とある飛空士への召喚録   作:創作家ZERO零

10 / 106
第6話〜接触その2〜

話を中央暦1639年1月に戻す。

 

 

「全く面倒な事になった……」

 

 

エル・バステル艦橋楼頂部、射撃指揮所の四面に貼られた分厚い防弾ガラス越しに、マルコス・ゲレロ司令はそう呟いた。この海は白波の立たない大海原。まっさらな蒼に、陽の光が銀箔のように散りばめられて光散らしていた。

 

あまり波が立たないと確認されたように、この波は小さな船でも難なく航行できそうな海域であるが、それでも海の上を進む船にとっては揺れは免れない波の量であった。

 

しかし、エル・バステルの船体が揺れることは全くない。白波の影響どころか風の影響すらも受けていない。それはエル・バステルが全長260メートルの巨体を持ち合わせているからだろうか?それは違った。

 

現在のエル・バステルの()()は海面から2()0()0()()()()()。そう、この船は空を飛んでいるのだ。特別使節団艦隊はシエラ・カディス群島を出発し、南側、この星で言う西南方向へと歩みを進めていた。水上偵察機が発見したという新大陸へ向けての新たな門出だった。

 

 

「我々とは異なる世界、ここで我々に何を求める?…………鬼が出るか、蛇が出るか」

 

 

ふと呟いてみた。

 

 

「海上戦力が出現します」

 

 

事務的な答えがすぐ傍から返ってくる。マルコスは自分の思考を遮られたことに少し眉がピクリと動く。そして不満そうな表情を声の主へ流した。

 

すらりとしたスリムな体型。背の高い頭の位置はマルコスよりも少しだけ高い。外交官の将校服を上に追っていくとその整った顔立ちがよく見える。

 

一直線に堅く引き結ばれた口元、くっきりとした鼻筋に知性をたたえた海緑色の眼差し、うしろでぞんざいに束ねられたコーヒー色の髪。整った顔立ちからは少しだけ中性的な美容を醸し出すが、体のどこにも膨らみはなく彼が男性であることを知らしめている。

 

──アメル・ハルノート

 

弱冠二十九歳にして今回の使節団のレヴァーム代表を務めることになった才媛である。豊かな教養と高度な知性を携え、外見も優美。そんな文字通りの才色兼備へ、マルコスはまずため息をついて話す。

 

 

「貴方に足りないのはロマンだ、アメル外交官」

「公務には必要ありませんので」

「貴方は外交官では?柔軟な対応が求められる職業だ」

「柔軟にするべきなのは対応だけです。公務に関係ないことは私の勤務外ですので」

「………まあ、問題ないだろう。にしてもえらいことになったものだ、見てみたまえ」

 

 

マルコスの指差す防弾ガラスの向こう側、まっさらな蒼の先に広がる海。その先、はるか彼方の海の蒼が空の青と溶け合い隔てられていた。

 

地平線。

 

前の世界ではなぜか目にすることがなかった球面惑星の特徴が、そこにはあった。

 

 

「今まで観測できなかったものがいきなり現れたのだ、不自然すぎる。だがこれで、異なる惑星にやってきたと信じれる」

「ええ、大瀑布も消えているので尚更別の惑星に転移したことが確信できます」

 

 

今いるのは大瀑布の真上だった場所だ。しかし、神秘の滝は全く見当たらない。ロマンチズムのかけらもないアメルでも、現物を見せられたら流石に信じざるおえないだろう。

 

 

「司令は元の世界はどのような姿をしているとお考えになっていましたか?」

「うむ、私は地政学者ではないから分からないが、平面惑星であったことは事実だろう。どこまでいっても地平線は見えず、砲撃の際に発生するであろうコリオリ力の影響も確認されていない。紛れもなく平面惑星だった、だろう」

「たしかに、そのように考えるのが妥当でしょう」

 

 

アメルはそうぶっきらぼうに呟くと、彼はマルコスの隣に来て地平線を隣で眺め始めた。

 

 

「では、この世界は球面惑星でしょうか?」

「だろうな、あの通り地平線が現れているのが確固たる証拠だ。学者の観測ではコリオリ力も観測されているらしい」

「…………だとすると、少し疑問が残ります」

「なんだね?」

「地殻変動が起きてません」

 

