第26話〜広がる世界〜
中央暦1639年9月1日
空が影に包まれる。
盛大な歓声が皇都エスメラルダを包み込む。あたかも、空全体にまで広がっていくような大歓声はそのまま天高く登っていく。雲が震え、青空が染まり、人々は湧き立つ歓声にその身を包んだ。
空には、民衆の声をかき消すほどの巨大な影が君臨していた。上空を支配しているのは、巨大な飛空機械だった。巨大な船の方をした影に、ハリネズミのような対空砲塔。撃てば全てを破壊しそうな巨大な46センチ砲。島すら吹き飛ばしそうな揚力装置。
飛空戦艦エル・バステル以下25隻にもなる飛空艦艦隊は、朝日を受けて優雅に皇都の空を駆けていた。地上には神の眷族たるレヴァーム公家の面々が一堂に集い、その勇姿を見守っていた。
ついに、新世界の国々に対する接触計画が発動された。この接触艦隊に軍艦である飛空艦が組み込まれているのには、訳がある。
早い話が砲艦外交である。砲艦外交とは軍事力の威嚇的な行使を背景として圧力をかけながらも外交交渉で合法的に政治的目的を達成しようとするという強制外交の一種であると言えるものだ。
そもそも飛空艦には陸空部隊にはない特徴を備えている。治外法権や各種外交特権などから生じる国際政治における象徴性、各種指揮統制システムと海洋の移動能力から有し得る機動性を有していおり、また飛空艦そのものが物資集積所として機能する上に水素電池による洋上補給などを行えば非常に長期に亘って航行し続けることが出来ることから、この外交政策に最も適していた。
と言っても、今回の派遣は相手国を威圧する目的ではない。むしろ、舐められないように済ませるためのものである。
レヴァームと天ツ上がロウリア王国に接触しようとした時、真っ先に舐められたことの教訓だ。ロウリア王国はレヴァームと天ツ上の国力を知っておらず、侮ってしまった。例えば「ワイバーンを知らなかった」などの案件が目立つ(最も、飛空艦の脅威を見せつけた後でも戦争は起こってしまったが)
さらに言えば、列強のパーパルディア皇国などの例がある通り、この世界ではかつてのレヴァームのように相手国を無意識のうちに下に見る風潮があるらしい。これでは、ただ外交官を派遣するだけではろくな対応をしてもらえない。
そのため、以後そんなすれ違いが起きないようにレヴァームと天ツ上では多少強引な姿勢もやむなしととられた。
今回の艦隊の編成は以下の通り。
第一使節団艦隊
旗艦 飛空戦艦エル・バステル
戦艦1
重軽巡空艦5
駆逐艦16
空母2
計25隻
編成は完全な戦闘艦隊のそれである。これは、道中何が起こるかわからないという不測の事態に対処するための措置である。
空母や戦艦を組み込んでいるのは、この世界の多くの国々がまだ帆船レベルの技術力しか有していないこともある。飛空船の空飛ぶ船はこの世界にもあるが、鋼鉄でできた飛空船は威圧感がある。
戦艦の巨砲はその威力が簡単に想像できるし、甲板上に並べられた飛空機械は外からも見え、その偉容を見せつけることが出来る。まさに完璧な砲艦外交だ。
彼ら25隻は、悠々と空を泳ぐ。その舳先はこの星の西側を向き、揚力装置を轟かせて進んでゆく。
◇◆◇◆◇◆◇◆
第一文明圏、通称『中央世界』にある、誰もが認める世界最強の国がある。その名は神聖ミリシアル帝国。その名を聞けば誰もが『世界最強の国家』とうたい、敵対すればその身を震わせる。神聖ミリシアル帝国はこの世界で自他に認める正真正銘の世界最強国家だ。
そんな帝国の南端に、交流や交易の拠点となっている港町カルトアルパスがある。ここは年がら年中、各国の商人たちで賑わっている。
世界を飛び回る彼らの話は、各国の内情を語る生き証人だ。そのため、諜報源としても有益であり、商売情報だけでなく国の諜報員までが商人に扮してこの町で暗躍している。
そして、そのとある酒場では、今日も酔っ払いたちが自分たちの情報を交換していた。その中の樽瓶のような飲みっぷりをする、白い髭を生やした男が豪快に話している。
「しっかしよ、最近の衝撃的なニュースといえば、やはり第二文明圏の列強レイフォルが、西の果てに現れたという新興国、『第八帝国』とやらに敗れたニュースだよなぁ。誰か、『第八帝国』について知っているものはいないか?」
