流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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流星のファイナライズの続きが見たいでござる。

※一部吐血描写あり。


21話 Farewell to dear friends

 

 

信武「―――来い…。〈カリブルヌス〉!!」

 

快晴である筈の空から雷が落ち、右手に集約。後に得物として顕わになり、信武はそれを固く握りしめる。

自分もすかさず身構えると、お互い睨み合う状態が続いた。

……緊張のせいか、息が詰まって仕方がない。

 

水希「………」

信武「………」

 

……ほんの数秒。間が空いたところで地を蹴り、剣と剣がぶつかり合うが、ある意味愚策かもしれない。

何せ…振り下ろした剣は受け止められ、あっさり弾かれるのだから、これだけで技量と経験の差があると痛感させられる。

やはり単純な力比べとなれば分が悪いか。

 

水希「―――〈クリスタルバレット〉!!」

 

後退する際…牽制として雹弾を放ったが、それでやられる程甘くはない。

信武は前進しながら弾き落とし、間合いを詰められた瞬間に剣戟を繰り出され、防御と回避に専念するほかなかった。

 

――…やりづらいな。

 

信武の(はや)さに辛うじて追いつけているけど、一撃が軽い癖して狙いが的確すぎるせいか、時間が経つにつれて浅い傷を負うが、隙を見ては剣をいなし、バックステップで後退した。

 

少し息が乱れるなか、常に仏頂面だった信武の表情が一層曇る。

 

信武「……理解できねぇな」

水希「何が?」

信武「『好き放題言うだけで、何もしない奴の言葉は聞かない』って話だ。お前だって大概当てはまってるようなもんだろ。今のお前を見てると、(てい)の良い言葉だけ並べて逃げてるとしか思えねぇよ……」

水希「わかってるよ……。だけど!」

信武「――じゃあ何で、すぐ助けに行かなかった? そのつもりならさっさと行動に移せただろ!

結局、単にやる気がないって思われるだけだろうが……」

水希「………」

 

そう簡単に行けたなら苦労はしないと反論したいが、信武の主張が正論である以上……ぐうの音も出やしない。

結局自分は、自分を偽る(正当化する)ことしかできない最低野郎だと、改めて思わされる。

 

信武「……つまりあれか? 好き放題やって、都合の悪いことは全部無視すりゃいいって魂胆か? だとしたら相当クズい思考してんな、お前……」

水希「――そりゃどうも。……捕縛せよ!」

信武「……!」

 

自分で撒いた種だからこそ、口論は無駄でしかない。

信武には悪いけど眠ってもらうしかないと思って、いつか言われた苦言を反芻(はんすう)しつつ捕らえた。

 

水希「……悪く思わないでよ? 他に方法が思いつかなかったんだからさ……」

信武「この野郎……!!」

 

無理やり引き剥がそうとする信武に構わず、息を吸い込み――

 

水希「〈ブレス・オブ・コキュートス〉!!!」

 

―― 一切の妥協もなしに、信武めがけて咆哮を放つ。

直接触れずとも、冷気によってウェーブロードは凍りついていたが、現実世界への影響は然程少なかった。

しかし……この技自体、元々の威力の高さから二次被害を視野に入れたら、尚のこと末恐ろしいと感じさせられる……。

 

被弾して、冷気の煙幕が晴れるまでの合間にそんなことを考えつつも、警戒を怠らないよう凝視する。

 

 

リヴァイア『……やったか?』

水希「いや……わからな…――!?」

 

ようやく煙幕が晴れたと思ったら、前に何かが阻まっていることに気づく。――どうやら見た感じ、円盤状の盾のようだ。

ひとりでに浮遊する盾が真っ二つに割れ、青い炎に包まれた髑髏の幽霊ごと消え去る。

 

そして案の定、()()()()()()()()()()()

 

水希「うそ…?! 全力で撃った筈なのに…!!」

信武「いやぁ…正直俺も後一歩遅れてたら危なかったわ〜。にしても凄まじい威力だったな…。どうでもいいけど」

 

不敵な笑みを浮かべながら、信武は鎖を断ち切る。

拘束が甘かった関係なしに予想外だと、驚きを隠せずにいた……。

 

