とある飛空士への召喚録   作:創作家ZERO零

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閑章第22話〜王国の新たな力〜

 

 

「なんとか終わりましたね」

 

 

岡はモルテスにそう言い、今回の戦いの事後処理を手伝っていた。

 

 

「ああ、今回の戦いは王国にとって重要な勝利となるだろう。オカ殿、感謝している」

「いえいえ、私ではなく皆さんで掴んだ勝利です」

 

 

岡は決して奢ることがない。しかも、こういった戦果に対して誠実である。

 

 

「!? ああ、オカ殿!!」

 

 

と、ザビルが声をかけてきた。彼はいつの間にか鎧を脱いでおり、焦ったかのようにこちらに走ってきた。

 

 

「オカ殿! すまぬ!!」

「!? え、えぇ!?」

 

 

いきなりザビルが頭を下げて、思いっきり謝罪をしてきた。岡はいきなりの事で、戸惑ってしまう。

 

 

「オカ殿……貴殿から借りていたあの拳銃……吹き飛ばされた時に失くしてしまったようだ……」

「あ、あぁ……アレですか?」

 

 

彼の説明によると、戦闘が終わった後に重騎士全員であたりを探して回ったが、全く見つからなかったという。せっかくの借り物を喪失してしまったので、ザビルは責任を感じて謝ったのだ。

 

 

「そんな、良いですってアレは。あんまり高い物じゃないですし……」

 

 

実際、コブラマグナムは天ツ上の平均月収の6分の1ほどの値段で売られている。戻った時にまたいつでも買えば、それで済むのでザビルが失くしたとしても気にしていなかった。

 

 

「いや、オカ殿から預かった物を失くしたのが問題だ……本当にすまない!」

「良いですって、大丈夫ですよ」

 

 

岡はザビルを励ましつつ、銃が無くなったことを不審に思っていた。魔獣との戦闘で、銃が無くなることはない。ならば、誰かが持ち去った可能性があるかも知れない。

 

 

──もしかしたら……敵の観測者が……

 

 

岡の警戒は、的を得ていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

中央暦1639年12月16日

 

ノルミストミノ区を透明マントで偵察していた鬼人族が戻り、ダクシルドは書斎で報告を聞いていた。それによると、エスペラントの兵達は銃を至近距離で撃つことを覚えたらしい。

 

 

「流石に貴様らでも、マスケット銃は致命傷か……」

 

 

マスケット銃の威力はかなり高く、命中さえすれば100メートル以内であれば鎧を余裕で貫通する。いくら生物離れした剛力を持っていても、有機質の肉体の耐久性にはやはり限界がある。

 

 

「しかし、それならば偵察部隊を送るまでもなかったな。その程度なら全軍で攻め込めば良さそうだ」

 

 

この時、ダクシルドは鉱山区を二つ落としているので生産力に打撃を与えていると思っていた。そのため、これ以上銃器は量産できず、全軍で数で攻め込めば行けると思っていた。

 

しかし、偵察に赴いた鬼人族は「鬼人族がどのように倒されたのか見てこい」と命令されていたので、投入された鬼人族が戦闘不能になった時点で引き返してしまった。その為、鉱山区が二つとも取り返された事に気づいていない。

 

 

「しかしダクシルド様、偵察に向かわせた者がこんな物を持ち帰っております」

 

 

しかし、その侮りも今日までであった。

 

 

「何だこれは?」

 

 

斥候が持ち帰ったマグナム拳銃が、ダクシルドに差し出される。黒いフレームに木のグリップ、引き金もある明らかな拳銃であった。

 

 

「これは?」

「はっ、黒騎士を直接倒した銃士が持っておりました」

「何!? あの国の人間のだと!?」

 

 

ダクシルドも彼らの銃器の性能を知っている。それによると、科学式のマスケット銃が限界であり、それ以上の連発銃などは生み出されていないと聞く。

 

 

「あいつらの銃器はマスケットが限界ではなかったのか……?」

 

 

しかしこれはどうか、アニュンリールにも魔導式の拳銃があるが、この銃器にはきちんと薬莢があり、回転式拳銃にしては良く出来ていた。あの国の人間が作れるとは思えない。

 

 