と、その彼の隣に座っていた人物が手を上げた。彼はローブをかぶった、青白い顔色をしているが、決して風邪をひいているわけではない。種族的な特徴だ。
「『第八帝国』ってのは通称で、本名はグラ・バルカス帝国っていうらしいぞ」
「ほほう?それは興味深い話だ、聞かせてくれ」
太った豪快な男がカウンターに合図して酒を持ってこさせた。こういった話はタダではない、それ相応の対価が必要だ。顔色の悪い男は、それを受け取ってグビッと飲むと、口を開いた。
「俺はレイフォルの首都レイウォリアで香辛料の販売をしていた。あの日は恐ろしかった、今でも忘れられない……ある日突然、首都全域の警備が激しくなったんだ。レイウォリアの海岸線に多数の魔導砲が配置され、大量のワイバーンロードたちまでもが飛来してきて、まるでこれから戦争でも始まるかのような雰囲気だった」
いつのまにか、酒場に集っていた酔っ払いたち全員が彼の話に注目していた。誰もがシンと静まり返り、レイフォルの模様を聞いている。
「兵士に話しても、はぐらかされて答えてくれない。『どこかの国が攻めてきた』とその時からみな勘付き始めたけれど、列強の勝利は疑っていなかったしら不安になるものもいなかった。けれど、その自信は次の日の夕方に崩れ去ったんだ」
顔色の悪い男が、カクテルを一口飲む。その指は小刻みに震えており、いまだに拭えない恐怖を物語っているようであった。
「何度も何度も海へ飛び立っていったワイバーンロードたちが、一騎も帰ってこなかった。今思えば、その時点で何かに気づくべきだったなぁ……そしてその数時間後、奴が現れた」
「何が?」
「馬鹿でかい戦艦だよ、小山のような戦艦。そして陸地からもはっきり見えるほど巨大なデカイ砲を積んでいた。……俺は、あんなでかい船は生まれて初めて見た」
戦艦と聞き、あるものは巨大な戦列艦を、またあるものは神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦を思い浮かべる。
「戦艦はレイウォリアの沖合6キロくらいに停船した。そして、それは砲撃を放った。一隻の砲撃など、たかが知れていると思ったが、その威力は火神でも作り出せないのでは無いかと思うほどの威力があった。台場の魔導砲は一発で消滅した」
静まり返っていた酒場がその言葉で一気にざわつき始める。ありえない、いくらなんでもたかが一隻の船如きで台場の砲台が吹き飛んだなんて、信じられるはずがなかった。
「レイフォリアに対する無差別砲撃は、それはそれは怖かった。逃げて逃げて逃げたよ。やつらは、とてつもなく強い。たった一隻で、列強の首都を消滅させたのだ!!列強ムーもあれには負けるぞ。世界はグラ・バルカス帝国に支配されるだろう……」
「待て待て、レイフォルに勝ったのなら確かに強いだろうが、魔導超文明を持つ神聖ミリシアル帝国に勝てる訳がないだろう。格が違いすぎる」
「機械文明のムーも、ミリシアル帝国に準ずる強さがあるからなぁ。永世中立で平和主義だ何だと言っても、文明圏外の蛮国如きにムーがそうそう簡単に遅れをとるはずがないだろう」
酒場の面々は、そう言って彼の話の一部を否定する。
「その巨大戦艦みたいなのなら、俺も見たぞ」
と、その時。商人の誰かがそう言って話題を変えた。酒場の面々の目線が一気に彼に集中する。
「どういうことだ?詳しく教えてくれ」
そう言って、太った豪快な男はコインをその男に向かって弾いた。黒いローブをかぶったその男は、弾かれたコインを掴み取ると対価をもらって話を始める。
「東の果てに、ロウリア王国ってあっただろう?」
「東の蛮国か?あの、人口だけは超列強な国だろう?」
「ああ、俺が交易にいった時期に、隣のクワ・トイネ公国に喧嘩を売ったんだよ。亜人の殲滅を訴えてな」
「亜人の殲滅?無理に決まってるだろう。さすが蛮族の国!」
そう言って、商人の1人はロウリア王国を馬鹿にして罵倒した。実際、ミリシアル帝国は多民族国家であり、人間族だけでなくエルフやドワーフも多数いる。彼らはミリシアルの国中に根付いて人間族と共存しているので、彼らを殲滅しようとなんて思わない。
