今回、20日以上投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
遅れた理由としては、実は電撃文庫の公募に応募するためのオリジナル小説を執筆しておりました。
自分が初めて書いたオリジナル小説で、現在半分ほど書き上げております。その執筆の為、本作の投稿が遅れてしまいました。
楽しみにしていた皆様には、誠に申し訳なく思っております。
ですが、自分も頑張って公募で良い結果を出せるように頑張っておりました。もちろん本作の更新も、しっかりと続けていきたいと思います。
第43話〜最後の交渉〜
アルタラスにおける多数のレヴァーム人と天ツ人の公開処刑は、すぐさま2カ国にて報道された。新聞、ラジオ、さらには普及し始めたばかりのカラーテレビに至るまで。様々な形で両国民に衝撃を与えた。
残忍な形で殺された50人のレヴァーム人と天ツ人、その数は決して少なくない。もはや人種など関係ない、誰であろうと殺されたのは何人もの同じ人間だからだ。
残忍な方法で無関係の人間を殺し、あまつさえそれが当然であるかのような態度を取ったパーパルディアの横暴さ。そしてレヴァームと天ツ上に突きつけられた理不尽な要求の数々。パーパルディアへの怒りは両国の間で爆発寸前であった。
『パーパルディアを許すな!!』
『横暴なパーパルディアを殲滅せよ!!』
『滅せよパーパルディア!!団結せよレヴァーム、天ツ上!!』
『悪党レミールに正義の鉄槌を!!』
両国の首都、東都とエスメラルダでは連日このような標語を掲げた数多くのデモ隊が松明を掲げて行進していた。
彼らの怒りは止まる事を知らず、ついには戦争を求める声まで出始めた。両国国民のパーパルディアへの怒りは、かつての世界で共に争い合ってきた両国の血を呼び覚ますのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「フッフッフッ……ハッハッハッハ!!」
レヴァームと天ツ上の外交官との会談を終えた次の日、レミールは王座の間で高らかに笑っていた。理由は言わずともがな、この状況があまりにも愉快だからだ。
自分に屈辱を与えたファナの配下の国民を、残酷な方法で殺してやった事。それが愉快で愉快でたまらないのだ、今思い出すだけでも笑いが止まらない。
「フッフッフッ……今こそ我がパーパルディアの力を見せつける時だ、今にみておれよ、ファナめ」
あの女狐を、死ぬよりも恐ろしい地獄の目に合わせる。それが、レミールのこの戦争の目的だ。奴らは今頃怒りに震えてそれを両国の首脳に報告しているだろうが、それで良いのだ。
戦争が起きれば、奴らを滅ぼす手立てが揃っている。アルタラスだって落とした今、パーパルディアに並ぶ国は第三文明圏にはない。奴らの飛空船だって、あの計画が実用化すれば屁でもない筈だ。勝てる、この戦争は必ずや勝てる。
「ハッハッハッハ!ハッハッハッハ!!」
そう思うだけで、高笑いが止まらない。レミールは何度も何度も、処刑の時の様子を思い浮かべながら笑っていた。
『レミール様、失礼いたします』
と、軽快な機械音と共にレミールの手元のリングが鳴った。これは携帯型の魔導通信機で、コストが高いが軍の高官やレミールのような重役が付けて連絡を取るものだ。
「何事だ?せっかく愉快な気分だったのに……」
『申し訳ありません、レヴァームと天ツ上の外交官が急遽話をしたいと訪問してまいりましたが、如何されますか?』
と、そこまで聞いてレミールは「ほう」とほくそ笑んだ。奴らめ、どうやらパーパルディアと戦争になるのを恐れて交渉をしにきたのか、面白い奴らだ。これは、あの要求を突きつけるのに最適な機会かもしれない。
「わかった、すぐ行く。準備しろ」
レミールはそう言って身支度をして王座の間を去っていった。こうして、最後の交渉が始まる。それがパーパルディアの運命を変えるとも知らずに。
