上も下もない不思議な空間。
目の前には、奇妙な生き物。
ふわふわの綿毛に手と足をはやして、小さな目と口をつけたような、そんな感じの。
体は光に覆われて、でも目にまぶしいというよりは暖かいような、そんな風。
――やあ、こんにちは、ボクはわたぼうっていうんだ。
ふわふわ綿毛のヘンテコな生き物が手を挙げて言った。
――突然こんなところに来てしまって君はずいぶん驚いただろうね?
はい
→いいえ
首を振る。ぼんやりと夢を漂っているかのように現実感がなく、そういうものなのだと奇妙に納得してしまっていた。手のひらを顔の前で広げても、それすらよく見えないのだから。それにしては、ふわふわの綿毛の生き物ははっきりと見えるのだけれども。
――そうか、君は勇敢な人なのかもしれないね。さて、君がここに呼ばれたのには理由があるんだ。でも、その前に少し君のことを教えてくれるかい。さて、君は女の子? それとも男の子?
女の子
男の子
…………。
……………………。
………………………………………。
――ああっとごめん。別に馬鹿にしているわけじゃないんだ。ここは普通とは少し違う場所なんだ。時も場所も、そして記憶さえない。全く新しい場所。だから、世界がとっても曖昧で、僕は君の姿さえよく見えない。だから、君自身に聞くほかないんだ。だから、どうか教えてほしい。君は女の子、それとも男の子?
→女の子
男の子
『私』は、そう答えた。生まれてきた時から変わることはない私の性別を。
――そうか、君は女の子なんだね。では、君の名前を教えてくれるかい。
………。私は、私の名前は。どうもぼんやりしている。ええと私の名前は。そうだ。どうして忘れていたのだろう。
私は戸惑いから、少し間を空けて彼に名前を告げる。
――そうか、君はそういう名なんだね。とっても良い名前だ。一応もういっかい聞くけど、ボクの聞き間違いじゃないね?
→はい
いいえ
――ありがとう。次に君の生まれた場所と家族について教えてくれるかい。
訊かれるままに、ただ私は答えていく。
――じゃあ次は、君の性格を教えてくれるかい。といっても、自分の性格を自分で判断するのは難しいよね。ボクがいくつか質問するから、それに答えて欲しい。そうすれば、ボクはきっと君がどんな人なのか分かるだろうから。
私はあいまいに頷いた。まだ夢心地で、果たして私がどんな性格だったか、ふと、失念してしまっている感じすらあった。
――じゃあ、最初に。君は、燃え盛る炎に心惹かれることがある。
………、……………………。
→はい
いいえ
――空を飛びたいと思ったことがある。
はい
→いいえ
――ときどき色々な空想をしてあそぶことがある。
→はい
いいえ
――。
――――。
――――――――。
――――――――――――――。
―――――――――――――――――――。
――最後に。君は、別人になりたいと思ったことがある。。
→はい
いいえ。
無数の質問が、一つ答えるや否や、矢継ぎ早に繰り出され、私は考える間もなく答えていく。それと同時に次第に私の意識が覚醒していき、人格の輪郭が少しづづ明確になっていくように感じた。
――ありがとう。大分わかってきたよ。君は中々のロマンチストだね。でも、現実をよく知っている頭でっかちな面もある。両方の天秤が揺れ動く、君ぐらいの年齢の子なら、もしかしたらありふれているかも。きっと一番楽しいことが見つけられる場所のすぐ前に、君はいるのだろうね。
よく、分からない。そんなこと言われても、考えたこともない。
――さあ、そろそろ、はっきりしてきたようだね。自分の手を見てごらん。
私は自分の両手を先ほどのように目の前に翳す。さっきはぼんやりとしてなんとも判別できなかった私の両手は今や、すっかりと元通りになっていた。十年と少し、慣れ親しんだ、私の手。
突然、鏡が私の前に現れた。そこにはぼんやりとした私の輪郭が映っている。でも、最初に見た手と比べて随分とはっきりとしていて、大体の大きさぐらいは見ることができる。その曖昧さも、まるで視点を合わせるように、ゆっくりと、私の容姿をはっきりと映し出していく。
小さい背。アーモンド色の目。栗色の無造作に伸びた長い髪。そして、代わり映えしない布の服。
――さて、大分はっきりしてきたね。こんなにかかってしまって申し訳ない。もう少しだ。さて、では本題。実はここに君を呼んだのは、ボクじゃあないんだ。
………今更な事実に私は少し呆れた。
――ごめんごめん。でも事情があってね。君を呼んだのはくれぼう。ボクの仲間なんだ。彼は今、どうにもならない事情を抱えてしまっている。君を呼んだのもそのせいなんだけど、呼んだはいいけど、力が足りなくてこんな中途半端なところで力尽きてしまって、ボクを頼ってきたんだ。精霊の力が無ければ、ここを通ることはできないからね。
……。驚いた。今、私は精霊と会話しているらしい。とはいえ私は精霊といえばルビス様しか知らないのだけれど。
それによく、わからない。結局私はどうすればよいのだろうか。
――君に力を貸してほしい。今から別の世界に行って欲しいんだ。
別の世界に行って何をすればよいのか。
――それは、きっとくれぼうが導いてくれる。ごめん。ボクからはあまり言えないんだ。でも、どうかお願い。
はい
いいえ
……ここでいいえと答えたら、私はどうなるのだろうか。ずっとこのままこの場所を彷徨うのだろうか。
――大丈夫。その時はボクが責任を持って君を元の世界に帰すよ。
はい
いいえ
私は姉の姿を頭に思い浮かべた。私の唯一の肉親。そしてもういない人。元の世界に帰る場所はもうない。助けてほしいというなら、自分が必要だというのなら、それもよいかと、そう思った。
→はい
いいえ
――ありがとう。君に感謝を。君はきっと良いマスターになれるよ。だって、その目にはボクの知っている中でもっとも素晴らしい人間と同じ光が見えるんだからね。
わたぼうが、段々と遠ざかっていく。
それと同時に私の意識もまたぼんやりとしていくのを感じた。
それに耐えきれなくなって、段々と瞼が下がっていく。そうなれば後は真っ暗な世界。そこに微かに声を聴いた。
――さようなら。また会おう。良い旅を。
いつかやってみたいやつ。色々設定出してるけど主人公は女の子じゃなくてもいい。読んでる人とコミュしながら、ゲームブック的なやつやりたい。ぶっちゃけるとやる夫スレみたいなやつ。内容は探索系と牧場系に恋愛ぶちこんだやつ。
ドラゴンクエストなのは、某いわさんリスペクト。