「それでな、ここからが本題だ。その戦争に神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上って国が参戦してきたんだ。でも、ロウリア王国はロデニウス大陸ではそこそこの大国だし、そんな新興国家如きに負けることはないだろうとみんな思っていたんだ。けれど、それは間違いだった」
それを聞いて、皆がゴクリと唾を飲む。
「ある日、ロウリアの王都にいた俺の上空に、大量のワイバーンたちが群れて飛び始めたんだ。おそらく、北の港あたりが奇襲されたのだとみんな思っていたけれど、それは違った。東の空から、オオオンって甲高い音を鳴らしながら何が飛んできたんだ。何だと思う?飛行機械だよ、青と灰色の見た目をした立派な飛行機械たちがワイバーンたちを狩って狩って狩りまくって全滅させたんだ」
「ひ、飛行機械だと!?」
「嘘だ!飛行機械は列強のムーにしか作れなかった筈だぞ!」
「ああ、俺もそう思って何度も頬をつねったよ。だけれど、それは消えなかった。その中でも、あの海猫のマークをつけた奴はすごかった。たった一機で何十ものワイバーンたちを喰らい尽くして叩き落としていった。おそらく空であいつに勝てる奴はいないと見えるね」
「そんなことより、巨大戦艦の話はどうなった?」
面白い話ではあるが、少々無秩序である。
「ああ、ワイバーンが全滅させられた次の日、それは現れた。その日の夜の明け方、突然爆発音が聞こえて俺は飛び起きた。そして、宿の窓から外を眺めてみたら、そこには巨大な飛空船たちが空を支配していたんだ!」
「今度は飛空船だと!?」
「それもただの飛空船じゃない、あれは最早
「嘘だろ!?飛空船は鉄じゃ作れないし、砲なんて積めるわけがないだろう。何かも見間違いじゃ……」
「本当だ!その飛空戦艦たちは王都を包囲して、そのまま何日も事を構えた。そして、しばらくすると戦艦は立ち去っていった。その日、ロウリア王国はレヴァームと天ツ上に対して降伏したんだ。おそらく、あの巨大飛空戦艦の偉容に耐えきれなくなったんだろうよ」
「…………」
あまりにも無茶苦茶な話。その話に誰もがついていけず、判断材料がなくて会話がなくなる。飛行機械を持っていたというだけでも、ありえない話なのに巨大な飛空船、それも戦艦サイズのものを持っているとは俄かに信じられなかった。
「レヴァームと天ツ上は世界に名を轟かせると思う。いずれ、ミリシアルにも接触してくるかもな」
そう言って、彼は言葉を締めくくった。
「ま、まあ……グラ・バルカス帝国や神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上がいくら強かろうと、神聖ミリシアル帝国とは格が違うさ。絶対に勝てないよ!結局、中央世界はいつまでたっても安泰さ!古の魔帝が復活でもしない限りな……」
酔っ払いどもの気楽な世間話は夜更まで続いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
第二文明圏、列強国ムー。この国は、魔導文明が主流となっているこの世界において、ほぼ唯一と言っていい純粋な科学文明国家だ。科学技術に有用性を見出し、機械や科学技術の発展に力を注いでいる。
その国の情報分析課は、そんなムーの諜報機関であり、情報の分析を専門にしている部署である。しかし、彼らは一般軍人からは『何をやっているのか分からない部署』や『無意味な仕事をしている部署』と忌み嫌われ、腫れ物扱いされている。
それは故に、この世界の情勢から来るものだろう。この世界は国々の技術力に大きな隔たりが存在している、はたやロウリア王国のような文明圏外国や列強と呼ばれる教国。そしてムーやムーが仮想敵国にしている最強のミリシアル帝国など。
そのため、彼らにもこの世界の列強国ほどではないが無意識に他国を見下す意識が芽生えている。そのため、『情報などいらない、必要なのは軍事費である』と言わんばかりの風潮がムー軍には浸っている。
