流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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EX-8話 この世界が大嫌い

スバルside

 

――キミ以外に…頼れそうだと思う人が、他に見当たらなかったからだよ……。

 

スバル「どういう、こと……?」

 

話してくれた言葉の真意が解らない、と声に出す。

 

とても人を襲う動機に当てはまると思えな……いいや、宿主の事情に関係なく付け入れるのだから、こうして容易く手を下していただろう。

そんな中で正気を取り戻せたとはいえ、ミソラちゃんも傷口を抉られたに違いない。

 

そう思わせる状況だからか非常にムカついていた。

 

寄生虫紛いに弄ばれ、足掻こうが無駄だと(わら)われるような錯覚に。

そして何より、目の前で膝をつく彼女にかけてやれる言葉すら見出せない己自身に……。

 

ミソラ「私ね……3歳の頃に両親が離婚して、そのあともずっと、ママと二人で暮らしてたの」

 

俯いたままではあるが…ミソラちゃんが沈黙を破ってくれたおかげで、どうにか平静を取り戻せた。

 

ミソラ「ママは…私を養うためにいつも必死に働いてて、帰ってくると疲れきった顔をしていたから、少しでも力になりたくて、ご飯も作ったりしたんだ。

もちろん、最初はへったくそが極まって…黒焦げにしちゃうのなんてザラだった。

今思えば、とにかく何でもいいから喜ばせたい、恩返しがしたいって、子供ながらに思ったんだろうね……」

 

そういや、あの時はこっぴどく叱られてたっけな。と、ミソラちゃんはどこか懐かしむように呟いた。

こと料理に関してはおいそれと口出しできないが、内容を聞くだけでも随分微笑ましいことだ。

 

そういや、三年前の兄さんも当初は色々やらかして母さんに……――止そう、これ以上思い出してはいけない。

あんな地獄絵図ごときに耽る暇があるなら、今はしっかりと傾聴しよう。そうしよう。

 

ミソラ「そんな何気ない日々を送っていた中で、テレビに映るアイドルの歌を口ずさんでたら「見込みあるんじゃない?」って言ってくれて、誕生日にギターを買ってくれたの。

その日からたくさん練習しては、出来上がった歌をママに聴かせてた。

……「上手ね」って褒めてくれたし、「もっと多くの人に聴いてもらうべきよ」って、背中を押してくれた――」

 

直後。間を置くように顔を上げる。

しかし、僕を見据えるその目からは、以前のハツラツとした面影が消え失せ不気味さを醸し出していた。

足が竦み怯んでしまいそうだったが、進んで助けに来たのなら話を聞き入る義務がある。

逃げる訳にはいかないんだ。

 

ミソラ「――だから、ママに買われた才能をムダにしたくなくて、ほとんど成り行き任せだけどオーディションへ向かったの」

スバル「……それで、ミソラちゃんは……」

 

無言で頷く。

 

ミソラ「無事に合格したことを伝えたら、めちゃくちゃ褒めてくれて……こんな私でも、歌うことで人を喜ばせられるんだって思ったら、すごく嬉しかった――」

 

それは、紛れもなく本心からくる言葉。

僕自身が宇宙を好いて、父さんと二人で趣味を分かち合い、喜ぶを噛みしめているのと似通っている。そんな気がした。

 

ミソラ「――だけど、デビューするのと同時にママもお仕事が忙しくなって、お互い顔を合わせる日は少なくなったわ。

去年のクリスマスライブにも合間を縫ってメールを送ったけど、一向に返事は来なかった。……なんでか分かる?」

スバル「……いや」

 

彼女の目が細まる。

 

ミソラ「家に帰ったあと、そのまま風呂場で溺れ死んだんだってさ。信じられないでしょ?」

スバル「……!」

 

返ってきた言葉に耳を塞ぎたいくらいだ。

一時感じた幸せは呆気なく消え、父を喪った絶望と重ね合わせたら余計息苦しくてたまらない。

 

ミソラ「……やっぱり辛い? お父さんがいなくなった時を思い出して」

スバル「いま、なんて……」

ミソラ「昨日の夜、キミのお母さんから聞いたのよ。大切な人を喪う苦しさを分かってくれる人が――って期待してたけど、よくよく考えたら、まだ身近にいるじゃない。

正直、羨ましいよ……。私にはもういない。生きてる筈のパパだってどうせ助けに来てくれない! だからこうしてバケモノになるしかなかったのに……っ!!」

 

泣き叫んでいた。

何を訴えかけているか判らなくなるほど荒みきった姿は目に見えている。

けれど――憎悪、寂寞、嫉妬、羨望。それら全てが今のミソラちゃんを衝き動かしていることは確かだろう。

 

スバル「――!」

 

距離の空いた僕らを割り込むように黒い渦が現れ、身を引くと同時にロックが吐き出された。

 

ウォーロック「ぐぁ…っ!」

 

体勢を立て直せず背中を強打。……うん、痛そう。

心なしか息も上がっているようだった。

 

ウォーロック「わりぃ。思ったより時間稼げなかったな…」

 

それでも身を案じてくれる彼に、これ以上無茶な要求はさせられまい。

 

スバル「十分だよ。後はなんとかする」

ウォーロック「あぁ、そうしてくれ……」

 

ロックの体が光に覆われ、再び左腕に宿る。

向こうも同じく肩で息をしているが、根気強く立ち上がった。

 

ハープ「……手こずらせてくれたわねウォーロック。けど、もう同じ手は食わないわよ!」

ウォーロック「無論だ。女に手ぇ出す趣味なんざねーけど、今回は例外だぜ。この俺を相手にしたことを後悔するんだな、ハープ!」

ハープ「世迷い言を……。ミソラ!」

 

ハープも再びギターへと変化し、ミソラちゃんはそれを握りしめる。

 

ミソラ「……私は、お金にうるさい奴が嫌い。ママとの思い出を踏みにじる奴が嫌い。どこにいても独りだって思わされる――この世界が大嫌い!!」

スバル「ミソラちゃん」

ミソラ「……これが私の答え。それでもまだ私と戦うっていうの? スバルくん……」

 

既に結論はついている。

 

――何が正解かは判らないけど、止められるのはここにいる自分ひとりだけ。ならば――

 

スバル「戦うよ。少しでも気が晴れるならね」

 

彼女に負けじとバスターを構えた。




まだまだミソラ編が続きますが、最後までお付き合いしていただければ幸いです。

そして、UA数も無事に5000を突破することになりました。
本当に嬉しい限りです。

正直なところ……同じ書き手で僕よりも一年後に投稿したあの人に色々と先を越され、ここにくるまで荒れ気味ではありました。

ですが、自分の今の実力に見合う数値だと割り切り、頻度はともかく投稿意欲さえ失せなければ続けられるんだとしみじみ思っています。
お気に入り登録者が増えて、ちゃんと作品として成り立っているんだなと実感出来ますからね。(^^)

それでは引き続き、水希リスタートの応援のほど宜しくお願い致します。

アリア・ナイトハルト
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