「はい、この他にも見慣れぬ銃器を装備しておりましたので、新しい銃器を作ったと考えるべきでしょう」

「なんだと……」

 

 

ダクシルドはいよいよ危機感を覚える。こんな物を持っていると言うことは、あの国は銃器に関してかなり急成長を経ている事が()鹿()()()()()()()

 

 

「誰かが協力し始めたのか……あるいは……」

「どういたしますか?」

「バハーラ、取り敢えずは総攻撃を31日に延期しろ。それまでに入念に全軍の訓練を行なっておけ」

「承知しました」

 

 

書斎からバハーラ達が退室する。ダクシルドは拳銃を持ったまま、それを証拠として会議室に赴く。入室してすぐ扉を閉め、今度はマラストラスが居ない事を確認する。

 

 

「コレなんですか?」

「未開の野蛮人達が持っていたと言うらしい」

「本当ですか?」

 

 

会議室で技術に詳しい部下に拳銃を渡す。彼はそれを舐め回すように眺め、シリンダーを開いて弾薬を確認した。

 

 

「どうだ?」

「これは……火薬を使った科学式の拳銃ですね。装弾数は5発ですが、普通の弾より多く火薬が詰められているので、一発の威力が高そうです」

「やはりな……今までの未開人の水準では作れん代物だ。明らか、外部の誰かが手を貸しているに違いない」

「では……鬼人族を倒す戦術を生み出したのも……」

「ああ、おそらくはそうだ。考えられるのは……空からの闖入者だな」

 

 

あれからゼリスマリムに空からの闖入者に関して調べるよう命令をしたが、まだ連絡がない。そのため、そいつに関する情報は少ないのだ。

 

 

「奴は天ツ上と言う国の人間だと聞いたが……心当たりはあるか?」

「天ツ上と言えば、レヴァームという国と一緒にパーパルディアと戦争をしていると聞きましたね。分かっているのはそれくらいです、ずっとこの情報の入らない地で仕事していましたからね……」

 

 

彼らは長らくグラメウス大陸にて仕事をしてきていた為、外の情報が入っていない。レヴァームと天ツ上も、アニュンリールには接触していないので、お互いがお互いを知らない。

 

 

「おそらく水源区は落せていないな……やはり、あれの封印を解かねばならんか……」

「よろしいので?」

 

 

部下がダクシルドに対し、茶を注いだコップを差し出す。熱い茶を冷まし、一口を口に含んでため息を漏らす。

 

 

「これは万が一の保険だ。闖入者のせいであの国が強化されているなら、正攻法では太刀打ちできんだろうしな」

「ですが、魔王にバレたらとんでも無いことになりますよ?」

「火山の奥深くだから、マラストラスにはバレんだろう。それに、魔王を出し抜いて暴れているうちに、我々が逃げ出す寸法にもなる」

 

 

しかし、魔王から逃げ出すには一つ問題がある。

 

 

「逃げ出すにしろ、マラストラスの監視の目があるのが問題ですね……何か武器があれば、話が変わるんですが」

「いや、我々には武器があるではないか」

 

 

と、ダクシルドは鹵獲したコブラマグナムを掲げて見せた。弾は5発フル装填してあり、引き金を引くだけで撃てる。使い方は、物の用途を読み取る魔法で学ぶことができる。

 

 

「分かりました、解除には2週間ほどかかりますが……」

「それで良い、なるべく早くするんだぞ」

 

 

そして彼らは火山の奥深く、その謎の空間にて作業を開始した。その奥底には、封印されし厄災が眠っている。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ヒトに擬態したゼリスマリムが、炎の揺らめく道をふらふらと歩いていた。彼はこの前ダクシルドに、とある追加命令を下された。それは、フォンノルボ区襲撃の連絡と、その混乱に乗じてレガステロ区へ潜入せよというものだった。

 

 

「あれ……?」

 

 

当初は王城の真北を攻めるなら、王城からも兵を出すだろうと思われていた。が、待てども待てども兵士達は加勢に行く様子がない。ずっといると怪しまれるので、仕方なく退散した。

 

戦況を知ろうにも、戦闘している区は立ち入り禁止。城壁に登ろうにも、そこも立ち入り禁止。やっと戦闘が終わってノルミストミノ区へ向かったが、そこはなんと魔物の気配が消えていた。

