ウェーブロードに飛び移り、さっきミソラちゃんに投げ飛ば………ミソラちゃんと先程まで戦ったところに戻ったが、やはり見渡しても居らず、落胆してしまう。
スバル「いったいどこに…――ッ、いた…!」
ほんの一瞬。薄桃色の光を帯びたシルエットが展望台へ向かうと確信づいたが……
スバル「追わなきゃ…」
ウォーロック「――スバル」
後を追う間際でロックに呼び止められ、その一歩を踏みとどまる。
スバル「……どうしたんだよ急に?」
ウォーロック「オレもあまり強く言えねぇがな、助言くらいはさせてもらうぜ。……あの女――ミソラと戦う間は気ぃ抜くなよ。今まで戦った奴らと同じように生半可な説得は一切効かねぇんだからな……」
スバル「……、……わかってる…」
ロックのもっともな主張に反論もままならず、無意識のうちに拳を握りしめていた。
ゴン太の時は、出会うきっかけが悪いうえ、兄さんの指示通りに倒しただけ。その後だって、間を割って入ること自体……できるわけが無かった。
宇田海さんの時はたまたま居合わせ、話すうちに彼の側面を知れたけど、いつぞやの戦闘でキグナスを引き剥がせず、逃してしまった。
ただでさえ自分は『誰かを救えた』という実感は無いのに。
いつになく諦めがつかない自分を見ても、傍から滑稽だと思えてしまうというのに……。
スバル「――それでも、放ってはおけないでしょ……」
たったそれだけで理由が事足りているから、……だから、彼女を助けたくて躍起になったんだ。
だったら尚更、自嘲してる暇なんてないだろう。
かけてやれる言葉など、追々考えればいいだけだ。
スバル「……行こう、ロック……」
気合いを入れ直し、展望台へと急いだ。
今度こそ…
◆◆◆
ミソラside
一瞬、バチっと視界が白く点滅しだす。
ミソラ「……く、ぁっ……」
高速移動を解いて早々…立ちくらみに見舞われ、耐えきれず膝をついては動悸の激しさに胸元を押さえつける。
そんな私を見かねていたハープが元の姿に戻っかた思えば……やんわりと背中を撫でてくれた。
どうにも怪しそうな
ハープ「……立てる?」
ミソラ「大丈夫…」
呼吸が楽になってから立ち上がろうとした途端……不意に目眩がぶり返し、それに伴って頭がぼんやりとしだした。
ミソラ「あれ……わたし、何してるんだっけ?」
言葉にしたように…ここ数時間の記憶がなくなっていると自覚する。
なんで、こんな見知ったところにいるのか。
なんで、宙に浮くような場所に佇んでいるのか。
なんで、見慣れない格好をしているのか。
はっきり言って見当もつかない。
ミソラ「…………、……ッ!!?」
思い出せ…思いだせ…と次第に見えてくる景色が
鮮明なるにつれ、粟立つ全身をきつく抱きしめ、しゃがみ込んだ。
嫌だ、何も、思い出したくない!
