とある飛空士への召喚録   作:創作家ZERO零

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ランキング90位以内に載っていてびっくりしました、本当にありがとうございますm(_ _)m
モチベが上がったので、連続投稿です!


第7話〜使節団その1〜

 

 

「ヤゴウ!レヴァームと天ツ上とかいう新興国に、使節団の一人として行くらしいじゃないか!羨ましいな!」

 

 

クワ・トイネ公国外務局、各国外務官や自国の大使館との外務を取りまとめるこの場所では、レヴァームと天ツ上との国交を開くための事前準備に追われていた。

 

レヴァームと天ツ上を名乗る新興国家が現れてから数日しか経っていない。カナタ首相の決断は早かったのだ。首相は外交官たちと話を交えるためにひとまず顔合わせをした。

 

その中で、彼の二国との会談の中で「お互いのことをよく知らない」事が判明したのだ。それを理由に、カナタ首相はある提案をした。

 

 

「交換で両国に使節団を派遣すればいい、そして本当にレヴァームと天ツ上の実力が本物かどうかを見極めさせてほしい」

 

 

というわけで、このように特別使節団がクワ・トイネ公国で編入されたのだ。別段、使節団派遣は珍しいことではない。数多の国が存在すること世界では、国の主権者の入れ替わりや国の産まれ滅びは日常茶飯事だ。

 

それは裏を返せば世界情勢が安定的とは言えない証拠でもあり、国家体制を更新した現地では治安が悪いことが多く、使節団に加わることは皆が嫌がる仕事であった。

 

その意味では、さっきの同僚の発言は嫌味を含めているのかもしれない。

 

しかし、今回の使節団が派遣される対象となる国は色々注目を集めている国だ。この使節団にはなんと首相たるカナタも含まれており、彼がいうには「この二国は異常である、私が直接交渉の場に着きたい」とのことである。

 

国家元首である首相が危険を冒してまで現地に赴くということは、それだけ異例中の異例。ヤゴウには首相がそこまでこだわる理由が分からなかったが、事前に配布された資料に目を通すとその理由が見えてくる。

 

ワイバーンより速く、高い高度を飛行する鉄竜。260メートルを越す大きさの鉄でできた飛空船。これらを運用するほどの超技術。カナタ首相が念を押すほど、本件は慎重を要しているらしい。

 

 

「信じられんな……」

 

 

ヤゴウは思考を巡らす。飛空船は魔法文明国で実用化されている空飛ぶ船だ。一般的なものではなく、パンドーラ大魔法公国などごく一部のみの国しか運用していない。しかも、軍事技術としては特にワイバーンとの相性が悪くて、もっぱら輸送用だ。

 

しかし、資料がいうにはレヴァームと天ツ上の飛空船はもっぱらの戦闘用で、鉄竜との同時運用というパーパルディアの竜母のような使い方もしているらしい。そもそも大きさが260メートル越えで、鉄でできているだけでも信じがたい。

 

そんなとんでもないものを実際に飛ばして運用しているなんて、第二文明圏のムーや中央世界の神聖ミシリアル帝国でも無理ではないだろうか。信じられないような報告の数々に、ヤゴウはレヴァームと天ツ上に対して興味を強く抱き始めた。

 

 

(今回の使節団の派遣……私はクワ・トイネの歴史に名を刻むかもしれないな……)

「これより会議を始める。集まれ」

 

 

彼の思考は不意の号令により中断させられた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

小さな会議室で、使節団たちが集まった。今回派遣されるメンバーは8人、そのうち五人が外務局員の肩書きを持つものだが、そのうちカナタ首相を含めた3人は別の局からの出向だ。

 

 

「今回の我々の一番の目的は、レヴァームと天ツ上が我が国の脅威となるかを判断することにある。知っての通り、我が国の防空網はレヴァームの鉄竜によってあっさりと破られた。今のところ、我が国に鉄竜を防ぐ手段はない。我が国と国交を結びたいとの意思を示しているが、彼らが覇権国家であることを隠していないか、もしくはロウリアのように亜人に対する極端な差別意識を持っていないか、なんのために我が国と国交を結ぼうとしているのか、真意を調査する必要がある」