 

アメルはおもむろにそんな疑問を口に出した。マルコスはわずかに考えにふけると、彼の言っていることをやっとのこさ理解した。

 

 

「ああ、確かに不思議だな。平面にあった大陸がいきなり球面惑星に押さえつけられたのだから、地殻変動が起こらない方がおかしい」

「ええ。ですが、地震や地割れの報告は二国間の間では一切報告されていません」

 

 

そう、彼らの言う通りかなり不自然であった。

 

平面と球面というのは別な図形であるため、面積の特徴が大きく異なる。平面に描いた紙の絵を手頃なサッカーボールに貼り付けてみればわかる。必ず歪みが生じるのだ。

 

紙がくしゃくしゃになったり、果てには破けたりと平面の図形を球面に貼り付けるのは困難なことである。球面惑星の地形を描いた世界地図に、必ず歪みが生じてしまうのも同じ理屈だ。

 

ちなみに、小さい球体から大きな球体に面を貼り付けるときも同じである。野球ボールを丸く包んだ紙を、サッカーボールに移してみれば表面の歪み方がちがう。もし小さな惑星から大きな惑星に転移した、という事象があればこのような必ず歪みが生じるはずなのだ。

 

事実、海岸線が球面になったことによって洋上の港は大混乱になったのは記憶に新しい。あれは、今まで平面だった海と港が急に球面になったことによって海抜が変わってしまったのだ。しかし、地殻に関してはなんの変化も訪れていなかった。

 

 

「大陸が球面に押さえつけられずに、そのままの形で転移したと……」

「それが不自然なのです。この世界が球面惑星なら必ずそういった地形の歪みが起きても……いえ起きない方がおかしいのです」

「うむ……確かに不自然だな。海に関しては歪みが生じたのに……」

 

 

現在、海の歪みによって洋上艦は全て使い物にならなくなってしまっていた。その代わりとして、この特別使節団艦隊を含めた飛空艦だけが使える状態にある。

 

 

「うーむ……いきなり球面惑星に転移したとすれば、他にどんな問題が予想される?」

「まずコリオリ力によって飛空艦や飛空機械の進路に悪影響が出てしまいます。航路がずれたり、進路が間違ってしまったりなど。偵察隊はなんとか帰ってきましたが、あれは優秀な誘導装置のあったお陰です」

 

 

そう、コリオリ力が発生するということは空中に浮かぶ飛空機械や飛空艦などの進路にも悪影響を及ぼす。

 

今回、新興国家への偵察任務に水上偵察機であるサンタ・クルスを使ったのもそんな緊急時にでも、着水して発電できる機能が備わっているからだ。つくづく、水素電池スタックを発明した人物たちには頭が上がらない。

 

 

「最も致命的のは砲撃戦です。コリオリ力が発生しているとなれば、その影響も砲撃計算に組み込む必要があります。今までそんな計算はしてこなかったので、再訓練が必要です」

「やはりな、これではこの世界で海上戦力に出くわしても有効な反撃をすることができないということか……」

 

 

マルコスはうなだれる。砲撃訓練をやり直す必要があるということは、それだけこの世界での脅威に遭遇した時の対処法がないということだ。せっかく使える飛空艦も再訓練で使い物にならなくなるだろう。

 

その時、艦橋の水密扉が勢いよく開かれて中からレーダー士官が現れる。

 

 

「報告!海上レーダーにごく小さな反応を検知。ガレー船レベルの反応です」

「距離は?」

「ここから12時の方向におよそ十キロ先であります!」

 

 

マルコスはうむ、と頷くと近くにあるマイクを取った。放送は通信を通して艦隊全艦に通じている。

 

 

「これより、我々は対象民族との接触に入る!接触は相手を刺激しないよう外交官を『ガナドール』に移させる!ガナドール乗務員はくれぐれも高圧的態度を取らぬよう、客人を迎え入れよ!」

 

 

放送が終わり、マルコスはマイクを握っていた手を離してマイクを置く。前の地平線に向き直るように見据える。

 

 

「いよいよだな……」

「ええ……」

 

 

