俺と転校生の恋物語 スクールアイドルを添えて 作:メタリックな彼
『あなたのことが好きです!』
この告白が俺と彼女の物語の始まりだった。
俺は高校生探偵の工藤〇一などではなく・・・静岡の内浦というなんもねぇ田舎に住んでる高校2年生
自分で言うものなんだが良くも悪くも普通の人間・・・だと思う。特に夢や目標があるわけでもなくこれといって打ち込んできたことは無い。
部活動もどこにも所属せず、恋というものもしたことがない。だからといって友達がいないわけでもなくそれとなく学校には溶け込めていたと思う。
はぁ・・・一度でいいから誰かを好きになったり『青春』というものを感じてみたいなぁ。なんて思ったりする。
「お兄ちゃんなにブツブツ言ってるの?キモいよ。」
おっと・・・声が漏れてしまっていたか。いや、それにしてもキモイはないでしょ。お兄ちゃん泣いちゃうよ?
と兄である俺に毒を吐いたのは妹である
とある事情で俺とこいつの二人暮しなのだが、俺と違ってこいつは容姿端麗で勉強もそこそこできて運動神経抜群。現在中学のバスケ部に所属しそこでも類い希なる力を発揮し強豪校高校からの推薦がいくつもきているらしい。
全く異世界転生してきたかの如く神から二物も三物も与えられたチート野郎である。
「おい、妹よ。高校はどこに行くのかもう決めたのか?」
「えーとねー。まだ決めてない。というかそれお兄ちゃんに関係ある?」
なんか余計な一言があった気がするが置いておこう。
「あっそうだ(唐突)私ね。スクールアイドルになりたい。」
うん。本当に唐突だねって・・・えっ?
俺は妹の言葉に耳を疑った。スクールアイドルってあれだよな・・・歌って踊って大会に出て・・・。
いや、確かに妹は前からネットで色んなスクールアイドルの動画を見てたし、確か・・・μ'sだっけ?そのグループのDVDも持っていた気がする。
「お兄ちゃんの学校にもいるの?スクールアイドル。」
残念ながら妹よ、部活動勧誘の時期の放課後に家に居た愚兄がそんなこと知ってると思うかい?
俺の意思を察した妹は呆れた顔で続けてこう言った。
「じゃあ今から見てきてよ。もしかしたら入るかもしれないし。」
「嫌でs」
「いってらっしゃい。」
はい。どうやら俺に拒否権はないらしい。
ということで現在俺が通っている浦の星高校にやってきた。今日は入学式と始業式があったということもあって今学校にいるのは部活動の生徒が大半である。
スクールアイドルを探せと言われたもののどうやって探せば・・・。
とりあえず学校中をふらふらと歩いていると掲示板に各部活動のポスターが貼られているのを見つけた。といってもこの学校の生徒は多くはなく、部活動も都会のそれと比べれば全然少ない。
結局スクールアイドルのポスターらしきものは見つけられず帰ろうとした時だった。
足元に何か落ちていることに気がついた。掲示板から剥がれたポスターなのかと思い拾い上げてみると・・・
『スクールアイドル部 大募集!』と書いてあった。
あっこれか。
目的のブツを見つけた俺は足早に学校を出てチャリを全速力でこいで家に向かっていた。
夕暮れ時の海沿いの道を走りながら心地いい潮風を感じていると近くの桟橋で誰かが海に落下するのが見えた気がした。
最初は見間違いかと思いスルーしようとするが本当に落ちていたらと思うといてもたってもいられなかった。
とりあえずそこまでダッシュで向かい確認するとやはり2人ほど海に落ちているのが確認できた。
4月でまだここの海は冷たいが背に腹はかえられず上の服だけ脱いで海に飛び込んだ。
なんとか2人を救出できたので近くの旅館からタオルを3枚借りて2人に渡した。
助けた時は夢中で気づかなかったがよく見ると2人とも女子で片方は浦の星の制服を着ていてもう片方は何故かスクール水着を着ていた。いや、泳ぎたいなら着ていて当然なのか?何だか情報量が多くて混乱してきた。
2人からお礼と謝罪を言われたが気にしないでいいと告げて帰ろうとすると・・・
「ちょっと待って。その紙・・・」
そう言って俺を呼び止めたのは浦の星の制服を着ていたオレンジ色の髪の女子だった。
そして彼女が指さしたのはさっき見つけたスクールアイドル部のポスターだった。どうやら貼り付けるのを忘れてそのまま持って帰ってきてしまっていたようだ。
「あれ?あなたって同じクラスだよね?もしかして・・・入ってくれるの?スクールアイドル部に。」
その少女は俺を同じクラスであると認識し、俺がポスターを持っているのを見て入部希望者と思ったらしい。
ごめんね。俺、君に言われるまで同じクラスだって気づかなかったんです。
ん?それよりもスクールアイドルって女の子だけだったような・・・。もしかして今は男のスクールアイドルもいるのだろうか?