 

 

その言葉に皆が頷く。

 

 

「レヴァームも天ツ上もどの程度の発展度なのかは不明だが、両国とも高い技術力と相当な軍事力を持っていることは間違いない。理解しているとは思うが、毅然とした態度で接するだけでなく、相手を刺激しないように言動には十分配慮すること。あと一点、レヴァームと天ツ上はどのような関係なのか、何が強くて何が弱いのかを調べ、我々に対して優位に立てる部分を探してもらいたい。それでは、皆に配布した要網を見て欲しい」

 

 

使節団員たちが新たに配布された資料に目を通すと、怪訝な表情に変わる。そこにはあまりにも突拍子も無いことが書かれていたからだ。

 

 

「…………『国ごと転移』?」

「彼らの言い分によれば、ある日突然、二つの国家ごとこの世界に飛ばされたそうだ。真偽は定かでは無いが、今回は相手を刺激しないように疑いの態度は慎むように心がけるように」

 

 

ヤゴウは頷きながらも、頭の片隅で考えていた。

 

 

(国ごとの転移……まるでムーの神話みたいだ)

 

 

第二文明圏の列強国『ムー』には「一万二千年前に大陸大転移が起きた」とされる神話が残っている。当時の政府記録として正式に残っており、ムーの人々は信じているが、他の文明圏の人々はただのおとぎ話と相手にしていなかった。

 

 

「要網の通り、今回はレヴァームから移動手段として飛空艦?というのを用意してくれるそうだ。出発は一時間後、もう準備は整えているはずだ。船にいる時間はレヴァームと天ツ上における常識を学んでもらう。

出発から1日で神聖レヴァーム皇国の首都エスメラルダに到着し、そこでレヴァーム政府要人との会談が行われる。そのあと、今度は天ツ上の客船に乗り換えて天ツ上へと向かい…………」

 

 

おかしい、時間計算がおかしい。クワ・トイネとレヴァームには最低でも千キロ、エスメラルダという都市までは千キロ以上の距離があるそうだ。船を使うなら、たったの1日で到着する距離では無い。

 

さらに、資料にはレヴァームと天ツ上の距離が記されており、今回のルートでは最低でも一万二千キロも離れている。それを1日で行き来するとはどういうことか?

 

 

(どうやら、我々の常識が通用しない国のようだ)

 

 

頭の中に次々に浮かぶ疑問に、ヤゴウをはじめとした団員たちは思考を放棄した。こうして会議は終わった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一時間後。

 

快晴その空は高く、綺麗な青空が広がり、少し涼しい。使節団はマイハーク港に集まっていた。集合場所である外務局所有の事務所前で、パリッとした服を着る人物が話し始める。

 

 

「お集まりの皆さん、本日は神聖レヴァーム皇国へ使節団として来訪していただけるとのこと、喜びの極みです。私は皆様の視察の案内役を任されました、アメル・ハルノートです。不明な点があれば、遠慮なくお申し付けください」

 

 

事務的な言葉だが、清々しい笑顔に使節団は毒気を抜かれる。

 

 

「船旅か……」

「はい、憂鬱ですね……」

 

 

そんな中、憂鬱な顔をした使節団員が約2名、ハンキ将軍とイーネであった。ハンキ将軍は軍事顧問として派遣され、イーネは実際に鉄竜をその目で見た事からレヴァームと天ツ上の軍事情報を集めるために顧問として派遣されたのだ。

 

 

「ハンキ将軍、イーネ団長、顔色がすぐれませんがどうされましたか?」

「ああ、ヤゴウ殿……今は外務局の身、将軍はやめてくれたまえ」

「承知いたしました。それで、何か気にかかることでも?」

「いや、今から船旅の事を思うと気が重くてな……船旅はいいものではない」

「ええ、私も憂鬱です……」

 