◇◆◇◆◇◆◇◆
アメルと朝田、そして篠原は前回とは違う場所のソファに座って待っていた。今回は皇宮には赴かず、意図的に第一外務局を選んで来ていた。
と、そこへレミールとカイオスが入室してきた。今回は二人揃っての交渉であった。が、レミールはふんぞり返っているが、カイオスは真っ青であった。
「急な来訪だな。まぁ、国の命運がかかっているのだ、その気持ちも無理はなかろう。皇国は寛大だ、今回のアポなしの非礼は許して遣わそう」
一方のアメル達は、完全なる無表情であった。その目は冷たく、一切の感情も見せていない。
「はい、今回は貴国の要求に関する
「最後?まあ良い、して、あの要求についてだな。前回のはなかなかハードルが高すぎた、今回はこちらの要求を最低限に変えた。大人しく受け入れる事で君たちは今日中に国へ帰れる」
尊大な口調だった。アメルはレミールが敵チームの主導権を握っていることを期待しながら微笑んだ。
「我々もそれを期待します」
レミールの顔が綻ぶ。ずっとこの女が相手ならやりやすい、とアメルは心中呟く。彼女から飛び出してきたのは、大方予想通りのものだった。
「貴様らの皇女ファナ・レヴァームを我が国へ奴隷として差し出せ。さもなくば貴様らを一人残らず滅する。選択の余地はあるまい」
ふんぞり返る皇女レミール。その突き出た腹へ、アメルは微笑んだまま言葉の弾丸を撃ち込んだ。
「お断りします」
アメルはピシャリと、そう言い切った。
「なんだと?」
レミールはこめかみに血管を浮かべ、アメル達を睨みつける。アメルには冷ややかな笑みが、細い唇に浮かんでいた。
「あなた方は私どもの事を何も知らない。知ろうともしていない」
レミールとカイオスは黙り込む、特にレミールはこちらを睨みつけたままだった。
「ファナ・レヴァーム皇女は執政長官です、レヴァームの主なのです」
カイオスとレミールが表情を変えた。そして、お互いの顔を強張らせて顔を見合わせる。
──やはり何も知らない。
アメルは内心ほくそ笑んだ。アメルはパーパルディアがレヴァームと天ツ上について知ろうとしていない事をあらかじめ知っていた。そうでもしなければこんな馬鹿げたクーデターなど起こさないはずだ。
あらかじめレヴァームと天ツ上の実力を示したのにもかかわらず、それを受け付けなかったから、軍と民衆は蜂起を起こした。パーパルディアはそういう国だ。自分たちが全て正しく、自分たちが一番強いと思い込んでいる。アメルはそのパーパルディアの慢心を裏から突いたのだ。
「主を差し出せ、と言われて差し出す臣下は、残念ながら我々の世界には存在しません。あなた方がそうであるように、我々もまた誇りと名誉を尊ぶ民族であるのです」
沈黙が到来した、会議室が静まり返る。レミールの顔が徐々に硬直していく。その傍ら、カイオスの顔はすっかり青ざめていた。
「何故隠した?」
レミールの凄みを利かせた言葉が沈黙を押し除ける。
「そちらは当然、知っているものと思っておりました」
「バカけている!子供のやり口と一緒だ!!」
「私も驚いています。あなた方ほどの
レミールのこめかみに隠しようのない血管が浮かんだ。美しい顔は恐怖を思わせるほど歪み、先ほどの言葉の威圧と含めて普通の人間に本能的な恐怖を与えている。
だが、アメルらはそれに臆することはない。むしろ相手が自分の術中に落ちていることを確認して、微笑んだ。
「帰れっ!!貴様ら蛮族とまともに話し合おうと思っていた我らが間違っていた!礼儀知らずの蛮族ども、一人残らず殲滅してくれるわ!!」
激情家ほど扱いやすい交渉相手はいない。アメルは席を立つ。
「残念です。我々も話し合いで解決できると思っておりました。もはやこうなれば
アメルと朝田、そして篠原は全員席を立ち、そのまま立ち去っていく。隣のカイオスの表情が一気に青みがかかり、冷や汗を掻くのが見えた。
