だけど過去最高に書けた気がする。
スバルside
4/21 pm 13:30
ミソラちゃんを家に匿ってから数時間が経つ…。
重苦しい状態が続くと思うと気が滅入り、お昼を食べた後、気分転換にとゲーム機とソフトをリビングに持って来るのだった。
持っているソフトのほとんどが兄さんからのプレゼントで、ジャンルは豊富そのもの。
二人でよく遊んでいたのもあり、今や僕にとっての宝物だ。
そして現在…
ミソラ「あぁ、もう! また負けた〜!」
みんな大好き【ダリ男かぁ〜と】で対戦したはいいものの…ほとんどが僕の圧勝で終わったが、余程の負けず嫌いなのか……もう10回以上も連戦していた。
スバル「…ん〜でも、さっきよりは上達したと思うよ?」
ミソラ「よく言うよ! 涼しい顔して余裕で勝っちゃうんだから。あぁもう悔しいぃ〜!」
咄嗟のフォローも効果なく、むくれたと思えば寝転がり、ギュっと丸まるよう縮こまってしまった。
何と言うか……忙しい子だ。
当時の僕も兄さんにボロ負けして泣きついた記憶しかなく、今思えば子供相手に容赦ねーなと苦笑混じりに呆れ果てるのだった。
ミソラ「よ〜し、もう一戦!」
スバル「え"っ? そ、そろそろ別のゲームに…」
ミソラ「やだっ!」
スバル「えぇ…」
勘弁してくれ…と眉がハの字に吊り下がりそうな時。
あかね「はいはい、盛り上がってるのは良いけど休憩は大事よ?」
取り分け用の小皿とフォークと一緒に、深皿に盛った苺がテーブルに置かれた途端ゴクリと喉を鳴らし、目線を苺の方へロックオンしだすミソラちゃん。
一方…僕は、注がれた麦茶を飲み干す。
苺と合うかはともかく、喉を潤せたので
機転を効かせた母さんマジGJ。
ミソラ「ちょっと聞きたいんだけどさ…」
スバル「?」
既に2、3個ほど食べてるミソラちゃんから、急に話を振られる。
ミソラ「お兄さんって、普段何してるの?」
一瞬、自分にだけ雷に打たれた気がした……と思ったが、母も同様らしい。
どう考えても地雷発言です。本当にありがとうございました。
スバル「ね、ねぇ、母さん…? 兄さんって今日、大学で講義…?があったっけ?」
何故だろう…。一見張り付くような笑顔で「こっちに振るんじゃねーよ!」と目配らせてる気がする。
あかね「……エェ、ソウヨ。確か今日は講義の後にアルバイトがアッタハズヨ。うん…」
若干片言じみていたがミソラちゃんは気に留めず、それどころか目を輝かせているではありませんかヤダー。
ミソラ「大学か〜、いいなぁ。オシャレしてる人多いだろうし、私なら…友達とカフェ行ってみたり…音楽仲間とバンドを組んでみたりして……いいなぁ」
なんということでしょう…。
あれやこれやと
僕も聞いてて、なんだかほっこりしちゃいます。
まぁ嘘だけどね。
本当は兄さん…最終学歴が中卒で、僕と同じヒキニートじみた生活を送っておったのです…。
って誰がヒキニートじゃ! 偶にだけどちゃんと出歩いとるわ! 最近になってだけども!