その中で、情報分析官にして技術士官であるマイラスは、レイフォリア襲撃の際に魔写された、グラ・バルカス帝国の超巨大戦艦『グレート・アトラスター』の写真を分析して、冷や汗をかいていた。
「まずいな……」
信じられないことだが、グラ・バルカス帝国はムーよりも科学技術が進んでいるのかもしれない。マイラスがムーの中で『逸材』と呼ばれている天才なだけではない。それだけ、この写真に写る戦艦は凄まじかったのだ。
例えばこの戦艦を我が国の最新鋭戦艦『ラ・カサミ級』と並べてみる。それだけでも、技術力の差がはっきりわかる。
戦艦『ラ・カサミ』
排水量約1万5000トン
全長131メートル
機関1万5000馬力
最大速力18ノット
兵装
主砲30.5センチ連装砲2基4門
副砲15.2センチ単装砲14門他
これぞムーが誇る最新鋭戦艦だ。戦列艦に搭載する砲の大きさの限界を突破するため、回転砲塔といった最新式の機構を採用している。これにより、30.5cmといった超巨大砲を搭載することが出来るようになり、いままでの戦列艦とは比べ物にならないほどの砲撃力を身につけた。まさに戦艦、軍艦の中の軍艦だ。
この船は中央世界、ミリシアル帝国の魔導戦艦とも互角かそれ以上に渡り合える実力を秘めている。レイフォルやパーパルディアの戦列艦に遅れを取らないのは言うまでもない、機械文明国であるムーは列強として別格であり、この世界で唯一ミリシアル帝国に近づけるとさえ言われている。
しかし、この船はラ・カサミを上回る。
まず大きさ、この戦艦グレート・アトラスターの全長は目測で260メートル以上と推測されている。これだけの大きさの戦艦を作り出すことは、ムーには不可能だ。そこだけでも造船技術の歴然とした差を感じてしまう。
さらに主砲、全長が260メートル以上ともなれば基準排水量は七万トンにものぼると考えられる。その場合、この主砲は砲も38センチか、もしかしたら40センチくらいあるのではなかろうか?長砲身であり、おそらく命中精度でも負けているだろう。ラ・カサミは砲撃戦能力でも負けている事がよくわかる。
そして機関、この船は情報によると30ノットほどの速度で進んでいた。七万トンにもなる巨大な船を30ノットで航行させるには、単純計算で15万馬力くらい必要だ。
大きさ、砲撃、機関の製造技術だけでムーが負けている事がよくわかる。特に砲撃は砲口径の3乗に比例する。この船とラ・カサミがぶつかり合えば確実に負ける。奇跡でも起きない限り、叩き潰される。
「魔写を見ただけで負ける事が解るとは……これは……技術レベルが50年くらい開いていないか!?」
マイラスはそう言ってムーの行く末を案じる。さらに問題はある、同じグラ・バルカス帝国の兵器を写したもう一つの写真だった。高空の空にポツンと空飛ぶ一つの鋼鉄の塊、蒼々とした空に翼を広げて優雅に飛ぶそれは、ムー国では飛行機械と呼ばれている。
「て、低翼機……だと……」
写真に写っていたのはグラ・バルカスの主力戦闘機と思わしきもの、その名もアンタレスだ。
ムーにも戦闘機がある、それも立派な飛行機械だ。その名も『マリン』、二枚重の主翼からなる複葉機である。最高時速は時速380キロを超えており、あのワイバーンロードよりも勝る。機銃も7.7ミリ機銃を二丁備え付けれてあり、戦闘機としては申し分ないどころかムーではミリシアルの天の箱舟に次いで最強と言われている。
ムーのマリンが複葉機なのは、単純に翼の強度問題だ。エンジン出力の関係から飛行機械は基本布と木でできており、金属部品は骨組みだけだ。
そんな翼では一枚だけでは飛ぶ事ができない。重たい機体とエンジンを飛ばすには少しでも軽くある必要があるのだが、その分強度が減ってしまっている。技術力の限界もあり、マリンに搭載されているエンジンを超えるものは、ムーでは開発されていない。
二枚の主翼は空気抵抗を発生させ、機体の機動性に大きな悪影響を与えている。いずれはエンジン出力が大きくなり、機体は金属になり、主翼は一枚になると見積もられているが、それも50年ほど先と見られている。
しかし、この飛行機械はどうだろうか。このアンタレスはその50年先を行っていた。主翼は一枚で低翼、さらには翼からも棒状の機銃が見えている。つまりはこの機体の機銃は胴体と合わせて最低でも四丁という事になる。この機体、明らかにムーよりも優れている。
