とある飛空士への召喚録   作:創作家ZERO零

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今更ながら、ジャスティードを女体化することを考えてしまった……もし意味があったら、話を葬ってやってみたいかも。

それから、エスペラント王国の技術力でプレス機械って作れそうですかね? もし作れたら、サブマシンガンなどもエスペラント王国内で制作できるので、幅が広がりそうなんです。セイに頼めば、初期のプレス機械くらいなら作れそうなのですが、いかがでしょうか?


閑章第13話〜救国者の戦い〜

 

 

 

「伝令ッ─! 伝令ッ──!!」

 

 

と、岡達が話し合っている時に、一頭の馬が駆け出してきた。それは、岡がちょうどバラバラに分解していた九式自動小銃とマグナム拳銃を組み立て直し、念のためにフル装填のマガジンを装着した時のことだった。

 

 

「何事か!?」

「サフィーネ様! 騎士ジャスティード様! 南門に魔獣の襲撃です!」

「何!? 数は!!」

「見張員からはゴブリン200、オーク10、オークキング2に黒騎士1を確認したと!」

「お、オークキングと黒騎士だと!?」

 

 

報告を聞いて怯むジャスティードに対し、サフィーネとサーシャは跳ねるように走り出した。

 

 

『こちらサフィーネ! 南門防衛隊遊撃隊第五小隊! 出撃状況は──』

 

 

魔法通信で基地と連絡を取り合い、2キロ離れた南門に急ぐサフィーネとサーシャ。その心には焦りが満ちていた。ゴブリンは数の問題なだけで、200程度は大した脅威にならない。オークだって兵が連携すればなんとかなる。

 

しかし、オークキングはオークよりも二回りほども大きく、知能もある。全身を鉄の鎧で覆い、弓矢や剣などを弾く。

 

そして黒騎士は別名『黒いオーガ』『漆黒の騎士』は忌まわしきその名が示す通り、体全てを漆黒の鎧で覆ったオーガだ。まだ一度も倒すことのできていないあの化け物が、この街に現れた。

 

 

「セイ様! お逃げください!!」

 

 

ジャスティードはノバールボ区憲兵隊、いわば市民を守る最後の砦である。要人の王宮科学院のセイの護衛についている以上、彼を死なせるわけにはいかない。

 

 

「うむ!」

「おい! お前も死にたくなかったら戻れ!」

 

 

岡にも声をかける。ジャスティードからしたら、彼にはむしろ死んで欲しいのだが、サフィーネが保護している以上、放置するわけにもいかない。

 

 

「すみません、先に行っててください!」

「は、はぁ!? 何をする気だ!」

 

 

岡は持っていた九式自動小銃を肩からかけ、並べられた装備を物色し始める。リボルバーに弾を込め、身軽な戦闘服を着込んで、天ツ上のサイドカーである2式側車付自動二輪車にまたがる。

 

 

「貴様! どさくさに紛れて我々を殺す気では──」

「自分はッ!! 人を守るために軍に入った人間ですッッ!!」

 

 

彼はキックスターを蹴り飛ばして火を入れ、スロットルを入れて勢いよくクラッチを繋いだ。そして、さながら馬にまたがって駆ける騎士のように、土を巻き上げて戦場に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「人を……守るために……」

 

 

岡の叫びを聞いてショックを受けるジャスティード。彼はエスペラント王国のマルナルボ区に流れを持つ貴族、ワイヴリュー家の次男である。

 

ジャスティードには二つの道があった。貴族としての文官の道、そして国を守るための騎士団の道。彼は後者を選んだ、そう、国を守るために。

 

そこで剣の腕を磨き、剣技の高みの象徴『剣聖』の称号を与えられた。やがて、ノバールボ区の憲兵隊に配属されることになる。

 

そこで、運命の出会いを果たす。

 

エルフの少女、サフィーネ。騎士団病院に勤める医師バルサスの娘で、平民ではあるが、彼女がけが人を看病する姿を見た時、背筋に衝撃が走った。

 

──この殺伐とした世界からなんとしても彼女を守る。

 