いつも冷静なアメルでも、こればかりには少し緊張気味だ。なんせ未知の勢力との初接触、一体何が起こるのか分かったものじゃない。不安に押しつぶされぬよう、エル・バステル艦橋からから離れて、ガナドールに移っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ミドリ船長が困惑するのは2度目だった。

 

クワ・トイネ公国海軍第二艦隊所属の軍船ピーマは、遠くの空に揺らぐような不審な影を発見した。

 

2日前に出くわしたあの飛行船事件以降、クワ・トイネ海軍の警戒レベルは上がっていった。そして、あの謎の飛行機械が現れてからというもの警戒レベルは最大にまで引き上げられた。

 

そして、その影響を受け軍船ピーマを含む様々な船が外洋にて哨戒を行なっていた。警戒網は平時よりもかなり大規模になっている。そして、ミドリ船長はまたもあの空飛ぶ魚影に出くわした。また領海侵犯をしてきたのかと思ったら、今度はその概要に驚いた。

 

それらは全て、空飛ぶ船であったのだ。前回見た時よりも数でもかなり多く優っている。数えられるだけでも8隻の超巨大船が宙に浮いて、その場で停止している。

 

 

「一体何なのだ……あれは……」

 

 

ミドリ船長の2日前の記憶が蘇る。あの時は霧に紛れて概要がよく見えなかったが、この艦隊はあの時と比べても規模が違う。そのあまりの大きい飛空船たちが、空を「ぐわんぐわん」と不気味な音を立てながら宙に浮いている。

 

 

「……副船長あれはもはや飛空船の水準を超えていないか?」

「はい……それどころか水上艦の領域をも超えています。あんなものが空を飛んでいるだなんて信じられません……」

 

 

見た感じは空飛ぶ小島だ。自分が前回見た船よりもさらに巨大な何かが宙に浮き、自分たちを見下ろしている。

 

 

「あ!甲板の広い船が高度を下げています!」

 

 

しばらく膠着してようやくそのうちの一つの船が海面に向かって高度を下げているのが見えた。魚影はそのまま水を掻き分けながら着水すると、軍船ピーマに向かって少しずつ近づいてきた。

 

 

「あの船が臨検対象でしょうか?」

「恐らくそうしろといっているのだろう」

「前回のような領海侵犯だったら……?」

「その時でも軍人としての責務を全うするまでだ」

 

 

軍船の何倍もある船が空を飛び、海に着水する姿に驚きながらもミドリたちはなんとかその会話を絞り出した。

 

近づいてくる巨影、飛空船から大型船になった船の上から数十人の人間がピーマに向けて手を振るう。どうやら敵対の意思がないことを伝えているようだ。

 

 

「これより、同船の臨検を行う。諸君は私の指示、もしくは攻撃を受けない限り、決してこちらから攻撃してはならない!いいな!」

「はい!!」

 

 

ミドリ船長はピーマの歩みを進めて不明船へと近づく。しかし、その度に驚愕で開いた口が塞がらない。

 

 

「これは……船なのか?まるで城塞ではないか……」

 

 

ただただ驚きだった。喫水や全高はこの軍船よりもずっと高く、船体の3箇所には3対の風車のようなものが取り付けられている。

 

ひとりでに降りた板から上部甲板に上がってみればそこは騎馬試合ができてしまうのではないかと思われるほど広く、自分の前には武器を一切持っていない奇妙な服の者たちと、おそらく自分と会話するであろうパリッとした服を着た担当者が二名ら前に立つ。

 

 

「わ、私はクワ・トイネ公国第二艦隊所属ら軍船ピーマ船長ミドリです。ここは我がクワ・トイネ公国の近海であり、このまま進むと我が国の領海に入ります。貴船の国籍と、航海目的を教えていただきたい」

 

 

相手の担当者と、その周辺の者たちの顔が一瞬驚きに満ちる。そのまま顔を見合わせるが、担当者の中の一人が歩みを進めてきた。

 

 

「……安心しました。どうやら天ツ上語が通じるようですね」

 

 

一瞬女性かと見間違えるが、膨らみのない体つきから彼が男性だということがわかった。彼は一瞬安心したような笑みを浮かべると、自己紹介をしてきた。

 

 