「航空機技術でも負けているとは……!」
マイラスはもうグラ・バルカス帝国のことについて考えるのも嫌になり、資料を机の端に放り投げた。机にもたれかかれば、ほんのりとした木の香りが鼻腔を貫く。うつ伏せになって寝ようとした時、反対側の机の上に新たな資料があるのを見つけた。
それは、ムーと距離が離れ過ぎているため脅威にならないと判断された資料だった。東の果てのロデニウス大陸、そこで起きたロデニウス戦役と呼ばれるロウリア王国とクワ・トイネ公国との戦争。誰もがロウリア王国の圧勝と捉えていたその戦争は、とある二つの国の参戦により覆った。
その名は神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上。
グラ・バルカス帝国と同じく謎の多い国家だ。彼の国は東の果てに急に現れたかと思うと、ロウリア王国を蹴散らしてわずか一ヶ月で降伏に追い込んだ。そのレヴァームの戦闘機である『アイレスV』の写真をマイラスは手に取った。
「こいつは……」
そこには、アンタレスと遜色ない立派な飛行機械が写っている。アンタレスと同じ低翼単発単葉単座。色はアンタレスと違って緑色ではなく青色に塗られているが、その造形はどことなく似ている。しかし、このアイレスVとやらの戦闘機の方がカウルが細く、洗練されているように見える。
「ん?」
と、マイラスの目が少しだけ見開いた。魔写はカラーで精度は機械式のアナログカメラよりも鮮明だ。そのため、この機体の両方の翼の端までよく見える。その先端から何やら不思議な出っ張りが飛び出している。
不思議に思い、ほかのアイレスVの写真を見比べる。するとその写真にもその出っ張りは写っていた。しかも、先ほどとは角度が若干違っているようにも見える。
「うーん……なんなんだこれ?」
答えのわからないまま、マイラスは次の写真に移る。それは、マイハーク港で撮られたという戦艦の写真だ。名を『エル・バステル』というらしい。
「こ……これは!?」
そこに映っていたものに、マイラスは驚愕した。目測で260メートル以上、そして砲口径40センチ以上の超巨大戦艦が
「なんなんだこれは!?」
ありえない、そんな感情がマイラスの頭を支配していっだ。しかし、疑うことはできない。魔写は合成や切り抜きができない代物で、それをする技術はどの国にもない。そもそも諜報員がそれをする利益はない。つまり、この空飛ぶ戦艦は本物だということだ。
「なんなんだ!?一体どういう原理で空を飛んでいる!?目測でグレート・アトラスターと同レベルの戦艦が空を飛んでいるなんてありえないぞ!!」
明らかに飛行力学を無視したものが空を飛んでいることに驚愕するマイラス。彼の憶測や苦悩はとある国が接触してくるまで続いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いよいよ出発だな」
「はい、これはレヴァームと天ツ上の威信をかけた計画です。そうそう簡単には失敗できません」
神聖レヴァーム皇国外務局の外交官アメル・ハルノートは艦隊司令官であるマルコス・ゲレロ中将にそう語った。
今回の艦隊派遣、レヴァームと天ツ上の威信がかかった一大計画だ。彼のいう通り絶対に失敗はできない、何としてでもこの世界の列強国と一国でも多く国交を結ばなければいけない。それが、この世界でレヴァームと天ツ上が生きていくための必要手段だからだ。
今回の艦隊には両国の外交官が乗り合わせている。アメルの他に帝政天ツ上外務省からは柳田、中井、御園、佐伯などの有能なメンバーが同行している。朝田とともに中央海戦争の停戦条約を結んだ凄腕の敏腕たちだ。
「行きましょう、新たな世界へ」
「ああ、全艦!速度40ノットで西へ迎え!」
こうして、新たな世界へ踏み出した神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上。彼らの歩む道は何処へやら、それは茨の道かそれとも……
コインを弾いて掴むってエモくないですか?