ジャスティードはそう決心したが、彼女はまもなく騎士団に入隊した。そこでメキメキと力を付け、頭角を伸ばして今では遊撃隊の小隊長をしている。守ると誓ったはずなのに、逆に彼女に守られる格好だ。ジャスティードはそれを惨めに思っていた。

 

そんなある日、空から正体不明の物体が落ちてきた。中にはこの国では無いどこかの人間が多数乗っていて、唯一の生存者がサフィーネに助けられた。

 

捜査を一任され、腹立たしい気持ちで騎士団病院に行って事情聴取をしてみれば、エスペラント王国の外から来たなどと意味不明なことを言う男だった。しかし、そんな男をサフィーネが面倒を見ると言った。

 

サフィーネとその男が話す様子は何処か楽しげで、彼女が今まで男性とそんなふうに楽しげに話すことは今までなかった。それを知った途端、ジャスティードの中にこれまでに感じたことがないほどの、形容し難いどす黒い感情に包まれた。

 

嫉妬であった。

 

今日もその男は冴えないツラを下げ、この国の服装に身を包んでいる。受け答えもまともにできない様は、よく似合っていた。悪態が口に出そうなところを、サフィーネのために我慢してセイの話を聞いていた。

 

それによると、彼のいた国はエスペラント王国よりもはるかに進んだ技術を持っているらしい。それだけでも、エスペラント王国の騎士団であるジャスティードの信念が踏みにじられたかのようで苛々する。

 

そして今、魔獣の襲撃を受けている。襲撃の一報を聞いてサフィーネは飛んでいき、彼もまた自国の装備だという訳の分からない物を抱えて、鉄の馬に乗って走って行った。

 

人を守るために、危険を顧みずに死地に飛び込む。そんな無謀を自分は出来るだろうか。答えは否だ、騎士団に入った時も、サフィーネを初めて見た時も、その自信はなかった。

 

 

「──騎士殿、騎士殿!」

 

 

ジャスティードはセイに呼ばれ、我に返った。

 

 

「お、セイ様、すみません……早く避難しましょう、こんなところにいては……」

「我々も行くぞ! あの青年の戦いぶりを、この目に焼き付けるのだ!」

「ええっ!? ダメですよ! 危険です!」

「高い技術を持つ国の戦いを、我が国のためにもこの目で見なければならん!! ついてこないなら私だけで行く!」

 

 

セイが強引に押し切らんとする剣幕だったので、部下の学者だけを帰して、ジャスティード以下の憲兵三人でセイを護衛することになった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「サーシャ! やっと来たか! 急いでこの人に治癒魔法を掛けてやってくれ!」

「はい!」

 

 

戦場の後方に作られた野戦病院、そこではバルサスが既に戦闘で疲弊した兵士たちを治療していた。サーシャは駆けつけた直後から、息を整えつつ怪我人に治癒魔法を掛ける。

 

 

「vmtaiba……お願い……生きて……!」

 

 

淡い色の光に包まれ、片腕を骨折し、頭に大きな傷を負った兵士の傷が癒えていく。途中まで応急処置として直した後は、医学の知識で傷を治していく。

 

 

「サーシャ! 怪我人がどんどん運ばれてくる! 急いでくれ!」

「はい! 分かりました!」

 

 

怪我人はどんどん増えていく、中には欠損部位を負って重傷を患った物までいる。最初の患者を治療し、次に片腕を無くした人の治療を始める。

 

 

「腕がなくなってる……」

 

 

片腕は縛られて出血を抑えているが、このままでは失血死してしまう。さらには感染症の危険もあるため、サーシャは最後の手段を使う事にした。

 

 

「痛いだろうけど、我慢してね……」

 

 

サーシャは呪文を唱えて火属性の魔法を照らし、傷口を炙る。すると意識のある兵士の絶叫が響き渡り、激痛に耐えている様子が分かる。が、それでもサーシャは傷口を塞ぐためにそれをやめなかった。

 

 

「先生! また怪我人です!」

「くっ! これじゃ手に負えんぞ!!」

 

 

が、そうしている間にもまたも怪我人が運ばれてくる。明らかに医師たちのキャパシティを超えており、とても追いつけない。

 

 

「これじゃあ……南門まで……」

 

 

このままでは南門は落ち、犠牲者はさらに増えてしまう。人を守るため、助けるために魔道士になったサーシャにとっては、絶望感がのしかかる。

 

 

──神様……お願いです! 誰でもいいのでこの状況を打破できる救世主を! 遣わしてください!