信武「これではっきりした。やっぱお前じゃ駄目だ。……だからさ――今から殺してやるよ」

リヴァイア『水希、避けろぉ!!』

水希「え…? ――ぐぁっ!!?」

 

突然のことで混乱するが、右半身が痛む。

理由は後にわかった。

 

ハンマーを持った霊に打ち上げられたのだ……。

そして……槍、弓と、武装した幽霊達によって、ラリーの応酬みたく幾度となく追い詰められてしまう。

 

全身に痛みが走る頃に幽霊が消え、重力に任せるように落ちるその時だった。

 

信武「まだ終わってねぇぞ、水希ぃ…!」

 

憎悪で歪んだ信武が真上から現れ、雷を纏った剣を振り落とそうとした!

 

信武「〈インパルス・ブレード〉ォォ!!!!」

水希「――っ! 遮蔽、せよっ……!!」

 

回避するにも時間が足りず、防壁を張るために両手をかざすことしかできなかった。

魔法陣が白く光ると同時に水膜に覆われ――衝突。圧される勢いに負けじと食いしばった。

 

水希「く、ぉおぉぉ…っ!!」

 

いくら雷撃を消せるとは言え水膜は薄く、効力は付け焼き刃そのもの。

対して信武の放つ威力は凄まじく、恐らく〈ディザスター・クロール〉と同等と思える。

その証拠に、ピシリ…と悲鳴が上がりはじめる…。

 

水希「う……、…くっ……―――ああぁぁぁ!!!」

 

やがて破られ、猛スピードで墜落。

 

水希「――ゲホッ! ゲホッ! …うぇっ……」

 

背中に強い衝撃に受け、むせ返るように吐血した。

横向けて吐き出すも…口の中に鉄臭さが混じり、気持ち悪いことこの上ない…。

 

リヴァイア『おい…大丈夫か…?』

水希「――これが、平気に見える…?」

 

流石にダメージは大きく息も絶え絶えだったが、痛みに堪えて起き上がろうとするなか、一歩一歩…信武は踏みしめるよう迫りくるのだった。

 

信武「ザマァねーな、ある程度加減してやったってのによぉ……。

ほんっと笑えるわ。お前みたいなヤツがあの計画に同行できるほど……立案者はさぞ盲目なんだろうな?」

水希「くっ……」

 

信武は全くの真顔で淡々と呟く。

 

――まだ、終わっちゃいないんだ。…こんなところで、倒れて…たまるかっ……!!

 

必死の形相で睨みつけるも、信武は憐れむどころか、心底どうでもよさそうに剣を突きつけるのだった。

 

信武「長く戦ってきた以上…流石のお前でも判るだろ? 単純な力量差と相性の悪さに加え、リアルでも剣の扱いには慣れてる。

この時点で負けは確定してんだよ…」

水希「…ウチはただ…信武に…」

 

遮るよう舌打ちをかまし、眉間に皺を寄せて睨んだ。

 

信武「まだ言うのかよ…。こうしてモタモタしてるせいでもう手遅れかもしれねぇんだぞ! よくも半端な覚悟で護衛しようと思ったな!! 笑えねぇんだよクソがっ!!」

水希「しのぶ……」

 

手に持った剣を両手に握りなおし、高く振り上げる。

その目は獲物を狩らんとばかりに血走らせており、これから何をされるのか…想像がつく。

リヴァイアは逃げろと叫ぶが、もう…ろくに足も動かせず万事休す。

 

――嗚呼。今から手酷く嬲られるんだろうな。

 

今までのツケが回っただけの事。いつかこうなるとは思ってたけど、やっぱり怖い。

恐怖に竦むまま俯けた。

 

水希「ごめん…。最期まで、迷惑かけて…」

信武「……安心しろ。お前の意志は継がせてやるよ。俺が今まで受けた苦痛……そして、お前の抱える…無念を晴らせなかった悔しさを、全部…!――――その胸に刻みこんで死ねぇ!!!!」

リヴァイア『みずきぃいぃいいい!!!!』

 

目を瞑り、そのまま剣を振り下ろされると思った次の瞬間…。甲高い金属音に鼓膜を打たれた。

 

信武「なにっ…!?」

 

突然のことで戦慄する信武に続き、目を開けると……信武の振るった剣を素手ひとつでせき止める()があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿は間違いなく

