流星のファイナライズの続きが見たいでござる。
※一部吐血描写あり。
信武「―――来い…。〈カリブルヌス〉!!」
快晴である筈の空から雷が落ち、右手に集約。後に得物として顕わになり、信武はそれを固く握りしめる。
自分もすかさず身構えると、お互い睨み合う状態が続いた。
……緊張のせいか、息が詰まって仕方がない。
水希「………」
信武「………」
……ほんの数秒。間が空いたところで地を蹴り、剣と剣がぶつかり合うが、ある意味愚策かもしれない。
何せ…振り下ろした剣は受け止められ、あっさり弾かれるのだから、これだけで技量と経験の差があると痛感させられる。
やはり単純な力比べとなれば分が悪いか。
水希「―――〈クリスタルバレット〉!!」
後退する際…牽制として雹弾を放ったが、それでやられる程甘くはない。
信武は前進しながら弾き落とし、間合いを詰められた瞬間に剣戟を繰り出され、防御と回避に専念するほかなかった。
――…やりづらいな。
信武の
少し息が乱れるなか、常に仏頂面だった信武の表情が一層曇る。
信武「……理解できねぇな」
水希「何が?」
信武「『好き放題言うだけで、何もしない奴の言葉は聞かない』って話だ。お前だって大概当てはまってるようなもんだろ。今のお前を見てると、
水希「わかってるよ……。だけど!」
信武「――じゃあ何で、すぐ助けに行かなかった? そのつもりならさっさと行動に移せただろ!
結局、単にやる気がないって思われるだけだろうが……」
水希「………」
そう簡単に行けたなら苦労はしないと反論したいが、信武の主張が正論である以上……ぐうの音も出やしない。
結局自分は、自分を
信武「……つまりあれか? 好き放題やって、都合の悪いことは全部無視すりゃいいって魂胆か? だとしたら相当クズい思考してんな、お前……」
水希「――そりゃどうも。……捕縛せよ!」
信武「……!」
自分で撒いた種だからこそ、口論は無駄でしかない。
信武には悪いけど眠ってもらうしかないと思って、いつか言われた苦言を
水希「……悪く思わないでよ? 他に方法が思いつかなかったんだからさ……」
信武「この野郎……!!」
無理やり引き剥がそうとする信武に構わず、息を吸い込み――
水希「〈ブレス・オブ・コキュートス〉!!!」
―― 一切の妥協もなしに、信武めがけて咆哮を放つ。
直接触れずとも、冷気によってウェーブロードは凍りついていたが、現実世界への影響は然程少なかった。
しかし……この技自体、元々の威力の高さから二次被害を視野に入れたら、尚のこと末恐ろしいと感じさせられる……。
被弾して、冷気の煙幕が晴れるまでの合間にそんなことを考えつつも、警戒を怠らないよう凝視する。
リヴァイア『……やったか?』
水希「いや……わからな…――!?」
ようやく煙幕が晴れたと思ったら、前に何かが阻まっていることに気づく。――どうやら見た感じ、円盤状の盾のようだ。
ひとりでに浮遊する盾が真っ二つに割れ、青い炎に包まれた髑髏の幽霊ごと消え去る。
そして案の定、
水希「うそ…?! 全力で撃った筈なのに…!!」
信武「いやぁ…正直俺も後一歩遅れてたら危なかったわ〜。にしても凄まじい威力だったな…。どうでもいいけど」
不敵な笑みを浮かべながら、信武は鎖を断ち切る。
拘束が甘かった関係なしに予想外だと、驚きを隠せずにいた……。
信武「これではっきりした。やっぱお前じゃ駄目だ。……だからさ――今から殺してやるよ」
リヴァイア『水希、避けろぉ!!』
水希「え…? ――ぐぁっ!!?」
突然のことで混乱するが、右半身が痛む。
理由は後にわかった。
ハンマーを持った霊に打ち上げられたのだ……。
そして……槍、弓と、武装した幽霊達によって、ラリーの応酬みたく幾度となく追い詰められてしまう。
全身に痛みが走る頃に幽霊が消え、重力に任せるように落ちるその時だった。
信武「まだ終わってねぇぞ、水希ぃ…!」
憎悪で歪んだ信武が真上から現れ、雷を纏った剣を振り落とそうとした!
信武「〈インパルス・ブレード〉ォォ!!!!」
水希「――っ! 遮蔽、せよっ……!!」
回避するにも時間が足りず、防壁を張るために両手をかざすことしかできなかった。
魔法陣が白く光ると同時に水膜に覆われ――衝突。圧される勢いに負けじと食いしばった。
水希「く、ぉおぉぉ…っ!!」
いくら雷撃を消せるとは言え水膜は薄く、効力は付け焼き刃そのもの。
対して信武の放つ威力は凄まじく、恐らく〈ディザスター・クロール〉と同等と思える。
その証拠に、ピシリ…と悲鳴が上がりはじめる…。
水希「う……、…くっ……―――ああぁぁぁ!!!」
やがて破られ、猛スピードで墜落。
水希「――ゲホッ! ゲホッ! …うぇっ……」
背中に強い衝撃に受け、むせ返るように吐血した。
横向けて吐き出すも…口の中に鉄臭さが混じり、気持ち悪いことこの上ない…。
リヴァイア『おい…大丈夫か…?』
水希「――これが、平気に見える…?」
流石にダメージは大きく息も絶え絶えだったが、痛みに堪えて起き上がろうとするなか、一歩一歩…信武は踏みしめるよう迫りくるのだった。
信武「ザマァねーな、ある程度加減してやったってのによぉ……。
ほんっと笑えるわ。お前みたいなヤツがあの計画に同行できるほど……立案者はさぞ盲目なんだろうな?」
水希「くっ……」
信武は全くの真顔で淡々と呟く。
――まだ、終わっちゃいないんだ。…こんなところで、倒れて…たまるかっ……!!