「失礼、私は神聖レヴァーム公国外務省のアメル・ハルノートと申します。こちらは、帝政天ツ上の田中外交官です」

「帝政天ツ上外務省、田中と申します。貴国はクワ・トイネ公国という国名なのですね。我々レヴァームと天ツ上両政府は、貴国と交流を持ちたいと考えております」

「状況によっては国交締結まで視野に入れております。貴国の担当者にお取り次ぎいただけると幸いです」

「貴君らは国の使者、というわけですね」

「はい、そうです。緊張なされているようですが、安心してください、我々に敵対の意思はありません」

 

 

ミドリの部下たちの緊張が多少ほぐれ、わずかに肩が下がった。外交の場で相手を緊張させるのはご法度だ、ここは疑われてでも「敵対の意思はありません」としっかり丁寧に教えた方が良いのだ。

 

 

「わかりました。その旨、本国に報告いたします。一つ質問などですが、先日私が接触した領海付近を航行していた空飛ぶ船と、マイハーク上空に現れた未確認騎は、貴国の騎士でしょうか?」

「騎士……?天ツ上の飛空駆逐艦とレヴァームのサンタ・クルスの事でしたら、後日両国から改めて公式に謝罪の旨をお伝えします」

 

 

アメルが発した『ひくうくちくかん』や『さんたくるす』という単語は、やはりミドリたちが聞いたことがないものだった。

 

訝しむミドリたちの前でアメルが一呼吸置き、ミドリたちにとって信じがたい話を始める。

 

 

「我々二国は、突然この惑星にやってきました。なにぶん、前の世界ではレヴァームと天ツ上の二国しか存在しなかったものですから、飛空駆逐艦からの不明船発見の旨は驚きました。

そして、この世界がどうなっているのか確かめるために多方面に哨戒機を飛ばし、そのうちの一機が貴国の領空を侵犯してしまったようです。ご迷惑をおかけしました」

 

 

ミドリの部下たちが互いに顔を見合わせて困惑するのが、ガナドールの乗務員にも見えた。無理もない、国ごと惑星を移動するなどあり得た話ではない。

 

しかし、彼のいっている真剣な表情からは嘘は読み取れない。ミドリはひとまず、今聞いたことをありのまま報告することにした。

 

 

「……なるほど、事情は把握しました。その旨を本国に伝えますので、しばらくお待ちください」

「はい。何日ほどまでば良いのでしょうか?」

「あ、いえ。今すぐ魔信で本国に連絡し、判断を仰ぎますので、少々お待ちいただくだけで結構です。このよつなことは、私だけでは判断しかねますゆえ」

「ほう……通信手段があるのですね」

 

 

こうして、異世界の住民とのファーストコンタクトは無事にことを運んだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

クワ・トイネ公国 政治部会 蓮の庭園

 

ここは国の代表が集まるには随分とメルヘンな場所だ。水の貼った蓮の庭園の真ん中に、堂々とテーブルが設けられ、会議はそこで行われている。

 

そのメルヘンの中で首相カナタは悩んでいた。その理由は言わずともがな、超大型飛空船と謎の未確認騎についての軍務卿からの報告だった。

 

両方とも所属はまったく不明、飛空船には三日月を模した国旗が描かれており、未確認騎には剣と盾の国旗が描かれていたが、そんな国旗の国などこの世界には存在しない。

 

 

「皆の者。これらの報告についてどう思う?」

 

 

カナタは口火を切った。

 

 

「まず謎の飛空船らしき物体についてですが、同物体はパンドーラ大魔法公国などの一部の国でしか実用化されていない代物です。大きさは150メートルほどで、速度はワイバーンよりも遅いとのことです。そして、空中での制止は出来ません。しかし、目撃者であるミドリ船長によると船は飛行船とは思えないほどの高速で移動し、空中で制止していたとの報告があります。明らかに不可解です」

 

 

報告は以上だった。

 

 

「なるほど、未確認騎の方はどうだ?」

「分析班によれば、同物体は西方の第二文明圏の大国『ムー』が開発している、飛行機械に類似しているとのことです。しかし、ムーの飛行機械は、最新のものでも最高速力が時速350キロらしく。今回の飛行物は明らかに600キロを超えています。ただ……」

 

 

