はただ、貴方達を潰すのに精一杯なだけですか…らっ!」
両腕を切り飛ばしたスケルトンサイスを別の兵士に向け、斬りつける。しかし、相手はそれをギリギリで回避、木の陰に隠れながら手持ちの突撃銃で僕に反撃してきました。
「この距離ならその鎌も届かないなぁ⁈」
「…確かに、スケルトンサイスは届きそうにありませんね」
その言葉を聞いて勝ったとでも言わんばかりの笑みを浮かべる兵士。でもね…
「ですが、僕の武器はこれだけではありません」
両腕にプログレスシックルを装着しながら背後の地面に関節を折り畳んだ状態で刺し、木の近くのスケルトンサイスも地面に刺す。そして前のものを畳み、背中のものを伸ばすことで一気に木の前に突進、本来の長さよりも伸びているプログレスシックルの刃で木ごと兵士の両腕を切り裂いた。
「ぐぁがッッ⁈」
「残念でした。こういう使い方もあるんですよ」
無力化した兵士をおいて、最後の1人となった隊長格の男に向かって走る。あとはアイツを無力化するだけ、そう考えていた僕の前で、残った1人は地面に4つの機械の正八面体…小型のポータルを撒いて展開し、下級ソルジャーに似た見たことのないソルジャーを召喚しました。
「コイツらは…⁈」
「新型のパワードだ。やれ!」
男の号令を受け、4体のパワード(後で知った話ですが、錬もこれ等に遭遇しており、エルダーと読んでいました)が僕に攻撃してきました。
(これは…下級よりも出力が上がってますね。その上、量産もできると。厄介ですね…)
パワードの攻撃を捌きながら思案する。1体1体に構っていてはキリがない。ならば、まとめて斬ってしまえばいい。
「貴方達に時間を掛けたくはありませんので…これで決まりです!」
『Over Injection!』
胸にトリガーを刺してグリップを引き、スケルトンサイスとマニピュレーター、プログレスシックルにエネルギーを充填する。
『Gray Ripper!』
「フッ!」
灰色に輝くスケルトンサイスを素早く振り抜きパワードを両断した後、既に少し遠くにまで逃げていた隊長の兵士に向けてプログレスシックルとマニピュレーターのエネルギーを飛ばし、周囲の木々を切断しながら彼の両手足を切り飛ばしました。
ザバァァァーーン‼︎
「がっぐッッ⁈」
「ゲームクリア」
地面と熱烈なキスを交わしている男の元へと走り寄り、男の頭を掴み上げる。
「とりあえず、色々吐いてもらいましょうか。向こうの行動、装備、それから…」
「…無理だよ」
「は?」
尋問を始めようとした矢先、男はそう呟いた。何が言いたいと問おうとした瞬間、手足の断面から血液とも違う赤黒い粘液が流れ出した。
「なっ…」
「こういう訳だ。残念ながら、お望みの情報は得られないよ」
おそらくは肉体が溶け落ちながらも男は言葉を紡ぐ。
「じゃあな、お前の顔は覚えたぜ。また会おう」
それだけ言い残し、男は完全に液体となった。
「…クソッ!」
してやられた。僕はただ悔しさに歯噛みするしかなかった。
男の遺した『また会おう』という言葉の意味に気づかずに…
What's the next episode…?
はい、13話でした。
ほんとはもうちょっと続けようと思ったけど、長くなるので次回に持ち越しです。