とある飛空士への召喚録   作:創作家ZERO零

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ここからは閑章でございます。ところで私、グラ・カバル=カルロ・レヴァーム説を思いついたのです。

○根拠その1『皇族の皇太子』
両方ともグ帝とレ皇の皇太子である。

○根拠その2『バカ』
・グラ・カバル
最前線の最前線のバルクルス基地に周囲の反対を押し切って赴き、結果日本に囚われる。

・カルロ・レヴァーム
相当な愚か者。極秘の海猫作戦なのに通信をよこして海猫作戦の所在がバレてしまう原因となった。波佐見から「前代未聞の愚か者」と言われている。


こりゃ……生まれ変わりなんじゃ……


閑章《エスペラント事変編》
間章第1話〜新たなる外交〜


「はぁ……ようやく終わったわね……」

 

 

1週間続いたエスメラルダ会議が終結し、やっと一段落付けるとため息をつくファナ・レヴァーム。彼女の疲労はすでに限界近くに達しており、彼女の周りを歩む周りの外交官にも疲れが見える。

 

 

「これが終われば、後は先進国11カ国会議の準備です。頑張りましょう」

「はい……そうですね。先進国11カ国会議は2年後、準備期間に色々こなさなければ」

 

 

先進国11カ国会議の事は、ミリシアルから直々に伝えられていた。開催までは後2年近くあるので、その間に色々こなす必要がある。

 

 

「長官、お疲れの所申し訳ありませんが、お一つ報告がございます」

 

 

会議室にまで行くまでの廊下で、ナミッツ提督が合流してファナに話しかける。本当はこれから休む所だったのだが、公務なら仕方がないと割り切ってファナはナミッツの報告を聞く事にした。

 

 

「……詳しいことは会議室でお聞きします、そちらに集合で」

「はい、分かりました」

 

 

ファナは一旦休憩に入り、簡単な食事を済ませて休憩を挟むと、再び公務に戻っていく。エスメラルダの会議室に集まると、そこには軍の高官だけでなく各種大臣達が集まっていた。その事に少しだけ疑問を抱えながらも、ファナは長官の席に座る。

 

 

「まず初めに長官、天ツ上の第二使節団艦隊が天ツ上本土に帰還しました。今回は、その報告でございます」

 

 

第二使節団艦隊、たしか天ツ上がパーパルディア皇国戦の間に、東回りでフィルアデス大陸やグラメウス大陸を回っていった艦隊だった。

 

 

「何か急務の事態でも?」

 

 

ファナは軍の高官や各種大臣をこの場に集めている事を疑問に思い、思わず質問してみた。

 

 

「はい、その通りです。まずは皆様にご質問があるのですが、『アニュンリール皇国』と言う国をご存知でしょうか?」

「?」

 

 

会議の参加者が全員顔を見合わせ、なんの事かと疑問を持った。

 

 

「今回の件は、アニュンリール皇国についての件です。アニュンリール皇国は、南方世界を治める国家で、文明圏外国でこそあれ、広大な土地を支配していることから先進11ヵ国会議に招かれたいたそうです」

「その国が、一体どうしたのだね?」

 

 

思わず、マクセルが質問する。

 

 

「……まずは、こちらの写真をご覧ください」

 

 

そう言って、ナミッツはファナ達全員に資料を配る。ファナはその資料を読むために眼鏡をかける。ファナは最近執務が激化しているため目が悪くなっている、そのため眼鏡をかけるようになったのだ。

 

その資料には、カラー写真で発展した街の写真が貼られている。その街はかなり発展していて、ミリシアルのルーンポリスもかくやと言う規模である。

 

 

「この写真は……?」

「この写真は、アニュンリール皇国の首都『皇都マギカレギア』です」

「「「「「え!?」」」」」

 

 

ナミッツのその言葉に、会議室の全員がギョッとして振り返った。彼らの反応は、最もな反応だろう。先程ナミッツが、「アニュンリール皇国は文明圏外のカテゴリーに入る程度の国力」だと言った。