情報分析部長は言葉を詰まらせる。

 

 

「ただ……なんだ?」

「はい。ムーの遥か西、文明圏から外れた西の果てに自らを『第8帝国』と名乗る新興国家が出現し、圧倒的に武力にて付近の国家に対して侵略戦争を行い、猛威を振るっているとの情報があります。第二文明圏の大陸国家郡に対して宣戦を布告したと、昨日諜報部から報告がありましたが、彼らの武器についてはまったく不明です」

 

 

会場にわずかな笑いが巻き起こる。いくら猛威を振るっているからといっても、文明圏から外れた新興国家が第二文明圏全てを敵に回したというのは無謀にもほどがあるからだ。

 

 

「しかし、第8帝国はムーから遥か西。ムーからの距離でさえ、我が国から二万キロ以上離れています。いくらなんでも今回の二つの物体が、彼らのものであるとは考えにくいのです」

 

 

──彼らは知る由も無いが、水素電池に航続距離など関係ない。海水さえあれば、無限に飛行することが可能だ。

 

とにかく会議は振り出しに戻る。結局わからないことには変わりはない。ただでさえロウリアとの緊張状態が続き、準有事体制のこの状況で、未確認騎だの飛行船だの、不確定要素が首脳部を悩ませた。

 

 

「お待ちください、部会に任命されていない方はお通しできません!」

 

 

困り果てた様子の声が会議場に響いた。入り口を見張っていたエルフの公務員であった。彼は困り果てた様子で誰かを止めようとするが、その人物は葉巻の煙を公務員に被せさせるとその隙に蓮の葉を伝って会議の場へと向かって行く。

 

 

「何事か第二艦隊司令官!?お呼びでないわ!!」

 

 

突然の乱入者に、思わず外務卿が怒鳴りつける。その乱入者はマイハーク港の海軍を管理するノウカ司令であった。

 

 

「おやめなさい、外務卿。急務の案件とお見受けします」

 

 

カナタがぐぬぬと言う外務卿を制止すると、ノウカ司令の報告に耳を貸す。

 

 

「現在、第二艦隊の検閲中の大型飛空船が神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上と名乗り、転移国家であることを主張しています」

 

 

突然のことであった。あまりにも突拍子もない話で会議室の誰もが信じられない思いであった。

 

国ごと転移というのは神話に登場することはあっても、現実にはありえないはずだ。例えば、ムーは一万二千年前にこの世界へとやってきたと伝えられているが、他の国はお伽話だと思っている。

 

 

「そして、マイハークへの領空侵犯と領海侵犯を公式に謝罪したいと仰っております」

「転移国家だと!?嘘をつけ!」

「あのような敵対行動を取っておきながら、公式に謝罪だと!?どういった了見だ!?」

「レヴァーム!?天ツ上!?知らんな、追い返してしまえ!!」

 

 

会議場が怒号で包まれる。それもそうだろう、領海侵犯と領空侵犯を同時にした。このよつな敵対行動を取ったのなら敵である可能性が高い。それなのに二国揃って公式に謝罪など、彼らの価値観からしたら野蛮すぎる。

 

 

「とは言いますが、我が国を取り巻く状況。隣国であるロウリア王国が武力圧力をかけている中、我が国にレヴァームと天ツ上という二つの国を相手取る余力などありませんよ」

 

 

言われてみれば、彼のいっていることも正しかった。同盟国のクイラ公国は飛龍を持たない貧しい国だが、天然の防壁と山岳戦闘に長けた獣人部隊を率いており、難攻不落。

 

それに対し、ロウリアは近年軍船を大量増強して国境付近に圧力をかけている。そんな中でレヴァームと天ツ上という正体不明の国家との戦争をする余力はクワ・トイネにはない。

 

 

「首相、ご英断を」

 

 

ノウカ司令は首相に迫る。会議室の全員がカナタに向き直る、彼の決断にこの国の運命がかかっているかもしれない。

 

これに対し、カナタ首相の決断は…………




飛行機の航続距離とかカナタ首たちが話しているけど、水素電池の前では無駄な話なんだよなぁ……

というわけで、飛空艦の航続距離を生かして原作より早めにこの世界の国々との接触を果たしたいのですが、いかがでしょうか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。