 

水希「――レティ!?」

リヴァイア「お前、いつの間に!?」

レティ「……この子は私の計画に必要な存在なの。生憎とまだ、死なせる訳にはいかないのよ…」

 

そう言い放つと、信武が掴んでいた剣ごと片腕のみで押し退けさせた。

軽く数メートルは飛ばされるくらいなので、あんなバカ力で殴り倒されたとしたら一溜りもないだろう。

考えただけでも背筋が凍りつき、信武も見開いて動揺していた。

 

しばらく固まっていると、レティはこちらに振り向く。

 

レティ「早く逃げなさい。どの道、今のアンタじゃ太刀打ちできないでしょう?」

リヴァイア「っ、…礼は後だ!」

 

リヴァイアに抱きかかえられ、戦線離脱。

 

信武「…! 待ちやが…」

 

慌てて追おうとするも、ノイズゲートから大量のメットリオが飛び出て、信武の前に立ちはだかろうとする。

 

信武「退()けオラァ!!!」

 

瞬時に雷撃を浴びせ、全滅させるも…

 

信武「……しまった!? アイツは」

レティ「もう水希ならどっか行ったわよ」

信武「ッ!……クソっ…」

 

完全に見失い…苛立ちを隠せず歯ぎしりするが、レティにとっては、さして気にすることでもなかったようだ。

 

レティ「でも驚いた…。まさか、意識を(たも)ったまま変身していられるなんてね…。――アンタの事情はあの子から直接聞かせて貰ったけど、今は関係ない。…どっちにしろ、誰にも水希達の邪魔はさせないわ…」

信武「そうかよ…。なら、一つだけ聞かせろ」

レティ「なにかしら?」

 

未だに飄々とするレティに苛立ったまま、一歩詰め寄り怒鳴り散らす。

 

信武「テメェが水希のこと操ってんのか!? 逆らえねぇよう影から仕組んで――」

レティ「誤解は止して頂戴な。あの子とは利害が一致した上で協力してるのよ? 第三者のアンタにどうこう言われる筋合いはないの。分かったらさっさと失せなさい」

クラウン『……この女の言うとおりじゃ、信武。今は…』

信武「うるせぇ!! 邪魔するつもりならテメェをぶっ倒すまでだ!」

レティ「聞き分けのない子ね。ま、いっか…。殺すなって言われてるけど、ぶっちゃけ気絶させりゃいいだけだしね…」

 

空間を裂くようにゲートが現れ、そこから鋼一色の軍刀を取り出しては切っ先を信武へと向けた。

 

レティ「精々、後悔しなさいな…」

信武「――ほざけぇ!!」

 

そうして、容赦の欠片のない殺し合いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、僕達は…

 

 

 

 

 

水希「……どうしよ、リヴァイあ…。アイツに、信武に……嫌われた…。もう、これからどうすりゃいいの……」

 

抱きかかえられたままウェーブロードを走るなか、色々と耐えきれなくなり…泣き顔を見られまいと胸元にしがみついた。

 

リヴァイア「……心配すんな。たとえ周りが敵だらけでも…俺がいる…。だから…」

水希「もうやだ…。たすけて、だいごさん……!」

リヴァイア「……水希…」

 

いるはずの無い彼に助けを乞うことしか出来ず、ただただ咽び泣くばかりだった…。

 




 
今回は珍しく、タイトルは英語でしたが
訳すと「親愛なる友人への別れ」となります。

W.mistさんの書く作品に感想を書いて思ったのですが、
スバルは「たった一人では力は及ばないけれど、たくさんの人間の手を借りて自己を強くする」ことが出来たから、困難を乗り越えるだけの精神力はあった。

逆に水希は、スバルと同様の恩恵を受けても「失えば、結局は無意味になるだけ」と思い込んでるから弱いんじゃないかなって…。
考えても、もう遅いんですけどね…。
なんというか…今の自分に刺さりまくりな気がします。

三章に続き…四章は、あまり救えない結果に終わりましたが、水希と信武くん…二人の今後の行く末を見届けて頂ければ幸いです。

次回、22話で信武編は終わりです。
活動報告にも記載しましたが、今月辺りで執筆と投稿を一時休止させて頂きます。

それでは!

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