辺り一面が暗闇に覆われ……そこに立っているか分からない空間のなか、重たげな
「―――? ……ここは?」
彼女――ハープを受け入れてからの記憶が無く、どれほど時間が経ったのかもあやふやになっていた…。
それに加え…体中、水に浸かる感触に包まれながら、まともに呼吸できる違和感から、現実世界では無いと悟る。
「…わたし…いったい…………――ッ!!!」
しばらく呆けていたら、唐突にフラッシュバックが起こり、鮮明に見えはじめた時には目を疑い、絶句してしまう。
…それもその筈。今の今まで、彼女によって操り人形へと仕立てられ、行き場のなかった怒りを…不満を…、ひたすら相手にぶつけていたのだから。
しかし、目覚めて早々…こうも悪夢を見させられて、堪えられる訳がない。
「な、によ…これ……。ぜんぶ…わたしが、やったっていうの……!?」
マネージャーに飽き足らず、ライブを心待ちにしてる人達にも攻撃をしたという事実が、――人の苦しむ様を見て、嘲笑う自分がいるという事実が、良心をえぐり取るには十分すぎた。
……何より、認めたくなかったのだ。
あんなに楽しかったはずの
――…うそだ……信じたくない…。
そうしてずっと…頭の中で否定の言葉が
いくらドス黒い感情を押し殺そうと、
――………わたしがしたかったのは…こんなことじゃ、ないのに…。
もう、目を向けることすらできず、そのまま崩折れてしまったのだった…。
◆◆◆
〜♪
……スバルです。今回こそはと…助けようとした子に思いっきりブン投げられたとです。
それでも何とか生きてるので、
……スバルです。電波変換した上でとはいえ、女の子に腕力で負けてしまったとです。
ショックのあまり…乾いた笑いだけがこみ上げてきます。
……スバルです。顔から着地したのちに、某青狸みたく、直立不動の如く、胸の辺りまでブッ刺さったとです。
悲しみの果てに…マンドラゴラになっちまいそうです。
……スバルです。結構、悲惨な目にあってんのに…肝心の相棒ときたら、わりと無事で済んだとです。
理不尽です……理不尽です……理不尽ですっ!
ウォーロック「おうおう、なんとも可哀想になぁ……。――じゃねぇー!! 自虐る暇あんなら、はよ起き上がれや! これじゃ尺の無駄遣いじゃねぇかよぉぉ!!」
スバル「ちょっと引っこ抜いておくんなまし…」
その後はなんとか、バスターから分離して現れたロックに、引っ張り上げてもらいましたとさ…。
ウォーロック「生きてっかぁ? スバルさんよ…」
スバル「死んだら今頃ボケちゃいねぇさ。ウォーロックさんよ…」
格闘ゲーム並みに投げ飛ばされたから、これを生身で受けたなら余裕で死ねるけど、電波変換のおかげで助かったと……そう信じたいものだ。
ようやく立ち上がると、ロックは恨めしそうな眼差しで遠くを見つめた。
ウォーロック「今回はよっぽど相性が良いんだろうな…。キグナスの頃と変わらねーぐらいに厄介だぜ……」
……確かに。今のミソラちゃんの手強さは、宇田海さんとそう変わらない。
それこそロックが言ったように、電波変換した後の強さは、
……が、幸い。相手は同年代。
臆せず攻め入れば、まだ勝機はあるか…?
――と、思考を巡らせた時。
ウォーロック「……すまなかった…」
スバル「え…?」
突然の謝罪に、思わず気の抜けた声を上げてしまう。
ウォーロック「本来、オレたちは敵同士だ。いつ…お前の兄貴に殺されても、おかしくは無かった…。
それと、ろくに事情も話せずに、お前を戦場に巻き込んじまったこと……少しだけ、後悔してんだ……」
スバル「……僕が、父さんの息子だって……わかってたから…?」
最初会った日のことを踏まえて、声を震わせながら彼に問う。
ウォーロック「………」
返答はない。――が、何かしら思い詰めていることだけは、表情から見て取れた。
自分から聞いておいて勝手に幻滅しそうだったが、人に悪く言えるような立場でもないから、その辺はお相子だろう。
一度視線を反らし、顔を俯けた。
スバル「……前に母さんに叱られたこと、今ならわかる。兄さんが
大切な人が消え去る恐怖を味わうくらいなら、いっそのこと平穏に暮らせればそれでいいや。…って。
楽な道を選んで、逃げたのだ。
そうやってズルズル引きずらせたのは、他の誰でもない…僕自身なのだから。
スバル「やっぱりさ、僕には資格が無かったってことでしょ? 聞いたところで、現状を変えられるだけの力は無かったから」
ウォーロック「スバル……」
あの夜、展望台にいなければ、父さんのことについて知る機会を失って、何も変われずにいたかもしれない。
だからこそ、ロックのおかげで、今こうして…兄さんと同じ土俵に立てているようなもんだ。
複雑そうな面を見せるロックと顔を合わせ、思うことを直接述べる。
スバル「君のおかげで、戦う為の力を得られたことは感謝してるけど、僕は……君を許せないと思う。どっちにしろ父さん達に危害を加えたんだから」
ウォーロック「――それで良い。…だが信じてくれ。オレも…この戦いが終われば、大吾のことも全部話す……」
スバル「わかった。後になって忘れたとか、言わせないからね」
ウォーロック「あぁ。――行くぞ、スバル!」
無言で頷き、再びミソラちゃんのもとへ急ぎ足で向かった。
いつか兄さんからも、事情を聞き入れなければ前には進めないだろう。
たとえ、殺し合うことになったとしても。
ミソラ編はあと2、3話増えると思います。