必死の形相で睨みつけるも、信武は憐れむどころか、心底どうでもよさそうに剣を突きつけるのだった。
信武「長く戦ってきた以上…流石のお前でも判るだろ? 単純な力量差と相性の悪さに加え、リアルでも剣の扱いには慣れてる。
この時点で負けは確定してんだよ…」
水希「…ウチはただ…信武に…」
遮るよう舌打ちをかまし、眉間に皺を寄せて睨んだ。
信武「まだ言うのかよ…。こうしてモタモタしてるせいでもう手遅れかもしれねぇんだぞ! よくも半端な覚悟で護衛しようと思ったな!! 笑えねぇんだよクソがっ!!」
水希「しのぶ……」
手に持った剣を両手に握りなおし、高く振り上げる。
その目は獲物を狩らんとばかりに血走らせており、これから何をされるのか…想像がつく。
リヴァイアは逃げろと叫ぶが、もう…ろくに足も動かせず万事休す。
――嗚呼。今から手酷く嬲られるんだろうな。
今までのツケが回っただけの事。いつかこうなるとは思ってたけど、やっぱり怖い。
恐怖に竦むまま俯けた。
水希「ごめん…。最期まで、迷惑かけて…」
信武「……安心しろ。お前の意志は継がせてやるよ。俺が今まで受けた苦痛……そして、お前の抱える…無念を晴らせなかった悔しさを、全部…!――――その胸に刻みこんで死ねぇ!!!!」
リヴァイア『みずきぃいぃいいい!!!!』
目を瞑り、そのまま剣を振り下ろされると思った次の瞬間…。甲高い金属音に鼓膜を打たれた。
信武「なにっ…!?」
突然のことで戦慄する信武に続き、目を開けると……信武の振るった剣を素手ひとつでせき止める
その姿は間違いなく
水希「――レティ!?」
リヴァイア「お前、いつの間に!?」
レティ「……この子は私の計画に必要な存在なの。生憎とまだ、死なせる訳にはいかないのよ…」
そう言い放つと、信武が掴んでいた剣ごと片腕のみで押し退けさせた。
軽く数メートルは飛ばされるくらいなので、あんなバカ力で殴り倒されたとしたら一溜りもないだろう。
考えただけでも背筋が凍りつき、信武も見開いて動揺していた。
しばらく固まっていると、レティはこちらに振り向く。
レティ「早く逃げなさい。どの道、今のアンタじゃ太刀打ちできないでしょう?」
リヴァイア「っ、…礼は後だ!」
リヴァイアに抱きかかえられ、戦線離脱。
信武「…! 待ちやが…」
慌てて追おうとするも、ノイズゲートから大量のメットリオが飛び出て、信武の前に立ちはだかろうとする。
信武「
瞬時に雷撃を浴びせ、全滅させるも…
信武「……しまった!? アイツは」
レティ「もう水希ならどっか行ったわよ」
信武「ッ!……クソっ…」
完全に見失い…苛立ちを隠せず歯ぎしりするが、レティにとっては、さして気にすることでもなかったようだ。
レティ「でも驚いた…。まさか、意識を
信武「そうかよ…。なら、一つだけ聞かせろ」
レティ「なにかしら?」
未だに飄々とするレティに苛立ったまま、一歩詰め寄り怒鳴り散らす。
信武「テメェが水希のこと操ってんのか!? 逆らえねぇよう影から仕組んで――」
レティ「誤解は止して頂戴な。あの子とは利害が一致した上で協力してるのよ? 第三者のアンタにどうこう言われる筋合いはないの。分かったらさっさと失せなさい」
クラウン『……この女の言うとおりじゃ、信武。今は…』
信武「うるせぇ!! 邪魔するつもりならテメェをぶっ倒すまでだ!」
レティ「聞き分けのない子ね。ま、いっか…。殺すなって言われてるけど、ぶっちゃけ気絶させりゃいいだけだしね…」
空間を裂くようにゲートが現れ、そこから鋼一色の軍刀を取り出しては切っ先を信武へと向けた。
レティ「精々、後悔しなさいな…」
信武「――ほざけぇ!!」
そうして、容赦の欠片のない殺し合いが始まろうとしていた。
その頃、僕達は…
水希「……どうしよ、リヴァイあ…。アイツに、信武に……嫌われた…。もう、これからどうすりゃいいの……」
抱きかかえられたままウェーブロードを走るなか、色々と耐えきれなくなり…泣き顔を見られまいと胸元にしがみついた。
リヴァイア「……心配すんな。たとえ周りが敵だらけでも…俺がいる…。だから…」
水希「もうやだ…。たすけて、だいごさん……!」
リヴァイア「……水希…」
いるはずの無い彼に助けを乞うことしか出来ず、ただただ咽び泣くばかりだった…。
今回は珍しく、タイトルは英語でしたが
訳すと「親愛なる友人への別れ」となります。
W.mistさんの書く作品に感想を書いて思ったのですが、
スバルは「たった一人では力は及ばないけれど、たくさんの人間の手を借りて自己を強くする」ことが出来たから、困難を乗り越えるだけの精神力はあった。
逆に水希は、スバルと同様の恩恵を受けても「失えば、結局は無意味になるだけ」と思い込んでるから弱いんじゃないかなって…。
考えても、もう遅いんですけどね…。
なんというか…今の自分に刺さりまくりな気がします。
三章に続き…四章は、あまり救えない結果に終わりましたが、水希と信武くん…二人の今後の行く末を見届けて頂ければ幸いです。
次回、22話で信武編は終わりです。
活動報告にも記載しましたが、今月辺りで執筆と投稿を一時休止させて頂きます。
それでは!