 

しかし、この写真に写る都市はどうだろうか? 高いビルが立ち並び、港にはクレーンも沢山ある。夜の写真も煌びやかで、どう見ても電気などが通っている。

 

 

「この写真は、レヴァーム海軍のデル・ガラパゴス級潜水艦が潜水中に撮影した写真になります」

「馬鹿な……よく見ると魔導戦艦まであるじゃないか……」

「…………君はさっきアニュンリール皇国は文明圏外だと言っただろう? それなのにこれは一体どう言う事だね?」

 

 

マクセルの質問に、ナミッツは臆する事なく答える。

 

 

「これは間違いなく、アニュンリール皇国で一番発展していました。アニュンリール皇国は、『ブシュパカ・ラタン』と呼ばれる島しか海外に開放していないらしいのですが、本国はさらに発展していると言う事です」

 

 

ナミッツは一呼吸置く。

 

 

「彼らは、何かを隠しております。これを前提に、今回の第二使節団艦隊の報告を行いたいと思います」

 

 

ファナ達に次の資料が配られる。ファナは眼鏡を揃えてその資料を読み始める。

 

 

「これは……」

 

 

そこには、アニュンリール皇国の陰謀の数々が描かれていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

時は遡る、中央暦1639年11月25日。

 

パーパルディアとの戦争が始まる前、まだ平和だった頃。帝政天ツ上の東都にて、その空が歓声に包まれていた。

 

空が影に包まれる。

 

盛大な歓声が東都全体を包み込む。空には、民衆の声をかき消すほどの巨大な影が君臨していた。上空を支配しているのは、巨大な飛空機械だった。

 

彼らはその名も第二使節団艦隊。そう、中央世界や第二文明圏に向かった第一使節団艦隊、その第二陣だ。

 

砲艦外交の一環として始まった、レヴァームと天ツ上の使節団艦隊計画。それはパーパルディアとのイザコザにより出航が11月にまで延期になったが、今度は天ツ上の番で始まった。

 

 

「いよいよ出発ですね」

「そうでございますな」

 

 

歓声を浴びる薩摩型飛空戦艦『敷島』の内部にて、美しい少年が一人佇んでいた。紫色の髪色を後ろで束ねた美しい少年である、彼は帝政天ツ上の皇族聖天殿下であった。

 

女性のような長い紫色のさらさらとした髪を後ろで結っているその姿は、女性にも見えるほど美しい。キリッとした背筋と身に羽織った軍服の姿には、見るものを男女問わず魅了するだろう。

 

 

「この計画は責任重大だ」

 

 

狭い艦橋の中では、他にも何人かの人間がいた。聖天が話しているのは、八神武親中将、笠井隆寛中将と田中一清少将だった。総司令官は八神中将、副司令兼戦艦艦隊の司令官が笠井中将、参謀長が田中少将である。

 

第二使節団艦隊編成

新鶴型飛空母艦『白鷹』『翔鷹』

薩摩型飛空戦艦『敷島』『日向』

紀伊型飛空戦艦『紀伊』『尾張』

阿蘇型巡空戦艦『阿蘇』『鶴見』

龍王型重巡空艦『九重』『尾鈴』『市房』『祇園』

高蔵型重巡空艦『足立』『田原』

筑後型軽巡空艦『吉野』『木津』

島風型高速駆逐艦『初明』『豊栄』『細雪』『淡雪』『五月雨』『高波』他4隻

梅型高速駆逐艦『竹』『松』『紫陽花』『朝顔』『向日葵』他25隻

補給艦16隻

試作型輸送艦8隻

 

 

「参ろう、新たなる世界へ」

「ええ」

 

 

聖天殿下は改めて八神中将にそう言った。そう、これは砲艦外交ではない。新たな世界へ歩む進行なのだ。

 

 

「艦長、出航だ」

「了解です、出航します」

 

 