兄さんはどうなんだって? ……そりゃ兄さんは、必要以上に語らないから知らなかったんだもん! 僕な〜んも悪くないもん!(汗)
……いや、割とマジで家事するぐらいしか知らなかったんです。はい。
ミソラちゃんには悪いけど、素性がバレたら色々とまずいのだ。咄嗟の対応力に圧巻だよ。
母さんマジGJ。
妄想に浸るミソラちゃんを他所に、二人して親指を立て合うのだった。
そうこうしてるうちに戸の閉まる音がした。
あかね「あれ、もう帰ってきたのかしら?」
スバル「ちょっと見てくるよ」
様子見がてらリビングを出れば予想通り。
靴を脱ごうとする半ば、いつに無く落ち込んでいるのが目に見えた。
スバル「おかえり、兄さん」
水希「……ただいま」
スバル「どうだった? 宇田海さんは…」
見つかった?と聞く前に、兄さんは首を横に振る。
スバル「……そっか…」
――やっぱ、そう簡単には見つからないか…。
状況を理解した上で兄さんに提案を促す。
スバル「…思ったんだけどさ、もう…向こうから現れるまで待つしかないんじゃない?」
水希「……そうだね。この話はまた今度でいい? ちょっと…つかれた……」
疲弊しきったまま階段を上がる兄の背を呆然と眺めていると、ウォーロックが急に口を開けた。
ウォーロック『相当参ってるようだな。波長がありえねーくれぇに荒れまくってる…』
スバル「……わかるの?」
ウォーロック『あぁ。
スバル「兄さん……」
あかね「スバルー、水希もう帰ってきた?」
きりの良い所で母さんが現れるが、何やら買い物袋を肩に提げている様子…。
スバル「うん。…でも、しばらくはそっとしてあげた方がいいかも。なんか元気無いし…」
あかね「……そう。アンタが言うならそうしとく。母さん、これから買い出しに行くから、留守番よろしくね」
スーパーへ向かう母を見送った後、ひとまずリビングへと戻るのだった。
◆◆◆
ミソラside
pm 22:30
スバルくんの家に匿ってもらってからだいぶ経つ…。
お風呂を借りた後、ママさんが使っている部屋に居させてもらい、ベッドの上で横になっていた。
今の今までミュートに設定していたが、トランサーを開けば、着信履歴やメールの受信欄はマネージャーで埋め尽くされていた。
……正直、帰りたくない。
役職柄…人と触れ合う時間があろうと、プライベートとなれば話は別。
口煩いアイツと居るくらいなら、いっそ……
あかね「まだ起きてたのね」
ミソラ「ひゃい!!」
トランサーを覆い隠したまま振り返る。
あかね「全く…、夜ふかしは肌に悪いわよ」
ミソラ「ご、ごめんなさい……」
あかね「…やっぱり、マネージャーのことで気がかりなんでしょ?」
ミソラ「……はい…」
無論、悪い意味でだが肯定するほか無かった。
あかね「どうしても寝付けないなら……アイツには悪いけど、昔話でも聞かせましょうか」
そう言うとベッドにのしかかり、私の隣に寝転んだ。
あかね「……昼間、水希が普段何してるか…聞いてたわよね」
ミソラ「大学に通ってたって話…でしたっけ?」
あかね「そうなんだけど、アレね、実は嘘なのよ」
ミソラ「え…?」
まさかの事実に驚きを隠せず、目を見開く。
あかね「ごめんなさいね。本当はあの子…中卒で、スバルに寂しい思いをさせない様にって、
ミソラ「……どうして私に…」
あかね「ん〜、なんて言うか……今の貴女を見てると、昔のスバルにそっくりでさ…」
ミソラ「昔の…スバルくん……?」
気がつけば、話に夢中になっていた。
あかね「三年前…。私の夫である大吾さんが、ある日を境に行方がわからなくなってね…。スバルにとって…受け容れたくないことだから、その日以来……人と関わろうとしなくなったの」
ミソラ「……そんな事が」
あかね「うん。その時…水希が居てくれたからこそ、スバルは徐々に笑顔を取り戻して行った…。水希からしたら、大吾さんの代わりになれないみたいだけどね……」
それでも、誰かの為に頑張れるのは凄いと思う。
私も…大好きなママの為にと歌い続けて来たけど…それすら霞むほどだ。
