信武side
水希と別れて数分。
ベンチに座り込み、やるせなさに項垂れたままでいた。
やはり深祐の言う通り…
……それでも
信武「親父達は助けるから、今は関わんな……か…。あぁーくそっ! わけわかんねぇ!」
アイツも…強情なのは変わらないせいか、俺との絆を絶っておいて「助けに行く」とほざきやがった。
――あのバカ、真実を知るまでの間…どれだけ心細い思いしたと思ってんだ…。ふざけんなよ。
なんとも言えない歯痒さからイライラを振り払えず、粗雑に頭を掻きむしるしか出来なかった。
俺には…水希や深祐のように、戦う力はない。
信武「……俺だって、あんな力さえ手に入れば……今すぐにでも助けに行けるかもしれねぇってのに…!」
無力さに落胆するなか、突如として耳にする。
『お主、そこまでして力を欲するのか?』
…と。
信武「――!? 誰だっ!?」
立ち上がった途端、目の前にフヨフヨと浮かぶ何かが現れた。
白く…綿菓子のようにフワフワとしたシルエット。そしてその頭には、王冠らしきものを被っている。
とても…この世のものとは思えない。一目見るだけでそう感じた…。
??「…申し遅れた。余の名はクラウンじゃ。…よもや、王である余と波長が合う者がもう一人おったとはなぁ。数奇なことじゃわい…」
信武「何モンだテメェ…!」
見た目とは裏腹に、老人臭い口調で話すそれに唆される。
クラウン「お主に力を与えに来たんじゃ。今のままでは満足できんのだろう? ワシなら、お主の願いを叶えてやらんでもないぞ?」
一瞬、誘惑に乗せられそうになるも踏みとどまり、怒気を含んで言い放った。
信武「……お断りだね。だいたいそれを受け入れた所で、操られてハイ終わりなんだろ? だとしたら、俺に何のメリットもありゃしねぇよ…」
クラウン「良いのか? もしここで拒否すれば、お主が望む夢すら遠のいてしまうぞ?」
それでも食い下がるコイツに呆れて物も言えなくなるが、実際…コイツの言う通り、せっかくのチャンスを無駄にするも同然な話だ。
……ならば、利用してやる。騙されていようと…それで親父達を救えるのなら………何にだってなってやる!
ただ、感情任せになっても、コイツのペースに乗せられるだけ。咄嗟の判断により交渉に出る。
信武「一つだけ約束しろ。水希と戦う間は一切洗脳するな。じゃなきゃ、…俺の気が抑まらねんだよ…」
クラウン「…構わん。もし其奴に負けるようなら、さっさと乗り移ればよい話じゃ」
信武「上等だ。そん時はテメェの良いように使われてやるよ!」
俺は、王冠の紋章が描かれたカードを手に取り、いつか見聞きしたように…その言葉を発した。
信武「電波変換。宇田海 信武、オン・エア…」
そして、俺の体は光に包まれる。
クラウン「ククク……交渉成立じゃのぉ…」
信武「………」
力を取り込んだ際、身体の変化に違和感を覚えた。
肩や手足に重々しい装甲を纏っているにもかかわらず、普段と比べて何倍も軽い。
こんな力…俺たち人間が容易に扱って良いものなのか?と、寒気すら感じてしまいそうだった。
そう呆けている内に、左腕の手甲からクラウンが飛び出て来た。
クラウン「ふむ、中々悪くはないのぉ。お主の名を挙げるとするなら……【スカル・ヴァンキッシュ】が妥当じゃろうな…」
信武「なんだっていい…。これで、俺も…」
クラウン「……さて、お主の姿も拝見したことじゃ。早速、あの〈海原の――」
話の途中で変身を解く…。
信武「生憎と今は、そんな気分じゃねんだよ…。いつ、あのバカに灸を据えるか…。決めんのは俺の勝手だろ?」
クラウン「フン。つまらん男じゃ…」
信武「言ってろクソジジイ」
スカル・ヴァンキッシュ
電波変換時の名称。電気属性。
軍服を模した紺色のボディスーツと深緑のマントを着用し、そのうえ両手足に金の装甲を纏う。
ヘルメットは白骨化した頭蓋骨をモチーフとしており、目元を覆うバイザーも白く…牙を連想させるほど刺々しくなっている。