とりあえず俺は彼女に自分は入部希望者ではなく来年高校生になる妹がスクールアイドルに興味があると言ったのでこれを持って帰ってきたと伝えた。
「そう・・・なんだ・・・。」
なんか俺が悪いことしたみたいになってるんですけど。
「あなたは興味あるの?スクールアイドルに。」
ないです。と言えば嘘になるな。俺も何度かはネットで見たことがあるがあれは悪くはないなとその時は思った。だが・・・
「俺は男だぞ。男がスクールアイドルになれるのか?」
俺も男のスクールアイドルがいるとは聞いたことがない。もしかしたらいるかもしれないがそれはごく少数であることには違いない。まぁでも楽しそうだなとは思う。これを機に新たな事を始めてみるのもいいかもしれない・・・それで有名になって・・・ファンの人とコイニハッテンシテ・・・
「ん?男の子のスクールアイドルはいないよ。」
ですよね。
「じゃあなんであんなこと聞いたんだ?」
ますます俺に入ってくれるのかと聞いた意図がわからない。
「えっと・・・私ね、スクールアイドル部を作りたいんだけど部員がまだ私1人しかいなくて・・・この学校って部活動を創るのには最低5人の部員が必要だから今日もがんばって勧誘したんだけど・・・」
人が集まらなかったということか。ただでさえ人が少ないこの学校で1から部を創るのは確かに難儀なことだ。
「だから・・・あなたさえ良ければなんだけどこの部に入ってくれませんか?」
「俺は歌えないし踊れないぞ。」
「大丈夫。名前を置いておくだけでいいから。」
要は数合わせか・・・。まぁあまりいい気分ではないが別に俺が損をするわけでもないし名前を書くだけで目の前のこの子が少しでも救われるのなら・・・。
「分かった。入部しよう。スクールアイドル部に。」
そう言うと彼女は「やったぁ!」とさっきとは打って変わってそれはそれは喜んでいた。
「では改めて。私は高海千歌!よろしくね!」
「俺は田野海人。まぁよろしくな。」
こうして俺はスクールアイドル部に籍を置くことになったわけだが・・・
「あの、私の事忘れてませんか?」
もう1人の女の子を放置したままでした。
高海とずっと話していて思わず忘れそうになったがこの子はどこの子だ?と言うのも持ってきていた制服はこの辺の高校の制服のどれでもないし、なんか雰囲気が都会っぽい感じがする。
それにさっきからずっと顔を伏せているのはなんでだ?なんか悩んでるっぽい?