いやだ、やめて……やめて…やめてやめてやめてやめてやめてヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ―――
ハープ「全部、あなたが望んだことじゃない。このチカラさえ手にすれば、邪魔なものが取り除けるって」
ミソラ「違う……違う…、ちがう、ちがう…――」
ハープの追い詰めるような言動に、いくら否定しようがもう手遅れだ。
真っ先に記憶から手放そうと、人々が絶叫し倒れ伏す姿が脳裏にこびりついては、最早どうにもならないのだから……。
ミソラ「あ……あぁ…、あぁぁぁ………」
……もう、だめ……カラダが、意識が、沈んでいく。
このままだと……暗闇に、呑まれ―――
??「ミソラちゃん!!」
ミソラ「……!」
不意に誰かに呼ばれた気がした。
聞き覚えのある声に恐る恐る顔を上げると、私と同じ背丈の少年が一目散に駆けつけてくるのがわかる。
―――ひょっとして……
ミソラ「スバル、くん……?」
何故彼だと思ったのかはイマイチ自分でもわからない。
だけど、この状況において…マネージャーやファンとはまた違って、純粋に気にかけてくれる人は他にいないと感じていたからだろう。
ますます詰め寄ってくると思えば、目の前でブラックホールと似た空洞が生まれ――
??「スバルッ、少しだけ時間を稼ぐ。その間にミソラを説得しとけ!」
ハープ「ちょっと、ウォーロック…………」
異形の男がハープ諸共暗闇に引きずり込まれた後、程なくして門は閉ざされた。
スバル「……ミソラちゃん、どうして……」
ミソラ「キミ以外に…頼れそうだと思う人が、他に見当たらなかったからだよ……」
私自身…回復を待つまで動けないと悟り、観念するかのように地面を見つめ、素直に白状した。
◆◆◆
NOside
辺り全体が暗く淀んでいるように思えるのは、内にある憎悪や憤怒が煮えたぎってドス黒く染まりきっていたから。――此処は、言わばウォーロックの精神世界となる。
どうにかハープを宿主から突き放し完全に二人きりとなったわけだが、未だ一触即発と言えるほどいがみ合うのは相変わらずのようだった。
ハープ「つくづく理解に苦しむわね…。私達を
ウォーロック「お前が言えることか、それ。
……つーか、よりによってあの陰険爺もお出ましだったとはな…」
ハープ「……さすがに気づいていたのね?」
ウォーロック「そりゃそうさ。じゃなきゃ、向こうから馬鹿でけぇ
……リヴァイアとはまた違って気味悪ぃぜ、まったく」
ハープ「――癪だけど、こればかりは同感だわ……」
二人の知る限りではクラウン個人の実力は芳しくないため、敵に回ろうが脅威にならないと各々評してはいた。
……だがどうだ。現時点において、クラウンの持つ周波数とは裏腹に一際強く禍々しいナニかが押し寄せており、王とはまた違ったプレッシャーに焦るハープはおろか、御国の反逆者ですら肩を強張らせているではないか。
……しかし。
そんな状況下でウォーロックは歪ながら強大な周波数がせめぎ合っている事に気づき、そのうちの一つがリヴァイアのものだと看破していた。
同胞であるが故、数日も経てば判別に苦労しないレベルまで。
だとすると、水希は戦っていると予想がつく。
……奴の事だ。スバルと比べ実力はあるのだから、余程運が悪くなければ負けることは無いだろう……と半ば期待を抱きながら、長年抱えていた疑点を問うた。
ウォーロック「なぁ、ハープ。お前もケフェウスのやり方に疑いを持ったことねーのかよ? 大した理由もなしに星ごと殲滅するなんて、トチ狂ってると感じねーのかよ?」
ハープ「そうね。後継ぎとして代替わりされてから、おかしなコトは多々あったけど……正直、ケフェウス様の目論見に興味ないし、鍵さえ取り戻せば後はどうだっていいのよ。
……そもそも、あんな殺伐とした星に希望を抱くこと自体、どうかしてるじゃない」
ハープの的を得た持論にこれ以上言及する気を失せると同時に、あくまでも生きるためと
その様子が気に食わなかったのか…ハープは苛立ち混じりに鍵を返せと促す。
ハープ「……もう一度言うわ、ウォーロック。ケフェウス様から大目玉を食らう前にアンドロメダの鍵を返しなさい!」
ウォーロック「ハッ、お断りだ。そうやって威勢良く吠えてるヒマあんなら、殺してでも奪い取るんだな!」
傍から無意味な事を繰り返すばかりでは誰も救われやしない。――その事をあのガキは理解していないのだから、朽ち果てるのを覚悟に目を覚まさせてやると決心していたのだ。何と言われようが結論を変える気など無かろう。
無論、彼とてタダでやられるつもりは毛頭ないが。
言い争う最中、空間に亀裂が生じるのをハープは見逃さなかった。
ハープ「そう……なら、まずはここから脱出すべきかしらね!」
ウォーロック「させるかっ!!」
動いたのはほぼ同時。
お互い衝突するに伴って力は拮抗する。
……ほんの数分だけでいい。少しでも