「お、お待ち下さい!語弊がありました!ファナ皇女を差し出せというのは、言葉のあやです!!」
アメルは冷たい表情を保ったまま振り返った。
「ほう、ここまで侮辱しておいて、一体どのようなあやがあるのでしょうか?」
「た、ただあなた方と親善を持ちたいという事です!そのための大使として、ファナ皇女殿に皇国に来ていただきたい!それだけです!」
方便だ、言葉とはすごく便利なものだとアメルはつくづくそう思う。先程はっきりと「奴隷」と言っておいて、今更そんな方便が通じると本気で思っているなら、こいつらは馬鹿だ。
「おい、カイオス!勝手なことを言うな!」
「ですが、レミール様!これでは交渉になりませんぞ!と、とにかく、我々はお互いについて知らなさすぎます。前向きに理解し合うべきです。席へお戻りください……」
アメルはしばらくカイオスを観察してから、踵を返して着席した。朝田と篠原もそれに続く。
「して、もう一度伺います。そちらの要求は?」
「フンッ、何度も言わせるな。皇女ファナを……」
「レミール様!」
「…………皇女ファナを親善大使としてこちらに招くことだ」
レミールはカイオスに促されて、渋々要求を変えた。
「あの時に流されたレヴァーム人、天ツ上人の血では不足だと?」
「ち、血を流したのはあなた方だけではありません……我が国も監察軍の東洋艦隊が全滅しております……」
「我々と親善を持ちたい、とお聞きしたばかりですが?」
「ぐっ……」
痛いところを突かれたのか、カイオスはそのまま黙ってしまった。
「くだらん、小手先のごまかしだっ!!さっさとあの女狐を差し出せ!!」
「レミール様、お待ち下さい!」
「私をあれだけ侮辱しておいて、ただで済むと思うなよ!!」
その言葉を受け、アメルの海緑色の瞳の奥が冷たく光った。
「侮辱?それは貴方の感情のことですか?」
「ああそうだ!あいつはルディアス様を惑わして、私から奪った!!あいつにはその罰を受けさせなければならんのだ!!!」
シンと、その場が静まり返った。カイオスはやってしまったと言う顔をして、青ざめていく。その向かい側で、アメルたちは顔を見合わせてにやけた。
「と、言うことは貴方は国の行く先を私情で決めたのですね?」
「!?」
「呆れました。あなた方ほどの列強が、まさか
「その程度だと……」
「?」
と、レミールはワナワナと震えて拳をテーブルに叩きつけた。
「貴様らに何が分かる!ルディアス様を奪われた私の感情を!!貴様ら如きに分かるのか!?」
激情するレミール。だが、アメルたちの表情は全く変わらない。
「…………分かるわけないでしょう?」
「!?」
「そんな愚かな嫉妬如きで、国の行く末を決めた愚か者の思考だなんて、分かるわけがありません」
「なんだと!?」
「ファナ皇女様は寛大な方でした。どれだけ自分が相手より優れていようと、相手に対する誠意は欠かしませんでした。それに引き換え、貴方は愚かだ…………男女平等が叫ばれるこのご時世にこのようなことを言うのは癪ですが、
その言葉を放つアメルの目は、鋭く光っていたに違いない。先ほどのレミールの凄みよりも、よっぽど威圧感がある。
「無駄かと思いますが、こちらの要求を提示しておきます」
そう言って、アメルはシミひとつない上質な紙の公文書をレミールに手渡した。
・現在アルタラスに展開する、すべての軍を即時撤退させること。
・アルタラス王国に対して損害を与えた為、公式に謝罪して賠償を行うこと。
・レヴァーム人、天ツ人に対する虐殺に関し、公式に謝罪して賠償を行うこと。
・今回の虐殺に関し、レヴァームと天ツ上の刑法に基づいて処罰を行う為、事件に関与した全ての者の身柄を引き渡すこと。
「こんなもの呑めるわけないだろう!!」
レミールは癇癪を起こしながら、上質な紙を真っ二つに破り捨てた。それだけでは飽き足らず、さらにその破片ですらビリビリに破り散らかす。散らばった紙の破片が、テーブルに散らばる。