 

ハンキたちがため息をつくのも納得がいく。船旅というのは常に危険と隣り合わせだ、いつ転覆するかわからない上、船の中は光が届かないので暗く、湿気も多く居心地のいいものではない。しかも、長旅になると疫病の心配も出てくる。食べ物は保存食しか食べられないから塩辛いのもしか食べられない、喉が乾いても水は節約だ。

 

 

「まあ、レヴァームは1日でつくと言っているらしいがの。それくらいなら我慢も短くて済むが……正直たったの1日というのは、外務局とレヴァームの間でなんらかのミスがあったと儂は思っておるよ。そんな日数であの海域まで行くのは、到底無理じゃ」

 

 

ハンキ将軍が言っているのは、事前の会議で配られたスケジュール資料のことだ。それによると、レヴァームの用意した飛空艦によってレヴァーム首都のエスメラルダまでたったの1日で着くとのことだ。ヤゴウたちにはその早さがとても信じられなかったのだ。

 

 

「ええ、私も時間計算がおかしいと思っています……たったの1日で二千キロを行けるはずがない……」

「いや、それはないと私は思っている」

 

 

不意に、後ろから澄んだ声が聞こえてきた。振り返れば、彼らの不安を懸念したのかカナタ首相が立っていた。

 

 

「こ、これは首相!使節団の愚痴を聞かれてしまい申し訳ない……」

「いや、良いのだ。レヴァームと天ツ上は巨大な鉄の飛空船を飛ばす国だ。もしかすると我々の常識では考えられない移動手段があるのかもしれんよ」

 

 

そう言って、カナタ首相はみなの不安を振り払う。やがて集合時間となり、港へ移動するとカナタ首相の言葉が正しい事が証明された。

 

 

「な……なんだあれは!?」

「でかい!しかも空を飛んでいる!!」

 

 

巨大な船はマイハーク港の沖合で宙に浮いて停泊していた。真っ白で美しい船体に、光るような風車が特徴的な美しい船だった。さらにその周りには、その船よりもさらに巨大な船たちが輪陣形を描いて空を悠々と飛行していた。

 

この白い船はレヴァーム皇家の所有する豪華客船で、大瀑布を超えての観光や使節団派遣などに使われる立派な豪華飛空艦だった。今回、使節団が派遣されるとのことで特別に使われることとなった。

 

さらに周りにいるのは護衛として引き続き派遣された戦艦エル・バステルをはじめとする旧聖泉方面探索隊の艦隊である。彼らはファーストコンタクトの時と同じ編成で、客船を護衛する形で一緒にレヴァーム本土まで帰る。

 

 

「やはりな……さすがはレヴァームだ……」

 

 

周りの使節団が驚きに満ちる中、カナタ首相は確信したかのように頷いた。飛空客船はマイハーク港から離れた沖合に着水すると、あとはボートで客船まで乗って移るようだった。ちなみに、そのボートと客船に帆がないことが一番驚かれた。あまりの不可解さに、ハンキが質問を次々と投げかける。

 

 

「アメル殿……あの船たちは一体どういう原理で空を飛んでおるのじゃ?まさか、第三文明圏の魔導飛空船のようなものか?」

「第三文明圏の魔導飛空船というものがどのようなものかは存じあげませんが、あの船らは揚力装置によって飛空しています」

「ようりょくそうち?」

「はい、海水からエネルギーを取り出す水素電池を介し稼働し、プロペラを回すことによって生まれる反重力によって空を飛び、推進しています」

「海水からエネルギーを!?その水素電池とやらは新しい魔導装置か何かなのか!?」

「いえ、魔法などには一切頼っておらず全てカラクリで出来ております。水素電池は錬金術師が初めて発明したものです」

「う、うーむ……よく分からんが、すごいのう」

 