「どうしてこんな時期に海に?泳ぎたいなら近くにプールがあるけど・・・」
「ううん違うの。私・・・海の音を聞きたかったの。」
海の音?はて・・・なんのことやら。もしかして波の音とか?まぁそんな安直なわけないか。
「もしかして波の音?」
ブフッ
思わず吹き出してしまった。高海が全く同じことを考えていたとは。
「それが・・・分からないの。」
まぁでもこんな時期に海に飛び込むのはやめようね。本当に風邪ひくから。
するとさっきまで体育座りで顔を伏せていたその子は立ち上がった。
「私は桜内梨子。高校は・・・東京にある音ノ木坂学院。」
「!!」瞬間俺に電撃が走った。
「えっ!?音ノ木坂ってあの」
「桜内梨子さん。あなたに一目惚れしました。あなたのことが好きです!」
「「えっ?」」
そう。俺は彼女の姿にハートを撃ち抜かれた。ストライクゾーンど真ん中に豪速球を叩き込まれた。
今まで恋人はおろか好きな人さえできなかった俺に天使が舞い降りた。あぁ・・・これが恋なのか。
突然の俺の告白に桜内さんは困惑している。
「ひ、一目惚れって・・・ほ、ほんとうに?」
「ちょ、海人君何してるの?」
「何って告白だけど?」
「とりあえず通報するね。」
待て待て待て。なんで告白しただけで通報されるんだいい加減にしろ!あっちょっと本当に掛けないで!やめて!家族に何て言われるか!
なんとか高海の通報を阻止したところで俺は桜内さんに聞いた。
「お返事は?」
少し顔を赤らめた彼女はゆっくりと答えた。
もちろんですと。
「・・・ごめんなさい。」
ん?
聞き間違いか?
「よく聞こえなかったのでもう一度いいですか?」
いかんいかんあまりにも嬉しくて間違えて『ごめんなさい』って聞き間違えてしまった。
もう一度彼女はゆっくりと答えた。
「ごめんなさい」
「マジで?」
「マジです。」
切れた・・・俺の中で決定的な何かが切れた・・・。
一体何がダメだったんでしょうかね?
「当たり前だよ!」
高海が声を大にして言った。
「そりゃあ初対面の人にいきなり告白されたらそうなるよ!」
「そうなんですか?桜内さん。」
「え、えぇ。そうですね・・・。」
確かに高海の言うことには一理ある。
「なら『お友達』からは?」
桜内さんは少し考えた後『それならいいですよ。』と答えてくれた。これにてお友達成立です。やったぜ。
高海の方を見ると私もと言わんばかりの顔をしていたので「ついでに高海も友達で。」と言うと「『ついで』って何よ!」と怒っていた。
2人と連絡先を交換したあとで家に帰り妹に収穫を報告した。
「妹様、あなたのおっしゃる通り我が校にスクールアイドル部なるものが創設されようとしていました。」
「へぇーそうだったんだ。じゃあお兄ちゃんの高校も進路の候補に入れないと。」
本当にそんな理由で高校を選ぶのか。
「あ、あと・・・」
「なに?まだあるの?」
「お兄ちゃん女の子に振られちゃいました。」
「あっそ。・・・・・・は?とうとう幻覚でも見始めたの?」
「いやぁーそれがですね、とある女の子に一目惚れしちゃいまして。」
「それでいきなり告白したの?」
「はい。」
「馬鹿じゃないの(嘲笑)。そりゃあお兄ちゃんみたいな人間にいきなり告白されたら振るに決まってるじゃん。」
高海といい妹といい俺何か悪いことしたんですか?めちゃくちゃ叩かれてるんですけど。
「それにしてもお兄ちゃんに好きな人がねぇ・・・。その人はどんな人なの?」
ああ言ってた割には興味津々な妹である。とりあえず俺は妹に桜内さんの魅力を語り尽くした。
「なるほど・・・まぁがんばれとだけ言っておくね。」
珍しく応援してくれる妹に俺は首をかしげた。本当は『やめときなさいよ。絶対無理だから。』って言われると思ってたんだけどなぁ。
時計を見るとまもなく時刻は6時になろうとしていた。
「じゃあお兄ちゃんそろそろバイトだからご飯は冷蔵庫にあるやつチンして食べといて。」
「もうそんな時間なんだ・・・。いってらっしゃい。気をつけてね。」
「はいよー。」
