信武side
信武「………」
水希「………」
信武「逃げられると思うなよ。お前には聞かなきゃならないことがあるんだからな」
水希「……わかった」
バツの悪そうな顔で俺を見る水希に釘を刺すと、観念したのか…水希はベンチの左端に寄り、ここに座ってと言わんばかりに促され右端に、互いが距離を取るように座った。
水希「もしかして、深祐さんから聞いたの? この3年間のことも全部…」
信武「あぁ、大体な。――それでだ……なんであの時、ブラザーバンドを切る必要があった?」
単刀直入に疑問をぶつけると、水希は顔を俯かせながら言いだす。
水希「…信武に、心配かけたくなかった…」
信武「……は?」
水希「…僕なりのケジメとして、皆を見つけるまでは会わないことにした。それが、信武の為になるかもって…思ってたの…」
信武「…なにが、…何が俺の為になるんだよ…」
水希「……」
信武「それを聞いて、少しでも納得するとでも思ったのかよ…」
的を得ない言い訳に…俺の腸は煮えくり返り、咄嗟に胸倉を掴みとる。
信武「ふざけんな!!! 散々黙っておいて、今更探したところで何になんだよ!!! あの事故がきっかけで…お袋も死んだんだぞ…。仮に救えたとして、親父にどう顔合わせりゃいいんだよ……」
水希「え……?」
――そんな事…聞いてない。
そう言いたそうな目で訴えかけるように見え、怒りは頂点に達した…。
信武「……その様子じゃ、なにも知らなかったんだな…。……そうだよな、…お前は昔から、自分のことで精一杯だったもんな? 「終わり良ければ全て良し」って言うように…自分さえ良けりゃ他はどうとでもなると思ってたんだろ!?」
水希「違う!…そんなこと…」
信武「嘘つけよ! じゃあ、この状況はなんだ? 自分勝手な判断で親父達を見捨てて、俺とも縁を切って、保身と言う名のぬるま湯に浸かってるだけじゃねーか!!」
水希「――んなこと…」
信武「わかってねぇだろ何も!! …お前が生きてると知ってから、どんな思いして過ごしたかも知らねぇ癖に。よくもそんなに、いけしゃあしゃあとしてられるな?!」
水希「………」
――必死に否定したと思えば、今度はだんまりかよ……。
ムシャクシャして仕方ないのは同じなのか…気づけばギリギリと歯ぎしりしていた。
水希「だったら…」
信武「…?」
水希「だったら…話したところで、アンタに何ができたの? 他の奴らみたいに黙って見ることしかできないだけだってのに!!」
信武「なんだと……!?」
リヴァイア『水希、お前…』
「黙ってて!」とトランサーから聞こえる声に、水希は猛反発する。
水希「…こっちだってもうウンザリだよ! 願い下げなんだよ! 大体何なの!? やれる事はしたってのに、人の気も知らないで偉そーにイチャモンばっか付けてさぁ? 好き勝手言っておいて、何もしない奴の言葉なんか聞くわけねぇだろ…。…せめて、同じ立場に立ってから文句言えってんだよっ!!!」
怒り任せに放った言葉は、俺の心を砕くに容易なものだった。
アホらしさに呆れ果てた俺は手を放し、右頬に一発…お見舞いしては、地面に蹲るバカを見下ろすのだった。
信武「俺、お前と一緒に居られたら、他は何も要らなかったんだぞ。…それでも、何一つ信じてくれないんだな…。…見損なったわ…」
水希「…だろうね。こんなクズ相手に…よく仲良くしてくれたなと思ったよ…」
立ち上がると同時にトランサーにカードを通し、辺り一帯が光に包まれ……収束した時には、いつか見た姿に変わっていた。
信武「……なぁ、水希。俺にも、その力を扱えれば、親父を助けに行ける思うか?」
一点を見つめたまま、水希は首を横に振った。
水希「……無理だよ。アンタの心が弱ければ、奴らの思う壺。洗脳されて暴君と化すだけ。――はっきり言って邪魔でしかない」
信武「なっ…!?」
顔を俺に向けた時の水希の顔は、涙で溢れていた。
水希「じゃあね、信武…。出来ればもう、二度と会わないようにしとくよ…」
信武「! おい待――てよ……」
水希の手を握るよりも先に、また…どこかへ消えてしまった。
別に、お前に責任取れとか言うつもりはないんだよ…。
俺はただ、理由もなしに居なくなってほしくなかっただけなんだよ…。なのに…!
――しのぶ〜! 帰ったらまたどっか遊びに行こ!
――あぁ。次会った時にな!
やりきれない気持ちに押し潰され、地面に崩れ落ちる。
信武「……やっとの思いで会えたってのに、なんでまた……俺を突き放そうとするんだよ…!」
――皆を助けだすまで、アンタとは会わない。…お願いだから、これ以上は関わらないで…
信武「…畜生ォォォォ―――――!!!」
上空。ウェーブロードにて。
リヴァイア『……こんなところで立ち止まっても、なんも意味ねぇぞ……』
水希「……わかってるよ、そんなことくらい……」
顔を俯かせ、自身の手を見つめた…。
水希「……"自分の得た力で大切なものを守るために戦う"…。そう決めたってのに、結局…空振りしまくって……もうほんと、何がしたいんだろうね…」
リヴァイア『………今日はもう休め。さすがの俺でも、波長が乱れまくってるのがわかる……』
水希「……………そうする」
――ブラザーとして、僕を止めるだと? 笑わせないでよ…。…所詮、『裏切りこそがこの世の本質』。僕にはもう、要らないものだよ…。
深祐さんが言った言葉。今なら…よく分かる。
あの人にとって、弟同然に大事な存在である信武を裏切ったから。きっと…そのことで怒ってたんだと思う。
信武の気持ち、理解したつもりでいた。
…でも、思い違いだった。
結局…目的の為にエゴを突き通すしか出来なくて、傷つけ、悲しませてしまうだけ…。
こんな……心の乾いた奴が親友だなんて…笑っちゃうよね。…幻滅するはずだよね。
でも、仕方ないって思ってる。
今更引き返せないんだって……そう割り切らないと、この先やってられないから。
だから…、
ごめんね……信武。