 

桟橋に接岸した小舟に分乗した一行は、豪華飛空船へと向かう。大型飛空船の船内へ踏み入ると、使節団全員が驚きのあまりに絶句した。明るい。しかも床も綺麗で湿気など全く感じられない。出発前に心配していた全ての懸念が討ち払われた事に、使節団は驚愕の一言だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

その日のヤゴウの日記より

 

なんという事だろうか、私は驚きを隠せない。このような巨大な船は見たことも聞いたこともないし、文献で読んだこともない。そんなものが、空を飛ぶことのできると言うのだから失神しそうだ。

 

しかも、中は快適で明るく、信じられない事に温度が一定に保たれている。装飾も豪華で、まるで宮殿のようであった。しかも、食事も豪華で我々クワ・トイネ公国の食文化にも匹敵する旨さだった。

 

このような大きな船にもかかわらず、空の上を飛んで、矢のような速度で進んで行く様には驚きしかない。二千キロを1日で移動すると言うのはあながち嘘ではないようだ。

 

こんなものを作り出してしまうレヴァームと言う国とは、一体どのような国なのであろうか?

 

外務局の中には「新興国の蛮国に違いない」と言うものもいたが、今のところ……言いたくないし、認めたくもないが……彼らから見た我々の方が蛮族に映っているのではないだろうか?

 

もしかしたら、レヴァームと天ツ上は文明圏の列強国に匹敵する力を持っているかもしれない。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

1日後。豪華客船と使節団護衛艦隊は皇都エスメラルダに到着した。ヤゴウたち使節団を乗せた豪華飛空艦はなんと、三百万人の都民の大歓声とともに迎え入れられた。

 

 

「こ、これは……」

「これほどまでの大歓迎とは……」

 

 

ヤゴウとカナタ首相が思わず言葉を漏らす。ヤゴウたちの耳を、三百万人のエスメラルダ住民たちの歓声が包み、打ち上げられた数万発の花火たちが船の下を七彩に彩った。

 

ここまでの大歓迎を受けたのには理由がある。これまで、彼らの世界ではレヴァームと天ツ上の二つの国しか存在しないと言われていたのだ。その周りは全て果てのない海と、端のない大瀑布だけだと言われていた。

 

そんな中、彼らは無意識のうちに世界に二つの国で取り残されたかのような孤独を感じていたのだ。そんな中、突然起こった転移現象。そして見つかった新しい国家。無意識の孤独を感じていた彼らが歓迎をしないわけがなかった。

 

新たな世界からやってきた、新たな人類たち。そんな名目のもと、彼らは熱烈過ぎる歓迎を受けていた。

 

そんな事を知ってか知らずか、ヤゴウたちは歓迎のこと以外に驚いていた。皇都エスメラルダの発展の模様だ。豪華な宮殿のような白の建物もそうだが、湖の入江を挟んだ向こう側にあるエリアは建物が天を貫く摩天楼のように連なっており、湖の上には巨大な橋が渡されている。

 

 

「なんと言う事だ……まるで中央世界の首都ではないか……」

 

 

これほどまでの発展具合は異常だ。例え文明圏の国家が全力をあげて作り上げても、ここまでの栄えた街を作るのは不可能だろう。

 

そして、軍事顧問であるハンキ将軍とイーネは別のことに驚いていた。彼らの視線の先には、レヴァーム空軍の飛空艦隊や戦空機隊などが綺麗な隊列を組んで歓迎式典を彩っていたのだ。

 

 

「あれがレヴァームの飛空船……」

 

 

レヴァーム空軍は三戦隊からなる一個艦隊を飛翔させ、客船の左右を挟み込み、絶えず祝砲を放って歓迎式典に華を添えている。ここまで先導してきたマルコス・ゲレロ率いる旧探索艦隊が先陣を切って、皇都をちょっとした軍事パレードにさせている。

 

