スバルside
スバル「電波変換! 星河スバル、オン・エア!」
時間を忘れるほど走り回っても、町中にいないなら探す範囲を広げるほかないと、そう決断せざるを得なかった。
変身を終え、光が晴れた頃。ロックは伺うように僕の顔を覗き込む。
ウォーロック「スバル。変身したはいいが、どうやってミソラを見つけ出すんだ?」
スバル「……効率悪いけど、とりあえず、地上とウェーブロードを行き来しながら探すしかないと思う」
浅くとも考えついた案を述べた、その時…。
「うわーー!!」
「キャアアア!!!」
「ありがとうございますっ!!!」
「もっと強く…っ!」
けたたましく響く轟音と、もがき苦しむような断末魔によって話を遮られた。
てか下半分のテメェら、やめろや。
スバル「なに…? いまの…」
ウォーロック「……イヤな予感が的中したかもな。行くぞ、スバル」
スバル「わかった」
ウェーブロードに飛び移り、音の発生源――展望台付近まで向かったはいいが、視線の先の光景はとても悲惨なものだった。
地面を見下ろせば、遠目でも分かるくらいに人が伸びており、起き上がる気配はない。
それに…ロックマンに変身した僕みたく、足場の上に立つ者達でさえ…動きは鈍っているようだ。
牛島くんと宇田海さんの時とは、また違った形で実害が及んでいるのだから、あまりにも…
スバル「――酷い…」
こう呟いてる間にも、轟音が鳴り止むことはない。
FM星人が地球人にとって、いかに危険な存在なのか。
これだけ間近で見てくれば、さすがにもう…理解に苦しむはずがない。
何しろ、前にロックが言ったように、地球上では人間を依り代にしないと力を引き出せないのだから、余計に質が悪い。
……だが、逆にだ。
彼らが母星にいる間。それも、宇宙空間でなら単体でも力を十二分に発揮できて何らおかしくはない。
だとしたら兄さんはどうだ?
一時的でも宇田海さんを退け、オックスの不意討ちにも動じず、逆に蹴散らすほど実力はあったはずなのに…。
「3年前に罪を犯しておきながら、それを隠し続けた」と、妙に引っかかるような言い方もそうだ。
兄さん一人では手に負えなかったから?
多くの人の命がなくなるくらいなら、むざむざと死地に行く必要性なんてあったのか?
ここに戻ってきた本当の理由は、単に怖気づいて逃げただけなんじゃないのか?
考えていくほど、頭の中で疑念と矛盾が生まれ、信じていいのかすら危うい。
スバル「もういっそ、力ずくで聞くしか…」
ウォーロック「危ねぇ!!」
スバル「――ッ!」
轟音とともに襲いかかろうとする青白い……音符のような物体が視界に入る瞬間のことだった。
左腕がバスターを放つよう持ち上がったと同時に、緑の彩光を放つ盾が現れ、そのおかげで難を逃れた。
だが反動は大きく、わずかに靴底が擦れる音がした。
ウォーロック「ボーっとすんな! オレが咄嗟に気づいてなきゃ、今ごろ攻撃食らってたんだぞ…」
スバル「っ、……ごめん」
……そう。彼の言う通り、今は考え込んでいる場合じゃない。
早く見つけ出さないと――――その心配も杞憂に終わってしまう。
??「まさかとは思っていたけど、あなたもここの住人を飼いならしていたのね」
ウォーロック「人聞きが悪いにも程があるだろ――ハープ」
どこからともなく聞こえてくる女性の声。
ロックが大袈裟に反論しだすと同時に、眼前のそれは擬態を解いたカメレオンみたく徐々に姿を現し始める。
スバル「……?」
背丈は僕と同じくらいだが、ピンクを基調としたワンピースのようなボディスーツを纒っており、見た目から女の子だと分かったが、胸がザワつくほど…嫌な気がしてならなかった。
ハープ「お久しぶりね、ウォーロック。みんなあなたの帰りを待ってるってのに、ひとつも連絡を寄越さないんだから、こうして迎えに来てあげたのよ?」
ウォーロック「けっ、誰も頼んじゃいねぇのに殊勝な奴らだぜ。…だがな、ハープ。オレにだって…譲れねぇ理由があるからここに留まってんだよ。これ以上、お前らの好きにさせてたまるかってんだ!」
ハープ「困ったわねぇ…」
手元に携えたギターのような物。――もとい、怪しげに嗤う彼女こそが
…なるほど。個体差によって、ロックと同じように宿主と独立しているということか…。
……が、今はそこが問題じゃない。
ハープ「ワタシはただ、
ウォーロック「寝言は寝て言え! こちとら端から話し合いで解決する気なんざねぇんだよ。取り返してぇなら、殺す気で奪ってみろやっ!!」
問題は寧ろ…同族に恨みを買ったロック自身にあるということ。
正直…身内同士の荒事に巻き込まれるのはゴメンだが、地球に危機が迫っているなら話は別。
結局…抗うには、戦うしかないのだ。
ハープ「そう…宿主のことも考えれば、普通は自分の命を優先するものだけど、仕方ないわね…」
一時は落胆するが諦める気は毛頭ないらしく、彼女の眼光に鋭さが増した…。
ハープ「――――殺りなさい、ミソラ!」
薄々感づいてはいたが、いざ相手にすると…やはり堪えてしまう。
ハープの指令を聞き入れたミソラちゃんの周りから四機のギターアンプが召喚された。
スバル「…てことは、やっぱりミソラちゃんが…!?」
ミソラ「〈ショック・ノート〉!!」
スバル「――くっ!」
攻撃が来るとわかった瞬間に真横へ飛び、バスターを駆使して反撃したが、当然のごとく躱された。
ウォーロック「随分と手荒い歓迎だなぁ、ハープ!!」
ハープ「当然じゃない。こっちだって、嫌でも従うほか無かったんですもの。だから今更、手ぶらで帰るわけにはいかないのよ!」
二人が言い争う間に攻撃が来る…!
ミソラ「〈マシンガンストリング〉! ――うおォオラアァァッッ!!!」
スバル「ちょ、まっ、力強っ……!!!」
彼女の口で唱えられてからは一瞬に近かった。
ギターの弦に捕まれ身動きできないまま空中へ投げ飛ばされた。
どうやら年頃の女の子はみんな、腕っぷしが強くなってきているのですね。――て、ちゃうわ!
ウォーロック「どうなってんだよ、あの女の腕力ぅ!!?」
スバル「こっちが聞きたいんですけどぉぉ!!!」
重力に従って地面に叩きつけられるには、そう時間はかからなかった…。
ハープ「…ミソラぁ、もうちょっと丁寧に扱ってよ……」
さすがのハープも、これには苦言を吐かざるを得なかったそうな。
……トホホ。
次回をお楽しみに