「そうですか、それは残念です。では、代わりにこちらの文書を」
そう言ってアメルはレミールとカイオスに文書を渡した。それを見たカイオスの顔から、血の気が引いて真っ青になっていく。
「正式な宣戦布告文書です、我々レヴァームと天ツ上は、この場で正々堂々と宣戦布告すると宣言いたします。それでは」
それだけ告げると、アメル達三人は席を立ってスタスタと扉を開けて去っていった。
「…………戦だ」
「?」
「殲滅戦だ!レヴァームと天ツ上を滅ぼし、国民を全て殺せ!!私をここまでコケにした事、絶対に許すわけにはいかない!!」
そう言って、レミールは手元の魔導通信機のボタンを押す。
「アルデ!!」
『はい、なんでしょう?』
「殲滅戦だ!レヴァームと天ツ上を完膚なきまでに殲滅するぞ!準備を進めろ!!」
『かしこまりました、準備を始めます』
その傍ら、カイオスは冷や汗をかきながら会議室を飛び出していった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「呆れましたね」
会議室を出て、建物の廊下を歩きながら馬車へと向かうアメル達。その道中で朝田がそう言って心情を語った。
「ええ、自分たちの置かれている状況が見えないばかりか、私情であの要求を突きつけるとは。国家の風上にも置けません」
アメルも思わず、率直な感想を述べる。今回の交渉、はっきり言って無駄な時間だった。だが、収穫はある。レミールとか言う皇女は、私情でクーデターを起こしてレヴァーム人と天ツ人を虐殺した事が明らかになった。
この事実は、両国の戦争を求める声に拍車をかける事だろう。私情で家族を殺されたなら、もう容赦はいらない。やりたい放題だ。
「アメル殿!朝田殿!!」
と、不意に自分たちの後ろから呼び止める声が聞こえた。連れてきた護衛が身構える、今や皇国は完全な敵国なのだ、過激な思想の人物がいてもおかしくはない。
が、警戒するアメル達はその呼び止めた人物の姿を見て拍子抜けした。その顔は、パーパルティア皇国第3外務局局長の顔だったからだ。
「カイオス殿ですか?申し訳ありませんが、レヴァームと天ツ上は貴国と戦争状態に突入しいます。もう申し上げることは何もありません、失礼します」
「待ってくれ!今後戦争がどのように推移するにせよ、双方に話し合いの窓口が全くないのは不幸なことだ。せめて、私と貴国らだけでも連絡手段を確保しておきたい」
そう言って、カイオスは数字が羅列された小さな紙をアメルに渡した。
「私の魔信のチャンネルだ、魔信はいつでも空けておく」
「正気ですか?貴国のことです、上に知られたら貴方もただでは済みませんよ?」
「ああ、ただでは済まないだろうな。だが、貴国は
「!?」
「皇族の親衛隊には、私の息がかかっている者が何人もいる。通信機を設置するだけ、貴国にとっても悪い取引ではないと思うが」
「なるほど、理解しました。上に報告しておきます、ありがとうございました」
「恩に着る……!」
そこまで言って、アメルは廊下を歩き始めた。最後に、優しげな表情でカイオスに笑って見せて。そこまで見て、カイオスは安堵からその場でへたり込んでしまった。
カイオスの屋敷は皇都の外れにあり、海に面している。敷地も広大であったため、何をするにも都合が良かった。後日、カイオスだけが知る隠し部屋に、レヴァームの潜水艦で通信機と発電機が秘密裏に運ばれ、設置された。
原作とある飛空士シリーズを見ている方はわかると思いますが、今回の交渉シーンは「恋歌」の交渉シーンを参考、というよりパロディしました。とある飛空士シリーズ繋がりなので、いいよね……?
ついでにアークナイツも始めました。
アンセルくん可愛い……早く着せ替えしたい……
それと、次回の投稿は書き溜めをしておきたいので遅れます。
申し訳ございません、全てが整い次第投稿したいと思います。