その雄姿にハンキ将軍は腰が抜けそうであった。てっきり、あの飛空船たちは特別に作られたものだとばかり思っていたが、このパレードを見てレヴァームは飛空船を大量に配備していると言うことが分かったからだ。

 

 

「あ、アメル殿……あの飛空船たちはレヴァームだけが持っているものじゃろうか?」

「いえ、あの規模の飛空艦は天ツ上にも大量に配備されています。少し前の戦争で疲弊しましたが、まだ両国には大量の飛空艦艇が存在しています」

 

 

なんと言う事だろうか、聞けばあの船たちは元々天ツ上の持つ同クラスの船に対抗するために作られたものだと言う。撃っているのは魔導砲だと推測できる、だとすればレヴァームはあの大きさに見合うだけの大砲を積んだ飛空船の戦闘力は計り知れないだろう。そんなものを大量に配備して対抗し合う、ハンキ将軍はレヴァームと天ツ上の国力の大きさに驚きしかなかった。

 

 

「すごい……あの鉄竜があんなに大量に……」

 

 

一方で、イーネの目線は空に集中していた。目線の先はパレードに参加しているいくつもの戦空機隊達だった。彼らは色とりどりのスモークや紙吹雪を舞わして空を着飾っている。

 

 

「アメル殿……あの葵い鉄竜はなんと言うのです?」

「あれは我が国の最新鋭戦空機『アイレスV』です。最高時速は700キロ、最高到達高度は一万メートルを超えます」

「「「「「!!!!????」」」」」

 

 

その答えに、イーネたち使節団全員が驚きに満ちた。あの鉄竜は明らかクワ・トイネのワイバーンなんか目じゃないほどの性能を有している。それが、この国では空を埋め尽くすほどの数を配備している。マイハークに侵入してきた鉄竜は脅威であったが、あれですら目でもない性能を有しているのだ。

 

圧倒的過ぎる、ヤゴウたちはそう思った。もし戦争になれば、まずワイバーンたちはあの鉄竜たちに駆逐され、飛空船たちで空から一方的にやられるだけであろう。

 

その時、一機の青いアイレスVとやらが後ろから近づき、客船の近くを過ぎて通っていった。思わず目を凝らすと、その機体はパレードの一番真ん中でまるで舞い踊るかのような遊覧飛行を開始した。

 

使節団が見上げれば、その機体は空の天界を埋め尽くしていた青の只中を悠々と飛行していた。プロペラの推進力と重力の働きを巧みに利用し、空中にステップを刻むかのような細かい左右の機動。直進しつつ、首尾線を軸にして両翼端を柔らかい円弧を描く微横転。蒼い機体はパレードの中心にいる使節団を楽しませるかのように、悠々と空のダンスを踊っていた。

 

 

「綺麗……」

 

 

思わず、乙女らしい台詞がイーネの口からこぼれ落ちる。客船の船首から全容を見る使節団の全員がその美しい軌道に目を奪われ、考えることも忘れて目で追っている。

 

 

「アメル殿……あの竜騎士は随分と腕の立つようですが、一体何者なのですか?」

 

 

思わずイーネは質問する、他の面々は口をあんぐりと開けたままだ。

 

 

「そうですね……あの飛空士の名は明かせませんが『海猫』と称しておきます」

「海猫……?」

「ええ、彼はレヴァーム随一の腕前を持つとさえ言われるエース飛空士です。そういえば、マイハークの上空に現れたサンタ・クルスに乗っていたのも彼なのですよ」

 

 

そう言ってアメルも海猫の描く軌道に目を戻す。あれほどの急横転や急旋回などを繰り返せるアイレスVと言う鉄竜も凄まじいが、それを体のように自在に操る腕の立つ竜騎士がいることも驚きだった。

 

 

「海猫……」

 

 

思わずその名を復唱する。尽きることのない祝福が、天と地を結んで、歴史的邂逅に立ち会えた喜びが使節団とエスメラルダに満ちていた。

 


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