 

何らかの方法で、岡抜きで威力偵察部隊を退けたに違いない。それに気づいた時、ゼリスマリムは恐怖を覚えた。人類は急速に学んで、発展し、進化している。長寿を誇る魔族は、進化も発展も遅い怠惰な生き物だ。

 

これをダクシルドにどう報告すればいいのか分からない。あの嫌味ったらしい叱咤はもう聞きたくない。なのに逃げ出そうにも逃げ出せない。

 

当初はここは楽園かと思ったが、「人類が束になると影竜よりも怖い」と考えを改めた。昔は人間を見下し、傲慢な魔族の一員だったゼリスマリムも、人間に対する恐怖が生まれていた。

 

しかしただ一人、岡だけは違った。

 

ダクシルドに王国の外から来た人間と接触を図れと命令された時、初めは恐ろしかった。ザビルよりも優れた射撃の腕を持ち、王国の人々から称賛と期待を集めた人間。どんな傲慢できつい性格をしているか、と思っていた。

 

しかし、岡はその先入観とは全く違っていた。銃に驚いて震えても、岡はそれを責めたりしなかった。それどころか、怪我をしなかったかと心配し、他にできることがあると励ましてくれた。

 

彼と友達になりたい、彼の手伝いならしたい、彼の命令が聞きたい。ゼリスマリムは、いつの間にか友情を求めるようになっていった。

 

 

「でも俺はダメだ……ヒトを食っちまってる……あの人はどうして人間で、俺は魔族に生まれちまったんだ……」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

中央暦1639年12月16日

 

鉱山区二つを奪還した日の午後。エスペラント王国製新型銃の試作が完成したと連絡があり、岡は事後処理を騎士団に任せてラボレーオ区にやってきた。

 

 

「オカ様がいらっしゃいました!」

 

 

職人の下積みらしきドワーフが叫ぶ。

 

 

「こんにちは」

「オカ君! ついに試作銃が完成したよ!!」

 

 

奥の部屋から飛び出して岡に挨拶をしたセイは、目の下に隈ができている。髪も無精髭もボサボサで、ここ数日間寝不足なのだろう。

 

 

「はい、そう伺いましたが……もしかしてセイさん、無茶してません?」

「ああ、時間がなかったからな!」

「ダメですよ、寝不足は。仕事の敵なんですから」

 

 

セイは分かっているようだが、彼の熱心過ぎる性格からしてまた無茶をしてしまいそうだ。

 

 

「それより、今回来た敵は退けたのか?」

 

 

どうやらラボレーオ区には戦況は伝わっていないらしい、それほど作業に没頭しているのだろう。

 

 

「はい、前回と同じ数の敵でしたから、なんとか倒せました」

「前回と同じ数? それはおかしいな……」

「やはりそう思いますよね、情報の伝達がうまくいっていないのでしょうか……

「あるいは……ああ、考えがまとまらん! やはり睡眠不足はいい仕事の敵だな!」

 

 

セイも考え込むが、今は寝不足なので考えもまとまらないらしい。しかしやはり妙である、岡の情報が伝わっていないか、あるいは分かっていてやった事なのか、それとも戦力の問題か?

 

 

「セイ様、まだ旦那に銃を渡してないんですかい?」

 

 

と、そこで遅れてランザルが出てくる。

 

 

「そうだった! いかんな、完全に忘れていた……私はこの後しばらく寝かせてもらうよ!」

 

 

岡は大事なことを忘れていたセイが、完全にランナーズハイになっていることを知って苦笑いする。

 

 

「まぁ見てくれたまえ!」

「では、失礼します」

 

 

セイが持ってきた三種の銃器は、どれもしっかりとしていた。リボルバー、ボルトアクション、そしてサブマシンガン。それらは全てレヴァームと天ツ上にもない形や形状をしている。

 

 

「これはすごい……」

「体格の違う種族でも扱えるように、色々工夫がしてある。ライフルはストックを伸縮したり出来るようにしているし、サブマシンガンはストックを折り畳める」

 

 

横からランザルが説明する。

 

 