 

 

サーシャはこの世の神様にそんな届かぬ願いを届けた。しかし、誰も現れない。何も起こらない。サーシャが絶望感に浸ろうとしたその時──

 

 

「おい! なんだあれ!?」

 

 

と、周りを警備していた兵士が北側を指差した。その方向に目を向ける、そこには生き物では無い何が、スタンバーロ区の南門に向かって猛スピードで突撃していた。

 

 

「あれは……」

 

 

今まで見たことの無い鉄の馬、それは馬よりも速いスピードで走り去り、土煙を上げて南門を突っ切って行った。その一瞬、馬に見慣れた誰かが跨っているのを見た。

 

 

「オカさん!?」

 

 

知り合いである岡は、そのまま南門を抜けてサフィーネが戦っている場所まで走って行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

──どうする? 勝手に戦っていいのか? 他国の問題で、いくら人を守るためとはいえ、上官からの命令もなしに……ああ、上官はもういないんだ……

 

 

2式側車付自動二輪車を跨っていた岡は、南門に到達するまでの短い時間で葛藤していた。『向日葵』の墜落から治療を受け、仲間の火葬を済ませ、今後のことを具体的に考える間もなく巻き込まれた戦い。それに勝手に参加していいのか気になった。

 

 

──俺は全責任を負わなくちゃいけない立場にある……だが、取れるのか? こんなデカイ責任を……

 

 

しかし、城門は既に開いており、エスペラント王国兵が戦場へと突撃しようとしている。もう、迷っている暇はない。

 

 

──少なくとも……助けてくれた人を見殺しになんてできない!

 

 

決意を固めた時、エスペラント兵の先頭が崩れた。バラバラになった人だったモノが宙を舞う。岡の耳にかすかに悲鳴が聞こえる。

 

目の前には、黒い鎧を着た化け物の残像が揺れる。大きすぎるハンマーを振り回し、兵士や騎士たちをなぎ倒しながら、最後尾まで一気に突っ切っている。

 

剣士たちの隊列後方左右に展開していた隊が、黒い魔獣の行手を遮ろうと動いた。その一団から手にとぶつかった小柄なエルフの少女が、巨大なハンマーに打ち払われる。

 

 

「あれはサフィーネさん!」

 

 

2式の速度を上げ、そのまま突撃する勢いで黒い騎士に向かう。

 

 

「避けろぉぉ────ッッ!!!」

 

 

その声に反応し、兵士たちが一斉に黒いオーガから身を引く。そしてそのオーガに向け、鉄の馬が追突した。

 

 

「グウゥ……ッ!」

 

 

かなりのスピードで追突され、オーガは身を投げ飛ばされる。岡はすぐさまバイクから飛び降り、受け身をとって着地する。そして、そのまま腰からコブラマグナムを取り出して頭に向けて発砲する。

 

 

「グォォォッ!!」

 

 

()()()()()()()()に一撃を喰らったオーガは、数発を撃ち込んだところでバタリと倒れた。もっと撃ち込むことを覚悟していたが、.357マグナム弾はやはり高威力だった。

 

 

「う……」

「「「うおおおおおおお────ッ!!」」」

 

 

誰も討ち取れなかった黒騎士を、奇妙な銃を携えた男が一人で倒した。

 

 

「誰だあいつ!!」

「黒騎士を倒しやがった! どんな魔法を使ったんだ!?」

 

 

エスペラント兵たちはその偉業を目の当たりにし、一瞬の静寂の後に歓声を上げた。

 

 

「お前ら、戦いは終わってないぞ! オークキングに向かえ!!」

「黒騎士さえ居なくなればこっちのもんだ!!」

 

 

急激に士気が高まったエスペラント兵達。魔獣達は黒騎士が倒されたことで怯んでいる隙に、オークキングは撤退しようとしたところを騎兵達に襲われて、後は蹂躙されるだけだった。

 

この日、エスペラント王国は重要な一勝を得ることができた。


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