ちなみにバイトは沼津にあるレストランで働いている。
内浦からだと少し遠いが幸いにも交通費は出るし時給もそれなりにいいし、なにより賄いが出るのだ!たくさんもらった時はタッパーに詰めて持って帰り妹にも食べてもらっている。
学校に通いながら働くのは少し大変だがこれも可愛い妹のためだと今日もクソみたいな客を相手にしながらがんばってます。
そして次の日、本日から授業が始まるので周りの生徒はどこか憂鬱そうな表情だった。
しかしそれと対照的に高海千歌はどこか嬉しそうな面持ちだった。あと今日初めて気づいたんだけど俺の前の席だったんですね。
なんかホントにすいません。
それにしても気になるのは不自然に空いた俺の隣の席。使わない机ならここになくてもいいのに。
予鈴が鳴るまでまだ時間があるので俺は机に突っ伏して寝る体勢に入った。がそんな時に俺の安眠を邪魔するものが現れた。
「海人君!」
高海の野郎だ。今いいところなんだから邪魔をするんじゃあないぜ。が、そんな心の声は高海に届くはずもなくしつこく声を掛けてきたので渋々顔を上げるとそこには高海の他にもう1人ニューフェイスがいた。
「紹介するね!この子は渡辺曜ちゃん!スクールアイドル部の3人目の部員です!」
「初めまして!私は渡辺曜!あなたが千歌ちゃんが言ってた田野海人君だよね。これからよろしくね!」
とその子はグレーの髪をなびかせ笑顔で自己紹介してくれた。名乗られたからには返すのが礼儀ということで俺も簡単な自己紹介をした。
「よろしく渡辺。あぁひとつ言っておくが俺はこの部に名前を置いてるだけだからあまり部に参加はできない。」
「そんなの関係ないよ!とにかく今日はがんばろうね!」
あぁ・・・この子はあれだな。クラスのカーストで言う最上位グループの人間だな。もうオーラが違う。
それにしても『今日がんばる』ってどういうことだ?早速練習でもあるのか?それとも勧誘か?どちらにせよあまり関わらないでおこう。そう思いもう一度寝る体勢に入るが・・・
キーンコーンカーンコーン
ここで予鈴が鳴りバラバラに散らばっていた生徒は自分の席に着き始める。結局眠れなかった・・・。
担任が教室に入ってくると「おはよう。」と挨拶をし続けてこう言った。
「今日は転校生を紹介します。入ってどうぞ。」
そうして扉が開き入ってきたのは・・・
「皆さん、初めまして。東京から来ました桜内梨子といいます。よろしくお願いします。」
はい?なんで桜内さんがここに?いや、理由なんかどうでもいい・・・。また彼女に会うことができた。それだけで俺は嬉しかった。
そして俺は神に感謝した。これはどう考えても主が俺と桜内さんをくっつけようとしているに違いない!まさしくこれは・・・
「「奇跡だよ!!」」
と俺と高海は同時に声をあげた。
「おい、高海に田野うるさいぞ。」
と注意されてもお構い無し。
俺は前に出て昨日と同じく彼女に言った。
「桜内さん。あなたのことが好きでむむむ。」
愛の告白をしようとするが後ろから高海に口を塞がれてしまった。
「ちょっとどういうつもり?こんな所で告白しないでよ!」
「そこに桜内さんがいたから・・・」
「登山家か!」
そんな俺たちの様子を桜内さんはどこか楽しそうに見ていた。
「まぁ・・・あいつらは置いといて。桜内さんは・・・あそこの空いている席に座ってくれ。」
うそ・・・だろ?まさか桜内さんと同じクラスになれるだけでなく隣の席だなんて!いやー今年の俺はきてますね。
すると高海がこちらに振り向き手招きをした。耳を貸せということなのか?とりあえず俺は顔を近づけた。
「海人君、ちょっといい?」
「なんだ?」
「私ね桜内さんをスクールアイドル部に勧誘しようと思ってるんだけど、手伝ってくれないかな?」
ほぅ・・・。もし桜内さんが部に入ってくれるなら、必然と彼女と関わる時間も増えるて仲良くなれる可能性も大きい・・・。これなら俺もスクールアイドル部に顔を出したくなる。
「いいだろう。喜んで協力してしんぜよう。」
こうして俺と桜内梨子の愛の協奏曲が始まるのであった。