「他種族国家ならではの配慮ですね、素晴らしいと思います」

 

 

実際、ストックの長さを変えられるのはレヴァームでも天ツ上でもなかった発想だ。これはセイのアイデアで、岡でも思い付かなかった。

 

 

「この銃器の設計は素晴らしい! 今までの王国の銃器にはなかった発想だよ!」

 

 

これらの設計は、初めて見せた時とはかなり違っている。岡とセイ、そしてランザルの三人で話し合ってアレンジを加え、エスペラント王国でも問題なく扱えるように再設計したのだ。

 

まずリボルバーを手に取る。9ミリ口径の拳銃弾を使うこの拳銃は兵士たちのサブウェポンとして作られており、軽さが重要だ。

 

かなり軽い、各部の動きもスムーズで、トリガーもダブルアクションなのに重くない。シリンダーをチェックするために回転させて見ても、かなりよく回る。

 

ボルトアクションも見る、この銃は騎兵銃であった四式短小銃をモデルにしているため、かなり軽くて取り回しが良い。そして、追加したストックの伸縮も良好、良い機構であった。

 

最後にサブマシンガン。マガジンは下部に取り付けてある。その方がバランスが良く、それをストック代わりにも出来る為である。何度もボルトを引いても問題なく、連射も夢ではなさそうだ。

 

かなり肉抜きして作った為、命中精度や信頼性に疑問が残ったが、逆にこの粗末な設計の方が滓がこびり付かなそうで良いと思える。

 

 

「凄いですねこれは……」

「ふむ、どれくらいだと評価できる?」

「自分がこの王国にやってきた時、銃器製造技術は我が国と200年から300年の開きがありましたが、これで100年に縮まりました」

「そうか! それは素晴らしい技術革新だな!」

「ええ、私も恐ろしいほどです」

 

 

銃の見聞が終わった為、今度は実際に撃ってみる事にした。ラボレーオ区の南にペリメンタ区という地区が隣接しており、そこはラボレーオ区で作られたものの実験場になっている。ここで実験をしてから、兵に実際に配る事にした。

 

試作品数丁と弾丸数百発をペリメンタ区に運び込み、エクゼルコ区から読んできたザビルと共に試し撃ちをする。

 

 

「おお……これらが新型銃……美しい、装飾など不要なほどに美しいね」

 

 

ザビルは受け取った銃の出来栄えにうっとりする。装飾は一切していないが、黒く塗られている為、見ようによってはかなり美しい。

 

 

「オカ殿、この銃の完成度はどれくらいかな?」

「文句なしの百点満点ですよ」

「やはり我が国の職人は素晴らしいだろう?」

「ええ。本当に素晴らしいです。この短時間で、よくここまで仕上げてくださいました」

 

 

ザビルは王宮科学院や工房の職人達を誇らしく思う。

 

 

「ではそれぞれの銃器を試し撃ちしてみましょう」

「ああ」

 

 

ザビルは最初に新型の小銃を手に取る。ボルトアクションの操作の仕方を岡から教えてもらい、使い方を伝授される。

 

 

「一発撃つ度に、ボルトを操作する必要があります。ボルトを回転させ、ボルトを引きます。そうすると排莢されるので、後はボルトを前方に押してボルトハンドルを倒せば、いつでも撃てます」

「たったそれだけ!?」

「はい。5発撃ち尽くしたら、このクリップで纏められた弾丸を……このように装填します」

 

 

岡は弾の入っていなかった小銃に、弾丸を詰め込んだ。

 

 

「これは……かつてない手軽さだ……」

「後は撃ってみて下さい」

「ああ」

 

 

ザビルは射撃レーンに付き、100メートルの距離に置かれた的を狙ってみる。不思議なことに、あの遠くの的がかなり近く見える。錯覚ではない、この銃の不思議な力がザビルに手を貸しているように感じた。

 

 

「撃ちます!」

 

 

ザビルは引き金を引く。しっかりと作られた弾丸の火薬が叩かれ、一気に燃焼して爆裂を生み出す。それに押し出されて弾が発射され、ライフリンクに沿って回転が付く。

 

 

「!!」

 

 

弾は、何ということだろう。的のど真ん中に命中して皿を粉々に割ったのだ。

 