『敷島』の艦長、瀬戸衛もそれに頷く。第二使節団艦隊の軌跡が、今始まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上のいる海域から北東方向に約3000kmの位置に、高さ約1500mの山が、まるでカルデラのようにリング状になっている。そして、そのリングの内側には内海が広がっている。

 

そしてそのリング状の山の内側からさらに100km北東の位置に、天ツ上のある東方大陸の半分ほどの大きさの島があった。

 

・カルアミーク王国

・ポウシュ国

・スーワイ共和国

 

ここにはこの3国が存在する。その島は海岸が無く、島の全周が絶壁の崖である。彼らは外の世界には何もいないと考えており、世界は自分たちの狭い空間だけだと思っていた。

 

カルアミーク王国の王都アルクール、ウイスーク公爵家。

 

王国の3大諸侯、建国時に大きな功績をあげたウイスーク公爵家、その大きな屋敷の中で、1人の女が本を読んでいた。

 

本の名前は『英雄の伝説』。

 

数々の英雄伝説が書かれた本、主だった内容な鉄の竜に乗った騎士が数々の王国を助けていく物語だ。その女性、20歳になったばかりのエネシーはハマっていた。

 

 

「エネシー、朝ごはんの時間よ!!早く降りて来なさい」

「はーい」

 

 

エネシーは、食事後にまた読もうと思い、本をベッドの上に置き、食堂に向かった。いつもの朝食が始まった。

 

 

「エネシー、あなた小さい子が読むような本ばかり読んでないで、彼氏の1人でも見つけて来たらどうだい?もう20歳にもなるのだから」

 

 

母のニッカが痛いところをついてくる。母の言う通り、20歳になってもエネシーは彼氏ができておらず、このままでは行き遅れになる可能性があった。

 

 

「母さん、エネシーに彼氏はまだ早いよ」

 

 

エネシーの父、ウイスーク公爵は娘を庇う。

 

 

「早いもんですか!女盛りの時期に男が出来なかったら、男なんて一生出来やしないよ。ちょうど1カ月後に、王国建国記念祭りがあるでしょう?カルアミーク王国の1大イベントよ。一緒に行けるような男はいないの?」

「うん、いないよ。」

 

 

エネシーは静かに答える。母に言った通り、エネシーには家柄の関係で、そのような幼なじみや友人もいなかった。

 

 

「いないなら、建国記念祭で見つけておいで!」

「うーん、そういう出会いってなんだかなぁ」

「?」

「やっぱりこう……劇的な出会いがしたい!心が揺さぶられるような」

「あんた、劇みたいな事を言ってないで、現実を見なさいよ」

 

 

本音で話をする家族の会話がそこにはあった。

 

 

「そういえば……」

 

 

ウイスーク公爵が話に割って入る。

 

 

「最近霊峰ルードの火口付近に、魔物が集まっている事が確認されているんだ。王都からは遠いから問題は無いと思うが、念のために王都から勝手に出てはいけないよ。特にエネシー、気をつけなさい」

「はーい、ごちそうさま!」

 

 

エネシーは、自室に戻り、ベッドの上に置いてあった本を開く。その本、英雄の伝説は、今までにあった王国の歴史で様々な英雄的出来事が記されている。

 

中でもエネシーが好きだったのは、本の最後に記された預言者トドロークの預言、王国の危機について記された1文だった。本にはこうある。

 

『異界の魔獣現れ、王国に危機を及ぼさんとする時、天翔る魔物を操りし異国の騎士が現れ、盟約により王国のために立ち上がる。王国は建国以来の危機に見舞われるだろう。異国の騎士の導きにより、王国は救われるだろう』

 

良く意味の解らない文章であるため、一般的にはとんでも予言者として通っていたが、エネシーは信じていた。

 

 

「私の……運命の人は、きっとこの騎士様よ……王国が危機になるのは困るけど、必ず私のナイトは現れる!!」

 

 

エネシーは少し邪気の含んだ笑顔で本を閉じた。

 


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