正直、恵まれた環境にいるスバルくんが羨ましいと思えてしまう。
あかね「……ミソラちゃんはまだ若いから、やり直すチャンスは幾らでもあるわ」
ミソラ「…?」
黙り込んでた矢先、突然喋りだされて困惑するなか、頭を撫でられた。
あかね「どんなに頑張っても、投げ出すほど嫌になった時こそ…一度だけ手放してみてもいいと思うよ。そこから自分を見つめ直して、本当にやりたい事を見つけるまで、ひたすら探し続ければ良い…」
ミソラ「……!」
あかね「……ごめんね。貴女がどれだけ辛い思いしてきたか…少ししか知れなかったから、こんな事言う資格なんて無いと思う」
ミソラ「…それでも…嬉しいです…」
あかね「そう。なら良かった…」
今までは周りからの期待とアイツからの罵詈雑言の嵐だったから、こうして面と見てくれる人がいると思うと安心するのだ。
……そうか、これが人の温もりか…。
失いかけたそれが思い出され…胸がポカポカと温まり、凍りついた筈の心が溶け……癒えて行く。
あかね「…もう寝ましょうか?」
ミソラ「はい…」
灯りが消された後…互いにおやすみの挨拶を交わし、眠りにつくのだった……。
そして翌朝…。
いつもと変わらぬ時間に目を覚ます。
……と言っても大抵、5時より前に起きる習慣が身についており、ママさんは未だ…傍らで寝息を立てていた。
ミソラ「……」
物音を立てないよう部屋を出て身支度を済ませ…去り際に振り返り、深くお辞儀をする。
ミソラ「…お邪魔しました……」
匿って貰っておきながら薄情ではあるが、これ以上迷惑をかけられないと思い…薄明るい空の下、トボトボと歩く。
そして辿り着いたのが、展望台。
スバルくんとの出会いが印象深いせいか、ここに立ち寄らずにはいられなかった…。
ミソラ「………」
その時ふと、ギターに手を伸ばし……ピックを添え、鼻歌混じりに弦を弾く。
ミソラ「〜…、〜〜。〜〜〜……」
…が、そう長く弾けなかった。
ミソラ「……ママ。私、分かんなくなってきた。生きてく為にもお金は必要だけどさ…。アイツの言いなりになってまで、歌いたくないよ……」
??『そうよねぇ。意地汚い大人のせいで、大好きな歌を穢されたんですもの。いっそのこと、その誰かさんが居なくなればいいのにって思ってるんでしょ?』
ミソラ「――誰っ!?」
突如、ポロロンと和らげな音が響き渡り、脳に語りかけてくる声に気づく。
??「ポロロン……――こっちよ…」
一瞬…ママに似た声に導かれ姿を表すが、人間と思える姿をしておらず。寧ろ、楽器に魂が宿っている様にも見えた。
ミソラ「誰なの…あなた……」
??「ワタシの名前はハープ。貴女の奏でる音に導かれた…音楽の女神よ」
ミソラ「音楽の…女神……」
ハープ「そうよ、ミソラ。貴女は運がいいわ…。だって貴女は、音楽を力に変えることが出来るのだから……」
ミソラ「でも私…歌いたくない……」
私は、大好きなママの為に歌い続けたい。……けど、お金に汚い人間の為に歌いたくない。
それでも、彼女を受け入れなきゃ何も変わらない。
本当の自分を殺したまま歌い続けなければならない。
それだけは嫌だ。
入り交じる葛藤に狼狽えていると、ハープと名乗る女は手を差し伸べる。
ハープ「大丈夫よ。ワタシを受け入れてくれたら、貴女の音楽を穢す輩はいなくなるわ。だって…貴女の音楽は、貴女の為にあるもの…。そうでしょう?」
ミソラ「……私は…」
もう…何もかも、ワカラナイ…。
***
『いい、ミソラ…。歌はね、傷ついた人達の心を癒やし勇気づけるためにあるの。いついかなる時もそれだけは忘れちゃダメ。母さんとの約束よ?』
『はーい! 指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます! …それじゃ行ってくるね!!』
『フフフ、行ってらっしゃい。母さんはここで応援してるから精一杯頑張りなさい!』
『うん!!』
***
ミソラ「ごめんね、ママ…。約束、破っちゃって…」
差し伸べられた手を取り、光に呑み込まれるのだった…。