 

「す……凄いぞこれは!!」

「「「「おおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

 

ザビルはその銃を素直に褒める。王国最強の銃士に褒められたことで、職人達も拳を天に突き上げる。ザビルはボルトを引いて再装填、再度撃ってみた。もちろん、的を真ん中で割った。

 

 

「凄い精度だ……これなら何百メートルも狙えるぞ……!」

 

 

これらの銃にはもちろんライフリングが彫られている。それ専用の機械も作っているので、量産性を損なうことはない。

 

 

「次はこっちを撃ってみましょう」

「ピストルだな、やってみよう」

 

 

ザビルは岡からリボルバーを受け取る。彼の目の前に6つの的が飛び出るが、それら全てを早撃ちの要領で次々と倒していった。

 

 

「す……すげぇ……」

「本当に連射できるとは……至近距離での副武装としては有効だな」

 

 

リボルバーも良好、最後は問題のサブマシンガンに移った。これは岡でも不安を覚える。かなり構造を短略化したので、性能に疑問が残るのだ。

 

 

「撃ちます!」

 

 

しかし、その疑念は振り払われる事になる。サブマシンガンは期待通り連射することができ、的となる案山子を蜂の巣にして倒した。

 

 

「「「「おおぉぉぉぉぉぉ!! すげぇぇぇぇぇ!!」」」」

「本当に連射できた! 岡、凄いぞこれは! 戦いが変わる!!」

 

 

ザビルはその性能を十分に評価し、初めて撃ったサブマシンガンの余韻に浸った。これは、エスペラントの戦い方がまるっきり変わると予想していた。

 

 

「オカ殿、もう十分だ。この銃は素晴らしい性能を持っている」

「そうですね。これで完成にしましょう」

「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

「完成! 完成だ!!」

「良かったぁぁぁぁ……」

 

 

最後に力尽きたのは、セイである。

 

 

「そうだ。旦那、この銃の名前をつけてくれぬか?」

 

 

ランザルに頼まれた事で、岡は考え込む。

 

 

「この銃は皆さんで作り上げた物です、皆さんが付けるべきだと思います」

「いや、旦那のおかげで作れたんだ。だから旦那が名をつけてくれ」

「そうだよ! そもそも君が設計したんだから、君が名付けるべきだよ!」

 

 

岡はそこまで言われ、ザビルを見ると彼も頷いていた。確か、彼が使っていたマスケット銃は確か『殲滅者』シリーズだったと聞いている。

 

 

「……では、救国者(セイヴァー)でいかがでしょうか? 拳銃はセイヴァー・ピストル、小銃はセイヴァー・ライフル、短機関銃はセイヴァー・マシンガン、なんてのはどうでしょう?」

「おお! 良いなそれ!」

「はい、固有名詞はなく、誰もが王国を救う戦士であると誇れる武器になればと思います」

 

 

ランザルやザビルはその名を聞いて、物凄く気に入っていた。

 

 

「ようし、これから毎日3人交代で量産するぞ! プレス機械でありったけの金属を弾と銃器にするんだ!!」

「鉱山区も戻ったからな! ラボレーオ区の全職人を集めろ! 全員で新型銃と弾の生産に取り掛かれ!!」

「「「「はい!!!」」」」

 

 

ここからは時間との勝負だ。王国を守れるだけの猶予はあるかは分からないが、それまでに装備を固めて、敵の全軍を迎え撃つ武力を揃えるしかない。

 

 

「よし、これでこの国も……」

 

 

岡は安心しきっていた。これだけ王国を強化したならば、もうこの国に犠牲者が出ることはない。自分のせいで、人が傷つく事もない。そう思っていた。

 

瞬間、大地を震わすような雷鳴のような音が、岡の耳に届いた。その方向を見れば、隣のラボレーオ区から黒煙が出ている。

 

 

「な、なんだ!? 爆発か!?」

「あれは……!?」

 

 

確か、あの方向はラボレーオ区の火薬製造関連の施設が集まっている筈だ。岡が「危険」と忠告したニトログレセリンを製造していた筈だ。

 

 

「まさか……まさか……!」

 

 

岡は耐えきれなくなり、その場を駆け出した。


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